VALORANTのトロールする人
| 分類 | 対戦ゲーム内行動類型 |
|---|---|
| 対象 | のマッチメイキング |
| 主要な手口 | 故意のミス誘発、発話による誘導、行動の偽装 |
| 議論の焦点 | ゲーム性への影響とコミュニティ健全性 |
| 関連用語 | フレンドリーファイア文化、スマーフ、煽り |
| 研究分野 | デジタル行動科学、ゲームエスノグラフィ |
| 初出とされる時期 | 2020年代前半(用語の定着は後年とされる) |
(ヴァロラントのトロールするひと)は、の対戦環境において他者の意思決定を撹乱する言動を繰り返すプレイヤー像として語られる概念である。一般には悪質な迷惑行為として理解される一方、コミュニティ研究の対象として扱われることもある[1]。
概要[編集]
は、ゲーム内の勝敗や戦術性に関係が薄い場面で、わざと相手チームの判断をズラすような言動を用いるプレイヤー像として説明されることが多い。とくに、武器の選択やロール運用が一貫しているように見せながら、通信や立ち回りの「一手目」を意図的に噛み合わせない点が特徴として挙げられる。
一見すると「単なる嫌がらせ」だが、コミュニティ内では“笑い”や“儀式”に近い文脈で再解釈され、結果としてサーバー負荷や通報統計の偏りが生じたとする指摘もある。なお、本人は自称として「戦術上の検証者」「メタ観測者」を名乗ることがあるとされ、研究者の一部はこの自己物語化を重要な現象として扱っている[2]。
歴史[編集]
言葉の発火点:通信文化の“誤差”を量産した時代[編集]
概念の成立は、の初期に見られた「ボイスチャットの礼儀作法」が過剰に形式化した時期に遡るとされる。当時、ごとに“開始30秒の発話”が暗黙の採点対象になっていたという観測があり、そこから「沈黙→突然の断定」や「味方にだけ聞こえる方向指示」のような、言語の誤差を意図的に作る行為が“トロール”として分類されていったと説明されることがある。
その後、の小規模大会で採用された「チャットログ即時公開」運用(主催は、当時は暫定団体とされる)により、“誰がどの発話で空気を壊したか”が可視化された。これが参加者間の学習を促進し、トロールする人は「沈黙を0.7秒ずらす」「敵の名指しは2回まで」などの細かな“誤差規格”を作ったとされる[3]。
広がり:通報より先に“笑いの勝利条件”が設計された[編集]
2010年代後半のマルチプレイヤー文化では、炎上の温度が高いほど拡散される傾向があった。そこで、トロールする人たちは通報やBANを受けてもなお残る“切り抜き映え”を狙うようになったとされる。ただし彼らは「BANされる前提で行動する」と明言するわけではなく、代わりに“検証”という名目を用いた。
架空の事例として、で行われた「第12回ストラテジー誤差祭」では、トロールする人が試合中に小さな矛盾を3つ混ぜるルール(例:ラウンド1でだけ味方の投資武器を“誤って推奨”する)を提案したとされる。審判役はの協力を得ていたというが、当該協力文書は後に“存在したはずのない添付ファイル”として消えたと報告され、ここから「書類で勝つトロール」という別カテゴリが生まれたとする説もある[4]。
特徴と手口[編集]
トロールする人の行動は、単に侮辱するだけではなく、チームの意思決定プロセスそのものを時間差で誘導する点が強調される。具体例としては、(1) 味方のキルカウントが一瞬伸びるタイミングでだけ最適化したように見える指示を出す、(2) 反対の移動経路を“勝ち筋”として提示するが、実際は自分だけ回収に遅れる、(3) チャットでは丁寧だが、ピン(索敵ビーコン)の打ち方が矛盾する、などが挙げられる。
また、彼らはしばしば「数値の精度」を演出する。たとえば『次ラウンド、サイトの左が濃いのは40秒前後』のように、実測が不要な値を断定して周囲の注意を奪う手法である。さらに、味方に「今の情報は“誤差”だ」と説明してしまうことで、相手が自己修正する余地を奪うと指摘される[5]。一方で、こうした特徴が“技術的妥当性”のように見えることが、被害の発見を遅らせる原因にもなるとされる。
ただし注意が必要で、同じ行為が文脈によっては「コーチングの失敗」や「戦術の実験」に見えることもある。実際、研究会では、トロールと実験の境界を判断するために“誤差の方向が毎回固定されているか”が論点化されたという[6]。
具体的エピソード[編集]
ある有名な配信クリップでは、トロールする人が「エコラウンドは武器を揃えるな」と言いながら、自分だけ同じスキンの銃を3ラウンド連続で落としたとされる。視聴者は最初、ただの不運だと解釈したが、ログ解析で“落とした時刻”が毎回同じ付近に集中していたと報告され、偶然ではないのではないかと騒がれたという[7]。
別の例としては、のゲーミングハウスで練習したチームが、夜間の練習枠(開始)にだけ、チャットが極端に短くなる現象に悩まされたとされる。原因は“トロールする人が、回線の遅延ではなく心理の遅延を作る”ことを意図していたからだと語られている。彼は遅延を隠すため、発話を1.3秒刻みで抑制し、味方が自分のタイミングを合わせ直すまで待ったとされるが、本人の説明は一貫して「統計的な公平性の確認」であったという[8]。
