STEROID
| タイトル | 『STEROID(ステロイド)』 |
|---|---|
| ジャンル | マッスル則夫によるスペースファンタジー/筋肉ギャグ×硬派医化学 |
| 作者 | 空転ヨウジ |
| 出版社 | 銀河筋学出版社 |
| 掲載誌 | 月刊スピンファイト |
| レーベル | 硬筋(こうきん)アーカイブ |
| 連載期間 | 〜 |
| 巻数 | 全18巻 |
| 話数 | 全162話 |
『STEROID(ステロイド)』(すてろいど)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『STEROID』は、宇宙航宙士と筋肉科学者が同じベッドで目を覚ますという、かなり強い前提から始まるのマッスルギャグ漫画である。作中では、筋肉の「強さ」だけでなく、筋線維・内分泌・表情筋といった領域までが、やたらと真面目な医化学口調で描写される点が特徴とされた。
物語の核には「筋肉美は嘘をつかない」という理念が据えられているが、その理念を支える舞台装置として、なぜか宇宙船の燃料タンクに遺伝子解析装置が搭載される。さらに、技の命名がなぜか規格化されており、必殺技の出力には毎回「0.3秒のタイムラグ」などの具体的な数値が添えられた[2]。
制作背景[編集]
作者のは、編集部に「筋肉ギャグは、笑いの次に人体の説明が必要」と提出した企画書が残っているとされる。企画書はにある銀河筋学出版社の会議室(第7バルコニー)で読み上げられ、参加者がなぜか全員「腕の周径」を測らされたと回想されている[3]。
また、連載開始当初はギャグ中心に振る方針だったものの、第3話の反響が「涙が出るほど理科だった」と評価され、編集部は方針転換を決めた。結果として、各話の冒頭に“筋肉の化学式(仮)”が1行だけ挟まれるようになり、読者が自分で解読する遊びが生まれたとされる[4]。
なお、作者は取材メモで「『STEROID』という言葉は、宇宙の外で増幅する“心拍の剰余”を指す符丁である」と説明したと報じられている。ただし同時に「これは医学用語のうんぬんではない」とも付記されており、妙に二重の入口が維持されている点が、後年まで議論を呼んだ[5]。
あらすじ(〇〇編ごとにsubsection)[編集]
序章:ジェット・ベルト開帳編[編集]
主人公の訓練生は、宇宙港で「筋肉を使うと船が浮く」事業に配属される。だが初任務で、彼の二頭筋が勝手に“警告モード”へ移行し、隊長が「これはケーブルではなく気持ちの方が燃えています」と断言する。
序盤の笑いは軽快だが、同時に船内設備の説明が異常に細かい。「換気口の面積は0.42平方メートル。湿度は64%前後に制御。筋肉の乾燥は“笑い”を蒸発させる」といった台詞が挿入され、読者は笑いながら計算させられる[6]。
終盤、ルーカスはジェット・ベルトを締め直すのではなく、ベルトの“締め方”を変える。具体的には、力点を皮膚の一点ではなく視線の一点へ移すという、やたら哲学的な作戦が功を奏する。
第一宇宙医学院編:グリッド筋膜夜間講座編[編集]
第二の舞台は宇宙医学院である。ここでは筋肉ギャグが単なる笑いではなく、患者の回復を左右する“治療儀式”として扱われる。医師見習いのは、笑わせることで血流が改善すると主張するが、同時に「笑いの頻度が多すぎると関節が音痴になる」とも言い出す[7]。
作中では、筋膜の伸長率が「伸ばしてから戻るまでの時間0.19秒」を基準に議論される。しかもその数字がなぜか“録音磁気テープ”に刻まれており、医療現場のはずなのにアナログ文明に回帰したような演出がされる。
この編でルーカスは、敵ではなく“筋肉の誤読”と戦うことになる。つまり相手は宇宙海賊ではなく、筋肉が自分を誤って認識してしまうという抽象的な敵である。
第二深宇宙法学編:上腕裁判所輸送編[編集]
第三の編では、突然に法廷劇へとジャンルが寄る。舞台はで、容疑者は毎回「筋肉の使い方」そのものとされる。検察官のは、証拠を拳ではなく“肩甲骨の角度”で提示し、裁判員は笑っているように見えて厳粛に判決を下す。
ルーカスは弁護人として登場するのではなく、証人として“自分の笑顔がどの程度の血流を生んだか”を証言させられる。ここで提示されるのは「顔面筋の酸素消費は平均で日中比118%」という統計だが、なぜか時計の針が太字で描かれ、読者の理解が追い付かないまま進む[8]。
この編の決め台詞は「理屈は関節に宿る」。説明が硬いほどギャグが際立つという、作者の勝ち筋が完成したと評される。
終盤:STEROID解放条約編[編集]
最終盤では、あらゆる必殺技が同じ単語へ収束する。「STEROID」とは、宇宙の気圧差が生む“筋肉の増幅契約”であるとして、主要人物たちは条約の破棄に動く。
ルーカスは、敵対勢力の“増幅装置”を破壊しようとするが、装置が壊れると逆に船内の人体が“平均化”され、誰も個性を保てなくなると判明する。ここで初めて、作者が「薬理の話ではない」と断りつつも、薬理っぽい説明を増やすという反則が効いてくる。
最終話では、ミナが「契約の本体は膜であり、膜の本体は謝罪である」と告げ、笑いのリズムで条約の符号が書き換わる。ラストカットには、宇宙港の壁面広告として『筋肉はいつだって信用できる』が掲げられ、読者は「なにが信用なんだよ」と思いつつ笑うのである[9]。
登場人物[編集]
主人公のは、腕力で殴るというより、腕力の“語彙”を増やすタイプの戦士として描かれる。普段は弱気だが、計測器が起動すると急に理知的なコメントを吐くため、クラスメイトが「怖い」と一言で片付けたエピソードがある。
