『アンデファインド』
| タイトル | 『アンデファインド』 |
|---|---|
| ジャンル | 都市迷宮サスペンス×異能バトル |
| 作者 | 篠井 つづり |
| 出版社 | 星海出版 |
| 掲載誌 | 月刊オルカ・ヒーローズ |
| レーベル | オルカ・コミックス |
| 連載期間 | - |
| 巻数 | 全14巻 |
| 話数 | 全173話 |
『アンデファインド』(あんでふぁいんど)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『アンデファインド』は、都市の“地名が消える現象”を手がかりに、記憶・契約・偽名が絡み合う異能サスペンスとして描かれた作品である[1]。
作中では、敵味方ではなく「名付け」によって存在が左右されるという理屈が採用されており、主人公たちは謎の組織や行政機関に対して“確定できない情報”を武器に戦うとされる[1]。
単なる怪異譚ではなく、読者の考察文化を前提に設計された構成が話題となり、連載中に「次号までに地図から消えた街名を当てる」という投稿企画が常態化したとされる[2]。
制作背景[編集]
作者の篠井 つづりは、取材としての古地図倉庫を訪れ、“同じ場所が年代ごとに違う名前で記録される”という事実に着目したと語られている[3]。
また、連載開始の前段では、星海出版内の会議体「地名整合性委員会」に篠井が招かれ、全173話のうち“固有名詞の変更が起きる回”を正確に割り振る作業が行われたという[3]。
この作品のタイトルは「undefined(未定義)」をモチーフにしつつ、当時流行していた“法務系スラング”を漫画表現へ転用したものとされる。特に、第1話の冒頭で登場する架空の署名制度「匿名確定庁(通称:確庁)」は、現実の登記手続きに似せた作りになっているが、実際の制度とは無関係であると説明されている[4]。なお、編集部は“無関係である”ことを強調したという[4]。
あらすじ[編集]
第一部:縮約地名編[編集]
主人公の花嶋 朔(はなしま さく)は、バイト先の駅で「改札表示が一晩で別の地名に置き換わる」現象を目撃する[5]。翌日、同じ場所に立っているのに通行人の会話から“元の地名”が抜け落ちていることが判明し、朔は自分のメモだけが正しいことに気づく[5]。
調査の過程で、朔は街の縮約を司るという組織の関与を疑う。確保されたはずの資料ファイルは、紙面だけでなく「ページ番号の桁」ごと消失し、残るのは“アンデファインド”という空欄に似た暗号だけだったとされる[6]。
第一部終盤、朔は「名が消えるなら、名を“発明”すれば存在を繋ぎ止められる」という理屈に辿り着くが、その代償として自分の過去が3週間単位で書き換わる副作用が示される[6]。
第二部:契約継承編[編集]
第二部では、主人公側の味方が“味方という定義”を後から更新されてしまう。朔が助けたはずの人物が、後日「契約の当事者ではない」と扱われ、記憶からも関係性が消えていく現象が描かれる[7]。
この局面で朔の相棒となるのが、元・確庁職員の草薙 亜理紗(くさなぎ ありさ)である。亜理紗は、契約書の末尾にある“未確定署名欄”が現象の入口だと説明する。作中の計算式はやけに細かく、たとえば「未確定署名欄の滲み面積が0.64cm²を超えた場合、人物の参照先が揺らぐ」などと描写される[8]。
物語は、都市インフラを「契約」という形式で運用する世界観へ広がり、硝子律省と市民の間にある“存在の取り決め”が社会制度として提示される[7]。
第三部:不在証明闘編[編集]
第三部では、戦いが武力ではなく“証明”を巡って組み立てられる。敵対者は朔たちに対し、法廷ではなく路地裏で「不在の証拠」を集め、存在そのものを無効化しようとする[9]。
朔は戦闘中に、記憶ではなく“身分証のフォーマット”を読み解く技術を使い、攻撃の代わりに紙の余白を拡張する能力「余白拡張法(よはくかくちょうほう)」を獲得する[9]。この能力は、作中のルール上「余白が増えるほど敵の情報が定義不能になる」とされる。
クライマックスでは、縮約地名編の発端に繋がる“最初の空欄”が、硝子律省ではなく市民の署名習慣から生まれていたと示唆され、作者のテーマが「制度への無自覚」が生む歪みに移っていく[10]。
登場人物[編集]
花嶋 朔は、地名の置換現象を“自分だけが覚えている”ことに耐えられず、記憶の証拠を「言葉」から組み替える方向へ進む人物として描かれる[5]。
草薙 亜理紗は、確庁職員としての知識を携えながらも、どこまでが救いでどこまでが改竄なのかを揺らす。作中では、亜理紗が署名欄を塗り潰す癖があり、その行為が“未確定署名の滲み”を誘発するのではないかと疑われる[8]。
一方で硝子律省の追跡官・綿貫 灯(わたぬき あかり)は、冷淡な論理で現象を正当化する役割で、言葉の選び方がそのまま危険になるタイプのキャラクターとして人気を得たとされる[6]。
なお、最終盤で朔の家族の名前が段階的に変化する描写があり、読者は巻ごとに“どの名前が正史か”を議論したとされる[10]。
用語・世界観[編集]
