10.45チャート
| 名称 | 10.45チャート |
|---|---|
| 別名 | 十時四十五分図、T-45表 |
| 分類 | 時間軸観測図、準定量可視化法 |
| 提唱者 | 佐伯 恒一郎 |
| 初出 | 1948年ごろ |
| 主な用途 | 気象補正、群集挙動の推定、金融市場の警戒指標 |
| 使用機関 | 東京帝国大学気象研究室、後に郵政省外郭研究班 |
| 特徴 | 10.45の基準時刻における偏差を多層線で表す |
| 現状 | 一部の自治体防災部局と民間コンサルで限定的に利用 |
(じゅうてんよんごちゃーと)は、午前10時45分ちょうどに観測される微細な気圧・音響・視線のずれを同一平面上に可視化するための分析図である。もともとは理学部の一部研究班で使われた暫定記法とされるが、後に災害予兆、株価変動、集団心理の判定にまで応用されたとされている[1]。
概要[編集]
10.45チャートは、前後に発生する環境変化を、温度・湿度・騒音・視線密度・歩行速度の五要素で重ね描きする解析手法である。特にのような昼前の業務集積地で精度が高いとされ、会議開始前の“空気の張り”を数値化できるとして注目された[2]。
この図式は、単なる時刻基準の折れ線グラフではなく、観測対象が11時に向かう直前に見せる「一度だけ大きく揺れる癖」を捉える点に特徴がある。また、観測値を10.40、10.45、10.50の三点で比較する慣行があり、現場では「45分だけ別の世界になる」と言い習わされてきた。もっとも、この由来にはが付くことが多く、実際にはある研究室の昼食事情が起源だったとの説もある。
歴史[編集]
成立の経緯[編集]
起源は、理学部旧本館の地下測定室にさかのぼるとされる。気圧計の点検担当であったが、毎日10時45分になると廊下のドラフトが必ず反転することに気づき、紙の方眼に記録したのが始まりである[3]。
当初は「45分線」と呼ばれていたが、佐伯がに提出した内部報告書『十時四十五分における微差圧の集中と人員配置の相関』で、図全体の名称として10.45チャートが採用された。報告書はの複写機で78部だけ配布されたが、うち11部が食堂の献立表に綴じ込まれたため、後年の検証を困難にしたとされる。
なお、初期のチャートは本来、午前10時45分に配膳車が曲がり角で止まる現象を説明するための補助図にすぎなかった。しかし、研究班がこの“停止”を群衆の緊張反応と誤認したことで、解析法として急速に肥大化した。
普及期[編集]
後半になると、10.45チャートはの一部観測官署やの駅務研究会に持ち込まれ、ホーム上の滞留密度を読む簡易ツールとして使われた。とりわけで実施された試験では、10時45分の構内放送のあとに人の向きが12度ずれる傾向が確認されたとされ、駅長会議で話題になった[4]。
さらにの東京五輪期間中、警備計画の裏資料として“10.45補正線”が用いられたという証言がある。ただし、この記述は後年の回想録にしか現れず、しかも回想録の著者は当時まだ高校生であったため、研究者のあいだでは半ば伝説扱いである。一方で、民間企業の会議室設計に応用した例は比較的多く、テーブル配置が45分ごとに変わる奇妙な実験も行われた。
制度化と拡張[編集]
には関係の委託研究で、地下街の換気設計に10.45チャートが導入された。これにより、午前中にだけ異様に“息苦しい角”が生じる空間を事前に補正できるとされ、やの一部施設で採用された[5]。
また、には民間の経済紙が株価予測に転用し、「10.45時点で出来高が3.7%跳ねた銘柄は午後1時までに失速しやすい」という独自指標を掲載した。記事は大きな反響を呼んだが、のちに編集部が使っていたのは実は株価ではなくコピー機の紙詰まり記録であったことが判明している。
このころから、10.45チャートは科学図表でありながら半ば都市伝説として流通しはじめた。理系の研究会では真顔で議論され、文系のゼミでは“空気を測る占い”として解釈されるなど、用途が分岐していった。
構造[編集]
10.45チャートの基本形は、横軸に10時30分から11時00分までの30分を取り、縦軸に観測項目ごとの偏差をとる多層線図である。標準版では、圧力線、音圧線、人流線、会話密度線、視線収束線の五本が重ねられ、各線が10.45で一度だけ“折れる”ことが重要視される。
また、古典的な手法では10.45の数値をそのまま読むのではなく、10.40との差分を2倍し、10.50との差分を0.5倍して平均する「左右非対称補間」が用いられる。これは佐伯が昼休み前に時計を見間違えたことから生まれたとされるが、後に数学的整合性があるかのように再解釈された。
図表にはしばしば赤鉛筆で引かれた“食堂線”が追加される。これは食堂の味噌汁が出る時刻により人の集中が変化するためであり、大学病院や官庁街の分析では特に有効とされる。
社会的影響[編集]
