『おジャ魔女どれみ』
| タイトル | おジャ魔女どれみ |
|---|---|
| ジャンル | 学園魔法少女・群像劇 |
| 作者 | 羽沢玲司 |
| 出版社 | 星雲社 |
| 掲載誌 | 月刊ミラージュ・コミック |
| レーベル | ミラージュKC |
| 連載期間 | 1996年4月 - 2001年9月 |
| 巻数 | 全8巻 |
| 話数 | 全74話 |
『おジャ魔女どれみ』(おじゃまじょどれみ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『おジャ魔女どれみ』は、の私立を舞台に、見習い魔女たちが「願いを叶える代償」と向き合いながら成長していく様子を描いた作品である。従来の漫画が単発の変身や勧善懲悪を中心にしていたのに対し、本作は配点制の魔法試験、保護観察つきの使い魔制度、そして家庭科室を改造した召喚実験などを導入し、当時の読者に強い印象を残したとされる[2]。
一見すると児童向けの明朗な作風であるが、実際には「魔法を使うほど学業成績が下がる」「友情の深さが魔力の質量に変換される」といった妙に制度的な設定が多く、の学習雑誌調査では小学生よりも母親層の購買率が高かったという記録がある。なお、連載後期にはの青少年表現審議会が「魔力の単位が不自然に行政用語じみている」として注目したと伝えられている[3]。
制作背景[編集]
作者のは、もともとの教育出版社で理科教材を描いていた人物で、1995年秋に編集部へ持ち込んだ企画書『児童のための魔術行動学』を改稿したのが本作の原型とされる。企画初期では主人公は3人組ではなく7人組であり、各章ごとに魔法の失敗をとして換算する形式であったが、ページ数の都合で削減された[4]。
また、本作の色彩設計は紙面上のインク節約を前提に考案されたという珍しい経緯がある。連載開始当初、赤系統のトーンが品薄であったため、作者は「魔法を使うほど衣装の縁が薄紫に変化する」という設定を後付けしたとされ、これが結果として作品独自の「ややくすんだ幻想感」を生んだ。編集者のはのちに「当時の少女漫画市場では派手さが優先されたが、本作はむしろ“間に合わなさ”が魅力だった」と回想している[5]。
あらすじ[編集]
春風入学編[編集]
は、下町の商店街で育ったごく普通の中学生であるが、ある日、の高架下にある古物店で「どれみ笛」と呼ばれる魔法具を手に入れる。これを吹いたことで、彼女は見習い魔女課程に編入され、の取得を目指すことになる。最初の試験では、ホットケーキを3枚重ねで焼くだけの課題に失敗し、魔法の代償として2日間だけ声が裏返ったとされる。
共同生活編[編集]
仲間となる、、らと共同生活を始めたのち、彼女たちは内の空き家を借り上げ、魔法練習場兼下宿として使用する。ここで導入された「朝の掃除を怠ると召喚成功率が17%下がる」という経験則は、のちにファンの間で半ば定説のように扱われた。なお、家賃の支払いはではなく現金で行われていたため、魔女でありながらアルバイトに精を出す描写が妙に生々しい。
試験管制編[編集]
中盤では、魔法省の外郭団体であるが登場し、主人公たちの活動は半ば監査対象となる。ここで明かされる「願い1件につき魔力残量は8割消費される」という設定は、当時の読者に衝撃を与えた。さらに、どれみ笛の内部には以来の封印が施されていたという、やけに説明の細かい謎が追加され、作品は単なる学園ものから制度派ファンタジーへと変貌していった。
登場人物[編集]
は本作の主人公で、調子に乗りやすいが、失敗後の立ち直りが異様に早いことで知られる。作中では「3回連続で魔法に失敗しても、4回目にはなぜか自信だけは残っている」という台詞が象徴的である[6]。
は冷静沈着な優等生で、魔法よりも記録係としての適性が高かったとされる。彼女が作成した「使い魔食費台帳」は全74話中12話にわたり言及され、ファンの間では本編最大の実務文書として語られる。
はスポーツ万能の少女で、魔法の失敗を身体能力で補うタイプである。作中後半では、彼女だけがの筆記よりも縄跳びの回数で評価されるという不可解な制度に巻き込まれた。
用語・世界観[編集]
本作の魔法体系は「気分」「約束」「残業」の3要素で構成されていると説明される。とくに「残業魔法」は、夜間に願いを叶えるほど術式が精密になるという理屈であり、の担当編集が深夜作業に追われていた実体験が反映されたという説がある[7]。
