VRChatの悪魔
| 別名 | ナイトモード・デビル/悪魔キャッシュ |
|---|---|
| 主な場 | ワールド、個人フレンド枠、深夜のフレーム同期 |
| 成立時期 | 2018〜2021年頃に言語化が進んだとされる |
| 流通形態 | ミーム動画の頒布、実況スレ、字幕付きクリップ |
| 典型モチーフ | 角度のある笑い、音割れする囁き、視界の“貼り付く”影 |
VRChatの悪魔(ぶいあーるちゃっとのあくま)とは、上で“悪い快感”だけが増幅していくと信じられている都市型ネット神話を指す。〇〇を行う人を悪魔ヤーと呼ぶ、和製英語・造語である[1]。
概要[編集]
は、という空間に“悪いのにやめられない”体験の連鎖が入り込む、という比喩的なネット神話として語られる概念である。明確な定義は確立されておらず、「特定のアバターのこと」とする説もあれば、「特定の動作条件のこと」とする説もある。
インターネットの発達に伴い、深夜帯のクオリティ計測動画や、同期遅延を“契約”に見立てる語りが増え、2019年の秋には「悪魔ヤー」という自称がミーム化した。なお、この名称は公式用語ではないが、コミュニティ内ではしばしば“現象名”として扱われる[2]。
定義[編集]
とは、「快感の増幅がログ上では説明できないのに、ユーザーの体感だけが積み上がっていく」とされる現象を指す、とされる。〇〇を行う人を悪魔ヤーと呼ぶ。ここでいう〇〇は「意図的に“危険っぽい気分”を取りに行く一連の行為」を広く含むと説明され、明確な定義は確立されていない[3]。
また、悪魔の“実体”については2系統あるとされる。第一に、特定のでのみ発生すると主張される説である。第二に、発生条件を「頭の向き」「トラッキングの揺れ」「連続滞在時間」「同期切替(再接続)回数」の組合せだとする“操作論”がある[4]。とくに「再接続は必ず13回以内」と言い切る悪魔ヤーも存在し、根拠として“視界の残像が揺れる閾値”を挙げる例があるとされる。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は2017年末、の小規模ローカルサーバーで行われた“即席エミュレーション会”にあるとされる。当時、参加者の一部が「音が軽くなるほど、変な安心が増える」と記録したことが、のちの比喩の核になったと説明されている[5]。
このときの中心人物として、匿名コントリビュータの「渡辺 角平(わたなべ かくへい)」が挙げられることがある。角平は後年、自作の字幕テンプレを配布し、ログに残らない“増幅”を「角度のある笑い」に対応させて語ったとされる。ただし本人の実在性は定かではなく、当時の記録は複数のミラーに分散しているとも言われる[6]。
年代別の発展[編集]
2018年は、悪魔ヤーの行為が「夜更かし実況」として定着した年とされる。特に“深夜2時のループ”が語られ、のコミュニティ掲示板では「2:07にだけ足音が増える」という報告が100件以上集まったとされるが、検証可能な一次資料は少ないとされる[7]。
2019年は“悪魔キャッシュ”という通称が増えた年である。これは、視界の残像やUIの軽さが“キャッシュされた記憶”のように感じられる、という比喩だとされる。さらに、2020年には世界的にリモート参加が増え、の小規模VTuber系サークルが「契約式・三条件」を動画で頒布したことで、悪魔ヤーが増殖したとされる[8]。
一方、2021年になると「炎上リスク」を恐れて言い回しが変化した。角平の旧テンプレを“比喩表現”として再編集した派が現れ、攻撃性を薄める一方で、コメント欄の“謎ワード”だけは継承されたとされる。
インターネット普及後[編集]
インターネットの発達に伴い、TikTok風の縦動画や編集済みクリップの頒布が進んだ。悪魔ヤーの間では「ワールド滞在は最低27分、再接続は最大13回」という“儀式パラメータ”が共有され、視聴者は同じ数字をコピペして試したとされる[9]。
この数値が広まった背景には、当時のデータスクレイピング研究会が作った“体感ログ指標”があるとされる。指標名は「Deviant Enjoyment Index(DEI)」で、巻き戻しが起きるほど数値が上がる設計だった、という逸話がある。ただし、当該研究会の論文は見つからないという指摘もある[10]。
特性・分類[編集]
は、体験の質で分類される傾向があるとされる。第一に「影型」と呼ばれるタイプで、視界の端に“薄いのに存在感がある影”が残るとされる。第二に「囁き型」で、音割れした声が繰り返し気になり、会話が成立していないのに理解した気になる、とされる。
第三に「笑い角型」があり、笑い声が角度に沿って伝播するように感じる、と説明される。悪魔ヤーの一部は、アバターの口パラメータと頭部回転の関係で現れる、と断定的に語ることがあるが、真偽は検証されていない[11]。
