警察庁警備局警備企画課決闘捜査準備室
| 設置根拠 | 『即応型公共秩序維持要領』第7編(内規扱い) |
|---|---|
| 管轄 | 所掌のうち対テロ・対暴力事象の周辺 |
| 主な業務 | 決闘事象の「再現可能性」を含む捜査設計、現場用語の標準化 |
| 設置時期 | 19年(とされる) |
| 名称運用 | 対外公表は『決闘捜査準備室』、対内では『準備班』 |
| 所在地 | 霞が関一帯(複数フロア運用) |
| 外部連携 | の行動科学講座、の法科学系研究会 |
| 保有媒体 | 映像・音声のほか、決闘手順表(通称:デュエル台本) |
(けいさつちょうけいびきょくけいびきかくかけっとうそうさじゅんびしつ)は、内に置かれたとされる「決闘(duel)」を前提とする捜査準備の専門組織である。決闘はしばしばフィクションの語彙として扱われるが、本室では「デュエル」として記録・分析されてきたとされる[1]。
概要[編集]
は、決闘を「個人間の暴力」ではなく、予測可能な手順として扱うために設置されたとされる部署である。決闘はしばしば英語のduelを語源として参照されるが、本室の文書では「デュエル」を技術用語として定義し、記録様式・聴取項目・現場写真の撮影順まで細分化して運用されたと説明されている[2]。
本室の特徴は、捜査の開始前から「戦術の想定」を組み込む点にあるとされる。具体的には、現場到着時点での優先順位(退路確保→証拠保全→対話介入)を、決闘の段取りに見立てた順番で配列する「デュエル・プロトコル」が用意されていたとされる[3]。
一方で、組織上はの通常業務と同列に置かれつつも、語彙の選び方が独特であると批判もある。特に「容疑者の言動」を、決闘の進行役(レフェリー)や観客(場)の概念に分けて記述する文体は、通常の行政文書の流儀から逸脱していたと指摘されている[4]。
このため、同名の部署が実在するのか、あるいは決闘を題材とした内部研修の呼称が独り歩きしたのかについて、疑義が残る。とはいえ複数の関係者回顧が残っており、「決闘はデュエルと読む」という合言葉だけは、半ば伝説として伝わったとされる[5]。
設立の経緯[編集]
「デュエル台本」需要の発端[編集]
本室設置の発端として、15年前後に増加したとされる「場面演出型の暴力事案」が挙げられる。警察統計上は“混乱事案”として分類されたが、当時の分析班は、犯行の前後に観客が集まり、音声が拡散され、撮影が先行する共通パターンがあると報告したとされる[6]。
そこでの警備局内で、暴力の発生を“物語の流れ”として理解する試みが進められた。具体的には、現場で撮られる動画のフレーム数を基準に、犯人側の予告→立会い→合図→決着という5工程モデルが作られたとされる。ところが、モデル化には専門用語が必要であり、その便宜としてデュエル(duel)が採用されたという[7]。
なお、本室で用いられたデュエル台本は、紙の台本だけでなく、A4換算で全13,200枚分のチェックリストとして整備されたと伝えられる。さらに、最初期の版では合図音声の周波数帯が「2.4kHz〜3.1kHz」とされ、異なる機種のマイクでも同一カテゴリに分類できるよう調整されたとされる[8]。このあたりは資料上の整合性が薄いとして、後年「作り話では」と疑う声もある。
警備企画課との接続[編集]
設置の政治的・行政的な位置づけには、警備局警備企画課が関わったと説明されている。企画課は対テロや大規模警備の設計を担う部署であり、決闘のような“局所の暴力”でも、手順が確立していれば警備設計に転用できる、という発想が共有されたとされる[9]。
当時、やの繁華街で類似事象が相次いだ際、現場の指揮系統が複雑化したことが問題となった。そこで企画課側は「戦術行動を定型化しない限り、報告書が増殖する」として、決闘を“定型イベント”として扱う準備室構想を提案したとされる[10]。
ただし、実際の運用は現場の自由度を奪いかねなかった。そこで、本室は“準備”に徹することで線引きをしたとされる。すなわち、逮捕や捜索を直接行うのではなく、聴取の設計書と現場写真の撮り方を先に整えることで、行為の評価は他課に委ねる形式を取ったとされる[11]。この方式は、後に「準備が主役」という揶揄を生んだ。
組織と業務[編集]
本室は、警備企画課の内部に置かれる形で運用されたとされ、人数は固定でなく“デュエル訓練”の開催時期に応じて増減したと説明される。回顧録では、平時は8名、特別研修月は17名に膨らむと記されており、さらに夜間当番が週2回であったとされる[12]。
業務は大きく3系列に分かれたとされる。第一に「決闘用語の翻訳」である。たとえば日本語の“挑発”に対応する英語“provocation”が一意でないことから、文書では“挑発(挑発合図)”“挑発(観客誘導)”のように細分化されたとされる[13]。第二に「現場再現性評価」であり、凶器の有無よりも、合図のタイミングがどれだけ一致するかを重視したという。第三に「観客行動の分析」であり、観客が撮影を開始した時刻を起点に、立会いの密度を推定したとされる[14]。
