TOKIO EXCELLENT
| 分類 | 品質監査を前面に出した商品・体験の統合ブランド企画 |
|---|---|
| 対象分野 | 食品・日用品・イベント運営(主に量販店連携) |
| 提唱主体 | 株式会社TOKIO EXCELLENT準備室(後の運営会社) |
| 開始年 | |
| 運用単位 | 店舗ごとの「5分監査」+月次の「例外ログ」 |
| 監査項目数 | 全41項目(うち必須項目27) |
| 評価方式 | 工程点×応対点×保守点の三乗平均(とされた) |
| 関連用語 | EXCELLENTステッカー、例外ログ、監査スコアカード |
TOKIO EXCELLENT(ときお えくせれんと)は、で展開された「卓上品質監査」型のブランド企画である。企業の工程と接客の両面を点数化して可視化する仕組みとして知られている[1]。のちに、文化・消費の語り方そのものにも影響したとされる[2]。
概要[編集]
は、商品そのものではなく「現場のふるまい」を数値化して提示するブランド企画として紹介された。具体的には、店舗担当者が短時間でできる監査手順を標準化し、結果をステッカーと帳票で共有する仕組みとして運用された[1]。
当初は主に量販店のバックヤードで試験導入され、次第に売り場の接客導線や、イベントの進行品質にまで波及したとされる。特に「例外ログ(例外が起きた理由を“言い訳ではなくデータ”として残す)」が特徴であるとされる[3]。
なお、この企画名の「TOKIO」は、都市名のを直接指すというより、品質監査の研究グループが採用した「規格化するための架空地名コード」として説明されることが多い。編集者の間では、なぜ架空コードが定着したのかがしばしば争点となった[4]。
歴史[編集]
前史:卓上監査の“発明”と配布網[編集]
前史は、早稲田周辺の倉庫で行われた小規模な「卓上品質監査実験」に遡ると説明される。そこでは、検品担当が立ったまま行う従来方式では見落としが出るため、監査台を机サイズに落として、作業者の“体の癖”まで規格化しようとしたとされる[5]。
実験の成果はに報告書としてまとめられ、株式会社TOKIO EXCELLENT準備室の初代担当である(当時、品質監査補佐)と、流通現場の改善を担った(同、現場連携係)が中心になって、試験店舗へ配布する体制が整えられたとされる[6]。
この時点で既に、監査は「5分で完了する」ことが必須条件とされ、店舗ごとの所要時間が平均4分58秒〜5分07秒に収まったと記録されている。監査員の靴の種類まで管理したという証言もあり、後年この点が“伝説化”したと指摘される[7]。
成立:EXCELLENTステッカーと“例外ログ”の制度化[編集]
、企画は公式に「ブランド企画」として認可され、代表的な施策としてが導入された。ステッカーには店舗番号と、監査の到達水準(EXCELLENT A〜D)が印字され、従業員が翌日に引き継ぎできるよう、剥離して貼り替える仕様が採用されたとされる[1]。
同年、例外ログが制度化された。例外ログとは、ミスや遅延を単に記録するのではなく、「いつ・誰が・なぜ・どの工程で・次の対策は何か」を定型文で残す帳票である。記入率は導入直後で91.3%に達したとされ、未記入の店舗には“書き忘れ防止の色札”が配布されたと記録される[8]。
ただし、例外ログが増えすぎると現場が委縮するため、例外の“分類語彙”が改訂された。たとえば「不注意」は禁止語になり、「段取り未整備」に置換されたとされる。言葉の置換が現場の感情を変えるという研究が添付されたことから、企画は品質論を越えて言語運用にまで踏み込んだとされる[9]。
拡張:イベント運営と“味の点数化”への波及[編集]
頃から、TOKIO EXCELLENTの監査枠組みがイベント運営に転用されるようになった。演出と動線を工程として扱い、来場者対応を接客点として数値化したため、スタンド運営や試食会において「待ち時間の許容幅」が細かく規定されたとされる[10]。
また、食品分野では“味”を直接測るのではなく、提供前の保温工程と盛り付け手順の遵守率で推定する方式が採用された。保温時間の中央値が38分、逸脱(±10%)の許容回数が月3回という社内ルールがあったとされる。厨房の温度計のログが1分単位で提出され、なぜかの関連倉庫だけ提出形式が異なったとも伝えられている[11]。
この波及により、品質の議論が「誰が褒めたか」ではなく「誰がどの工程を守ったか」に寄っていった。結果として、支持者は“フェアな評価”を称え、批判者は“味の人格化”を失うと反発したとされる[12]。
運用の仕組み[編集]
TOKIO EXCELLENTの運用は、店舗スタッフが行う「5分監査」と、月次で提出される「例外ログ」で構成されたとされる。5分監査では、41項目のうち必須27項目を、専用のチェックシートに従って順に確認することが求められた[3]。
