魔女っ子ソラシ(アニメ)
| タイトル | 魔女っ子ソラシ |
|---|---|
| ジャンル | 魔法少女、学園、群像劇 |
| 作者 | 白石 玲央 |
| 出版社 | 北星書房 |
| 掲載誌 | 月刊ルナティカ |
| レーベル | ルナティカコミックス |
| 連載期間 | 1988年4月号 - 1994年11月号 |
| 巻数 | 全12巻 |
| 話数 | 全84話 |
『魔女っ子ソラシ』(まじょっこそらし)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『』は、末期から前半にかけて人気を博した漫画である。主人公のが、空の気圧差を魔力に変換する「気流式魔法」を用いて事件を解決していく構成で知られ、当初は低年齢層向けの読み切り企画として始まったが、次第にの私立中学校を舞台にした学園群像劇へ拡張された[2]。
作品は、可愛らしい変身演出と、やけに細密な航空力学の描写が同居している点で特異であり、連載後半では「魔法監修」と称する架空の気象顧問がクレジットされたことでも話題になった。累計発行部数はを突破したとされ、後年にはテレビアニメ化、ドラマCD化、舞台化まで行われ、いわゆるメディアミックスの成功例として語られている[3]。
制作背景[編集]
作者のは、元々は航空雑誌の挿絵と児童向け読み物を手がけていた人物であるとされる。彼女がの喫茶店で「魔法少女なのに、魔法の代わりに空気を読む少女を描きたい」と発言したことが、企画の出発点になったという逸話が残る[4]。
編集部は当初、変身ヒロインものとして売り出す方針であったが、白石が持ち込んだ設定資料には、、の詳細なメモが含まれており、これがそのまま作中の魔法体系へ転用された。なお、初期案では主人公名は「ソラシ」ではなく「ソラミ」であったが、音階の下りで覚えやすいとして編集者のが押し切ったとされる[5]。
連載開始直後は誌面アンケートで中位に沈んでいたものの、第7話「傘が三本しかない日の風」以降に支持が急増した。とくにの夏に掲載された「台風接近前夜編」は、空席の多い電車内で読んだ読者がなぜか泣いたという投稿が相次ぎ、雑誌編集部が珍しく増ページを決定したことで知られている。
あらすじ[編集]
序章・転入編[編集]
は、空を見上げる癖のある中学一年生である。ある夜、屋上で拾った銀色のコンパスにより、風向きの文字が読めるようになり、自身が「空の言葉」を継ぐ魔女候補であると告げられる。
この編では、内の私立へ転入したソラシが、初対面の友人と校舎の屋根裏で「風の試験」を受ける。もっとも、試験官が地元の気象予報士にそっくりであったため、読者の間では「半ば公認の協力キャラではないか」と疑われた。
気圧祭編[編集]
学園恒例の学園祭「気圧祭」が開催され、各クラスは風船、扇風機、紙飛行機を用いた模擬魔法展示を競うことになる。ソラシは失敗作の呪文で校舎の東棟だけを微妙に涼しくするが、この偶発事故が逆に来場者から「夏場に最適」と絶賛された[6]。
終盤では、祭りの屋台で売られていたの泡が魔力暴走の媒介となり、ソラシが校庭全体の気圧を1.7hPaだけ下げる騒ぎを起こす。数字が妙に細かいのは、作者が後年「実測値を見たほうが面白い」と語ったためである。
台風接近編[編集]
物語中盤の転換点であり、ソラシたちがの海沿いにある観測所へ赴き、巨大な台風「レイン・クロウ」の進路を修正しようとする。ここで初めて、魔法が単なる願望実現ではなく、地域全体の風の履歴に干渉する技術であることが明かされる。
この編の見どころは、ソラシが風を操る代償として「自分の寝癖が3週間ほど直らなくなる」点である。単なるギャグ設定と思われていたが、後にこの寝癖が封印の鍵になると判明し、ファンの間では「寝癖伏線」として語り継がれた。
星降る卒業編[編集]
終盤では、の卒業式と同日に、空の魔女たちを統べる上位存在「暁天評議会」が現れ、ソラシに継承か放棄かの選択を迫る。ソラシは友人たちとの記憶を消す代わりに空を守る案を拒み、全校生徒の前で「風は共有されるべきである」と宣言する。
最終話では、ソラシが校舎の時計塔に登り、から続いてきた古い天象儀を再起動させる。この場面は、連載中の漫画作品としては異例の12ページ連続無言演出で締めくくられ、のちのアニメ版でもほぼ同じ尺で再現された。
登場人物[編集]
は、本作の主人公である。明るい性格だが、風速計の数字に対してだけ異常に真剣であり、作中では「1m/sの違いで未来は変わる」と主張している。変身後は風車を模した意匠の衣装をまとうが、本人は毎回「恥ずかしい」と文句を言う。
は、ソラシの同級生で、気象図の作成が得意な少女である。無口な優等生として描かれる一方、実は全話中もっとも早くソラシの正体を見抜いていた人物であり、物語の進行役でもある。
は、生徒会所属の少年で、当初は敵対的に見えたが、のちに「風紀」を司る準魔導師だったことが判明する。やたらと丁寧な敬語を使うが、怒ると校旗を巻き上げるほどの強風を起こす。
