うるとらデ・ジ・キャラット
| タイトル | うるとらデ・ジ・キャラット |
|---|---|
| ジャンル | SFコメディ、変身ヒロイン、メタフィクション |
| 作者 | 鷺沢ミツル |
| 出版社 | 黒羽書房 |
| 掲載誌 | コミック・スペクトラム |
| レーベル | スペクトラム・コミックス |
| 連載期間 | 1998年6月 - 2004年11月 |
| 巻数 | 全11巻 |
| 話数 | 全87話 |
『うるとらデ・ジ・キャラット』(うるとらでじきゃらっと)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『うるとらデ・ジ・キャラット』は、の・をモデルとする電脳街「デジタル横丁」を舞台に、量子ペットの暴走と商店街再生を同時に描いたとされる漫画作品である。記号的な擬音と極端に細い背景描写を特徴とし、当時の読者からは「情報量だけで笑う漫画」と評された[2]。
作品は、少女型端末「デ・ジ子」が宇宙電波局の課税監査を逃れつつ、惑星間通販と町内会の板挟みになるという筋立てで進行する。後年は展開により、玩具、朗読劇、架空の深夜番組風CMなどが派生し、累計発行部数はを突破したとされる[3]。
制作背景[編集]
作者のは、もともと工業高校向けの教材イラストを手がけていた人物で、にの編集者・から「電子部品の擬人化で商店街ものを描けるか」という異様な依頼を受けたという。これが企画の原型になったとされ、初期案では主人公はキャラクターではなく「半径3.2メートル以内の家電を再起動する装置」だったが、編集会議で却下された[要出典]。
連載開始前には、の倉庫街に模擬商店街を組み、作者とアシスタント5名が3日間缶詰状態で「ネオンの反射角度」と「SE音の聞こえ方」を検証した記録が残る。なお、この実験で使用された冷蔵庫が作品世界の重要アイテム「逆再生冷凍庫」に転用されたと伝えられている。
あらすじ[編集]
デジタル横丁編[編集]
主人公のデ・ジ子は、ではなく「秋箱原」から転属してきた新人端末として、デジタル横丁の再開発計画に巻き込まれる。町内会長のと、量販店の自走看板「ヨシダくん」が、毎週のように電柱会議を開き、結論として何も決まらないことが本作の基本構造である。第14話で商店街の全店舗が同時に停電する回は、掲載誌のアンケート返送率がに跳ね上がったとされる[4]。
星間通販編[編集]
中盤では、デ・ジ子がの倉庫群から違法コピーされた日用品を取り戻すため、宇宙通販局と交渉する。ここで登場する「送料だけで国家予算を超える箱」は、当時の読者の間で一種の隠喩として受け取られた一方、作者はインタビューで「単に大きい箱を描きたかった」と述べている。なお、火星支店の配送トラックは毎回なぜかの路地から発進する。
うるとら変身編[編集]
終盤の「うるとら変身編」では、デ・ジ子が町内会費を動力源にする最終形態「うるとらデ・ジ・キャラット」に変身し、巨大な請求書怪人と対峙する。変身には12分17秒を要し、その間に必ず隣人が洗濯物を取り込む描写が挿入されるため、雑誌編集部では「日常の圧」と呼ばれていたという。最終決戦の舞台となる中野サブタワーは、実在の建築物と外観が似ているが、屋上に焼きそば専用の気象台がある点で完全に架空である。
登場人物[編集]
は、量子通信規格「Q-17」の認証を受けた少女型端末であり、表向きは商店街の案内係、実態は宇宙監査局の臨時調査官である。語尾に必ず「だにょ」を付けるが、これは第2巻の読者投稿欄で「口調が無機質すぎる」と指摘された結果、作者が苦し紛れに付け足したとされる。
は、デジタル横丁の町内会長。毎回の会議で議事録を埋め尽くすほど細かいが、肝心の会議室の場所を毎回間違える人物として描かれる。は量販店「ヨシダ電機」由来の自走看板で、感情表現がすべてLEDの明滅で行われるため、泣くと電光掲示板の文字が縦読みになる。
また、敵役として知られるは、国税庁ではなく「銀河帳簿庁」から派遣されたとされる監査官で、作中で最も厳格な人物である。読者人気は高かったが、作者が最終巻で突然味方化させたため、当時のファンレターが二方向に割れたという。
用語・世界観[編集]
本作の世界観は、実在の都市近郊にあるようでいて、法制度だけが一世代先行している点に特徴がある。たとえば「逆再生冷凍庫」は、保存した食材を時間順ではなく感情の強さ順に並べ替える装置であり、自治体の防災備品として扱われる一方、作中ではラブコメの重要装置としても機能する。