このように、トロールする人の振る舞いは「被害」を直接的に示さない場合でも成立しうるとされ、結果として通報基準の曖昧さが浮かび上がったとされる。なお、最後に出た“解決策”が「開始時の発話を全員で固定文にする」という、ほぼ宗教儀礼のような提案だった点が、後に失笑を買ったと記録されている[9]。
社会的影響[編集]
社会的影響は主に、オンライン競技の健全性と、プレイヤーの心理的安全性に向けた制度設計へ波及した点にある。トロールする人の行為が増えると、通報が先行して会話が減り、結果的にチームの情報共有能力が下がるという負の循環が指摘された。さらに、通報の“量”が注目されると、今度は新しいタイプのトロール(「通報を呼ぶように正しすぎる」)が発生する、といういたちごっこが見られたとされる。
一方で、制度側も反応せざるを得なかった。たとえば運営が提供するとされるとある“行動スコア”は、単に勝敗ではなく「沈黙の長さ」「味方への指示の有無」「ビーコンの整合」をスコア化すると説明され、議論を呼んだ。とはいえ、詳細は公表されない場合が多いとされ、当該スコアの算出には“内部用の裁定AI”が使われていると噂されることがあった[10]。
この結果、配信文化では「トロールする人を当てる」ことがコンテンツ化し、視聴者が観戦の眼を獲得していったと考えられている。その眼は時に正義として働くが、時に“冤罪の連鎖”として働くという二面性も、各地で議論された。
批判と論争[編集]
批判は大きく二つに分かれる。第一に、トロールする人が「ゲーム内の表現」であると主張する立場から、行為の線引きが過剰に道徳化されているという指摘があった。第二に、被害側の立場からは、“道徳化”ではなく“戦術の破壊”であり、迷惑の実体があるという反論が繰り返された。
また、研究コミュニティでは「トロール」というラベルが、単なる相違や初心者の失敗まで包括してしまうという問題が指摘された。そこで、ある研究グループは“トロール確率”を導入し、観測される発話の揺れを基に算出すると報告した。ただし、その計算式は後に誤植が発見され、分母にが混ざっていたにもかかわらず、なぜか当時の採択会では通っていたとされる[11]。この点は、学術と現場の距離を示す象徴として語られることがある。
さらに、トロールする人が“対話”を装う場合、通報しても改善しないことがあるため、制度は教育・注意喚起寄りになったという見方もある。ただし、その教育が「固定文の儀式」を推奨した時点で、別の批判(形式化による息苦しさ)が生じたとされ、最終的な最適解は合意に至っていないと報告されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ M. A. Thornton, “Interruptive Speech Patterns in Tactical Shooters: A Log-First Approach”, The Journal of Digital Play, Vol. 18, No. 2, pp. 33-58.
- ^ 佐藤明里『対戦ゲームにおける言語の微差と集団判断』情報通信研究所, 2022.
- ^ Katarina Velasquez, “The Ritualization of Voice Timing in Team-Based FPS”, Proceedings of the International Symposium on Game Ethnography, Vol. 7, No. 1, pp. 101-129.
- ^ 渡辺精一郎『通報ログから読む集団の免疫反応』新潮学術文庫, 第2巻第1号, pp. 12-44, 2021.
- ^ Theodor J. Kim, “Silence as a Strategy: Measuring Micro-Delays in Pseudocoaching”, Computer-Mediated Interaction Review, Vol. 5, No. 4, pp. 77-96.
- ^ 李佳恩「“固定文”がもたらす対話の鎧:ボイス儀礼の副作用」『オンライン競技学研究』第9巻第3号, pp. 201-226, 2023.
- ^ 一般社団法人サイバー競技文化協会編『誤差祭記録:第12回ストラテジー誤差祭の運用報告』同協会出版部, 2020.
- ^ 北川航平『社会的影響としての“笑いの勝利条件”』電脳社会学叢書, pp. 5-39, 2024.
- ^ E. R. Morgan, “On the Boundary Between Troll and Experiment in Competitive Play”, Ethics & Systems Quarterly, Vol. 3, No. 2, pp. 55-74.
- ^ 松本ルイ『VALORANT運営AIの推定モデル(仮説編)』蒼月研究社, 2019.
外部リンク
- VALORANT会話ログアーカイブ
- 対戦心理観測コンソーシアム
- ゲームエスノグラフィ実践Wiki
- オンライン競技健全性フォーラム
- 誤差祭アーカイブ(非公式)