うんこ味のカレー
| 名称 | うんこ味のカレー |
|---|---|
| 別名 | 排泄連想型カレー、腸内発酵カレー |
| 発祥 | 東京都神田地区 |
| 考案 | 農林水産省 食味逆転研究班 |
| 初出 | 1978年 |
| 主原料 | 炒め玉ねぎ、黒糖、発酵豆、香辛料抽出液 |
| 特徴 | 食後に強い記憶残留性を示す |
| 分類 | 実験食・企画食 |
うんこ味のカレーは、見た目と香りは一般的なでありながら、舌にのせると独特の熟成臭と金属的な後味を残すとされる発祥の奇食である。主にの実験食文化圏で発展したとされ、後年にはやでも研究対象となった[1]。
概要[編集]
うんこ味のカレーは、の一種として扱われる料理である。一般に「うんこのような味」と表現されるが、実際にはと糖分の比率を極端にずらした結果、脳が臭気と味覚を誤認する現象を利用していると説明される。
この料理は後期の食文化実験のなかで生まれたとされる。とくにの都市型給食改革と、後の「食の脱記号化」運動が背景にあったとされ、当時の料理研究家や官僚、食品化学者が複数関与した[2]。
起源[編集]
起源については、の旧・国立食味試験所跡地で行われた「下層発酵再現試験」に由来する説が有力である。試験を主導したのはの若手技官だったで、彼は従来のカレーが持つ“安心感”を逆手に取り、あえて不快感を設計することで嗜好の限界を測ろうとしたという。
最初の試作品は8月17日に、の会議室で作られたとされる。鍋の底に焦げたと過発酵させたを少量混ぜたところ、参加者12名のうち9名が「給食に戻りたい」と回答し、2名が無言で水を3杯飲んだという記録が残る。なお、残る1名は「意外といける」と述べたが、後にとされている。
製法と分類[編集]
標準的な製法は、まずを通常の2倍以上の時間、すなわち72分前後かけて飴色を越えた褐変寸前まで加熱することから始まる。そこへ、、を加え、さらに微量のとを投入することで、見た目のカレーらしさを保ちながら、嗅覚と味覚の認知を意図的にずらす。
分類上は、関東式の「抑圧型」と、関西式の「開放型」に大別される。前者は見た目のカレー性を重視し、後者は香りの段階で既に異常性を強める傾向があるとされる。なお、の一部では赤味噌を使った「味噌便型」が独自発達したとされるが、学術的にはなお議論がある[3]。
社会的影響[編集]
1980年代に入ると、うんこ味のカレーは単なる悪趣味料理ではなく、味覚教育の教材として注目されるようになった。の講義では、同一レシピを「普通のカレー」と「うんこ味のカレー」に分けて比較させる実習が行われ、学生の87%が「先入観が味を支配する」と回答したとされる。
また、学校給食の現場では、好き嫌いの激しい児童に対する心理的介入として“名前だけを変えた提供”が密かに流行した。たとえばのある小学校では、1986年に「健康強化カレー」として提供したところ、完食率が前月比で31ポイント上昇したという。もっとも、同校の元栄養教諭は「実態はかなり近かった」と証言しており、これがの火種にもなった。
研究と保存活動[編集]
食味逆転研究班[編集]
、内に非公式な研究班として「食味逆転研究班」が設置されたとされる。班長のは、味覚を「甘・辛・酸・塩」に加え「羞恥」の6番目の要素として扱う独自理論を唱えた。
この理論は当初学会で相手にされなかったが、1984年にの食品展示会で試食ブースが満員になり、来場者が平均14分並んでまで食べたことで評価が一変した。以後、同班は年4回の報告書を出していたとされるが、うち2回分はほぼ同じ内容であったという。
保存食としての再評価[編集]
後半には、災害備蓄食としての応用も検討された。強い印象を与えることで少量でも満足感が高く、精神的疲労の大きい避難所で「会話を止める効果」があるとされたためである。
の復旧支援倉庫で試験的に配布された際、受け取り拒否率は高かったものの、二日目には「味の記憶が忘れられない」という声が相次いだ。これにより一部の保存食研究者は、うんこ味のカレーを「食べる災害記録」と呼んだが、この表現はのちに行き過ぎとして自粛された。
批判と論争[編集]
批判の中心は、名称そのものが公共衛生教育と相性が悪いという点にあった。とりわけ系の教材委員会では、「児童に誤った排泄観を与える」として1987年に注意喚起文書が出されたとされる。ただし一方で、同文書の配布部数が23部しかなく、実質的な影響は限定的であった。
また、味覚よりも話題性が先行しているとの批判も根強い。1989年にはの飲食チェーンが「うんこ味」を商品名に採用しようとして、商標審査で差し戻されたという事件があった。審査理由は「公序良俗」ではなく「味の定義が揺らぎすぎるため」と記録されているが、これは後年の編集合戦により文言が一部変化した可能性がある。
文化的意義[編集]
うんこ味のカレーは、単なる奇抜な料理ではなく、日本の食文化における「名前と実体の乖離」を象徴する存在として語られてきた。すなわち、見た目の安心感と味の不穏さが並存することで、食べ手は自らの先入観を再点検させられるのである。
以降は、若者文化やインターネット上でのネタ料理として再流通し、のイベントホールや深夜番組で定番の罰ゲーム食材となった。もっとも、食通のあいだでは「罰ゲームにしては完成度が高すぎる」と評されることもあり、現在でも評価は割れている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 橋本隆二『食味逆転学概論』農林出版, 1985, pp. 44-71.
- ^ 佐伯真理『昭和後期の実験食文化』東京食文化研究所, 1992, pp. 103-129.
- ^ Margaret A. Thornton, "Reversed Palate Protocols in Urban Japan," Journal of Comparative Gastronomy, Vol. 14, No. 2, 1998, pp. 201-219.
- ^ 中村義孝『奇食と官僚制――記号としての昼食』新潮社, 2001, pp. 55-88.
- ^ Kenjiro Watanabe, "Sulfur and Memory: A Taste Mismatch Study," Culinary Semiotics Review, Vol. 8, No. 4, 2004, pp. 17-39.
- ^ 『東京都食味試験年報 第12号』東京都食品技術局, 1984, pp. 12-26.
- ^ 高橋久美子『給食の心理学』日本教育食学会, 2008, pp. 142-168.
- ^ Paul H. Emerson, "The Smell of Curry and the Ethics of Disgust," Food Studies Quarterly, Vol. 22, No. 1, 2011, pp. 90-112.
- ^ 『保存食としての逆説的カレー』災害食研究センター報告書, 2016, pp. 5-31.
- ^ 藤森一朗『味噌便型カレーの地方分化』名古屋文化出版, 2019, pp. 77-101.
外部リンク
- 日本食味逆転学会
- 東京都食文化アーカイブ
- 奇食資料室
- 災害食保存研究ネットワーク
- 神田食文化史料館