艦隊これくしょん -艦これ-
| タイトル | 艦隊これくしょん -艦これ- |
|---|---|
| 画像 | 架空の海図ロゴ(艦隊錨形) |
| 画像サイズ | 250x250px |
| caption | 海軍運用を模したUIと、戦闘回廊を描く地図 |
| ジャンル | 艦隊運用ロールプレイングゲーム |
| 対応機種 | ハイブリッド海軍アーカイブ(携帯端末・据置端末統合) |
| 開発元 | 瀬戸内機関拡張局(Setouchi Dock Expansion Bureau) |
| 発売元 | 合同海軍娯楽販売(Kyōdō Navy Entertainment Sales) |
| プロデューサー | 渡辺精一郎(Watanabe Seiichirō) |
| 開発チーム | 海図工学室/戦闘数理課/港湾UI研究所 |
| 音楽 | 工廠交響音楽隊 〈Kōshō Symphony Unit〉 |
| シリーズ | 艦隊運用シリーズ(艦これ系) |
| 発売日 | 2013年4月23日 |
| 対象年齢 | 全年齢(航海擬似・演習描写のみ) |
| 売上本数 | 全世界累計 1,430万本(2016年時点) |
| その他 | 日本ゲーム大賞で評価、のちバーチャル海図配信に対応 |
『艦隊これくしょん -艦これ-』(かんたいこれくしょん、英: Kantai Collection -KanColle-、略称: 艦これ)は、にから発売された用コンピュータRPGである。シリーズの第1作目にあたり、演習場と鎮守府を行き来する「母港運用」を題材としている[1]。
概要[編集]
『艦隊これくしょん -艦これ-』は、架空の海軍運用を「編成」「運用」「小改修」の連鎖として扱うコンピュータRPGである。プレイヤーは「提督代理」として海域を周回し、資源の収支を読みながら艦隊の能力を底上げすることになる[2]。
本作が成立した経緯は、旧来の戦術ボードゲームが「勝敗」中心へ寄りすぎたことに反発した運用志向の設計思想にあるとされる。具体的には、勝つための最適手順よりも、港に帰るたびにデータが蓄積されるよう作られたため、演習が“生活”のように連続していく構造になったとされている[3]。
開発側の資料では、初期コンセプトが「海図をコレクションするゲーム」であり、艦隊はその検索インデックスとして機能すると説明されていた。さらに、UIに海軍印影を模した小さな計算跡が随所に入れられたことが、後の熱狂的な考察文化へとつながったと考えられている[4]。
ゲーム内容[編集]
ゲーム内容としては、母港での編成・改修・補給と、海域での戦闘・帰投を繰り返すサイクルが中核となる。艦隊は最大6隻の編成枠を基本とし、攻撃順は「装備の整合度」と「索敵の余白」によって毎回微変動する仕様であったとされる[5]。
ゲームシステムの特徴として、戦闘はオート進行である一方、プレイヤーは演習回廊の分岐タイミングに合わせて“指示スタンプ”を押す。たとえば、索敵フェーズ開始から13.2秒以内にスタンプを押すと命中補正が+3.7%、逆に押し遅れると-2.1%になる、といった細かな数式が資料で示されていた[6]。
アイテム面では、燃料・弾薬と並んで「整備余熱」「航海徽章」「海図の余白」といった、単なる消費物ではないメタ資源が導入されている。とくに“海図の余白”は、次の作戦で表示される敵編成の情報量に影響し、実質的に情報戦を設計する仕組みになっていた[7]。なお、対戦モードとしては、他提督の戦闘ログを読み替える形の「追想演習」が提供され、勝敗よりも“読み筋の再現率”が評価指標になったとされる[8]。
オフラインモードは、サーバ負荷を抑える名目で導入されたが、実際には「海域データの偏り」がローカルでも再現されるよう設計されていたとされる。これにより、同じ海域でも端末ごとに“癖”が生じるという現象が起き、プレイヤーの検証熱が過熱したと指摘されている[9]。
ストーリー[編集]
ストーリーは、特定の敵勢力を名指しするよりも、海域で発生する“逸れ現象”の原因を探る形で進行する。プレイヤーは鎮守府の記録係として、過去の航海ログを修復しながら、逸れが起きたときにだけ出現する「回廊型の艦隊」に対処していくことになる[10]。
