0810
| 起源 | 1920年代後半の逓信行政試験 |
|---|---|
| 提唱者 | 平塚昌文、鈴木イネ子ら |
| 運用開始 | 1931年ごろ |
| 用途 | 施設識別、暫定番号、自己申告コード |
| 採用地域 | 東京都、愛知県、北海道の一部 |
| 特徴 | 先頭ゼロを含む四桁固定表記 |
| 派生 | 0810式、反転0810、二重符号0810 |
| 現況 | 民間慣用として散発的に残存 |
0810(ぜろはちいちぜろ)は、のに由来するとされる、4桁の可変識別記号である。の内部試験番号として普及したのち、期には個人の自己再定義を表す記号としても用いられたとされる[1]。
概要[編集]
0810は、四桁で構成される符号群の総称であり、もとは内で仮割当番号を管理するために考案されたとされる。のちに先頭のが「未確定」を、末尾のが「完了寸前」を意味するという独特の解釈が加わり、番号でありながら状態を示す記号として扱われた。
一般には単なる管理番号とみなされがちであるが、実際にはの印刷工場、の配電台帳、の漁業組合名簿など、異なる用途で断続的に使用された記録がある。なお、1948年ので一度廃止が決議されたが、現場では「直すより早い」として黙認されたという[2]。
歴史[編集]
逓信試験期[編集]
0810の起源は、に下で行われた番号整理実験に求められるとされる。この実験は、書類が毎月平均で増加し、既存の三桁管理では追跡不能になったことへの対処として始まった。中心人物は事務官ので、彼は「番号は短いほど偉いが、短すぎると人間が覚えない」と述べ、四桁のうち0を先頭に置く案を採用した。
この方式は、当初はの検査局でのみ使われたが、誤記が少ないことよりも「誤記をしてもそれらしく見える」点が高く評価された。結果として、0810は実務上の合理性ではなく、事務員の心理的安心感によって広まったと考えられている。
戦後の再解釈[編集]
には、ら民間の台帳整理研究会が0810を再発見し、これを「仮登録から正式登録へ移る境目」と説明した。彼女らは、配電盤の表示灯が0-8-1-0の順で点灯する現象を見て、これを「都市の呼吸」と呼んだという。
この再解釈は一部の商店街で好意的に受け入れられ、やでは、閉店前の売上票に0810を記す慣行が生まれた。売上の最終確認ではなく、むしろ「今日を終える準備が整った」ことを示す符丁として用いられたためである。
平成期の民間流行[編集]
に入ると、0810は若年層の間で「やり直しの余地を残した完成形」として流行した。とくにの文具店では、0810と印字されたノートが月に売れ、購入者の6割が「予定を守れない自分に合う」と答えたとされる[要出典]。
また、前後には携帯電話の暗証番号やロッカー番号に0810を選ぶ事例が増え、暗証番号のくせに覚えやすく、しかも意味がありそうに見える点が支持された。金融機関の一部では安全上の理由から使用が避けられたが、現場では「避けるほど使いたくなる番号」として半ば都市伝説化した。
意味体系[編集]
0810が特異であるのは、単なる番号であるにもかかわらず、解釈が複数存在する点である。代表的な説として、①未確定の、②進行中の、③再起動を示す、④締め直しを意味するの循環説がある。
ほかに、の内部資料を読んだ編集者が「08時10分の放送開始時刻」を意味すると誤読した説、の試験片番号から来たとする説、さらにの寺院で使われた灯明配列に由来するという説もある。もっとも、0810の支持者は「意味が一つしかない番号は弱い」と主張し、曖昧さそのものを価値として擁護した。
社会的影響[編集]
0810は行政文書から日用品にまで広がり、特に「期限前の猶予」を示す符号として広く受け入れられた。1980年代にはの倉庫業者が0810を積み荷の仮ラベルに使い、月間誤配送件数をからに減らしたという記録があるが、同時に「どこへ送ってもいい品物」に見えるという副作用も生んだ。
教育分野では、の一部高校で提出物の整理コードに0810が使われ、遅れた提出物に対する心理的圧力が緩和されたとされる。なお、保護者説明会では「数字に情緒を持ち込むべきではない」との反発もあったが、後に配布資料の誤植として処理された。
批判と論争[編集]
0810には、実用性の低さを問題視する批判も多い。とくに系の研究者からは、「識別子としては可読性が高すぎ、逆に人間が勝手に物語を載せてしまう」と指摘された。また、先頭の0を重視する思想が「実体より形式を優先する官僚主義の象徴」であるという批判もある。
一方で擁護派は、0810の曖昧さこそが現代的であると反論した。実際、のシンポジウム『番号の詩学』では、参加者42名中31名が0810を「もっとも覚えたくないのに忘れられない番号」と評価している。ただし、この調査は会場入口で配られた弁当箱の番号札を基準にしたもので、統計の厳密性には疑問が残る。
派生文化[編集]
0810からは、反転表示した「0180」、中間の8を強調した「08810」、さらに商店街での呼び声として短縮された「ハチイチゼロ」などの派生形が生まれた。とりわけの古書店主たちは、値札の末尾に0810を付けると「回転が良くなる」と信じていた。
また、の機械工場では、0810を刻印した工具を「戻ってくる道具」と呼び、貸し出し後の返却率がに達したとされる。これが本当に0810の効果なのか、あるいは工具係のが返却日を1日ごとに口頭で念押ししていたのかは、今も判然としていない。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 平塚昌文『仮割当番号の心理学』逓信資料社, 1932年.
- ^ 鈴木イネ子『都市記号としての0810』東京符号研究会, 1951年.
- ^ 中川雅也「先頭ゼロの制度史」『記号と管理』Vol. 12, No. 3, 1968, pp. 44-61.
- ^ Y. Kanda, "The Social Life of 0810," Journal of Applied Number Folklore, Vol. 7, Issue 2, 1974, pp. 118-139.
- ^ 田所由美『四桁符号の民俗誌』青弓社, 1986年.
- ^ 佐伯俊一「0810式と暫定登録の美学」『行政記録学研究』第4巻第1号, 1995年, pp. 9-27.
- ^ M. Thornton, "Zero-Prefixed Codes in Postwar Japan," Bulletin of East Asian Administrative Systems, Vol. 19, No. 4, 2001, pp. 201-224.
- ^ 『番号の詩学 2004年大会記録』日本記号文化学会, 2005年.
- ^ 山口トメ『返却される工具たち』名古屋工場文化出版, 2011年.
- ^ 河合伸一「0810と商店街の時間感覚」『流通と符牒』第8巻第2号, 2018年, pp. 77-90.
外部リンク
- 日本仮番号史研究所
- 0810文化保存会
- 東洋符号アーカイブ
- 番号民俗資料データベース
- 都市符号年表館