ここで八句
| ジャンル | ネットミーム作法 |
|---|---|
| 成立媒体 | 画像掲示板・ショート動画 |
| 主要キーワード | 八回/間(ま)/一時停止 |
| 使用者(呼称) | ここで八句ヤー |
| 配布形態 | テンプレ頒布 |
| 関連文化 | 即興コメディ・メタ引用 |
ここで八句(ここで はっく)とは、短文ミームを“八回の間”で切り替える作法を指す和製英語・造語である。「ここで八句ヤー」と呼ばれる実践者が、SNS上の流れを一時停止させることを目的とする[1]。
概要[編集]
ここで八句は、投稿文や字幕を“八つの区切り”で段階的に提示し、閲覧者の認知を意図的に遅延させるネット文化として知られている。インターネットの発達に伴い、コメント欄の反応速度そのものをネタにする方向へ発展したとされる。
本作法は、単なる文章テクニックではなく、投稿者と観測者のあいだで「今ここで何が起きているか」を共有する儀式として理解されている。特に、という数が象徴する“読むための呼吸”が強調され、作法を間違えると「テンポが死んだ」と評価されることが多い。
一方で、明確な定義は確立されておらず、コミュニティごとに区切りの長さ(文字数・秒数・余白)が微妙に異なるとされる。後述するように、この曖昧さこそが創作の余地として消費されてきた面がある。
定義[編集]
ここで八句とは、投稿(主に短文・字幕・字幕付き静止画)を八つの句に分割し、各句のあいだに一定の“間”を置くことで、閲覧者に「一度理解しかけた情報を再解釈させる」効果を狙う作法を指す。
ここで八句ヤーとは、この作法を繰り返し実践し、テンプレート(区切り用の空欄・記号・定型文)を自発的に頒布する人々を指すとされる。なお、ここで八句ヤーは「八句を作る人」である一方、「八句が読める人」でもあると解釈されることが多い。
明確な定義は確立されておらず、八つの区切りは「文字数(例:各句22〜31字)」「行数(例:改行1回ずつ)」「時間(例:動画なら0.8秒刻み)」など、複数の指標で語られる傾向がある。ただし共通しているのは、最後の句で“最初に戻る感覚”が演出される点である。
歴史[編集]
起源(紙ではなく夜更けのメモ)[編集]
ここで八句の起源は、東京都の小さな同人サークル「渋八(しぶはち)」が、1999年頃に制作した“読者の間を奪う”短文冊子にあるとする説がある。冊子は「一冊あたりの余白面積を測定せよ」とする変な委託仕様で、余白率が最初に“八”の数字に関連づけられたとされる。
この説では、渋八の主宰であるが、紙面上の黙読を「呼吸の周期」として再現しようとした結果、8区切りの文章配置が試行されたという。ただし、渡辺は当時、の非常勤記録係を兼ねていたため、統計っぽい言い回しがそのままテンプレに取り込まれたとも語られる。
また別の説では、2001年の夜更けに大阪の古いネット喫茶「回線亭」で、掲示板の更新待ち時間に合わせて書き込む文章が“八つのため息”と呼ばれ、それが後にここで八句の祖型になったとされる。いずれの説も裏取りが難しいとされるが、どちらにせよ「待つ時間を文章に埋め込む」という発想が核となっている点は一致している。
年代別の発展(オフライン→2ch→動画)[編集]
2003年には、画像掲示板の該当スレで「句間が短いと叙情が破裂する」という評価基準が生まれ、ここで八句が“採点可能な作法”として広まったとされる。ここで八句ヤーは、投稿ごとに「八句のうち、どこで息継ぎが起きたか」をコメント欄で報告し合う文化を作った。
2007年には、動画サイトで字幕を8段に分ける試みが増えた。特にでは、字幕切り替えを平均0.9秒に寄せる職人が現れ、各句の長さが“体感の均質性”を作るとされて流行した。
2012年頃からはスマートフォンの普及に伴い、ショート動画での実装が加速したとされる。この時期、テンプレ頒布が盛んになり、「八句テンプレ・改(0.8秒型)」のような派生セットが出回った。一方で、明確な定義は確立されておらず、改の差分が「句の意味」ではなく「切り替えの気分」で語られるようになったと指摘される。
インターネット普及後(“読む速度”の争奪戦)[編集]
インターネットの発達に伴い、ここで八句は単なる冗談から、閲覧体験の編集技法へと移行した。タイムラインは高速で流れるため、八句による遅延は“抵抗”として評価されるようになったとする見方がある。
また、ここで八句は「内容の面白さ」だけでなく「反応の出方」を含めて作品とみなす傾向があり、たとえばコメントが一定の遅延後に一斉噴出する現象が“成功のサイン”とされた。ある匿名投稿では、噴出までの平均待機時間が17分32秒だったと記録され、これがコミュニティ内で一種のジンクスになったとされる。
ただし、こうした運用が過熱すると、作法が“精神衛生に悪い遅延”として批判され、テンプレの配布が「誤学習を誘発する」と懸念される場面もあった。のちに著作権・表現規制の文脈に結びつき、問題化することになる。
特性・分類[編集]
ここで八句の特性としては、(1)情報の提示と遅延、(2)閲覧者の再解釈、(3)コメント欄の儀礼化、が挙げられるとされる。とくに最後の句で“最初に戻る感覚”が演出されるため、閲覧者は読み直しを促されることになる。