作戦の単位は「海域章」で構成され、各章は平均で8.6回の出撃で完結する設計とされた。章が進むほど、敵艦隊の編成が“物語上の理由”によって意味づけられていく。たとえば序盤の敵は索敵が過剰であるのに対し、中盤では逆に索敵が不足し、その差が後のダメージ分布に表れる、といった語り口が取られた[11]。
特筆すべきは、公式の背景設定に矛盾が意図的に混入されている点である。開発ノートには「信頼できない海図を一枚だけ残すことで、ファンが考察を自走する」と記されていたとされる[12]。この方針が、後年の“艦隊学”という二次創作的コミュニティを生み出したと解釈されている。
登場キャラクター[編集]
登場人物は提督代理を頂点として、艦艇擬人化に相当する存在が編成される。彼女たちは“艦娘”ではなく、当初は「工学媒体」と呼ばれていたが、マーケティングの途中で通称へ切り替えられた経緯があるとされる[13]。
主人公側の代表例として、軽巡相当の「霧島 薫(きりしま かおる)」は、索敵の余白を増やす“手入れ”技能で知られる。初出作戦ではHPが低い代わりに、帰投直後の整備余熱が+18.4%される効果が付与されていたと資料では述べられている[14]。
仲間側には、空母相当の「蒼碧院 ルナ(そうへきいん るな)」が登場する。彼女は攻撃ではなく情報の送受信に特化し、追想演習の勝率を押し上げる“ログ復元”の能力を持つ。なお、当初の設定では彼女の“復元”は完全ではなく、復元精度が0〜100の乱数で揺れる仕様だったとされ、プレイヤーが偏りを統計検証した結果、都市伝説のように語られる配列が共有された[15]。
敵側の中核には、海域ごとに異なる「逸れ隊」が置かれる。逸れ隊は固定の人格ではなく、海図の余白が減るほど知能が上がるという奇妙な特性が与えられていたとされる。これにより、資源管理を誤ると“敵が賢くなる”逆転現象が起き、難易度調整が炎上の火種になった[16]。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、海域が単なる地理ではなく「意思決定の層」として描かれる。海域はの管轄下にあるが、各鎮守府は中央の指示書ではなく、過去ログの焼き直しによって運用されるとされる[17]。
用語として頻出するのが「資源三位一体」である。燃料・弾薬に加え、“海図の余白”を第三項目として扱う考え方で、収支が黒字でも余白が赤字だと情報が欠損し、結果として被弾が増える、と説明されることが多い[18]。
また、戦闘回廊は「分岐ゲート」と呼ばれ、指示スタンプにより開閉が変化する。分岐ゲートの開閉状態は、作戦経過に応じて“音”としてUIに反映される仕様があり、初期の攻略勢はBGMの周波数を解析して分岐を当てていたとされる[19]。
なお、作中の年号表記は複数存在し、33年相当の記録が同時に登場するなど、時系列が意図的に溶かされていると指摘されている。この矛盾が考察の燃料となり、Wiki風のまとめが雨後の筍のように増えたという[20]。
開発/制作[編集]
制作経緯として、瀬戸内機関拡張局は当初、航海シミュレーターの補助ツールを研究していたとされる。ところが、研究データを一般向けに翻訳する過程で、ゲームとして成立する“手入れサイクル”が発見され、そこで方向転換されたという[21]。
スタッフ面では、プロデューサーのは「計算を楽しくするより、楽しい計算に見せる」と述べたとされる。また、ディレクターの「梶原 敦司(かじわら あつし)」は、UIの文字サイズを“読了速度”で調整する方針を採り、結果として海域ごとに最適フォントが微妙に異なる現象が起きた[22]。
開発の裏話として、戦闘数理課は“逸れ現象”を再現するために、乱数に人間の歩行ログを参考にしたと説明していたとされる。しかし後のインタビューでは、その説明は比喩であり、実際には音声処理の手法が流用されたにすぎないと訂正された[23]。ただし、この逸れの語りはコミュニティで独自に膨らみ、公式の意図を超えて伝播したと評価されている。
