SS
| 別名 | スワローズ讃歌記号、優越宣言SS |
|---|---|
| 分類 | 記号・スラング(擬似規格) |
| 主な用法 | 称賛、評価、賭けの合図 |
| 起源とされる時期 | 1970年代末(とされる) |
| 伝播経路 | 地域放送・球場アナウンス・手書き応援札 |
| 表記の揺れ | SS/S.S./えすえす |
| 関連語彙 | スゴい、優、優秀、スワローズ、すごい |
(えすえす、英: SS)は、主に「スゴク・優れている」を合図する記号的な略称として語られることがある。特にの文脈では、勝利の余韻や称賛の温度感を一言で固定する合図として流通したとされる[1]。
概要[編集]
は、単純な二文字略称でありながら、文脈によって「スゴク・優れている」を意味する合図として運用されるとされる概念である。とりわけ応援文化においては、褒め言葉を省略し、その場の熱量を“数値化されたように”揃えるための記号として理解されている[2]。
この用法は、言葉の硬さよりもテンポを優先した結果として説明されることが多い。すなわちは、論評の文章を省き、短時間で「勝った」「すごい」「優れていた」という評価を固定する機能を持つものとされるのである[3]。一方で、同じ二文字が別の意味に誤読されうるため、使い手の間では“周辺の合図”が重要視されたとも指摘されている。
なお、の周辺では「スゴク・優れている。スワローズ・すごい」というフレーズと連動して語られたとされ、球場や掲示板、そして古い応援札の紙面にまで影響が及んだとされる[4]。このため、は単なる略語というより、半ば“擬似規格”として扱われることがあった。
成立と運用の仕組み[編集]
「S」「S」を二段評価にする発想[編集]
が称賛記号として定着した背景には、二文字を“段階”に対応させる運用があったとされる。すなわち1文字目のは「瞬間の出来」を、2文字目のは「総合の強さ」を表す、とする解釈が早い時期から広まったという[5]。
この解釈は、応援現場での“言い切り”を後押しした。たとえば記録係が投球の速球比率を「時速142.6km以上はS、141.9km以下はs(小文字)」のように運用していた、という逸話が残っている[6]。もっとも、その実測がどこまで整っていたかは議論もあるとされるが、少なくとも「細かく見ている感」を演出するには都合がよかったと説明される。
加えて、略語の短さゆえに読み手側の“納得”を速めたともされる。長い賛辞が必要な場面でも、ひとつで拍手のタイミングを揃えられるため、結果として会場のリズムが均一になった、という証言がある[7]。
応援札・掲示板・館内放送の三者協定[編集]
の普及には、の一部ローカル放送局と、球場周辺の印刷業者、さらにファン掲示板の“編集自治”が結びついた、と語られることが多い。特に周辺で、アナウンス担当が「今のはSSでした」と言い切る運用を始めたことで、現場の語が定着したとされる[8]。
その運用は、驚くほど細かな“秒数”で管理されていたとする説がある。たとえばコールは7.3秒以内に終え、紙の応援札は毎回同じ角度(おおよそ30度)で掲げることで誤解が減る、とする文書が回覧されたという[9]。ただしこの文書は当時のどの部署が作ったか不明であり、「要出典」となる可能性がある、として後年の研究者が注意を促している[10]。
一方で、掲示板ではが単なる称賛ではなく、応援連鎖の“合図”になった。ある書き込みでが用いられると、そのスレッドの返信が平均2分前後で同語へ収束した、とされる統計(架空の集計とも指摘)がある[11]。このように、は情報の拡散速度そのものを制御する言語として扱われた。
歴史[編集]
「SUGOKU」由来の暗号説(主流)[編集]
の語源として最もよく引かれるのは、「SUGOKU」および「優」の頭文字を、二文字に圧縮する“暗号化”が起点になったという説である[12]。この説では、1978年ごろに近くの印刷工場で、投票カードの文字数制限が生じたことが転機になったとされる。
当時の社内試算では、投票カードの枠に入る文字数がちょうど16文字までだったため、「スゴク・優れている」をそのまま書けず、へ圧縮するしかなかった、という筋書きである[13]。さらに、カードの裁断ズレを0.7mm以内に収めると読み取り率が上がった、という“数字好き”の記述が残る[14]。この点は、言語が現場の工学に引き寄せられたことを示す資料として解釈されてきた。
なお、この説は主流である一方、後年の編集者が「暗号説はあまりに整いすぎている」との異論を加えたともされる。とはいえ異論があっても、応援の現場では使い続けられたため、語源よりも運用が勝った形になったと理解されている[15]。
「相手守備の等級」転用説(少数だが強い)[編集]
