0月0日
0月0日(ぜろがつ ぜろにち)は、の都市伝説の一種[1]。暦の空白に関する怪談として言い伝えられ、全国に広まったブームの名でもある[2]。
概要[編集]
とは、暦が成立するはずの「月」と「日」の境界が崩れ、存在しないはずの1日が出没すると言われる都市伝説である[1]。噂では、カレンダーに書かれたその文字を見つめ続けると、画面の奥から「数え直せ」と囁かれるという話で知られている[2]。
この都市伝説は、スマートフォンの日時表示の不具合、行政のシステム更改、そして深夜のバス停の照明が同時期に“似た症状”を起こしたとされる出来事を起源として語られることが多い[3]。なお別称として、地方では、学校の現場ではとも呼ばれる[4]。
歴史[編集]
起源[編集]
噂によれば、起源はごろの「地方自治体の台帳統合」プロジェクトにあるとされる[5]。当時、(通称:計算係)が管理する住所台帳を、横断検索に対応させるためにソフトが更新されたという[6]。ところがテスト環境で、締め日の計算式だけが1行抜けており、あり得ない日付が生成される不具合が一度だけ検出されたと語られる[7]。
このとき生成された日付が「0月0日」であり、内部ログに「暦欠損」と記されていたことが、のちの怪談に直結したとされる[5]。さらに、開発担当の若手が「それ、事故じゃなくて“呼び水”だよ」と冗談めかして語ったとする目撃談まで存在する[8]。なおこの“呼び水”という表現は、後年の怪談配信で常套句として拡大したとされる[9]。
流布の経緯[編集]
「0月0日」が怪談として全国に広まったのは、からにかけて、匿名掲示板と携帯サイトが“日時の狂い”を投稿し始めた時期だとされる[10]。最初は「カレンダーが一瞬だけ空白になった」という軽い噂だったが、次第に「空白を指でなぞると、文字が“戻る”」という目撃談が増えたとされる[11]。
特に決定的だったのが、の深夜に放送された特集番組が「日時のズレ」を扱ったことである[12]。司会者が原稿読みで噛みかけた瞬間、テロップ側で「0月0日」と表示された、という話が切り抜き動画になり、そこから噂が噂を呼んだとされる[13]。このブームの間に、噂が過熱しすぎて行政の窓口に問い合わせが殺到したとも言われ、担当者が「それは日付ではなく“入力エラーの象徴”です」と説明したが、逆に煽り文句になったという[14]。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
「0月0日」の正体は、お化けのように形を持つというより、暦が生み出す“欠損そのもの”とされる[2]。言い伝えでは、出没者は無人の場所を好み、夜間の掲示板、終電後の待合室、そして停電から復帰した直後のデジタル時計に現れるとされる[15]。
伝承の核として語られるのは、「見つけた人が“数え直し”を要求される」という恐怖である[16]。具体的には、0月0日を見た者の家のカレンダーが、翌日になっても更新されず、代わりに別の紙が一枚増えるという目撃談がある[17]。その紙には、なぜか手書きで“0月0日”が太字になっており、「あなたのせいで暦が欠けた」と書かれているとされる[18]。
さらに、学生の間では「先生が出席簿を開くと、ページの端に0月0日が印字される」と言われている[4]。この現象は学校の怪談として扱われることが多く、保健室の記録が一冊だけ“別の曜日”で綴り直されていたという嘘のような話も伝承される[19]。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
派生バリエーションとしては、まず「0月0日が“二度出る”型」が挙げられる[20]。噂では、最初の出現からちょうど後に再表示が起き、画面の明度が一段階だけ下がるとされる[21]。また「0月0日が“消せない”型」では、紙のカレンダーであっても切り取った部分から文字が浮き上がると語られる[22]。
別地域の伝承では、は単独ではなく「0月0日→0月1日→1月0日」という順序で“崩れ”が伝播すると言われる[23]。この連鎖が起きるのは、時計の時刻ではなく、表示の“フォント”に呪いが結びついているからだとする説が広まったともされる[24]。
細部にこだわる派はさらに分岐し、「0月0日を見つける位置」が重要だと主張する[25]。たとえば、縦書きカレンダーの下端に出現した場合は家庭に影響が出るが、横書きの上端に出た場合は学校に影響が出る、といった言い伝えが学校の怪談として定着した[4]。なお、こうした派生の多くはマスメディアが“まとめ”として扱ったために、語りの整合性が調整されて広まったとされる[12](要出典の扱いをされることもある)。
噂にみる「対処法」[編集]
対処法として最も広く知られるのは、「0月0日を発見したら、声に出して“正しい数字”だけを読むな」というものである[16]。なぜなら声に出すと、欠損が“発話の形”で固定されると噂されるからだとされる[26]。また、見つけてしまった場合は「画面から目を離し、次に見る時計の秒針がを指すまで待て」と言われる[27]。この条件は、なぜか多数の体験談で一致しており、都市伝説にしては妙に細かいと評される[28]。