なお、発売日前後の告知で配布された“海図付録”は、印刷物なのに交換コードが内蔵されていた。交換コードの読み取りに必要な暗号鍵がの地下倉庫に保管されていると噂され、実際の入手者が限られたことが話題になったとされる[24]。
音楽[編集]
音楽は、工廠交響音楽隊が中心となって制作された。楽曲は大編成の交響を基調としつつ、戦闘回廊では短い打楽器パターンが連結される。特に「回廊の位相」「分岐ゲート序曲」では、テンポが1曲中に3回だけ変調され、そこで指示スタンプの成功率が体感的に上がるよう設計されたとされる[25]。
サウンドトラックの収録曲数は全42曲で、ボーナストラックとして“未帰還の記録”が用意されていた。未帰還の記録は、プレイヤーが特定の帰投失敗条件を満たすと再生される仕組みだったため、攻略の盛り上がりと同時に音源の解析競争が起きた[26]。
また、歌詞についてはほとんどが無意味な音節で構成されており、「意味は分岐ゲートの開閉を示す」とする説が有力になった。ただし公式声明では、無意味さは“発音の地域差”を吸収するためだったとしている[27]。
他機種版/移植版[編集]
移植版は段階的に行われ、最初に携帯端末の「海図ポケット」版が登場した。これにより出撃ボタンの押下感が変化し、同じ攻略でも“成功体験の体感”がズレることが問題視された[28]。
続いて据置端末向けの「鎮守府HDアーカイブ」版が発売され、グラフィックの精細化だけでなく、音響の立体処理に合わせて演習回廊の時間制御が調整されたとされる。結果として、指示スタンプの最適押下時間が平均で0.6秒ずれたという報告がコミュニティでまとめられた[29]。
また、バーチャルコンソール対応では“作戦ログの持ち出し”が可能になり、プレイヤーの過去記録が他人の演習に反映される仕組みが追加された。これにより、純粋な腕前以外の要素が影響する、と反発が出る一方で、追想演習の面白さが増したとも評価された[30]。
評価[編集]
発売後は、運用サイクルの中毒性と、数値の揺らぎに対する考察文化が結びついたことで高い評価を得た。販売面では全世界累計が2016年時点で1,430万本を突破し、国内だけでなく海外でも“艦隊学”と呼ばれる解析コミュニティが形成されたとされる[31]。
日本ゲーム大賞では、ユーザー生成に近い形で戦闘結果の検証が進む仕組みが評価され、「ゲームデザインの二次科学性」が表彰理由に含まれたとされる。なお、受賞の公式発表では“ゲームシステムの頑健性”という言い回しが使われたが、受賞者インタビューでは「むしろバグが可愛かった」と語られ、言葉のズレが当時の編集合戦の火種になった[32]。
一方で、レビューでは「乱数の説明が薄い」「海図の余白が実質的に課金誘導だ」という批判が一部で見られた。運用RPGとしての面白さが評価される反面、数式の不透明さが“運ゲー”と誤解される可能性があると指摘されている[33]。
関連作品[編集]
関連作品としては、TVアニメ化された『海図の分岐』や、演習回廊を踏襲したメディアミックスが挙げられる。アニメでは、指示スタンプを“合図”として描く演出が採用され、ゲーム特有のタイミング概念が物語上の友情へ置き換えられたと説明されている[34]。
また、冒険ゲームブック形式の『鎮守府夜話:逸れ現象の記録』が刊行された。これはゲームの海域章を章立てにし、プレイヤーの選択が“回想ログ”の順番に影響する仕組みで、紙の上でも追想演習に近い体験を再現するとされた[35]。
さらに、公式の外伝として「提督の机」シリーズがあり、作戦計画を疑似的に作るツールアプリの形で提供された。内容はゲームそのものではないが、検証コミュニティの土台として機能し、解析の文化を加速させたと評価されている[36]。
関連商品[編集]
関連商品には攻略本や書籍が多い。代表例として『艦隊運用完全航海術(上・下)』が発売され、戦闘回廊の分岐ゲートを“音のスペクトル”で判定する手順が掲載されたとされる[37]。
また、『海図の余白辞典』では、資源三位一体の概念を家計簿的に整理する解説が付いた。初版では“余白は燃料の3.1倍価値”といった断定が書かれていたが、後に配布された正誤表で「3.1倍は特定海域に限る」と修正されたとされ、編集方針の裏側が垣間見えると話題になった[38]。
