かほっち費
| 名称 | かほっち費 |
|---|---|
| 読み | かほっちひ |
| 英語表記 | Kahotchi Expense |
| 分類 | 事務経費・準公費・共同調整費 |
| 起源 | 1928年頃の京都府南山村会計慣行 |
| 主な適用地域 | 日本各地の自治体外郭組織、商工会、町内会 |
| 導入目的 | 小口経費の名義分散と責任所在の可視化 |
| 標準単位 | 1かほっち、0.5かほっち、逆かほっち |
| 関連法令 | 地方自治体共同経費暫定要綱(1949年制定とされる) |
| 備考 | 2011年以降は電子台帳への移行が進んだ |
かほっち費(かほっちひ)は、主におよび民間の共同購入制度において、担当者の呼称「かほっち」を起点に算定されるの一種である。もともとは南部の会計慣行から発展したとされ、のちにの一部外郭団体でも採用された[1]。
概要[編集]
かほっち費は、共同事業に付随する雑費・印刷費・茶菓費・交通費の微小な部分を、特定の担当区分に割り当てるための独自単位である。名称は、初期の伝票整理担当者が用いていたあだ名「かほっち」に由来するとされるが、別にの旧商家の帳簿語に由来するという説もある。
一般にはやの会計で見られるが、1970年代には内のいくつかの外郭団体で「かほっち費枠」が正式に採用され、月次報告書の末尾に必ず余白1行を残す運用が定着した。なお、会計検査の現場では「説明しづらいが消える経費」として半ば慣用句化していた[2]。
歴史[編集]
南山村の伝票整理と起源説[編集]
最初のかほっち費は、山間部ので、共同製粉所の修繕費を12戸で割る際に生じた端数処理から生まれたとされる。村の実務を担ったが、端数の1円未満を「かほっち」と呼んで別紙に控えた記録が残るというが、原簿は火災で焼失しており、真正性は確認されていない[3]。
もっとも、この火災後に残ったのがなぜか第3綴じの裏紙だけであったため、研究者の間では「裏紙文化こそがかほっち費を制度化した」との説もある。後年のの調査では、同種の記載がからにかけて急増しており、特に茶菓費と鉛筆代の境界が曖昧な帳簿に多かったとされる。
戦後行政への流入[編集]
、占領期の経費標準化の流れのなかで、かほっち費はの非公式検討項目に組み込まれた。会議では、の職員が「小口を一括すると必ず誰かの昼食が浮く」と指摘し、これを防ぐために担当単位を固定する案が採られたという。
この時期に作成されたとされる『試案』では、かほっち費の上限を「一事業当たり年7.8かほっち」と定めている。7.8という中途半端な値は、当時の内の自治体が使用していた紙片の厚み換算から逆算されたと説明されるが、会計担当者のあいだでは単に「切りの悪い数字のほうが揉めない」という経験則として受け止められていた。
制度化と反発[編集]
に入ると、商工会や青年会議所でもかほっち費が普及し、会計帳簿の「予備」「雑」「その他」を統合する形で拡張された。とくにの市場調整組合では、魚箱の紐代や昼休みの氷代まで「0.25かほっち」で処理され、監査人が困惑した逸話がある。
一方で、の一部会員からは、かほっち費は責任の所在を曖昧にし、実質的な裏金を生みやすいとの批判が出た。これに対して、当時の事務研究者は『かほっち費は隠すための制度ではなく、責任を見える化するための余白である』と反論し、この主張がのちの「余白会計論」の出発点になったとされる。
標準化と電子化[編集]
以降、系の外郭研究会が、かほっち費を電子台帳に移行する標準コードを策定した。コード番号は「KH-04-CH」で、末尾のCHは「調整」の略とされるが、現場では「Charge of Hōjō」説まで出回った。
には、の地域活動補助金システムに「かほっち費自動按分モジュール」が実装され、申請書の入力欄に「1.0」「0.5」「逆かほっち」の三択が現れた。これにより処理速度は平均で17秒短縮された一方、月末の担当者が「なぜ逆かほっちがあるのか」と問い合わせる事例が急増し、相談窓口の電話がで一時つながりにくくなったという。
運用[編集]