魔女たちの組織はによって統括され、満月ごとに成績が更新される。もっとも、この制度は作中で一度も厳密に運用されず、評議会側も「書類上の存在」に近い扱いであった。なお、舞台となるには地下3階に「使い魔保健室」があるとされるが、校舎図には記載されておらず、読者投稿欄でのみ存在が補強されていた。
書誌情報[編集]
単行本はより刊行され、からにかけて全8巻が発売された。各巻には通常版のほか、初回限定で「魔法診断シート」が封入され、これを使うと読者が自分の“見習い資質”を5段階で判定できたという。
第6巻には作者あとがきとして、が「登場人物の名前が増えすぎたため、以降は苗字で呼ぶことにした」と書いている。第8巻では巻末付録に「どれみ笛の組み立て図」が付属したが、あまりに部品点数が多く、実際に組み立てた読者は全国で推定43人程度とされる。
メディア展開[編集]
には系列でテレビアニメ化され、全52話が放送された。アニメ版は原作の制度的な設定を一部簡略化しつつも、毎話の終盤に「今週の魔法出費」が表示される演出を採用し、家庭内での視聴者アンケートでは「教育に悪くないが財布には悪い」と評された[8]。
その後、舞台化、ドラマCD化、学習帳とのコラボレーション、さらにはの一日乗車券とのタイアップまで展開され、いわゆるメディアミックスの成功例として引き合いに出されることが多い。特にの劇場版『おジャ魔女どれみ ほうきのない休日』は、上映館数が11館と少ないながら、初週で座席回転率が異常に高かったことから「小規模上映の奇跡」と呼ばれた。
反響・評価[編集]
累計発行部数は時点で312万部を突破したとされ、当時の児童漫画としては異例の長寿シリーズとなった。特に都市部の保護者からは「説教臭いのに妙に面白い」「魔法より家計簿の描写が役立つ」などの感想が寄せられたという[9]。
一方で、魔法を成立させるための条件が回を追うごとに増殖し、最終的には「友情」「朝食」「提出期限」の3つが揃わなければ変身できないという事態になったため、批評家の中には「児童向け行政文書化が進行した作品」と評する者もいた。ただし、こうした複雑さが結果的に作品世界の厚みを生んだとする見方も強く、の年報では「90年代後半の制度幻想作品の代表例」として扱われている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 羽沢玲司『おジャ魔女どれみ 1』星雲社, 1997.
- ^ 羽沢玲司『おジャ魔女どれみ 8』星雲社, 2002.
- ^ 三条冬馬「90年代少女漫画における制度幻想の形成」『月刊マンガ研究』Vol. 14, No. 2, 2004, pp. 88-103.
- ^ 大森里奈『児童漫画と家計描写の相関』青空書房, 2011.
- ^ M. T. Harlan, “Magical Apprenticeship and Bureaucracy in Late-20th-Century Japanese Comics,” Journal of Serialized Media Studies, Vol. 9, No. 1, 2016, pp. 41-67.
- ^ 藤原啓介「変身表現における残業比喩の研究」『アニメーション文化年報』第22巻第4号, 2008, pp. 15-29.
- ^ 北條ユウ「見習い審査管理局の制度設計について」『フィクション行政学』第3巻第1号, 2002, pp. 5-18.
- ^ Eleanor V. Price, Ojamajo and the Economics of Consent, Mirage University Press, 2019.
- ^ 佐久間由紀『子どもと魔法の会計帳簿』海鳴社, 2014.
- ^ K. S. Whitman, “The Audiovisual Expansion of Japanese School Witch Narratives,” East Asian Popular Culture Review, Vol. 7, No. 3, 2021, pp. 119-140.
- ^ 編集部編『月刊ミラージュ・コミック回顧録』星雲社出版局, 2006.
外部リンク
- 月刊ミラージュ・コミック公式アーカイブ
- 星雲社デジタル年表
- 東都テレビアニメ事業部資料室
- 日本漫画学会データベース
- 春風学園OB会 非公式記録庫