第二の対処法は、紙のカレンダーに限って「0月0日の周囲をの鉛筆で薄くなぞり、上書きしない」手順が推奨される点である[29]。つまり消すのではなく、“暦に戻す”ための摩擦を与えるという発想で語られる[30]。一方で、ネットでは「上書きで封じる」という正反対の指南も見られ、対処法が地域で分裂しているとされる[31]。
最後に、出没を避ける儀式として「深夜に日付を見ない」ことが挙げられる[2]。しかしブームの間、逆に“検証”として深夜投稿が増えたため、出没談が増えるという悪循環が起きたと指摘されている[14]。
社会的影響[編集]
社会的影響としては、まず「日時表記の品質管理」が強化されたという話がある[6]。実際のところ、自治体や企業のシステム更改で日付バリデーションが見直された時期と噂の流行が重なったとされ、結果として“0月0日”が啓発の口実になったと語られる[5]。
また、都市伝説としての広がりが、家計簿アプリや勤怠管理のログに対する不信感を生み、若年層の間では「数字の正しさ=安心」とみなす風潮が強まったとされる[32]。さらに学校現場では、「出席簿の印字不具合を“怪談扱い”しないための注意喚起」が行われたとも言われる[4]。ただし、注意喚起が逆に話題を増幅させ、「先生も嘘をついているのでは」という疑念が生まれたという[33]。
このように、恐怖は“デジタルの癖”として解釈され、次第に恐怖の対象が人から仕様へと移ったことで、都市伝説が理系的な味付けを持つようになったとされる[34]。一方で、噂の広まりが過度になると、実際のシステム障害まで「0月0日のせい」と結びつけられることがあり、検証より先に祭りが起きたと批判する声も出たとされる[35]。
文化・メディアでの扱い[編集]
文化・メディアでは、まずテレビのバラエティが「暦のバグを当てるゲーム」として取り上げたことが知られている[12]。そこでは、参加者が日時を選ぶたびにテロップが一瞬だけ「0月0日」へ変わり、動揺を測定する趣向だったとされる[36]。この演出が“目撃談の再現”として拡散され、視聴者が自宅でも試そうとしたため、ブームが加速したとも言われる[13]。
ネットでは、0月0日が“時刻狂いの妖怪”として描かれる二次創作が増えた[37]。作者たちは、0月0日を「数字のあいだにいる小さな影」として表現し、耳元で数を直させると描いたとされる[38]。ただし、ホラー系の読者からは「起源が技術系の話ではなく都市伝説の語りに回収されている」との指摘もあり、編集の恣意性が語られたという[39]。
また、地方紙の夕刊コラムでは「0月0日を見たら翌朝、窓の外の電柱番号を確認せよ」という珍説が掲載され、真に受けた読者がからの投書を多数送ったとされる[40]。その結果、地域によって“正しい対処”が違うという解釈が定着し、都市伝説がローカル化していったとまとめられている[41]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中倫志『空白日付の民俗学:0月0日と暦欠損』暦窓書房, 2013.
- ^ 松嶋真衣「行政システム更改における日付例外の記録」(第1号)地方計算研究会誌, Vol.12, 2009, pp.41-58.
- ^ K. Thornton『Anomalous Date Displays in Japanese Web Culture』Kyoto Academic Press, 2016, pp.113-129.
- ^ 佐々木圭一「深夜テロップ事故と都市伝説の伝播」(第3巻第2号)映像怪談学会紀要, 2011, pp.77-96.
- ^ 山岸涼介『学校の怪談大全:出席簿と印字の影』文教ミステリ文庫, 2018, pp.205-233.
- ^ 劉承浩「Temporal Drift and Folk Fear: A Case Study of “Zero Month Zero Day”」Journal of Digital Folklore, Vol.4 No.1, 2020, pp.1-22.
- ^ 高瀬一郎『カレンダーは嘘をつく:フォントと呪いの相関』数理怪談社, 2014, pp.59-83.
- ^ 中村さくら『自治体ログは語る:暦欠損の一次証跡』行政工学出版, 2008, pp.9-27.
- ^ E. Nakamura & T. Saito『Fictional Errors, Real Anxiety』Tokyo Systems Review, Vol.7, 2015, pp.250-268.
- ^ 『月日が消える報告書』通信政策技術資料, 第2集, 2007, pp.3-19.
外部リンク
- 暦欠損アーカイブ
- 学校の怪談データベース
- 深夜テロップ検証室
- デジタル民俗学ノート
- 出席簿異常報告掲示板