その他には、サウンドトラック盤、限定海図パズル、そして「提督用・虚実セーブデータキット」が発売された。虚実セーブデータキットは、当時の流行である“疑似ランダム演出”を家庭用にも移植する目的で作られたとされるが、実際には解析勢が好むよう設計されたとも噂された[39]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
渡辺精一郎「艦隊運用の設計意図と分岐ゲート」『海軍娯楽レビュー』第12巻第3号, pp.11-28, 2013年。
梶原敦司「指示スタンプの体感補正に関する研究」『ゲーム時間論研究』Vol.4 No.1, pp.55-76, 2014年。
佐伯涼介「“海図の余白”というメタ資源モデル」『数理娯楽学会誌』第9巻第2号, pp.101-149, 2015年。
International Council of Game Systems「On the Narrative of Operational Drift」『Journal of Operational Play』Vol.18, No.2, pp.201-234, 2016年。
Sato, N.「Sound as UI: Phase Modulation in Turn-Based Automata」『Proceedings of Audio-Interaction Games』pp.3-19, 2016年。
劉晨「追想演習の社会的機能とログ共有」『メディア行動研究』第21巻第4号, pp.77-103, 2017年。
田中ミツオ「バーチャルコンソール移植に伴う時間制御の調整」『家庭用ゲーム工学会誌』Vol.7 No.6, pp.210-239, 2018年。
工廠交響音楽隊「回廊の位相:楽曲設計とプレイ体験の対応」『サウンドトラック研究』第2巻第1号, pp.1-24, 2019年。
※なお、ある回覧資料では『海軍娯楽レビュー』第12巻第3号が“第13巻第3号”と誤って引用されていたという指摘がある[40]。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『艦隊運用の設計意図と分岐ゲート』海軍娯楽レビュー 第12巻第3号, pp.11-28, 2013年。
- ^ 梶原敦司『指示スタンプの体感補正に関する研究』ゲーム時間論研究 Vol.4 No.1, pp.55-76, 2014年。
- ^ 佐伯涼介『“海図の余白”というメタ資源モデル』数理娯楽学会誌 第9巻第2号, pp.101-149, 2015年。
- ^ International Council of Game Systems『On the Narrative of Operational Drift』Journal of Operational Play Vol.18 No.2, pp.201-234, 2016年。
- ^ Sato, N.『Sound as UI: Phase Modulation in Turn-Based Automata』Proceedings of Audio-Interaction Games, pp.3-19, 2016年。
- ^ 劉晨『追想演習の社会的機能とログ共有』メディア行動研究 第21巻第4号, pp.77-103, 2017年。
- ^ 田中ミツオ『バーチャルコンソール移植に伴う時間制御の調整』家庭用ゲーム工学会誌 Vol.7 No.6, pp.210-239, 2018年。
- ^ 工廠交響音楽隊『回廊の位相:楽曲設計とプレイ体験の対応』サウンドトラック研究 第2巻第1号, pp.1-24, 2019年。
- ^ 瀬戸内機関拡張局『ハイブリッド海軍アーカイブ運用技術報告』合同海軍娯楽販売, 2013年。
- ^ Nakamura, H.『Log Nostalgia and Operational Drift』Fictitious Press, 2014年。
外部リンク
- 瀬戸内機関拡張局 公式海図倉庫
- 追想演習ログ解析アーカイブ
- 分岐ゲート研究会
- 海図の余白辞典 共同編集ポータル
- 工廠交響音楽隊 サウンド研究室