本作の中心概念は「アンデファインド」であり、作中では“定義されないまま放置された記号が、現実側の参照先を吸い上げる現象”として扱われる[11]。そのため、単なる呪文ではなく、法務・情報・地図が同一の土俵で語られる構造となっている。
作中組織としては、地名の整合性を管理するのほか、匿名確定庁(確庁)、都市交通の裏回線を握る「輪郭通信(りんかくつうしん)」などが登場する[11]。
世界観の技術としては、駅掲示や役所掲示が連動する“表示の同期”が提示され、同期ズレが2分11秒続くと「誰も覚えていない場所」になると設定される[12]。もっとも、この数字は作中で2度修正されており、第8巻の編集ノートでは「修正は作者の体調に起因する可能性がある」として、要出典に相当する注が入れられているとされる[12]。要出典というより、読者への挑発だと受け取られたという[12]。
書誌情報[編集]
『アンデファインド』は、にてからまで連載された[1]。全14巻で刊行され、累計発行部数は1,820万部を突破したとされる[13]。
巻数ごとに“空欄の位置”が変わるとファンが検証しており、第3巻に収録された余白拡張法の回では、扉絵の片隅に文字が意図的に欠けていることが話題となった[14]。
また、星海出版は初版の帯に「未確定署名欄の写真をSNSへ投稿せよ」という抽選条件を付けたが、のちに規約変更で無効化された経緯があり、これが“本作の世界観が現実へ逆流する”象徴として語られることになった[14]。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化はに発表され、制作は映像企画会社「灰星動画(かいせいどうが)」によるとされる[15]。アニメは、原作第2部の途中までを扱い、余白拡張法の戦闘シーンでは“実際の紙の質感”を再現するため、セル画の代わりに印刷用素材を試したと報じられた[15]。
さらに、メディアミックスとして公式スピンオフ小説「アンデファインド:確庁夜話(かくちょうやわ)」がに刊行され、朔ではなく亜理紗の過去を中心に描いた[16]。なお、作者が執筆監修したかどうかは版元紹介資料で曖昧にされており、ファンの間で議論が続いたとされる[16]。
音楽面では、EDテーマ「未確定署名の雨」(作詞:海堂 リョウ、作曲:榊原 ナオト)がチャート上位に食い込み、作中の地名消失シーンと結びつけて語られるようになった[17]。
反響・評価[編集]
連載開始直後から反響は大きく、投書の約23%が「地名が消えるロジックを説明してほしい」という質問だったと、月刊オルカ・ヒーローズの編集部レポートで触れられている[13]。
批評では、制度と情報表現を結びつける点が高く評価された一方で、「設定の細部が増えすぎて読者の理解が追いつかない」との声もあった[18]。とくに第2部の“契約の当事者から外れる恐怖”は、読者の現実経験と重なりやすいテーマとして議論を呼んだとされる[18]。
一方で、最終盤の“最初の空欄”の種明かしが、従来の読み筋を意図的に崩していた点が支持され、SNSでは「理解できた瞬間に別の疑いが生まれる作品」と表現された[19]。この評は、映画評論家の書評でも引用されたとされる[19]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 篠井 つづり「『アンデファインド』第1話の設計メモ」『月刊オルカ・ヒーローズ』第28巻第4号, 星海出版, 2016, pp. 12-19.
- ^ 海堂 リョウ「空欄が現実を吸う—都市迷宮サスペンスの記号論」『アニメ&法務表現研究』Vol.3 No.1, 2020, pp. 41-63.
- ^ 中原 玻璃「硝子律省と地名の同期ズレ:架空制度の説得力」『日本マンガ論叢』第9巻第2号, 2018, pp. 77-101.
- ^ 星海出版編集部「編集部レポート:地名整合性委員会の議事概要(抜粋)」『星海編集通信』第51号, 2016, pp. 3-9.
- ^ 草薙 亜理紗(インタビュー録)「未確定署名欄の温度管理」『コミックス研究』Vol.12, 2021, pp. 105-118.
- ^ 榊原 ナオト「『未確定署名の雨』制作過程におけるテンポ設計」『音楽表現季報』第6巻第3号, 2020, pp. 22-35.
- ^ 灰星動画制作委員会「テレビアニメ『アンデファインド』の質感検証」『映像制作技法』Vol.8 No.2, 2019, pp. 8-24.
- ^ 綿貫 灯(架電記録)「不在証明闘の論理構成」『サスペンス法理の解説書(架空)』第1巻第1号, 2022, pp. 55-73.
- ^ 戸田 真琴「都市インフラを契約で読む:メディアミックスの社会的読解」『メディア社会学レビュー』Vol.17 No.4, 2021, pp. 201-228.
- ^ 『アンデファインド完全読解ガイド—第0空欄からの手引き—』(著者不詳)『オルカ・ワークブックス』, 星海出版, 2023, pp. 1-260.
外部リンク
- 月刊オルカ・ヒーローズ 公式サイト
- 星海出版 作品ページ(アンデファインド)
- 灰星動画 アニメ公式特設
- アンデファインド 考察掲示板
- 輪郭通信 公式プレイリスト