チェックシートは全国で同一フォーマットとされたが、現場の声を反映するため、季節ごとに“紙の色”が変えられたとされる。春は薄い青、夏は薄い緑、秋は薄い橙、冬は薄い紫という説明が残っており、色見本がにある倉庫で管理されていたとする記録がある[6]。
評価は、工程点・応対点・保守点を個別に算出し、その後に三乗平均を用いる方式として紹介された。三乗平均という言い回しは学術的に聞こえるため採用されたが、実際には現場の説明が追いつかず、計算式は監査員の裁量で“だいたい同じ結果”になるように調整されたとされる。この点は後年、制度のわかりやすさが揺らいだ要因として扱われることがある[9]。
社会的影響[編集]
TOKIO EXCELLENTの影響としてまず挙げられるのは、「褒め言葉の代替」としての点数文化の定着である。店舗が“良いです”と言う代わりに、ステッカーの到達度(A〜D)を示すことで会話が短縮され、会員向けの説明も数値中心になっていったとされる[1]。
さらに、例外ログが“内部告発”ではなく“改善の台帳”として扱われるようになった点が評価されたとされる。結果として、問題発生時の連絡が早まり、たとえばでは月次の遅延報告が平均で18.7件から12.1件に減少した、という社内集計が引用されたことがある[13]。
一方で、消費者側も「どこで買ったか」から「どんな運用ルールか」に視点を移したとされる。これはブランドの意味を商品に限定しない動きとして、のちのサービス設計にも影響を与えたと解釈されることが多い[2]。
批判と論争[編集]
批判は主に、点数化によって現場の創意が損なわれるという論調から生じた。具体的には、イベント運営では“例外ログが埋まるほど誠実”とみなされる一方で、演出家がリスクを避けるようになり、結果として「無難さ」が売り物になったのではないか、という指摘があった[12]。
また、評価式の説明が曖昧だとする声もあった。前述の三乗平均は理屈としては整っているが、現場の運用では「前月の平均点に寄せる係数」がこっそり使われた、とする内部リークが話題になったことがある。この話は裏取りが十分でないとされつつも、編集者の間では“数式の雰囲気”が先行した証拠として語られた[4]。
さらに、TOKIOという架空地名コードがなぜ必要だったのかにも疑問が向けられた。架空コードにより責任所在がぼやけるのではないか、という批判が出た一方で、運営側は「地名を外すことで、どの店舗でも同一の品質哲学に回収される」と反論したとされる。ただしこの反論が説得力を持ったかは分かれていた[14]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 【山本綾子】『「卓上品質監査」導入記録の分析』日本経営監査学会, 2002.
- ^ 【渡辺精一郎】『5分監査という発想――現場が動くチェックリスト』品質運用研究所, 1999.
- ^ 佐久間礼二『例外ログと現場心理:未記入率の低減施策(Vol.第1巻第2号)』流通現場叢書, 2001.
- ^ 【Margaret A. Thornton】『Auditability in Service Encounters』Journal of Retail Standards, Vol.12 No.3, 2003, pp.141-168.
- ^ 【田中健太郎】『点数化の言語政策:なぜ“不注意”が嫌われるのか』言語運用研究, 第7巻第1号, 2004, pp.55-79.
- ^ 【Hiroshi Kameda】『Sticker-Based Compliance and Customer Trust』International Journal of Operational Branding, Vol.5 No.4, 2006, pp.210-233.
- ^ 【日本消費者評議会】『評価情報の受容に関する実態調査(抜粋)』【東京都】【港区】事務局, 2005.
- ^ 【株式会社TOKIO EXCELLENT準備室】『EXCELLENT運用マニュアル(第3版)』株式会社TOKIO EXCELLENT準備室, 2000.
- ^ 【小林直樹】『三乗平均の“現場計算”――数式から実務への翻訳』経営数理研究, 第19巻第2号, 2002, pp.33-61.
- ^ 【Catherine R. Walsh】『The Myth of Neutral Metrics in Retail**』Assessment Studies Quarterly, Vol.9 No.1, 2007, pp.1-25.
外部リンク
- TOKIO EXCELLENT 監査アーカイブ
- 例外ログ研究会ページ
- EXCELLENTステッカー図譜
- 品質監査チェックリスト倉庫
- 点数化と対話文化 書庫