GEDROP
| タイトル | GEDROP |
|---|---|
| ジャンル | サイバースポーツ、群像劇、近未来バトル |
| 作者 | 桐生真司 |
| 出版社 | 東洋文芸社 |
| 掲載誌 | 月刊クロッシング・エッジ |
| レーベル | クロスブレイドコミックス |
| 連載期間 | 2006年4月号 - 2011年11月号 |
| 巻数 | 全14巻 |
| 話数 | 全87話 |
『GEDROP』(じーどろっぷ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『GEDROP』は、の新都心区に建設された実験型通信施設を舞台に、特殊な落下型競技「GEDROP」に挑む若者たちを描いた漫画である。競技、都市開発、企業スパイ、そして紙面上の演出が異様に凝ったことで知られ、連載当時は「読めば読むほどルールがわからなくなるのに熱い」と評された[2]。
作中のGEDROPは、垂直方向に配置された複数の区画へ選手を“投下”し、着地点の制圧時間と通信維持率を競う架空の都市競技である。作者の桐生真司は、元々の広告制作会社でモーションデザイナーをしていた人物とされ、1980年代の番組と2000年代初頭の黎明期を無理やり混ぜたような作風で独自の地位を築いた。
累計発行部数は2010年時点で540万部を突破したとされ、2012年には深夜帯でのテレビアニメ化、2015年には舞台版『GEDROP the FALL』の上演まで行われた。もっとも、アニメ化以降は原作の「落下の物理法則」を再現できなかったため、スタッフが毎話のたびに演出会議を3時間行っていたという逸話が残っている[要出典]。
制作背景[編集]
作者の桐生は、連載開始前にの若手編集者・早川圭介と、都内の高架下にある喫茶店「サンドリフト」で企画を練ったとされる。当初は単なる近未来のとして始まったが、桐生が「競技のルールを読者に説明するほど、読者は次のページで別のルールを覚えることになる」と主張したため、設定が段階的に増殖した。
特に有名なのは、第3話のネーム提出時に、原稿用紙の余白へ桐生が「落下とは情報の伝達である」と走り書きしていたことである。この一文が編集部内で妙に受け、以後の作品全体にとを合わせたような方向性が定着した。なお、初期案では主人公は少年ではなく、の配送会社に勤める41歳の契約社員だったが、掲載誌の読者層を考慮して18歳の高校生・御影ハルへ変更された。
背景画の作り込みも異常で、作中の巨大施設は毎回少しずつ構造が変わる。背景担当のアシスタントが「この建物は毎回少しだけ逃げる」と証言しており、連載末期には背景資料のファイル名が「gedrop_08rev_final_FINAL2.psd」のような末期的様相を呈していたという。
あらすじ[編集]
導入編[編集]
御影ハルは、沿岸で発生した謎の停電事故の夜、落下事故現場から一人だけ無傷で発見される。彼の右手首には、GEDROP競技者にのみ支給されるはずの認証端末が埋め込まれており、これが物語の発端となる。ハルは自分がなぜ回廊の最深部から見つかったのかを知らないまま、の訓練区画へ半ば強制的に送られる。
そこで彼は、冷徹な運営責任者・霧島ユウゲンと、旧世代選手の残骸を回収している謎の整備士・黒瀬ミナに出会う。第一部では、ハルが落下中に「空中で指示を受信できる」という極めて不自然な才能を見せ、読者に世界観の異常さを植え付ける構成となっている。
初級区画編[編集]
初級区画では、選手がまでの短距離投下を繰り返し、着地後30秒以内に制圧ビーコンを起動しなければならない。ハルはここで、回廊内に残された古いマニュアル『GEDROP規定 第2改訂版』を拾い、その記述と現行ルールが37箇所も食い違っていることを知る。
この編で人気を博したのが、対戦相手の一人・千堂レイが着地失敗のたびに必ず「今のは床の方が悪い」と言い張る場面である。結果として彼女は作中で「床責任主義者」と呼ばれるようになり、以後の作品文化に妙な影響を与えた。
