LOLわ何?
| 分類 | ネット言語学的疑問フレーズ |
|---|---|
| 主な使用場面 | 掲示板・チャット・配信コメント |
| 成立時期(推定) | 1990年代後半〜2000年代初頭 |
| 語形 | 「LOL」+「わ」+疑問疑拠 |
| 関連概念 | 緊急冗長ログ、軽量嘲笑プロトコル |
| 社会的反応 | 一部コミュニティの儀礼化と拡散 |
| 論争点 | 意味解釈の多様性と“後付け”批判 |
(えるおえるわなに)は、ネット掲示板や短文チャットで用いられるとされる疑問形の合言葉である。語源については諸説があるが、通信規格の“緊急冗長ログ”を起点とする説が一部で支持されている[1]。
概要[編集]
は、通常の「LOL(声に出す笑い)」という解釈とは別に、“LOLとは何か”をわざわざ問い返す形で用いられるとされる。単語としては短いが、会話の中では「確かめ」「手続き化」「儀礼」などの機能を持つことがあるとされる。
同フレーズは、理解している者が理解していない者を探すのではなく、理解の“手順”を揃えるために出される点で特徴的である。たとえば配信者が笑いを要求されたとき、視聴者が「LOLわ何?」と返すことで、文脈に応じた定義(軽い嘲笑なのか、単なる相づちなのか)をその場で確定させる慣行が生まれたと説明されることがある。
なお、語源には複数の系統があるとされる。前提として「LOL」が略語であることは共通するが、後続する「わ」は助詞ではなく、伝送モジュールの呼称が転訛したものだとする説も存在する。
概要[編集]
選定基準と掲載範囲[編集]
本項目では、単独の略語「LOL」ではなく、必ず「わ何?」の形で問いを含む用例を中心に扱う。掲示板の用語収集サイトでは、疑問形が付くことで“定義の合意形成”が起きやすいとされ、これが分類上の境界とされる場合がある。
また「LOLの意味」を検索する文脈だけでなく、会話上の軽い突っ込み、あるいは検問のような役割を果たす場合も含めて言及されることが多い。たとえば、荒らし対策のために“正しい略語の返答”を求める運用に組み込まれた例が報告されている[2]。
想定される機能(実装として)[編集]
は、抽象的なノリに留まらず、チャットの“応答規約”として実装されたとも説明される。具体的には、一定時間内(例:3分)に返答がない場合、を送った側が「定義未合意」とみなし、文脈説明テンプレートを自動で投げる運用があったとされる。
このとき、返答側は「LOL=(A)」のように“括弧付きで確定”させる必要があったとされ、結果としてネット方言のような定義文化が育ったと考えられている[3]。ただし、後付けの規約である可能性も指摘されている。
歴史[編集]
誕生:緊急冗長ログ(ERL)とその周辺[編集]
が誕生した背景として、通信用語“緊急冗長ログ(Emergency Redundant Log)”が関係したという説がある。この説では、1997年頃に傘下のテストセンターが、回線断の際にログを重複送信して復旧率を上げる仕組みを試作したことが出発点とされる[4]。
同仕組みは、冗長化のために短いコードを一定形式で投げる必要があった。そこで「LOL」なる4文字コードが、ログの種別と待機状態を示すラベルとして採用され、現場では「LOLログが何か」を確認する合言葉として『LOLわ何?』が用いられたとされる。なお、語尾の「わ」は、当時の端末表示で「W-A(待機区画)」が略記されたことに由来すると説明される。
もっとも、これは“当時の端末仕様が後世の創作に寄って解釈された”可能性もあり、研究者の間では慎重に扱われている。ただし、当時の技術メモに“LOLわ何?”という書き込みがあったと主張する資料も存在し、一次資料の所在は争点となっている[5]。
普及:掲示板儀礼化と地名コネクション[編集]
1999年、の小規模回線オペレータが運営していた投稿サイトで、障害対応のために“同一略語を同一の定義で返す”ことが推奨されたとされる。このとき投稿管理者の一人である(仮名とされる)が、返信テンプレの先頭にを置いたところ、ユーザーが自己紹介のように定義を語り始めたという逸話が語られている[6]。
さらに、2001年頃になると、北海道ので行われた“軽量プロトコル勉強会”が、通称として(Lightweight Laughter Protocol, 略称LLP)を掲げた。ここで「LOLは笑いではなく、軽い相槌検証である」と講師が説明し、参加者はその場の確認として『LOLわ何?』を連打したとされる。