10.45チャートは、学術用途よりもむしろ組織運営の現場で影響を残した。たとえば内の中規模企業では、会議を11時開始から10時45分開始に変更しただけで、発言者の重複率が17%減少したという社内報告がある[6]。
また、地方自治体の防災訓練では、緊急放送の実施時刻を10時45分に固定することで、参加者の反応時間を比較しやすくした例がある。もっとも、この運用は「毎回10.45に合わせると、職員が無意識に深刻な顔を作る」という副作用も生み、広報担当者からは不評だった。
一部の心理学者は、10.45チャートが“時間を見ているつもりで、実は空気を見ている”日本的組織文化を可視化したものだと論じた。ただし、その論文の図3はすべて昼休みのうどん写真で埋められていたため、学会誌掲載時に一部修正されたという。
批判と論争[編集]
10.45チャートには、初期から再現性の低さが指摘されていた。特に同じ建物でも火曜日だけ線が滑らかになり、金曜日は観測値が全体に眠そうになるという問題があり、統計学者からは「曜日効果に甘い」と批判された[7]。
にはの研究者が、10.45チャートの有効性は観測対象ではなく観測者の腹時計に依存していると発表したが、発表時間が10時46分だったため説得力を失ったとされる。さらに、チャートの一部が実は当時の事務局員による定規の傾きで再現されていたことが明るみに出て、いわゆる“45度神話”は大きく揺らいだ。
それでも支持者は多く、彼らは「精密さではなく、組織が一瞬だけ真剣になる時刻を示すのが本質である」と主張した。この議論は現在でも、会議文化や都市計画の文脈で繰り返し参照されている。
派生形[編集]
夜間版[編集]
夜間版10.45チャートは、午後10時45分ではなく午前10時45分の逆位相として扱われる変種である。主にの編成部で使われ、深夜帯に向けた番組の気配を午前中に読むという、やや無茶な目的で運用された。
この版では視線密度の代わりに眠気指数が採用され、線が三重に重なると“番組会議が荒れる”と判定された。実際、ある局でこの判定が的中率81%を示したが、のちに単に参加者の昼食が同じだったためだと判明している。
金融版[編集]
金融版はのバブル崩壊後に現れた派生で、午前10時45分の板寄せに似た挙動を利用して短期の値動きを読むとされた。証券会社の一部では、役員室の窓際でチャートを回しながら判断する独特の儀式が生まれ、これを「45回し」と呼んだ。
ただし、この派生は過剰適用の典型でもあり、銘柄選定の根拠が「会議室の観葉植物が右に傾いていたから」とされた例まで残っている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯 恒一郎『十時四十五分における微差圧の集中と人員配置の相関』東京理工出版, 1952年.
- ^ 松田 恒一『10.45 Chart and the Anatomy of Office Atmosphere』Journal of Applied Temporal Graphs, Vol. 4, No. 2, pp. 11-39, 1968.
- ^ 小林 直人『昼前会議の密度変化と図式化の実践』官庁資料研究, 第12巻第3号, pp. 77-104, 1976年.
- ^ Margaret L. Huxley, 'A Note on the 10.45 Inflection in Crowd Pressure Readings', Proceedings of the East Asian Survey Methods Society, Vol. 9, pp. 201-218, 1981.
- ^ 『10.45チャート運用指針』内閣技術調整室刊, 1984年.
- ^ 青柳 透『地下街換気設計における45分補正線の有効性』建築環境学会誌, 第21巻第1号, pp. 3-25, 1989年.
- ^ Harold P. Niven, 'Temporal Bias in Mid-Morning Analytical Models', The Review of Synthetic Statistics, Vol. 16, No. 1, pp. 44-69, 1993.
- ^ 藤井 里香『株価板情報とコピー機紙詰まり記録の相関について』市場観測月報, 第7巻第8号, pp. 58-61, 1985年.
- ^ 渡辺 精一『会議室の観葉植物傾斜と意思決定速度』組織行動評論, 第5巻第4号, pp. 90-117, 1999年.
- ^ Eleanor K. Bramwell, 'Why 10:45 Feels More Accurate Than It Is', Urban Calibration Quarterly, Vol. 2, No. 4, pp. 7-22, 2007.
- ^ 『十時四十五分図譜 第3版』日本時間解析協会編, 2011年.
外部リンク
- 日本時間解析協会
- 都市観測図譜アーカイブ
- 10.45チャート研究会
- 中間時刻可視化センター
- 会議空気計測フォーラム