この運用を支えたとされるのが、デュエル・プロトコルと呼ばれる現場用の工程表である。工程表には“到着から3分で優先退路を設定”“合図音の録音開始は到着後60秒以内”などの指示があったとされ、細かさが過剰だという反論も記録されている[15]。
また、本室では「決闘はデュエルと読む」という理解を、教育にも組み込んだとされる。研修では、架空のシナリオを読み上げ、参加者が聴取項目をどの工程に紐づけるかを競う形式が取られたという。ここで最優秀になった受講者が、後に警備企画課の資料編集を任されたと伝えられ、資料の統一に寄与したとされる[16]。
社会への影響[編集]
本室の成果は、暴力事案への対処そのものよりも、記録と対話の設計に現れたと評価されている。決闘を定型イベントとして扱うことで、報告書の表現が揃い、部内の引き継ぎが速くなったとされる[17]。
とくに影響が大きかったとされるのが、報道対応である。決闘という語が強い刺激性を持つ一方で、事件の説明をどのように行うかが現場判断に委ねられると混乱する。そこで本室は、「デュエル」という語をあえて内部用語として保持しつつ、外部向けには“関係者間の合意形成を伴わない危険事象”のような中立的な言い回しに置き換えるテンプレートを整備したとされる[18]。
結果として、の総合庁舎周辺で行われた訓練では、記者の質問が一定のパターンに収束したという。ある広報担当のメモによれば、質問の種類は「発生原因」「手段」「安全確保」に80%が集約し、残り20%が“なぜ決闘という言葉を使うのか”であったとされる[19]。
さらに、法科学・行動科学の研究者が“手順の一致”を測る指標に注目し、自治体の危機管理研修にも波及したとされる。指標の一つに「合図一致率(SRR)」があり、観客の撮影開始と合図の間隔の分散から算出するとされたが、計算方法が複雑で、現場で使われない期間もあったとされる[20]。このあたりが、評価と批判の両方を呼んだ。
批判と論争[編集]
批判の中心は、決闘という語と枠組みが、暴力を“ゲーム”のように見せる危険がある点にあったとされる。準備室が作る工程表はあくまで分析のためのものだとしても、現場での伝達が過剰に演出へ傾くのではないか、という指摘があった[21]。
また、内部文書では「レフェリー」という比喩が使われることがあり、第三者が介入した局面を“対戦の進行役”として扱う記述が見つかったとする報告もある。これについては、法令上の権限と比喩が混線しているとの意見が出たとされる[22]。
さらに、資料の一部に矛盾があるという指摘もある。たとえば、初期のSRRの算出表では合図音の目標周波数が2.4kHz〜3.1kHzとされながら、後期版では「2.2kHz〜2.7kHz」に修正されたとされる。差分の理由として“マイクの特性変更”が書かれているが、いつ・どの型番が変わったのかが欠落している点が問題視された[23]。
一部では、そもそも本室の実在が疑われ、「映画脚本の用語が行政文書の体裁で残っただけでは」という声もある。ただし、疑義が出ても資料の呼び名が内部で定着していたという証言が複数あり、論争は決着していないとされる[24]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山辺信一『警備企画と用語標準化:内部資料の編纂実務』内務資料研究会, 2008.
- ^ Margaret A. Thornton「Duel as an Operational Event: A Field-Ready Taxonomy」『Journal of Public Safety Engineering』Vol.12, No.3, pp.41-63, 2011.
- ^ 小野寺和樹『映像化する暴力事案の分析枠組み』法科学出版社, 2010.
- ^ Kenji Sato「Observer Behavior and Incident Cascades in Urban Micro-Events」『International Review of Security Studies』Vol.7, No.1, pp.9-28, 2013.
- ^ 田端昌樹『現場引継ぎの速度は“語”で決まる』日本行政文書学会, 2014.
- ^ 警察庁警備局『即応型公共秩序維持要領(第7編)』(編纂資料), 2007.
- ^ 佐藤悠介『SRR(合図一致率)の実装手順に関する覚書』危機管理研究叢書, 2012.
- ^ Evelyn R. Hart「Public Communications Templates in High-Noise Incident Reporting」『Media and Emergency Administration』第5巻第2号, pp.77-95, 2015.
- ^ 内田直樹『警備の比喩と制度のズレ:行政文体の検証』都市政策研究所, 2016.
- ^ (不整合が指摘される文献)警備データ班『デュエル台本の歴史:初期版(仮)』警備企画課資料, 2009.
外部リンク
- デュエル台本アーカイブ
- 行動科学×危機管理ポータル
- 霞が関訓練映像DB(閲覧制限)
- 用語標準化ワーキンググループ
- 法科学シナリオ検証会