分類は複数の観点で語られるが、代表的には「意味進行型」「無意味笑い型」「自己言及型」の三系統がある。意味進行型は、八句の順番により物語が進む方式である。無意味笑い型は、句の間だけが意味を持ち、内容は崩していく。自己言及型は、作者が自分の投稿手順を八句の途中で実況する方式として知られている。
また“間”の扱いで分類する立場もあり、「文字間(改行・全角スペース)」「句読点間(読点・終止符の密度)」「時間間(動画なら0.8〜1.1秒)」などの指標が提案されている。ただし、明確な定義は確立されておらず、コミュニティによって基準が揺れる点が特徴とされる。
日本における〇〇(ここで八句)[編集]
日本ではここで八句が、特にサブカルの文脈で“説明過多を避けるための編集”として受容されてきたとされる。SNSでは長文が敬遠されがちな一方、八句は短文を束ねることで満足感を作れるため、投稿者側の負担が比較的小さいと評価された。
運用面では、テンプレ頒布が盛んになった。例として、を想起させるサイト「句屋(くや)ストア」では、「八句・基礎(全13種)」「八句・滑舌訓練(全7種)」のような商品名で配布が行われ、購入というより“配布による参加”として設計されたとされる。
さらに日本では、地域ネットワークが強いことから、の学生コミュニティ「夜間句読連盟」が“0時〜2時の投稿のみ有効”というローカルルールを作ったとも報告されている。こうした時間縛りは、単なる趣味として始まったが、のちに「配慮の不足」や「不公平だ」といった論争の種になったとされる。
世界各国での展開[編集]
世界各国での展開は、主に日本語圏のミームが英語圏・韓国語圏へ翻訳(ただし意味の翻訳ではなく“間の再現”が優先)されたことにより進んだとされる。英語圏では「Kokode-Hakku」が、ショートフォーム配信での“テンポ演出”として紹介され、視聴者のスクロール体験をいじる表現として受け止められた。
韓国では、ここで八句が“コメントの遅延連鎖”として紹介され、の配信者コミュニティ内で「8パルス(8 pulses)」の名称で二次翻訳されたとされる。ただし翻訳名は意味と一致せず、「8回のため息」が最初に広まった誤訳だったという逸話がある。
一方で、翻訳が増えるほど“間”の再現が難しくなり、言語差やフォント差により八句の体感が崩れる問題が起きたとされる。結果として、国ごとに独自基準が作られ、「文字間派」「時間間派」など対立的な流派が生まれたと報告されている。
ここで八句を取り巻く問題(著作権/表現規制)[編集]
ここで八句は、テンプレ頒布が盛んであるため、他者の文章を素材として混ぜる行為が問題化しやすいとされる。特に、既存の歌詞・ラップ・詩を“八句に再編集”することで、元の権利処理が曖昧になるケースが指摘されている。
また、表現規制の観点では、自己言及の文脈が“煽り”や“誘導”に転じることがあるとされる。たとえば最後の句が強い断定調になると、コメント欄が荒れやすいと警告され、配下の相談窓口に「遅延が炎上を長引かせるのでは」との相談が寄せられたという、いわゆる都市伝説的な報告もある。
ただし、実際の運用では、ここで八句ヤーが引用の境界線を守るための“八句式チェックリスト”を作った例もあるとされる。たとえば「元作品の改変率を(目視で)45%未満にする」「最後の句で元の文言をそのまま出さない」など、やけに細かい基準が共有されたとされるが、これらは法的な裏付けではなく慣習として扱われている。なお、要出典として「判定の根拠は句間のみにある」とする資料が挙げられることがある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渋八『読者の呼吸を測る方法』渋八出版, 2002.
- ^ 渡辺精一郎「八区切り配置の体感遅延効果」『言語遊戯学会誌』第12巻第4号, pp. 33-58, 2004.
- ^ 句屋編集部『ネット句文の作法:8つの間』句屋ライブラリ, 2010.
- ^ Anonymous「Kokode-Hakku and Scroll Friction: A Micro-tempo Study」『Journal of Internet Subculture』Vol. 7 No. 2, pp. 101-119, 2016.
- ^ 金成洙『8パルス翻訳の誤差論』韓国メディア研究叢書, 2018.
- ^ 佐藤みゆき「コメント欄儀礼としての句間」『サブカル研究季報』第5巻第1号, pp. 1-24, 2013.
- ^ International Meme Timing Association「Delay as Aesthetic: Experimental Findings on Eightfold Chunking」『Proceedings of the Meme Timing Conference』第3巻, pp. 200-215, 2021.
- ^ 林田コウ「句間が炎上を長引かせる条件」『表現と運用の社会学』第9巻第3号, pp. 77-99, 2019.
- ^ 総務省情報流通相談室『ネット上の紛争未満事例集(暫定版)』令和2年度, pp. 12-19, 2020.
- ^ Abe, H.『テンプレ頒布の法的グレーゾーン』World Copyright Press, 2017.
外部リンク
- 句間アーカイブス
- ここで八句ヤー手帖
- テンプレ頒布所
- 反応遅延研究会
- 字幕八段倉庫