「デジタル横丁」は、との共同管理地区で、年に一度だけ税率が天候で変わる。作中ではこれを「雲量課税」と呼ぶが、掲載誌の読者アンケートでは理解度が極端に低く、編集部が第5巻から図解ページを増やしたとされる。なお、作中の電波単位「キャラット」は宝石とは無関係で、1キャラット=約0.7秒の再起動待機時間と定義されている[5]。
書誌情報[編集]
単行本はより全11巻が刊行された。初版帯には「読み終えると家電の声が少し聞こえる」と書かれており、後年の版では安全上の理由から削除された[6]。
第7巻には番外編「町内会長の一日」が収録され、ページの半数以上が会議の休憩時間に費やされている。第10巻のカバー裏には、作者が描いた「存在しない家電の型番一覧」が掲載され、マニア間で長く検証対象となった。
なお、最終巻の奥付には印刷所の都合で「見返しに小さな魚群が紛れ込むことがあります」との注意書きがあり、実際に初版の一部で確認されたという。
メディア展開[編集]
にはされ、ながら平均視聴率を記録したとされる。アニメ版ではデ・ジ子の語尾が「だにょ」から「だにゃん」に変更され、原作ファンから強い抗議があった一方、スポンサーの炭酸飲料会社が「発音しやすい」として継続を希望したという。
また、、携帯電話向け待受画像、町内会限定のスタンプラリー、さらにの片隅で行われた「逆再生冷凍庫体験展示」など、多数の派生企画が行われた。2003年には舞台版『うるとらデ・ジ・キャラット・ザ・ライヴ』が上演され、客席後方の非常口が変身エフェクトに使われたことで話題となった。
メディアミックスの頂点は、の「銀河福袋キャンペーン」であり、全国87店舗で同時に未確認の限定グッズが配布された。中には、箱を開けても何も入っていないにもかかわらずシリアルナンバーだけが発行される商品があり、コレクターの間で「空箱の初版」と呼ばれている。
反響・評価[編集]
本作は、商店街再生ものとしての側面と、過剰な情報量によるメタコメディとしての側面が評価され、には「都市生活を再定義した漫画」として特別賞を受賞したとされる。特に第43話「請求書の海」は、ファンの間で「最も静かな大乱闘」として語り継がれている。
一方で、作品中の用語が複雑すぎたため、地方紙の書評欄では「子どもには優しく、大人には不親切」と評された。また、商店街関係者の一部からは、デジタル横丁のモデルとされた周辺の地価に妙な影響を与えたとの指摘があり、実際に一時期「町内会費の相場」が検索トレンド入りしたという[要出典]。
現在では、平成期の電脳コメディを代表する作品として再評価が進み、同人誌即売会では未だに「ヨシダくん」のLED配列を再現するための研究が続けられている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 藤堂義彦『平成末期商店街漫画史』黒羽書房, 2008, pp. 41-58.
- ^ 鷺沢ミツル『デ・ジ子誕生前夜』スペクトラム文庫, 2005, pp. 112-119.
- ^ 中島祐介「電脳横丁における課税モチーフの変遷」『漫画表象研究』Vol. 12, No. 3, 2011, pp. 77-93.
- ^ 山内澄子『変身ヒロインと町内会』北辰出版, 2014, pp. 9-34.
- ^ A. Thornton, “Retail Districts in Post-Analog Japanese Comics,” Journal of Media Fictions, Vol. 8, No. 1, 2010, pp. 21-49.
- ^ 佐伯隆一「『うるとらデ・ジ・キャラット』におけるLED演出の民俗学的考察」『映像文化季報』第19巻第2号, 2015, pp. 5-18.
- ^ 黒羽書房編集部編『スペクトラム・コミックス総目録 1996-2006』黒羽書房, 2007, pp. 203-207.
- ^ M. H. Ellison, “The Taxation of Cute Androids,” Pacific Review of Pop Studies, Vol. 4, No. 4, 2006, pp. 88-101.
- ^ 田辺真琴『架空商店街の社会学』東雲社, 2018, pp. 140-167.
- ^ 鷺沢ミツル・藤堂義彦『見返しに小さな魚群が紛れ込むことがあります』黒羽書房, 2004, pp. 1-12.
外部リンク
- 黒羽書房公式アーカイブ
- スペクトラム・コミックス年表館
- デジタル横丁保存会
- 架空漫画資料室
- うるとらデ・ジ・キャラット研究ノート