LoLまじ許せない
| 分野 | インターネット・ミーム/オンラインゲーム文化 |
|---|---|
| 主な媒体 | X(旧Twitter)、掲示板、ゲーム内チャンネル |
| 用途 | 試合への抗議、過去ログの追撃、炎上の宣言 |
| 成立時期(推定) | 2016年後半〜2017年初頭 |
| 語形の派生 | 「LoLまじ無理」「LoL許せん案件」など |
| 典型表現 | “まじ”“許せない”を連結し、非難の確定感を出す |
| 関連領域 | 対戦マナー、通報文化、ゲーム内倫理 |
(ろるまじゆるせない)は、主にオンライン対戦ゲームに関する、怒りや呆れを“道徳的に確定”させる即席の抗議文句として流行したとされる用語である。SNS上では皮肉として用いられる一方、地域コミュニティの規約改定を誘発した事例も報告されている[1]。
概要[編集]
は、の特定の試合展開(回線落ち、誤爆ピン、露骨な介入、意図的な妨害など)に対し、当事者の感情を“裁判の判決”のように確定させるための言い回しとして知られている。一般に短文でありながら、話し手の怒りが「単なる愚痴ではなく、社会的に取り扱うべき問題である」と主張する含意を持つとされる。
この語は、当初は雑談板の一投稿として扱われていたが、後に「その一言で、通報の正当性が底上げされる」との解釈が広まった。結果として、ゲーム内の通報フォームや、地域のeスポーツ観戦サロンの掲示ルールに影響したとも言われており、単なるミームに留まらない“規約化”が進んだ点が特徴である[2]。
語源と成立経緯[編集]
“LoL”が倫理の記号になった瞬間[編集]
2016年の秋、の小規模大会で、試合後のマナー講習が過剰に形式化されたとする報告が残っている。主催の(当時は任意団体として登録)が配布した「観戦者倫理カード」に、異議申し立て用の定型句として“LoL系怒り文”が採用されたのがきっかけだと、後年の編集履歴(とされるログ)が引用されている[3]。
同カードには「理不尽な負けを“感情”ではなく“事実”として再現すること」と書かれており、そのための呪文が短く強いほど良いとされた。そこで「League of Legends」を略したが“事案の対象”を示す記号となり、その後ろに「まじ」と「許せない」を置くことで、感情の曖昧さが消えると説明されたのである。なお、この説明は“心理学的に正しい”と主張されたが、当時の資料には出典が明記されていなかったとされる。
“許せない”の法廷化(裁定係の誕生)[編集]
成立の次の段階として、2017年の春ごろ、ゲーム実況コミュニティに「裁定係」と呼ばれる役が生まれたとされる。裁定係は、荒れた試合のログを読み上げ、「どこからが“許せない”に該当するか」を秒単位で区切って説明する役であった。
当時の議事録風テンプレ(とされるもの)では、怒り文句の発動条件が細かく規定されている。「第1ウェーブ到達から30秒以内にスキル誤入力が2回以上」「撤退ピンが誤送信された後に相手が“援護”と誤認する状況が10秒継続」など、合計で“許せない判定スコア”が70点を超えたときにを投下するとされた[4]。このスコアリングは、後に「細かすぎて逆に真面目」と受け止められ、ミームとして拡散した。
歴史的な拡散と社会的影響[編集]
“炎上の温度計”としての運用[編集]
用語が広まるにつれ、投稿者は試合の内容を要約する代わりにを置き、周囲が“理由の再構成”を始める仕組みが形成されたとされる。ここで重要なのは、言葉自体が短く、具体的な加害性の断定に向いていた点である。そのため、読者はコメント欄で状況の空白を埋めていき、結果として“物語”が共同生成されるようになった。
また、発言のタイミングも作法として語られた。「試合終了から4分12秒で投下」「負け確定の表示が出てから、リザルト画面が90%ロードされた瞬間」など、やけに精密な目安が共有されたとする証言がある。これは実際の技術仕様に基づくのではなく、コミュニティが楽しむための“儀式”として機能したと推定されている[5]。
規約改定への波及(通報は“道徳”で強化される)[編集]
用語が広まった後、特定のコミュニティでは通報の文言テンプレにが半ば必須のように組み込まれた。たとえばの観戦サロン「Shibuya Draft Hall」では、2020年の運営会議で「感情表明は必ず“判決文”に変換してから送る」と決められたとされる[6]。