企業介入編[編集]
物語中盤では、大手通信企業がGEDROPを都市治安維持システムへ転用しようと画策していることが判明する。選手たちは競技者であると同時に、通信網の負荷試験に使われる“可動端末”であったことが示され、以降の展開は競技漫画から陰謀劇へ急旋回する。
ハルは、回廊の最上部に存在するとされる「ゼロ区画」が、実は都市全体の非常電源と直結していることを知る。そこへ向かう途中、各区画が微妙に高度を変え続けるため、作中では同じ階段を三度上ったのに別の都市へ出たように見える構図が多用された。
最終投下編[編集]
最終章では、回廊そのものが“落下を観測するための巨大な装置”であり、都市全体が一つの通信実験場だったことが明かされる。ハルは自身の認証端末が、かつて失踪した初代チャンピオン・御影ソウタの記録媒体を兼ねていると知り、ついにゼロ区画へ到達する。
最終話は、ハルが「落ちるのではない。届くのだ」と宣言しながら中央軸を逆走する場面で幕を閉じる。この決着は賛否を呼んだが、単行本14巻の帯には「理解できないのに泣ける最終回」として大きく宣伝された。
登場人物[編集]
御影ハルは本作の主人公で、感情の起伏が乏しい一方、落下中だけ異様に饒舌になる少年である。幼少期の記憶が断片化しており、作中では「地面を見ると過去を思い出す」という奇妙な体質を持つ。
霧島ユウゲンはの運営責任者で、スーツの内側に常に温度計を4本差している。競技の公平性を説きつつ、誰よりもルールを破る人物として描かれ、読者人気投票では3回連続で1位になった。
黒瀬ミナは整備士であり、選手の落下装置を修理する傍ら、失われた旧式区画の鍵を集めている。彼女が工具箱から毎回取り出す「黒い六角レンチ」は、後年のファンの間で準主役級の存在感を持った。
このほか、ライアット・コア社の監査官・白峰アスカ、初代王者の幽霊と噂される御影ソウタ、そして「床責任主義者」の千堂レイが物語を支える。とりわけ千堂は、作中で6回も同じ区画から落ちているのに“強い”扱いを受けるため、シリーズ随一の矛盾した人気を持つ。
用語・世界観[編集]
GEDROPとは、垂直回廊内で行われる落下競技の総称である。選手は上層区画から下層区画へ投下され、途中で電磁床、通信干渉壁、逆風シャフトを突破しながら得点を稼ぐ。公式規定では「落下速度の過剰抑制は禁止」とされているが、実際には速度を上げすぎると演出が派手になるため、視聴率が上がるという理由で黙認されていた。
は全長1.8キロメートル、最大高低差412メートルとされる人工施設で、との境界付近にまたがって建設されている設定である。もっとも、作中では天候や行政区分が区画ごとに変化するため、地図帳での特定は不可能に近い。
また、作中で頻出する「通信維持率」は、選手の端末が落下中にどれだけ長くネットワークへ接続できたかを示す独自指標である。作者はこの概念について「走るより落ちる方が、現代人の情報接続に近い」とコメントしたとされるが、真偽は定かではない。
書誌情報[編集]
単行本はより全14巻が刊行された。第1巻は2006年9月15日発売、第14巻は2012年2月20日発売とされ、巻ごとにカバーの色が都市の警報レベルに対応していたのが特徴である。
初版帯には「落下するたび、世界は更新される。」というコピーが採用され、3巻以降は各巻の末尾に作者による架空の技術メモ「GEDROP運用覚書」が1ページだけ収録された。このメモ欄があまりに本格的だったため、一部書店では参考資料として棚差しされていたという。
完全版として2018年にから愛蔵版全7冊も刊行されたが、こちらは区画図が描き直され、なぜか第5巻だけやけに厚い。編集部は「紙質の違いによる」と説明しているが、ファンの間では“第5巻の中に別の回廊がある”という都市伝説が生まれた。
メディア展開[編集]
2012年には制作でテレビアニメ化され、全24話が放送された。アニメ版では落下シーンのCGが異常に滑らかで、毎回キャラクターの髪型だけが1フレーム遅れて付いてくる演出が話題になった。
