あっち向いてほまれ!
| 種別 | 向き反応式の大衆遊戯(言語・身振りを含む) |
|---|---|
| 発祥地 | 周辺(「路地文化研究会」周辺とする説) |
| 主要な舞台 | 縁日・放課後の集会所・小規模体育館 |
| 中心となる合図 | 「あっち向いて」「ほまれ!」の往復 |
| 所要時間 | 1ラウンド約30〜60秒(競技設定に依存) |
| 評価方式 | 向きの一致率と“称賛の語尾”の遅延秒差 |
| 流行時期(推定) | 末期〜初期の一時期 |
| 関連概念 | 方角称賛(ほまれ)/遅延カウント/路地版シグナル |
あっち向いてほまれ!(あっちむいてほまれ!)は、で一時期ブームとなった「向き」反応を競う大衆遊戯として知られる。語源は方角称賛の合図とされるが、成立経緯は複数の説があり、一部では軍用信号の転用だと指摘されている[1]。
概要[編集]
は、参加者が「指定された方角へ身体を向ける」動作に、一定の言語合図(「ほまれ!」)を同期させることで成立する遊戯とされる。実施中は「向き」そのものよりも、発声のタイミング差を“称賛の強度”として扱う点が特徴である。
成立当初は路地や校庭での即興遊びとして語られていたが、のちに採点用の掛け声が整備され、縁日の運営団体や地域の少年育成サークルが「手順書」を配布したとされる。特に、合図の最後に付く「ほまれ」が、参加者の自信や集団の同調を可視化する語として定着したと説明されることが多い。
一方で、語源については、古い体操指導の口上に由来する説や、逆に無線通信の“方向確認”を子ども向けに変換した説などが併存する。さらに、の前身組織が昭和期に作成したとされる「簡易方向標示」の記録が、遊戯化のきっかけだったのではないかとする指摘もある[2]。
歴史[編集]
路地版シグナルの誕生(数が先にあった)[編集]
この遊戯の萌芽は、の路地で活動した「路地文化研究会」が残したとされるメモに結び付けられている。メモでは、方角を「東西南北」ではなく、通路の見通しに対応させた“実測方位”で指定したと記録されている。具体的には、方角の角度を毎回測るのではなく、建物の影が作る“見え幅”を基準にして、当たり外れを点数化する方式であったとされる[3]。
当時の採点担当だったとされる(架空の地域講師として扱われがち)が、最初に「声の遅延」を導入した。遅延秒差は、合図「ほまれ!」の発声開始から、身体が完全に指定方角を向くまでの時間差を指す。研究会の資料では、理想値が0.43秒(±0.12秒)と書かれていたとされ、なぜ0.43秒なのかは“路地の反響がその周期で返るから”と説明されている[4]。
この理屈を信じた運営者は、その後のラウンド数を「3回勝負」から「5回勝負」へ拡張した。5回に増やしたのは、統計的に“外した時の言い訳”が増えるためであり、逆にそれが笑いになるからだとされる。つまり、単なる一致競技ではなく、失敗の言語化が共同体の潤滑油になる構造が育ったと考えられている。
全国化と、現場で起きた“微妙な事故”[編集]
末期にかけて、ラジオ番組のローカルコーナーで取り上げられたことが、全国化の契機だったとされる。番組側は「健康増進のための反射遊戯」として紹介したが、実際には“反射”より“称賛の合図”が主役であり、視聴者投稿では「ほまれ!」を言った瞬間に家族の顔が一斉に笑うことが観察されたと報告されている[5]。
ただし、全国化に伴い現場では事故も起きた。たとえばの集会所では、競技中にカウント係が手拍子を誤り、向きが揃った直後に「次は逆!」と叫んだため、参加者が“逆称賛”の手順を踏んでしまったとされる。結果として勝者判定が2回分ひっくり返り、賞品(駄菓子の詰め合わせ)が余ってしまったという。記録では余った袋が「37袋」で、配り切るまでに「計1時間14分」を要したと書かれている[6]。
また、自治体の青少年課が行った指導要綱では、遊戯が過熱すると「ほまれ!」が過剰に大声化し、近隣苦情につながる点が注意事項として挙げられた。ここから、語尾の伸ばしが長いほど点が伸びる“裏ルール”が密かに広まった。表向きは健康、裏では芸の競争という二層構造ができ、社会的には「校庭の文化」として定着していったと説明される。
軍用信号転用説と、その後の“言い換え”[編集]
語源に関して、軍用信号の転用を示唆する説が存在する。根拠とされるのは、方角を確認する際に、一定の擬声語を挟んで誤認を減らす技術があったという主張である。資料をまとめたとされるの内部文書番号として「装備技術統制要綱 第17号(推定)」が挙げられることがあるが、文書の実在性は確認されていないとされる[7]。
もっとも、この説が広まる過程で、現場では“軍っぽい言い回し”が敬遠され、合図は「ほまれ!」へ丸められた。もとの擬声語が何であったかは複数あり、「ほ・ま・れ」を母音に分解して音響的整合性を取ろうとしたという解釈もある。この“整合性”が面白さの根になり、結果として、遊戯は真面目な指導と笑いの両方を受け持つ立ち位置を獲得したとされる。
そして、最終的に「向き反応」だけではなく「称賛の言語」を中心に置く形へ整理され、家庭内でも再現されるようになった。親が子に向けて「ほまれ!」と言うことで、無言の安心合図が成立すると感じられた、という証言が増えたことが、社会的影響の一部として語られている。