もう一つの説として、が応援から逆輸入され、対戦相手の守備を等級づけする記号に転用された、という見方がある。たとえば対戦チームの守備を、セーフティ指数としてA〜Cで区分し、そのうち“失策確率が0.12%未満”の状態をと呼んだ、とする伝聞がある[16]。
この転用は、スタッツを煽り文に変換する編集作業が先にあったとされる。球場の掲示板担当が、スコアボードの更新時間が1分半に限られていたため、文章でなく二文字にしたという説明が付くことが多い[17]。また、守備位置の表記を「一塁方向:-3°」のように微調整することで読みやすくなった、という“マニア向け”の逸話もある。
ただし、この転用説には「観客が混乱し、逆に応援の熱が落ちた」という反証もある。そこで最終的に、は応援の称賛へ再集中されたとされ、現在の語感(スゴク・優れている)が残った、というのがこの説の結論である[18]。
社会的影響[編集]
が広まったことで、応援やスポーツ評が“短文化”へ向かったとされる。従来は長い解説が必要とされた場面でも、を掲げることで一言完結の評価が成立し、現場の言語環境が更新されたという[19]。
また、文脈では、が“自分が好きであること”を説明するための免罪符のように扱われたともされる。すなわち「なぜ好きか」を語る前に、まずという記号で“分かる人には分かる状態”を作り、その後に具体論を足す方式が広まったというのである[20]。
一方で、短い称賛は長い議論を奪うという副作用も指摘されている。議論の場では、が結論そのものになり、反証や根拠の提示が後回しになった、という批評がある[21]。この点については、後年のファン編集者が「熱の統一はできるが、学習の速度は落ちる」と記したとされる[22]。
さらに、の運用が他ジャンルへ波及した可能性も語られている。たとえば職場の朝礼で「今日の提案はSS」と言って終わる慣行が、いくつかの地域で観測されたという報告がある(ただし一次記録の所在は確認されていないとされる)[23]。
批判と論争[編集]
には、誤読の問題が常に付きまとったとされる。二文字だけでは文脈依存が大きく、称賛のつもりが別の意味に聞こえると、沈黙や空気の変化が起きた、という証言がある[24]。
また、応援現場での“点数化”が過度に進んだことで、競技の見方が均質化されたという批判もある。ある研究者は、の普及後に「投球の条件は見ても、結果の必然性を考えにくくなった」と述べたとされる[25]。ただし、この主張は回顧的であるとして慎重な評価が必要だ、と同分野の論文でも触れられている[26]。
さらに、語源暗号説をめぐる論争もあった。特に「スゴク」由来であるとする主張に対し、別の編集者は「当初は“停止(Stop)”の意味で使われていたのではないか」と提起したとされる[27]。この指摘は裏取りが弱いとされるが、奇妙なことに“停止の意味でも応援が止まらなかった”という現場のねじれが一致してしまい、余計に話題になったともされる[28]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山本倫太郎『球場言語学の実践: 記号SSと短文化の理論』玄学社, 2012.
- ^ Catherine R. Mansfield『Crowd Chants and Micro-Abbreviations』Routledge, 2016.
- ^ 鈴木祐介『スポーツ応援における二文字評価の社会学』東雲書房, 2009.
- ^ 井上慎一『神宮周辺印刷史と回覧文書の系譜』神宮叢書刊行会, 1984.
- ^ Mikael Johansson『A Taxonomy of Fan Slang: From S to SS』Journal of Sports Semiotics, Vol. 7 No. 2, pp. 41-63, 2019.
- ^ 田中真琴『コールの秒数設計と紙札の角度最適化』日本音響応援研究所, 2021.
- ^ Thea N. Calder『Microtiming in Stadium Announcements』Vol. 12, No. 1, pp. 9-27, 2013, Academic Press.
- ^ 佐藤和也『“要出典”が増えるほど熱は上がるのか』査読誌『フィールドの裏側』第3巻第4号, pp. 201-219, 2017.
- ^ Eiji Nakamura『Local Broadcasting and the Standardization of Shorthand』Journal of Japanese Media, Vol. 5 No. 1, pp. 88-105, 2011.
- ^ 相原紗良『スゴク・優れているの意味論: スワローズ文脈の再構成』文献社, 1997.
外部リンク
- SS応援札コレクション倉庫
- 神宮言語資料館(アーカイブ)
- ファン掲示板語彙集
- 短文化スポーツ論のメモ帳
- SS秒数計測ログ