同会議の議事録(とされる資料)には、通報時の文章が平均で“平叙文”から“断定文”に置換され、結果として対応率が上がった(と運営が主張した)とある。ここでの主張は、実測が不十分であるとして後に異論も出たが、少なくとも“ルールの言い方”が人の行動を変えたのは確かだと述べられている。
代表的なエピソード(“許せない”の具体例)[編集]
最も有名な事例の一つとして、2018年秋のオンライン予選で、審判役が配信画面を見ながら「この行為は“許せない案件”」と叫んだ後にが一斉投下された事件が挙げられている[7]。当該試合では回線状況が原因とされ、当事者は「lagではなくスキル入力の乱れだ」と主張したが、観客側は“結果の不公平さ”を優先して解釈したという。
また、のコミュニティでは、初心者講習の終わりに“怒り文句の作り方”を教える回があり、受講者が「LoLまじ許せない」を作る練習をしたと伝えられる。講師は「感情の形を学ぶのは悪ではない。むしろ言葉で暴走を防ぐ」と語ったとされる。ただし、参加者の一部はその直後の雑談で言葉を乱用し、逆に空気が悪くなったとも記録されている。
さらに、地方イベントの運営が“怒り文句”を入場規約に採用しようとして失敗した例もある。入場規約案では「会場内でを宣言した者は、退場ではなく“裁定係の仕事に就く”」とされていたが、裁定係に応募する人がゼロで計画が崩れたとされる。皮肉にも、その提案は“嘘のように真剣な社会実験”としてネットに再掲載され、語の知名度を押し上げた[8]。
批判と論争[編集]
には、言葉が短いがゆえに「文句だけが先走り、当事者の状況が置き去りになる」という批判があるとされる。特に、試合内容の検証が必要な場面でも、投稿者が詳細を書かないために“推定の誤り”が増えるという指摘が出た。
一方で、擁護側は「怒りが言語化されることで、曖昧なマナー違反が可視化される」と主張した。実際に、誤解を減らすための“追記テンプレ”が作られ、「許せない」を置く場合は、(1)時刻、(2)発生地点(レーン)、(3)被害の種類(視界妨害/誤爆/放置)を必ず併記することが推奨されたという[9]。
ただし、そのルールが“義務”として強化されると、今度はテンプレ埋めが目的化し、言葉が儀式化して本来の対話が失われる懸念が表明された。結果として語は、正義のつもりで投じるほど摩擦を増やす、という逆説を抱えたまま定着したのである。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐倉ユウト『オンライン対戦における感情の言語化:ミームから規約へ』東雲書房, 2019.
- ^ M. A. Thornton「Moral Certainty in Microblogging: The Case of “Unforgivable” Phrases」『Journal of Digital Commons』Vol.12 No.3, 2021, pp. 41-58.
- ^ 北大阪ゲーミング協会編『観戦者倫理カード(第2版)』北大阪ゲーミング協会, 2017.
- ^ 田中和馬『eスポーツ・ローカルルールの生成過程』東京教育出版, 2020.
- ^ S. Rahman「Ritual Precision and Timing in Online Protest Utterances」『Computational Social Rituals』第4巻第1号, 2022, pp. 77-92.
- ^ 【日本ネットワーク運営研究会】『コミュニティ通報の文言設計ガイド』ネットワーク出版, 2021.
- ^ 張琳「短文断定が生む“共同推理”と沈黙のコスト」『言語行動研究』Vol.28 No.2, 2023, pp. 115-134.
- ^ LoL言語史編集委員会『ミーム年表:2016〜2022』ミーム年表社, 2022.
- ^ Keiichi N. Suzuki『The Temper of Justice: Gaming Memes and Policy』Blue River Academic Press, 2020, pp. 201-219.
- ^ 藤堂まどか『炎上を設計する人々(第◯巻)』嘘研出版社, 2018.
外部リンク
- LoL言語研究所
- 裁定係まとめWiki
- 通報テンプレ工房
- 観戦者倫理カードアーカイブ
- ミーム年表(非公式)