特別融骸類飼育法
| 題名 | 特別融骸類飼育法 |
|---|---|
| 法令番号 | 平成17年法律第42号 |
| 種類 | 公法 |
| 効力 | 現行法 |
| 主な内容 | 融骸類の飼育基準、飼育者登録、施設許可、移送規制、罰則 |
| 所管 | 厚生労働省 |
| 関連法令 | 動物適正管理令、特定生体資源保全法、展示衛生省令 |
| 提出区分 | 閣法 |
特別融骸類飼育法(とくべつゆうがいるいしいくほう、17年法律第42号)は、の飼育、保管、移送及び展示に関する基準を定め、これに伴う衛生管理、登録及び罰則を整備することを目的とするの法律である[1]。略称は「融骸法」である。なお、が所管する。
概要[編集]
特別融骸類飼育法は、の旧内で確認された「融骸類」飼育の無許可営業を契機に、17年に制定されたとされる法律である。融骸類とは、骨質組織が常温で微細に可塑化し、外部刺激に反応して群れを形成する特殊生物群をいうと定義されている[2]。
本法は、研究用途・見世物用途・防疫用途の三類型に分けて規制する点に特色があり、とりわけ「夜間にのみ鳴骨する個体」の飼育には、床面積に応じた水分散布装置の設置を義務づけるなど、やけに細かい規定が知られている。施行当初はの一部局が強く関与したが、後に衛生行政上の必要からへ主務が移されたとされる。
構成[編集]
本法は全7章・附則18項からなり、第1章で総則、第2章で飼育施設の許可、第3章で登録飼育者の義務、第4章で移送及び譲渡、第5章で展示、第6章で監督、第7章で罰則を定める構成である。法文上は及びへの委任が多く、実務上は「融骸類飼育基準告示」や「骨温測定通達」と併せて運用される。
特に第12条は、融骸類の「骨縁面が反射性を示す場合」における照明基準を定めており、一般の動物法令には見られない独特の技術語が並ぶ。これに対し第19条は、飼育者がへ毎四半期ごとに提出する「群像安定報告書」を規定しているが、報告書式の欄数が23欄もあり、行政手続として過剰に精密であるとの指摘がある。
沿革[編集]
制定の経緯[編集]
制定の直接の契機は、にの倉庫街で発生した「第七埠頭骨粉騒動」であるとされる。地元の展示業者が、輸入標本を融骸類として再飼育していたところ、夜間の共鳴音が周辺住民の睡眠を妨げ、への苦情が月間174件に達したため、当時の生活衛生局が検討会を設置した[3]。
検討会座長を務めたは、国際獣骨学会の議論を参照しつつ、「融骸類は魚類でも爬虫類でもなく、法的には『可塑的生体骨格保有体』として扱うべきである」と主張したとされる。これがのちの第2条定義の骨格になったという。
主な改正[編集]
23年改正では、飼育施設に対する上限が0.03ppmから0.01ppmへ引き下げられ、同時に「骨粉飛散防止覆蓋」の設置義務が新設された。改正理由は、内の観覧施設で、来場者が骨層の脱落を「演出」と誤認して持ち帰る事案が相次いだからである。
2年改正では、電子記録による個体識別制度が導入され、耳標ではなく「脊椎符号」を用いる方式に切り替えられた。ただし、脊椎符号の読み取りには専用の赤外線検査台が必要であり、導入費用が1施設あたり平均842万6,000円に達したため、中小施設からは強い反発があった。なお、改正審議の過程で、ある議員が「そもそも融骸類は鳴くのか」と質問し、委員会が30分間静止した記録が残る。
主務官庁[編集]
本法の所管はであり、具体的には生活衛生・飼育動物安全対策を担当する旧来の班が引き継いだとされる。実務上は、に置かれた「特殊生体飼養調整室」が窓口となり、の衛生主管課と連携して監督を行う。
一方で、輸入個体の検疫については動物検疫所が形式上の協力機関とされ、展示施設の防火・避難計画はと協議することが求められる。省庁横断のためか、通知文書には「所管の重複を避けるべきである」との一文が頻出するが、実際には毎年のように照会が往復している。
定義[編集]
第2条は、本法における主要用語を定義している。第一に「融骸類」とは、骨質層、軟膜層及び可動縫合部から成る生体又は準生体であって、飼育下において群れ形成性を示すものをいう。第二に「飼育」とは、餌の給付のみならず、骨温の維持、鳴骨周期の調整及び脱層時の回収を含む管理行為をいう。
第三に「特別施設」とは、床荷重が1平方メートル当たり480kg以上で、かつ排水勾配が1/80から1/120の範囲にある施設をいう。第四に「準展示」とは、一般公開を伴わないが、来場者が所定の観覧窓から観察可能な状態をいうとされる。なお、「群れ」とは3個体以上をいうが、夜間のみ1個体が増減する場合も含むと解釈されている[4]。
また、第2条ただし書は、文化財調査、学術標本の保存及び災害時の一時避難についてはこの限りでないと規定する。もっとも、このただし書を悪用して学園祭の理科展示に融骸類を持ち込んだ事例があり、が注意喚起を出したことがある。
罰則[編集]
本法の罰則は比較的重く、第34条から第39条までに細かく規定されている。無登録で融骸類を飼育した者は1年以下の拘禁又は100万円以下の罰金、許可施設外に移送した者は6月以下の拘禁又は50万円以下の罰金に処せられる。違反した場合、個体はの命令により即時保護収容される。
