ぴーぴーぴーぴーやってんね 笑
| 分野 | サブカルチャー・ネット文化 |
|---|---|
| 主な媒体 | 画像掲示板、短文投稿サイト、動画コメント欄 |
| 成立時期(とされる) | 2008年前後 |
| 使用場面 | 実況・ノリ・相槌・儀式的挨拶 |
| 形態 | 伸ばし記号+擬音+「やってんね」+笑 |
ぴーぴーぴーぴーやってんね 笑(ぴーぴーぴーぴーやってんね わらい)は、特定の動作リズムに合わせて発話するネット定型文を指す和製英語・造語である。〇〇を行う人はぴーぴーぴーぴーヤーと呼ばれる[1]。
概要[編集]
は、インターネット上で「あるあるの動き」を見た瞬間に、拍子を崩さず返すための定型文として知られる用語である。明確な定義は確立されておらず、場の空気によって意味が微妙に変化する点が特徴とされる。
この定型文は、文字列そのものよりも発話の間(ま)と、返信のタイミングに価値があるとされるため、愛好者の間では「呪文」「同期砲」「コメント儀礼」などの別名で語られることが多い。インターネットの発達に伴い、動画のコメントが「会話」から「合図」へ移行する過程で、特に親和性の高い表現として頒布が広がったとされる[2]。
定義[編集]
本用語は、(1)擬音部としての、(2)観察・評価を示す、(3)態度を確定させるの3要素から構成される表現を指す。〇〇を行う人をと呼ぶ慣習があるが、誰が何を「ぴーぴー」と見なすかについては、明確な線引きがないとされる。
一般には、ゲーム実況、歌ってみたの音程追い、手描きMADのタイミング調整、さらには体操やダンスの動作すべてに接続されうる、可変的な相槌語として位置づけられている。とりわけ「やってんね」は、驚きというより“その場でやっていることを認める”機能を持つとされ、によって敵意が中和されるため、対話が円滑になると主張される[3]。
なお、厳密な定義が確立されていないことを理由に、近年は「は“内容”ではなく“速度”を笑う」とする解釈も増えている。言い換えると、テキストは変形してもよいが、返信の“遅れ”だけは許容されないとする思想である[4]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は、匿名掲示板「」に投稿されたとされる短い実況ログにある。投稿者は自分の回線状態を「ぴーぴーぴーぴー」と表現し、相手が同じ遅延の動きを見せたときに“やってんね”と返したのが始まりだと説明された、とされている[5]。
このログは、2007年12月の深夜帯(午前0時〜午前0時37分)に集中して転載されたとされ、転載の際に最後へが付け足されたことで、単なる回線ネタから社交儀礼へ変わったという。ここで重要なのは、「回線遅延=笑い」の構図が、次第に「動きの同期=笑い」へ転用された点だと、のちにまとめサイト編集者のが解説したとされる[6]。
一方で、別説として「特定のリズムゲームの入力音が“ぴーぴーぴーぴー”に聞こえた」ことから始まったという主張もある。ただし、当該リズムゲーム名は記事ごとに伏せられ、関連ログのURLも時間とともに失われたため、検証は難しいとされる。
年代別の発展[編集]
2008年〜2011年頃は、主に画像掲示板での「返信テンプレ」として頒布が進んだ。愛好者が“返信までの文字数”を統一しようとした結果、定型文の合計文字数がちょうど「10〜12文字付近」に収束したとも言われる。実際、当時の検索ログでは類似投稿が月平均約1,260件観測されたという報告があり[7]、掲示板の規模(閲覧者数)に応じて変動したと説明されている。
2012年〜2014年頃には、動画サイトのコメント欄で「ぴーぴーぴーぴーやってんね 笑」の“入るべき場所”が議論されるようになった。ここでは、(a)サビ前の息継ぎ、(b)技が決まる瞬間、(c)画面が切り替わる1フレーム前、という3タイプに分類されるとされるが、愛好者の間ではどれが正しいかが争点とされることもあった。
2015年〜2020年頃は、スマートフォン普及とともに短文文化が加速し、定型文がスタンプ化・音声化された。とくに、音声読み上げが「ぴーぴーぴーぴー(0.8秒)→やってんね(1.1秒)→笑(0.2秒)」という“間の設計”として共有されたとされる。なお、この秒数はあるファンが動画をフレーム単位で計測した結果だとされるが、明確な出典が乏しい[8]。
インターネット普及後[編集]
インターネットの発達に伴い、は単なる返しから、コミュニティの認証手段へ寄っていった。つまり、投稿者が“正しいタイミングで”定型文を使ったかどうかが、その人が界隈の作法を知っているかの目安になったとされる。
この変化は、地域や年齢を超える一方で、作法を知らない参加者には敷居が高くなった。結果として、用語の解釈をめぐるミーム辞書(非公式)が多数作られ、翻訳サイト経由で海外にも「Pee-Pee-Pee-Pee running lol」という見出し名で散布されたとされる[9]。
また、近年はAI音声や自動コメント生成の普及により、用語が“人間の間”として評価されなくなるのではないかという懸念も指摘されている。もっとも、愛好者は「間はテンプレではなく“空気の理解”である」と反論している。
特性・分類[編集]
は、(1)観察、(2)同期、(3)中和の3機能を同時に持つとされる。観察はが担い、同期はの伸ばし記号とリズムで表現される。中和はが担い、強い断定を避ける方向へ働くとされる[10]。
分類としては、コメント欄での用途により「即時返礼型」「儀礼挨拶型」「反復検算型」の3つがよく挙げられる。即時返礼型は“今起きた現象に反応する”タイプで、儀礼挨拶型は動画開始10秒前後で挨拶代わりに投げる。反復検算型は、同じ動きが繰り返された際に、あえて同語を再送して“見誤っていない”ことを確認するための使い方だとされる。
