おーぷん2ちゃんねる
| 正式名称 | おーぷん2ちゃんねる(運用委員会通称:OP2) |
|---|---|
| サービス開始時期 | 2007年(ベータ稼働を含む) |
| 運営体制 | OP2運用委員会(匿名管理者・編集員で構成) |
| 主な利用形態 | スレッド形式の掲示、投票型の“場の調律” |
| 技術基盤 | 軽量レンダリング用の独自カーネル(通称:AmeKern) |
| アクセス集中期 | 毎週火曜日の23:17〜23:59 |
| 特徴 | 「おーぷん」と呼ばれる公開チャンネルによる段階解放 |
おーぷん2ちゃんねる(おーぷん にちゃんねる)は、掲示板文化に基づきながらも「閲覧者の発言権を運用設計で分配する」ことを掲げた日本のオンライン・コミュニティである[1]。夜間の書き込みが増えることから、電気通信監督当局の統計表にも頻出する“現象”として扱われてきた[2]。
概要[編集]
は、利用者が掲示板へ投稿する際に、単なる匿名性だけでなく「閲覧者の参加度」に応じた書き込み枠が段階的に付与される仕組みを持つとされるコミュニティである[3]。
成立の経緯は、当時の掲示板が荒れやすい理由を「言葉の温度」と「反応の速度」に分解し、反応の速度を人為的に整えることで炎上頻度を抑える研究が、なぜか急速に実装へ移されたことに求められる[4]。
運用思想としては、スレッドの“内容”よりも先に“場”を整え、最終的に議論の熱量を収束させることが目標であると説明される[5]。一方で、この思想が過剰な規律を生み、独自用語の文化圏を固定化させたとも指摘されている[6]。
歴史[編集]
発端:深夜帯アクセス制御の実験室[編集]
の起点は、実在の組織として知られるの関連会議において、通話回線の輻輳とは別に「文字情報の輻輳」が地域ネットワークへ与える影響を試算した報告書(非公開附属資料)にあったとする説がある[7]。
この報告書を読んだとされる技術者の一人が、東京都の小規模データセンターで“深夜の投稿者だけが増える”現象に着目し、23時台の書き込みを分速で測定した[8]。その結果、「23:17にアクセス密度が0.38倍→0.74倍へ跳ね上がり、23:29で再び1.00へ戻る」ことが再現されたとされる[9]。
その対策として考案されたのが、閲覧者をまず“観測者”として接続し、一定の閲覧ログが付いた者にのみ投稿枠を開放する仕組みであった。これが、後に“おーぷん”と呼ばれる段階解放の原型になったとされる[10]。なお、当初は「o-peN」と表記されていたが、誰かが投稿フォームの表示バナーを見間違えたのがそのまま定着した、という逸話が残っている[11]。
拡大:OP2運用委員会と“場の調律”[編集]
2007年頃、運用主体としてが設置されたとされる。委員会は学術委員と編集委員で構成され、投稿の可否ではなく「スレッドの温度帯」を測るアルゴリズムの調整を担当したと説明されている[12]。
温度帯は「賛同率」「引用頻度」「脱線率」の三指標で算出され、例えば脱線率が7.3%を超えると、投稿者には“次の一文の型”が提示される仕組みであったとされる[13]。さらに、火曜日の23:37に“おーぷんゲート”が最も開きやすいとされ、以後、アクセス集中が観測上の季節行事のように扱われた[14]。
ただし、調律が強すぎると議論が均質になり、独特の言い回しや語彙が増える副作用があった。このため一部の利用者からは「場が整うほど、言葉が整形される」という批判が出たとされる[15]。この批判が、後に“自由枠”と呼ばれる例外枠(申請ではなく行動点で付与)が作られる契機になったとも言われている[16]。
国内メディア化と“統計の怪物”[編集]
2010年代に入るとや地方紙が“深夜の書き込みが地域の通信トラフィックに影響する”という観測結果を取り上げ、は“統計上の怪物”として言及されることが増えたとされる[17]。
その際、紙面には「平均投稿文字数が1,024±48字」「レスの平均間隔が6分12秒」「書き込みのうち“結論っぽい一文”が全体の18.6%」といった細かな数字が並んだが、出典は「運用委員会が公開した閲覧者集計の二次表」とされ、検証可能性が低かったと指摘されている[18]。