遊び方(よくあるルールと、ローカル競技規約)[編集]
基本形は、司会者(またはカウント係)が「右!」「左!」のように方角を指定し、参加者がその方向へ身体を向ける。ここに「ほまれ!」が加わり、単に見た目が向くのではなく、発声の終了位置が採点対象になるとされる。特に、発声終了が遅れるほど“勇気が遅れて届く”という比喩で加点が説明された[8]。
ローカル競技規約では、指定方角の種類が増える場合があった。たとえばの会では「坂の向き」や「商店街の風向き」で指定する“地形方位”が採用された。実測方位を使う場合、現場の地図の縮尺が0.5万分の1であると決めておくと揉めにくい、とする手順書が残っているという[9]。
さらに、勝者決定には「一致率」と「語尾遅延秒差」を組み合わせた算式が用いられたとされる。算式は地域により異なるが、例として「点=一致率(%)×(1-遅延秒差/1.0)」の形が伝承されている。なお、計算が苦手な子どもには、司会者が“暗算をしない採点”として「ほまれの息継ぎ回数」を採用したこともあった。
社会的影響[編集]
は、身体運動と発声遊びが一体となった例として、地域コミュニティの結束に寄与したとされる。家族や近所の大人が司会に回ることで、子ども側が“見られている安心感”を得る構造ができた。これにより、言葉による肯定が自然に増え、家庭内の会話に拍子がつく現象が語られることがある。
一方で、遊戯が広まったことで、称賛語の運用が“競技化”しやすくなった。学校の教室内では、手を上げるタイミングに合わせて小さく「ほまれ!」を口にする子が増えたとする逸話が残っている。この結果、評価が身体反応と声のタイミングへ寄り、学習の評価指標が一時的に揺れたのではないかという指摘も出た[10]。
それでも、地域では「笑いと称賛がセットになる文化」として語られ、文化祭の簡易ブースでも再現された。ブース運営では、混雑対策として参加者の滞在時間を“平均46秒”に抑えるよう設計されたとされる。この数字は、行列の圧縮効率が高いからだという理由付けで語られており、科学的裏付けは曖昧とされるが、妙に具体的なため信じられやすかった。
批判と論争[編集]
批判として最も多いのは、「称賛がゲーム化されることで、本来の褒め言葉が硬直化するのではないか」という論点である。特に、遅延秒差を競う設定が“遅れてしまう人”を不利にし、声の大きさや体調(反響の聞こえやすさ)に結果が左右されるとの指摘があった[11]。
また、軍用信号転用説をめぐっては、根拠の薄さを理由にメディアが慎重になった経緯が語られる。議論の際には、のローカルアーカイブに残る「擬声語例一覧(誤植あり)」が引用されることがあるが、別の研究者は誤植による連想にすぎないと反論したという[12]。この“誤植”が一部で面白がられ、結果として論争自体がコンテンツ化したともされる。
さらに、宗教的・教育的配慮の観点から、特定の語尾を繰り返すことが子どもの情緒に影響するという意見も出た。しかし、当時の指導者は「ほまれは称賛であり祈りではない」と説明したとされる。説明が先に置かれ、現場の検証が後回しになったため、いくつかの自治体では注意喚起が出たのちに自然に沈静化したとまとめられている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 路地文化研究会『路地版シグナル手順書(台東区記録)』非売品, 1983年.
- ^ 渡辺精一郎『反応と称賛の相互作用に関する試案』台東学芸社, 1987年.
- ^ 山本あきら『声の遅延は笑いを生む:一ラウンド平均46秒の設計』『地域体育研究』第12巻第4号, pp. 21-39, 1991年.
- ^ Margaret A. Thornton『Delayed Applause in Street Games: An Audiophonetic Approach』Journal of Folk Interaction, Vol. 18, No. 2, pp. 77-98, 1994.
- ^ 加藤睦『方角指定の実測方位と子どもの同調行動』日本教育方法学会『教育技法評論』第9巻第1号, pp. 5-18, 1996.
- ^ 佐伯みなと『“ほまれ”の音韻設計:誤認率低減モデル』『音声遊戯学会誌』第3巻第2号, pp. 101-127, 1998.
- ^ 防衛装備庁『装備技術統制要綱(方向確認に関する試験記録)第17号』内部資料, 1969年.
- ^ 『NHKローカルアーカイブ:擬声語例一覧』NHK編集部, 2001年.
- ^ 中村誠一『称賛ゲームの社会学:校庭から家庭へ』文泉堂, 2004年.
- ^ Claire D. Watanabe『Noise, Echo, and Praise Timing in Youth Competitions』『International Journal of Informal Play』Vol. 26, No. 3, pp. 250-268, 2007.
- ^ ※タイトルがやや不自然な参考:『あっち向いてほまれ!復元図鑑』路地図鑑編集室, 2012年.
外部リンク
- 嘘実測方位アーカイブ
- 路地版シグナル研究所
- 遅延カウント可視化スタジオ
- 称賛音韻データベース
- 家庭内ほまれ実践帖