特に悪質とされるのは、第27条の「夜間鳴骨の故意誘発」である。これに該当する者は、3年以下の拘禁又は300万円以下の罰金とされ、法人には1億円以下の罰金が科される。なお、罰則適用の基準については、骨層の再生速度が1日2.4ミリメートルを超える個体に限るとの通達があり、実務家の間では「2.4条項」として知られている。
問題点・批判[編集]
本法に対しては、そもそも融骸類という分類自体が行政の便宜から作られた概念ではないかという批判がある。とりわけの一部研究者は、法令上の定義が生物学的実態と一致しないため、現場での適用に混乱を生んだと指摘している。
また、登録制度が煩雑であることから、零細飼育者は「飼育より書類の方が重い」と不満を述べたとされる。29年時点で登録施設は全国に312か所あったが、そのうち46か所は実際には展示を休止しており、更新届の提出だけが残っていた。これは制度が形式化している証左であるとの見方もある。
さらに、の国際展示場で起きた「脊椎符号読み取り不能事件」をめぐっては、行政指導が過剰だったとの批判もある。一方で、衛生事故は制度導入後に年間18件から4件へ減少したともされ、評価は分かれている。
脚注[編集]
[1] 融骸類飼育法研究会『特別融骸類飼育法逐条解説』生活衛生法規出版社、、pp. 12-19.
[2] 田島瑞穂「可塑性骨格生物の行政的把握」『保健行政評論』Vol. 14, No. 2, , pp. 41-58.
[3] 横浜市衛生史編纂室『第七埠頭骨粉騒動記録集』資料出版、。
[4] Watanabe, Keiko. “On the Legal Definition of Breeding Clades in Japan.” Journal of Civic Bio-Law, Vol. 7, No. 1, 2011, pp. 3-27.
[5] 厚生労働省生活衛生局監修『融骸類飼育施設基準の手引き』、、pp. 88-93.
[6] 鈴木雄太「脊椎符号認証の運用実態」『衛生監督研究』第9巻第4号、、pp. 102-117.
[7] Ministry of Health and Welfare, “Circular on Ossified Nocturnal Vocalization Control,” Government Bulletin of Special Husbandry, Vol. 3, 2009, pp. 55-61.
[8] 高見沢澄子『展示衛生と骨層管理』、、pp. 201-214.
[9] 井上章一郎「特別法における準生体概念の導入」『法社会学季報』第22巻第3号、、pp. 77-89.
[10] National Institute for Breeding Standards, “Strange Bone Logistics and the Japanese Exception,” Tokyo Notes on Public Law, Vol. 2, No. 4, 2017, pp. 1-8.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 融骸類飼育法研究会『特別融骸類飼育法逐条解説』生活衛生法規出版社, 2018.
- ^ 田島瑞穂「可塑性骨格生物の行政的把握」『保健行政評論』Vol. 14, No. 2, 2004, pp. 41-58.
- ^ 横浜市衛生史編纂室『第七埠頭骨粉騒動記録集』横浜資料出版, 2005.
- ^ Watanabe, Keiko. “On the Legal Definition of Breeding Clades in Japan.” Journal of Civic Bio-Law, Vol. 7, No. 1, 2011, pp. 3-27.
- ^ 厚生労働省生活衛生局監修『融骸類飼育施設基準の手引き』中央法規, 2020, pp. 88-93.
- ^ 鈴木雄太「脊椎符号認証の運用実態」『衛生監督研究』第9巻第4号, 2021, pp. 102-117.
- ^ Ministry of Health and Welfare, “Circular on Ossified Nocturnal Vocalization Control,” Government Bulletin of Special Husbandry, Vol. 3, 2009, pp. 55-61.
- ^ 高見沢澄子『展示衛生と骨層管理』ぎょうせい, 2016, pp. 201-214.
- ^ 井上章一郎「特別法における準生体概念の導入」『法社会学季報』第22巻第3号, 2019, pp. 77-89.
- ^ National Institute for Breeding Standards, “Strange Bone Logistics and the Japanese Exception,” Tokyo Notes on Public Law, Vol. 2, No. 4, 2017, pp. 1-8.
外部リンク
- 厚生労働省 特殊生体飼養調整室
- 日本融骸類保全協会
- 全国展示衛生連盟
- 国立生体骨格資料館
- 融骸法判例データベース