さらに細かい運用として、定型文の末尾に感情語を増やす派生(例:「〜笑ね」「〜わらわら」「〜草」)があり、これらは“地域方言化”と呼ばれることがある。もっとも、どれが本家に属するのかは明確な基準がないため、界隈ごとの解釈差がしばしば生じると指摘されている[11]。
日本における〇〇[編集]
日本では、は特に実況文化と親和性が高いとされる。たとえば、の大型配信イベント「シンクロ広場渋谷(仮称)」では、終了直後のアフタートークに合わせて一斉投稿が発生し、主催側が“公式の空気合図”として告知したことがあるとされる[12]。
また、同語は二次創作のコメントにも浸透し、手描き・作画MADのコメント欄で「崩れないタイミング」を評価する指標として使われたとも言われる。ここで“タイミング”とは、絵の切り替えではなく視聴者の認知が追いつく瞬間を指す、とする説明がされている。
一方で、作法が固定化するにつれ、誤爆(文脈に合わない投稿)に対する反感も生まれた。ぴーぴーぴーぴーヤー同士の中でも、誤爆は「回線遅延のふりをした嘘」「空気を盗んだ行為」とみなされることがあり、軽い罰として“別の定型文で謝罪する”儀式が広まったとされる[13]。
世界各国での展開[編集]
世界各国での展開は、翻訳ではなく“音”と“間”の共有を軸に進んだとされる。英語圏では、コメント欄の文脈を保ったまま「Pee-Pee-Pee-Pee Running Lol」という見出しが付けられ、配信動画の実況コメントとして定着したとする報告がある[14]。
欧州では、ドイツ語圏のミームコミュニティが「ぴー」を語頭の伸ばし記号に相当する記号へ置換する試みを行い、同語の“速度”を表すために、投稿時刻を秒単位で合わせる文化が生まれたとされる。もっとも、これはプラットフォームの仕様に依存するため一律ではないとされる。
アジア圏では、日本語のまま使われる傾向が強く、コミュニティ名としてが転用されるケースもあった。なお、この転用が進んだ理由として、音声認識による文字化が日本語の擬音を比較的拾いやすかったことが挙げられる。ただし、当時の実験条件は不明であるとされる。
〇〇を取り巻く問題(著作権/表現規制)[編集]
は、短い定型文であるため、著作権上の争点になりにくいと考えられてきた。しかし、界隈の中では「定型文そのもの」よりも、特定の動画シリーズに結び付いた使用パターン(入る場所、タイミング、セットの文面)が“実質的な表現”として扱われる可能性が議論された[15]。
また、表現規制の観点では、プラットフォームによって「嘲笑」「からかい」に該当しうる文言として誤検知される例があるとされる。実際、ある配信者の報告によれば、を含む投稿が、一定期間で平均約18%低く表示されたとされるが、原因の切り分けは難しいとされる[16]。
さらに、AIコメントによる自動生成が増えたことで、「人間の間」を模倣する行為が“文脈泥棒”として批判されるようになった。一方で、AI時代の新しいコミュニケーションとして擁護する声もあり、界隈では一定の分裂が観測されたとするまとめが見られる[17]。
このような問題を受けて、愛好者の一部は「文脈を読んだ上での使用のみを正統とする」とする運用指針を出した。しかし、明確な罰則や共通ルールは存在しておらず、結局のところ各コミュニティの“空気”が最終判断を担う構図が続いている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 森川トモキ「伸ばし記号に宿る同期—『ぴーぴーぴーぴーやってんね』の社会言語学的考察」『情報掲示文化研究』第7巻第2号, pp.12-31, 2016.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton「Timing as Identity: Internet Ritual Phrases in Live-Comment Systems」『Journal of Digital Folk Linguistics』Vol.14 No.3, pp.201-229, 2019.
- ^ 田中良介『ミームの間(あいだ)学』角栄書房, 2021.
- ^ 【要出典】佐伯ルイ「儀礼挨拶型の成立条件と“誤爆”罰則の伝播」『配信コメント行動学研究』第3巻第1号, pp.44-58, 2018.
- ^ 藤堂ハル「テンプレの境界線—定型文と実質的表現のあいまいさ」『知財とネット表現』Vol.22 No.4, pp.77-96, 2020.
- ^ Katarina Voss「Semiotic Compression in Short Replies Across Platforms」『European Review of Meme Studies』Vol.9, pp.1-18, 2017.
- ^ 小林マコト『掲示板から始まる儀式—東雲ログの検証』新月社, 2015.
- ^ 匿名「昼夜掲示板_東雲 月次ログ統計(抄録)」『東雲運用報告』第1巻第12号, pp.3-9, 2009.
- ^ Ryo Sato「Automated Replies and the Decline of Human Timing」『Proceedings of the Friendly Algorithms Workshop』pp.55-66, 2022.
- ^ 遅延研究会『回線遅延と笑いの経済学』青磁出版, 2013.
外部リンク
- ぴーぴーぴーぴー解析ノート
- 同期砲まとめWiki
- コメント儀礼タイミング表(非公式)
- ミーム辞書アーカイブ
- 東雲ログ復元プロジェクト