かほっち費の基本は、共同事業における微小支出を担当者別に割り当てることである。通常はが基準で、印刷物50部、茶菓子2箱、コピー用紙1束、あるいは会議後の自販機補充分などに相当するとされるが、地域ごとの差異が大きい。
実務上は「0.5かほっち」や「逆かほっち」といった準単位も使われる。逆かほっちとは、支出ではなく翌月の立替回収を先に計上する慣行で、帳簿上は黒字に見えるが現金は減るため、会計担当者の顔色が変わることで知られている。
また、年度末には「かほっち調整会」が開かれ、残余の0.2かほっちを誰が負担するかを巡って静かな攻防が行われる。関係者の証言によれば、最も優秀な担当者ほどかほっち費の発生を抑えられるが、逆に抑えすぎると「会議がやけに乾く」と評価されにくいという。
批判と論争[編集]
かほっち費をめぐる最大の論争は、制度としての合理性と、濫用の境界が曖昧である点にある。批判派は、実際には茶菓費や交通費の名を借りた慣習的支出が温存されるだけだとし、2016年にはの内部メモに「説明可能性が高いほど、現場では使われない」との辛辣な記述が残ったとされる。
また、のある町では、自治会役員がかほっち費を「地域の潤滑油」と称して毎月固定化した結果、年間で48.6かほっちに達し、住民総会で「もはや油圧ではないか」と揶揄された。この件は、地域経済誌『』でも小さく取り上げられたが、なぜか編集部に匿名の追加付録として「かほっち費の節約法」12項が寄せられたという。
社会的影響[編集]
かほっち費は、単なる経費概念を超え、会計実務における「曖昧さの制度化」を象徴する言葉として使われてきた。特にのサークル会計やの会計報告では、「この支出は誰の顔を立てるためのものか」を説明する隠語として機能し、担当交代時の引継ぎ資料に必ず注記が付されるようになった。
一方で、かほっち費の存在によって、地方の会計担当者が自らの裁量を言語化する訓練を積んだという肯定的評価もある。2022年の調査では、かほっち費を運用している団体の方が、そうでない団体よりも「会計説明会の平均時間が14分長い」傾向が見られたと報告された。ただし、この差が透明性の向上を示すのか、単に説明が増えただけなのかは判然としない。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北川房枝『南山村共同帳簿と端数処理の研究』京都府地方史研究会, 1935年.
- ^ 森田要『余白会計論入門』東洋実務出版社, 1968年.
- ^ 小泉英二『共同経費暫定要綱の成立』地方自治政策叢書, 1951年, pp. 44-63.
- ^ Y. Takahara, "Micro-Allocation in Rural Japan: The Kahotchi Model," Journal of Administrative Folklore, Vol. 12, No. 3, 1974, pp. 201-219.
- ^ 『かほっち費運用手引き 第2版』総務実務研究所, 1987年.
- ^ 橋本里奈『電子台帳時代の準公費管理』中央会計評論社, 2012年.
- ^ M. A. Thornton, "Invisible Budget Lines and Civic Trust," Public Expense Quarterly, Vol. 8, Issue 1, 2009, pp. 15-38.
- ^ 『月刊コミュニティ会計 2017年6月号』コミュニティ会計出版部, 2017年.
- ^ 加賀見徹『逆かほっちとその文化史』北陸地域文化研究, 2020年, pp. 7-29.
- ^ S. Endo, "The Strange Persistence of Kahotchi Fees," East Asian Bureaucratic Studies, Vol. 5, No. 4, 2021, pp. 88-104.
外部リンク
- 国立社会会計研究所デジタルアーカイブ
- 京都府立文書館 端数史コレクション
- 地方自治体共同経費研究会
- 月刊コミュニティ会計オンライン
- 南山村会計史資料室