は宇宙医学院出身の医療系ギャガーで、回復描写を“味”で語る癖がある。彼女の処方は「痛みの塩分を0.7減らす」など妙に具体的で、医局会議で何度も議事録が訂正されたという。
は上腕裁判所輸送管の検察官で、論破ではなく角度調整で追い詰める。なお最終盤で、彼自身の筋肉が契約の被害者だったことが示され、読者の評価が割れた(“いい話すぎる”という批判が出たとされる)[10]。
用語・世界観[編集]
本作の中核用語はである。作中では“筋肉の増幅契約”という説明が与えられ、宇宙船のエンジン制御や治療儀式、法廷手続きにまで波及する。そのため読者は「薬の話」か「比喩」かを毎回迷わされることになった。
次に“ジェット・ベルト”があり、締め直すよりも“呼吸と視線の同期”が重要だとされる。作中では同期ズレが「0.03秒」単位で語られ、ズレが大きいと筋肉が冗談を誤作動させると描写されるため、戦闘が笑いと同期して進む。
また、宇宙医学院には“筋膜夜間講座”という制度があり、睡眠中に筋肉の記憶を上書きする教育が行われるとされる。さらに“上腕裁判所輸送管”では、判決が出ると同時に肩甲骨の角度が記録され、量刑の代替としてストレッチが課されるなど、世界観の倫理が独特に設計されている[11]。
書誌情報[編集]
本作は『』()において、からまで連載された。連載期間中は、作品の理科ギャグ化が進行した時期があり、その影響で単行本では各巻末に「計測用語集(仮)」が付録として追加された巻がある。
単行本は全18巻で、累計発行部数は累計発行部数1,250万部を突破したとされる。とくに第9巻『グリッド筋膜夜間講座編』は、登場人物の会話が多いにもかかわらず医化学らしさが強いと評価され、増刷が重なったという[12]。
なお、巻によっては表紙の色が“筋温”を示す仕様になっていたと報じられており、読者がコンビニの照明で色を読み取ろうとしたという小話も残っている(ただし真偽は後に分かれたとされる)[13]。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化は春に決定し、タイトル表記は『STEROID -マッスル契約-』となった。監督はで、脚本は医療ギャグ班と法廷ギャグ班が分業したとされる[14]。
アニメでは、筋肉の描写を“図解”で挿入する演出が多用され、視聴者からは「殴られるたびに教科書を読んでいる気分になる」との声が出た。さらに、各話のラストで必殺技の出力計算(仮)が表示され、視聴者参加型の視聴が広がった。
ゲーム化としてはに『STEROID:グリッド夜間RPG』が発売された。戦闘システムはターン制ではなく、呼吸メーターの回転数で成功率が変わる仕組みで、プレイヤーが“笑ってから殴る”操作で勝率が上がると気づき、攻略サイトが盛り上がったとされる[15]。
反響・評価[編集]
本作は、筋肉ギャグと硬派な医化学風描写の両立が話題となり、社会現象となった。とくに若年層の間では「関節は誤魔化せない」という言い回しが流行し、SNSではストレッチの前後に“0.19秒”を意識する投稿が増えたとされる[16]。
一方で批評家のは、「理科が好きな人ほど笑いが成立しない瞬間がある」と指摘した。確かに作中の数値は細かいが、数学的必然性が毎回説明されないため、読者の中には「読ませる気はないのに読まされる」と感じる者もいたとされる。
また、最終盤の“謝罪で条約が書き換わる”という展開は賛否を呼んだ。読者の一部は「筋肉で世界を救う」というテーマの着地だと評価したが、別の一部は「硬派に振り切ったせいでギャグが溶けた」と批判した[17]。この二極化は、単行本の売上が最後まで伸び続けた理由とも関連づけられている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 空転ヨウジ『STEROID(ステロイド)』銀河筋学出版社, 2012.
- ^ 市ノ瀬リュウ『アニメ演出メモ:筋肉は嘘をつかない』銀河映像工房, 2020.
- ^ 葉村サダオ『数値ギャグの快感:漫画における疑似科学の設計』『メディア・フィジオロジー研究』第7巻第2号, 2018, pp. 33-58.
- ^ Margaret A. Thornton『Satirical Medical Notation in Japanese Comics』Journal of Imaginary Biochemistry, Vol. 12, No. 1, 2021, pp. 101-144.
- ^ 新川宙輪地区史編纂委員会『新川宙輪地区年表(改訂版)』新川宙輪地区出版局, 2015.
- ^ 鈴木プロト『筋温と表紙色:流通現場の観測記録』『商業出版の現場』第3巻第4号, 2019, pp. 12-27.
- ^ Dr. K. Iwasa『Breath-Synced Funniness in Space Fantasies』International Review of Fictional Kinesiology, Vol. 4, No. 3, 2022, pp. 77-95.
- ^ 『月刊スピンファイト』編集部『連載開始号の企画書抜粋』月刊スピンファイト編集部資料, 2012.
- ^ 佐倉マサト『上腕裁判所の演出構造と視聴者行動』架空裁判法文化研究会紀要, 第1巻第1号, 2020, pp. 1-20.
- ^ (誤差を含むとされる)田中ハルカ『STEROIDという語の薬理史』銀河筋学出版社学芸部, 2016.
外部リンク
- 月刊スピンファイト公式アーカイブ
- 銀河筋学出版社 特設サイト
- STEROID スペシャル計測資料館
- 上腕裁判所輸送管ファンレビュー集
- 筋膜夜間講座オンライン講義