また、東京ではの一部回線で“おーぷんゲート”の開放時刻と同じタイミングで遅延が観測されることがあり、運用委員会は「遅延は地域の問題であり、関与はない」と説明したとされる[19]。一方で、利用者の間では「おーぷん2ちゃんねるが渋谷の気温を下げている」などの都市伝説が広まったとも記録されている[20]。
社会的影響[編集]
は、炎上を抑えるための仕組みとして紹介される一方で、「議論の自由」を“条件付き”に扱う文化を一般化させたとされる[21]。特に、学校や職場の若手が“閲覧者→参加者”の段階解放を内輪の比喩として使い始めた点が、影響の大きさとして挙げられる[22]。
また、運用委員会が発表したとされる“場の調律レポート”が、大学の情報系ゼミに採用され、レポート課題として「温度帯を再現するミニ掲示板」を作らせたとされる[23]。このことにより、掲示板が単なる発散の場ではなく、設計対象として語られるようになったという評価もある[24]。
その反面、参加しない人を“観測者”に固定し、意見の出現タイミングを操作するという考え方が、現実の組織運営にも持ち込まれたという批判が後を絶たなかった[25]。この問題は、細かい数値で運用を説明するほど信じられやすいという“説明責任のねじれ”を生む、と論じられている[26]。
批判と論争[編集]
批判の中心は「おーぷん」の段階解放が、実質的に“発言の権利”を評価点や観測ログへ結びつけているのではないか、という点である[27]。運用委員会は、評価点は内容ではなく閲覧行動の統計に基づくと説明してきたが、利用者側では“ある種の語彙を好む人ほど解放が早い”という体感が語られた[28]。
さらに、2012年に一部のスレッドが「温度帯の自動是正」により急に短文化された事件があり、利用者が内の回線で挙動が変わると主張したことで論争になったとされる[29]。運用委員会は「回線ではなく端末の日本語入力履歴の統計差である」と回答したが、入力履歴がどのように“脱線率”へ影響するかは明確にされなかった[30]。
このほか、学術誌への寄稿の形で「おーぷん2ちゃんねるは“人格の可視化”を促す」とする見解が掲載されたことがあるとされるが、実際には同名の別研究プロジェクトが混同されたのではないか、という指摘がある[31]。なお、最も有名な揶揄として「火曜日の23:37に祈るとゲートが開く」という冗談が広まり、議論が神秘化してしまった点も批判されている[32]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ OP2運用委員会『おーぷん2ちゃんねる運用設計要綱(第3版)』OP2出版, 2008.
- ^ 山崎慎之助『文字情報輻輳の地域影響—深夜帯観測報告—』総務通信研究会, 2010.
- ^ Margaret A. Thornton『Staged Participation in Anonymous Forums』Journal of Networked Communication, Vol.12 No.4, pp.91-118, 2014.
- ^ 中村ユリ『「場」を整えるアルゴリズム—温度帯指標の設計思想—』情報社会学研究, 第8巻第1号, pp.33-56, 2012.
- ^ 田辺光『閲覧ログは誰のものか—参加者格付けの統計論—』日本行動計量学会, 第21巻第2号, pp.201-226, 2015.
- ^ Klaus Richter『Backchannel Governance and Soft Moderation』Computers & Society, Vol.7 Issue 2, pp.14-39, 2016.
- ^ 渋谷区総合政策課『深夜アクセスと都市気分の関係—推計モデル—』渋谷区, 2013.
- ^ 長野健一『「o-peN」から「おーぷん」へ—表示バナー誤読の社会史—』表示文化史叢書, pp.77-88, 2011.
- ^ 【書名が微妙におかしい】田中直『おーぷん2ちゃんねるの法的評価—匿名掲示の完全解説—』法学書房, 2009.
- ^ 森川千代『統計の怪物は誰が飼うのか—二次表の検証可能性—』メディア・リスク論集, 第5巻第3号, pp.1-19, 2017.
外部リンク
- OP2運用委員会アーカイブ
- 場の調律シミュレータ(配布ページ)
- 深夜帯アクセス観測ノート
- 閲覧ログ倫理FAQ
- 匿名性の設計に関する公開講義