さらに、行為目的により「探索悪魔」「保存悪魔」「譲渡悪魔」に分ける論者もいる。探索悪魔は未知ワールドを開拓し、保存悪魔はスクリーンキャプチャや“字幕ログ”を残し、譲渡悪魔は他者へ体験手順を移し替えることで“増幅”を継承する、とされる。なお、明確な境界はなく、混在が多いとされる。
日本における〇〇[編集]
日本においては、“可視化されない不安”を笑いで飼いならす文化として受容されたとされる。特に内のサブカル系オフ会で、参加者が「悪魔ヤー宣言」を名乗る儀礼が行われたという。形式は「自己紹介→再接続回数の申告→三条件の誓約」で構成されたとされる[12]。
ただし、実際の会の記録は断片的である。ある参加者は「申告したのに誰も数えなかった」と語り、別の参加者は「数えたのに記録を消した」と語った。結果として、悪魔ヤーの振る舞いは半分は演出、半分は体感共有、という曖昧なバランスで維持されたと推定される。
また、日本では“著作権配慮”の文脈でも語られることが多い。悪魔ヤーは「悪魔っぽさ」を素材名で語らず、比喩的表現で操作手順を伝える傾向がある。これは後述する表現規制やガイドライン対応を意識した動きとされる。
世界各国での展開[編集]
世界各国では、英語圏のコミュニティがを “The Devil of VRChat” と直訳しつつも、実体を曖昧にしたままミームとして翻訳したとされる。ドイツでは「Teufel im Frame(フレームの悪魔)」という呼称が並行し、フレームレートの揺れを原因とする解釈が広まった[13]。
スペイン語圏では“契約”を強調する語りが増え、「13回再接続は契約更新である」と説明された。さらに、のある配信者が“滞在27分儀式”の合成動画をまとめ、世界中のミーム倉庫へ転載が続いたとされるが、元動画が追跡不能になったとも言われる[14]。
一方で、地域差も指摘されている。北欧では「笑い角型」が好まれ、アジア圏では「影型」が好まれる傾向があった、とコミュニティ研究者が述べたとされる。ただしその研究は小規模で、データの偏りがある可能性がある[15]。
〇〇を取り巻く問題(著作権/表現規制)[編集]
が注目されるにつれ、著作権や表現規制への懸念が表面化したとされる。悪魔ヤーの手順共有では、元動画の効果音やBGMに依存する場合があり、素材の扱いが問題になったと指摘されることがある[16]。
また、擬似的な“儀式パラメータ”を数値で共有する文化が、場合によっては個人の健康管理や安全配慮と衝突する可能性がある、としてローカルコミュニティの管理者が注意喚起を行った経緯があるとされる。例として、が「深夜帯の長時間頒布を控えるよう」呼びかけたという記事が回覧されたが、出所の真偽は不明とされる[17]。
さらに、表現規制の観点では、悪魔の比喩が“煽り”として読まれることがあり、字幕テンプレの運用が揉めたとされる。編集者の一部は、攻撃性を避けるために「悪魔」を「夜の比喩」へ置換する修正を提案したとされるが、愛好者の抵抗もあったとされる。結果として、原語と置換語の両方が混在し、ミームの判別が難しくなったという[18]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 中川ユウ『VRChat儀礼データブック:再接続13回の真相』新宿潮流社, 2022.
- ^ Margaret A. Thornton『Embodied Myth in Social VR』Vol. 4, Imaginary Interface Press, 2021.
- ^ 高橋シオリ『“悪魔ヤー”はなぜ笑うのか』第1巻第2号, ニコニコ研究会叢書, 2020.
- ^ Satoshi Kuroda『Latency as Folklore: A Case Study of VRChat』Proceedings of the Virtual Folk Symposium, Vol. 12, pp. 33-57, 2019.
- ^ 渡辺角平『字幕テンプレ配布史(断片集)』オンライン仮想文庫, 2021.
- ^ Elena Markovic『Index of Deviant Enjoyment: A Misremembered Metric』Vol. 1, Journal of Unverified UX, pp. 1-19, 2020.
- ^ 李承宰『夜更かし実況と比喩の継承』ソウル・ミーム論叢, 2018.
- ^ 【誤植が多いことで有名な】山本レン『VRChatの悪魔:正しい運用と誤解の整理』電脳出版社, 2023.
- ^ 田中アサミ『サブカル翻訳の実装言語』第3巻第1号, 日本言語ミーム学会誌, pp. 77-102, 2022.
外部リンク
- 悪魔ヤー字幕アーカイブ
- フレームの囁き研究所
- 13回再接続ミラー倉庫
- 夜更かし実況まとめサイト
- 比喩テンプレ置換チェッカー