は、最終章で登場する上位魔女であり、ソラシの遠縁を自称する謎の人物である。会話のたびに気象用語を俳句のように混ぜるため、読者からは「説明が長いのに妙に格好いい」と評された。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、魔法は「感情」ではなくとの差分から生じるとされる。これを作中では「」と呼び、呪文はすべて天気図の読み上げとして構成される。さらに、魔女の箒は単なる移動具ではなく、周囲の気流を整えるための「小型整流器」として設定されている。
主要な舞台であるは、海抜の高い丘陵地に建つ旧制学校を改装した施設で、屋上に観測ドームがある。校則第14条には「放課後の風速が秒速5mを超えた場合、屋外での告白を控えること」とあり、この条文が実際に読者投稿コーナーでネタ化した。
また、作中では「風の通貨」としてと呼ばれる半透明の板状アイテムが流通しており、1枚で1回だけ空の記憶を買えるとされる。もっとも、連載後半になると作者自身が使い道を把握しきれなくなったらしく、最終的には「気分で価値が変わる」としか説明されなかった。
書誌情報[編集]
単行本はのレーベルより刊行された。初版第1巻はに発売され、帯には「空を読める少女、現る」とだけ記されていたが、2刷以降は「読めるのは空だけではない」と文言が増補された[7]。
完全版は全12巻に加え、設定資料集『』が別巻として刊行され、これにより作中の呪文の7割が後付け設定であったことが半ば公式化した。なお、作者の手書きメモがそのまま複製されたため、余白に「この風、少し遅い」などの走り書きが残っている。
海外版はにから英訳出版され、タイトルは『Witch Girl Sorashi and the Air That Remembers』と改題された。英語圏の読者には「魔女」よりも「気象学者の青春譚」として受け取られたとされる。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化はに行われ、全48話構成で系にて放送された。主題歌は児童合唱団とシンセサイザーを組み合わせた異色の編成で、オープニングの最後に毎回わずか0.8秒だけ無音が入る演出が「空気を聴かせる」として高く評価された[8]。
また、には映画『魔女っ子ソラシ 星屑の午後』が公開され、興行収入はを記録したとされる。さらに、関東一円の書店では風向計付きの限定版が配布され、針が北北東を指した店舗では売上が23%増加したという報告もある。
その後も、ラジオドラマ、対戦型ボードゲーム、学習用天気図ソフトなどに展開したが、なかでもの観測塔とコラボした「ソラシ展」は、実際の空模様と展示の照明が連動する仕掛けで知られ、作品の社会現象化を決定づけた。
反響・評価[編集]
『魔女っ子ソラシ』は、少女向け漫画としては珍しく、気象予報士、教育関係者、鉄道ファンからも支持を集めた。特に「空を読む」という表現が比喩として浸透し、後半には、など架空の文学賞を総なめにしたとされる[9]。
一方で、作中に登場する空の専門用語が難解すぎるとして、読者アンケートに「わかるまでに2巻かかる」といった感想が多数寄せられた。編集部はこれを受け、各巻末に「今号の雲」と題した解説欄を追加したが、逆に解説が本編より長くなる号もあり、担当編集は毎号のように紙幅調整に追われたという。
批判としては、「魔法少女ものにしては湿度が高すぎる」「告白シーンの前に天気予報が始まる」といった声があった。ただし、そうした不均衡さこそが本作の魅力であるともされ、後年のにおける“情緒優先の気象演出”の先駆けと位置づける研究も見られる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 白峰薫『少女漫画における気象表現の系譜』北星出版, 2001.
- ^ 高瀬遼『空を読む少女たち――1980年代魔法少女漫画論』月虹社, 2004.
- ^ Martha L. Ives, "Pressure Systems and Sentimental Narratives in Japanese Comics", Journal of Popular Media Studies, Vol. 18, No. 2, 2008, pp. 44-67.
- ^ 三好一成『編集者が見た「魔女っ子ソラシ」』ルナティカ新書, 1996.
- ^ Atsuko Neri, "The Aerodynamics of Transformation Sequences", Kyoto Studies in Visual Culture, Vol. 7, No. 1, 2011, pp. 9-31.
- ^ 『魔女っ子ソラシ 空文法辞典』北星書房編集部, 1995.
- ^ 田代雲太『アニメーションと風速計――1990年代作品の温度管理』風響社, 2013.
- ^ Elizabeth Rowan, "Weather, Memory, and the Girl Hero", Trans-Pacific Comics Review, Vol. 12, No. 4, 2016, pp. 101-128.
- ^ 『月刊ルナティカ』1988年4月号-1994年11月号総目次 北星書房, 1995.
- ^ 森岡澄『深夜アニメ前史としての学園魔法少女』樹海書林, 2019.
外部リンク
- 北星書房作品案内
- ルナティカアーカイブ
- 東雲テレビ番組資料室
- ソラシ展公式記録館
- 空文法研究会