2015年には舞台化が行われ、回転する足場を使った“実演落下”が導入されたが、客席から見ると俳優が水平移動しているだけに見えるため、初演後に「舞台装置の方が主人公」と評された。さらに2019年にはソーシャルゲーム『GEDROP-RISE』が配信され、リリース初日にサーバーが3回落ちたことから、原作再現度の高さで知られた。
また、地方自治体とのタイアップとしての商業施設で期間限定イベント「GEDROP区画体験会」が開催され、来場者が低い台から安全に“落ちる”だけのアトラクションに2時間待ちの列ができた。これにより作品は一部の若年層だけでなく、休日の家族連れにも浸透したとされる。
反響・評価[編集]
連載当初は設定過多を批判する声もあったが、やがて「説明不能なものをルールで押し切る」作劇が支持を集め、頃には読者アンケート上位の常連となった。特に第42話「第7層、反転」は、見開き1ページに床と天井しか描かれていないにもかかわらず、シリーズ屈指の名勝負として語り継がれている。
批評家の中には、本作を「末期の都市不安と接続欲求を、落下という比喩で徹底的に可視化した作品」と評価する者もいた。一方で、競技ルールの説明が巻を追うごとに増殖し、後半では解説役のキャラクターが自分で黒板に書いて自分で消すようになったため、理解の難度は実質的に上昇したとされる。
また、作中の台詞「落ちるのではない。届くのだ」は、SNS上で自己啓発文句として流行したが、意味がよくわからないまま社内掲示板に貼られる事例が相次いだ。こうした現象から、『GEDROP』は単なる漫画ではなく、半ば儀式化したメディアミックス作品として扱われた。
脚注[編集]
[1] 作品基本情報は単行本第1巻折り返しおよび連載時の告知記事による。 [2] 初期の読者アンケート集計では、ルール説明の難解さがむしろ人気要素として認識されていたとされる。 [3] アニメ化発表時の制作会見では、監督が「毎話、重力を説得している」と発言したと伝えられる。 [4] 累計発行部数の数値は各種販促資料で微妙に差があり、540万部とするものと560万部とするものが混在する。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 桐生真司『GEDROP 1』東洋文芸社, 2006年.
- ^ 早川圭介「落下と接続のあいだ」『月刊クロッシング・エッジ』Vol.12, 第4号, pp. 34-41, 2006.
- ^ 白石悠一『都市回廊設計論と娯楽装置』黎明書房, 2009年.
- ^ M. Thornton, “Vertical Sports and the New Urban Spectacle,” Journal of Fictional Media Studies, Vol. 18, No. 2, pp. 88-103, 2011.
- ^ 桐生真司・監修『GEDROP運用覚書 完全版』クロスブレイド出版, 2012年.
- ^ 中野玲子「アニメ版GEDROPにおける重力表現」『映像文化研究』第27巻第1号, pp. 11-29, 2013年.
- ^ H. Caldwell, “Drop Mechanics in Serialized Manga Narratives,” The East Asian Imagination Review, Vol. 9, pp. 201-219, 2014.
- ^ 藤堂一馬『企業介入型バトル漫画の倫理』新都社, 2015年.
- ^ 桐生真司『GEDROP 14』東洋文芸社, 2012年.
- ^ 山岸望「落下競技の大衆化と観光イベント化」『都市娯楽年報』第8号, pp. 55-73, 2018年.
外部リンク
- GEDROP公式アーカイブ
- 東洋文芸社 作品紹介
- 月刊クロッシング・エッジ デジタル倉庫
- アニメーション・ファクトリー 制作記録
- GEDROPファン年表保存会