一方で、2003年には中心のチャット文化で「定義のズレ」が問題化したと報告されている。特定のスレッドでは、同じでも「侮辱」側の定義が紛れ、議論が数百レス(例:312レス)に膨らんだため、管理人が一時的にを設置したとされる[7]。
転換:笑いから“手続き”へ[編集]
2006年以降、は単なる語源疑問ではなく、会話を進めるための“確認手続き”へと変化したとされる。たとえば配信者が冗談を言ったとき、視聴者がいきなり反応せず、まず『LOLわ何?』を投げることで、配信内の笑いの温度(軽い・中位・攻撃的)を合意させる運用が現れたと説明される。
この運用には、を3種類に分けるという乱暴なルールも付与されたとされる。すなわち「定義付与者」「保留者」「検問者」である。とくに“検問者”は平均で1スレッドあたり2.4回(四捨五入で2〜3回)ほど登場し、合意が揃うと急に静かになる、といった統計が引用されることがある[8]。
ただし、こうした数値は実在の集計ではなく、後に作られた“統計っぽい語り”であるとの指摘もある。にもかかわらず、データ風の語りは拡散を助け、結果としては“笑いを語るより、定義を語らせる言葉”として定着したとされる。
批判と論争[編集]
の最大の論点は、定義が場所によって変わる点にある。定義文化を好む利用者は、を“会話の透明化”だとみなすが、一方で、疑問が先行することでテンポが崩れるという不満も根強い。
また語源をめぐっては、やERLに結びつける説明が“都合のよい歴史物語”として批判されることがある。さらに、語尾の「わ」が端末表示の転訛であるという主張については、音韻的に不自然だとして「後から作られたロジック」とする論者もいる[9]。
加えて、定義の検問が過剰になった結果、が“定義を装う”という新しい戦術を採用したという報告もある。つまり本来は合意形成のための問いが、攻撃側のレトリックにも転用されうるという指摘である。このため、2008年頃からは『LOLわ何?』を“礼儀として1回だけ”に制限するコミュニティ運用が広まったとされるが、その効果は限定的だったとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中静香「Emergency Redundant Logと略号文化の関係(試論)」『通信史研究』第18巻第2号, pp. 41-63, 2004年.
- ^ 【渡辺精一郎】「掲示板における疑問形テンプレの伝播」『メディア言語学年報』Vol. 9 No. 1, pp. 12-29, 2007年.
- ^ Margaret A. Thornton「Procedure Talk in Informal Networks」『Journal of Digital Pragmatics』Vol. 3, No. 4, pp. 201-219, 2010.
- ^ 小笠原健一「軽量嘲笑プロトコル(LLP)の現場記録」『北海道通信技術誌』第5巻第3号, pp. 77-95, 2002年.
- ^ 佐藤礼子「正規化された笑い:『LOL』周辺語の変容」『社会情報学論集』第22巻第1号, pp. 88-110, 2012年.
- ^ 内山真琴「“LOLわ何?”の儀礼機能とテンポへの影響」『ネットワーク文化研究』第11巻第2号, pp. 33-58, 2009年.
- ^ Ryo Nakamura「Definitional Questioning and Moderation Policies」『Proceedings of the Workshop on Online Norms』pp. 1-8, 2011.
- ^ 村上理紗「ログ正規化委員会と荒らしの戦術転用」『インタラクション監視学通信』第1巻第1号, pp. 5-24, 2013年.
- ^ Evelyn Brooks「On the Phonetic Drift of Forum Codes(要出典が疑われる版)」『Language Myths Quarterly』Vol. 7, No. 2, pp. 9-20, 2014.
- ^ 鈴木晃「通信局資料の再解釈と物語化の危険」『メディア考古学』第30巻第4号, pp. 141-160, 2016年.
外部リンク
- 嘘ペディア・ネット言語学アーカイブ
- 掲示板定義辞典(非公式)
- ERL資料閲覧ポータル
- 軽量嘲笑プロトコル議事録
- ログ正規化委員会の記録(抜粋)