しばいぬもこもこ事件
| 名称 | しばいぬもこもこ事件 |
|---|---|
| 発生年 | 1997年 - 2004年 |
| 発生地 | 東京都、静岡県、神奈川県の一部 |
| 原因 | 被毛膨張、飼育環境、地場産ハーブの摂取説 |
| 分類 | 犬体質異常、地域風俗事件 |
| 関係機関 | 環境省動物毛量対策班、東西毛並文化研究会 |
| 影響 | 展示会中止、観光ポスター刷新、飼育基準の見直し |
| 通称 | もこもこ騒動 |
しばいぬもこもこ事件(しばいぬもこもこじけん)は、においての被毛が異常なほど増毛し、外観が「もこもこ」と判定された一連の騒動を指す。主にからにかけてとで観測され、後年はおよびの交差点に位置づけられている[1]。
概要[編集]
しばいぬもこもこ事件とは、の個体が季節変動を超えて過剰に膨張した被毛を示し、見た目が綿菓子状になった現象、およびそれをめぐる・飼育者・愛犬家団体の混乱を指す名称である。事件名は、の地方紙が最初に用いた「もこもこ化」という表現が定着したことに由来するとされる[2]。
この現象は単なる美容上の流行ではなく、展示基準、犬種標準、地域振興の三者が衝突した稀な事例として扱われる。なお、当時のは「被毛の増加は環境応答の一種」としたが、同時期に一部の飼育者が抽出液を与えていたとの指摘もあり、真相はなお揺れている[3]。
発端[編集]
事件の発端は夏、の民家で飼育されていた雌の柴犬「ミツ」が、換毛期を過ぎても抜け毛が減らず、逆に被毛の密度を増していったことにあるとされる。飼い主が近隣の周辺で散歩させた際、観光客が「ぬいぐるみが歩いている」と誤認し、写真が地域情報誌『かまくら月報』に掲載されたことが拡散の起点であった。
翌年には、、の計14頭に類似例が報告され、うち6頭は体重増加がほぼないにもかかわらず胸囲のみが平均で12.4センチ増加したという。これにより、単独個体の奇矯な現象ではなく、地域的な「もこもこ傾向」として認知されるようになった。
経緯[編集]
毛並み認定の導入[編集]
、の外郭に置かれた臨時研究班「動物外観変動観測室」は、被毛密度を数値化するための簡易基準を策定した。そこでは、側腹部の毛束が3秒以上自重で落下しない場合を「第1級もこもこ」、耳の縁が視認不能な場合を「第2級」と定義したが、現場では測定器が湿度に弱く、同じ犬でも午前と午後で等級が変わることがあった[4]。
この基準は、当初は学術的参考値にすぎなかったが、やが広告に転用したことで、事実上の流通規格として機能し始めた。とくに周辺の輸入雑貨店では、もこもこ犬に合わせた小型マフラーが爆発的に売れ、事件は一気に商業化した。
熱海会談と封じ込め[編集]
には、の旅館「潮騒亭」で関係者会談が開かれ、犬種保存会、獣医師、観光協会が対応を協議した。会談では、被毛過多の柴犬を「地域の顔」として扱う案と、通常の標準体型へ戻すためにの使用を制限する案が対立した。
最終的には「撮影用・展示用の二系統運用」が採択されたが、実務は複雑で、温泉街の案内板に写る犬の毛量が季節ごとに変わるため、翌年の観光パンフレットは全87種類に増刷された。印刷所は後に「犬の毛一本で版下を3回差し替えた」と証言している。
再燃と全国化[編集]
、のドッグランで同様の毛量増加が確認されたことで、事件は全国化した。特に寒冷地では「寒さによる自然防御」と説明しやすかったため、自治体は対応を先送りにしたが、結果として、、でも小規模な「もこもこ展示会」が開かれた。
この時期、系の情報番組が特集を組み、スタジオ内に導入された試験個体が照明熱でさらに膨張したため、番組は冒頭8分でCMに切り替えられた。視聴率は12.8%を記録したとされるが、内部メモには「犬の顔が見えない」とだけ記されている。
原因説[編集]
原因については複数の説が並立している。もっとも流布したのは、西部で採取された野草「モコノミ草」の摂取により、毛根の休眠周期がずれたとする説である。一方で、の地域観測班は、梅雨後の高湿度と塩分を含む海風が毛束の立ち上がりを促したと報告した。
しかし最も奇抜でありながら、一部で根強いのが「飼い主が犬用ブラッシングにの技法を誤用した」という説である。これによれば、週3回のブラッシングがかえって被毛表面の空気層を整え、結果として犬が毎朝ひとまわり大きく見えたという。なお、この説はとされたまま今日に至っている。
社会的影響[編集]
事件は犬種愛好家に留まらず、地域行政と商業デザインにも影響を及ぼした。には内の土産物店の42%が、柴犬を「もこもこ化」した意匠へ切り替え、柴犬まんじゅう、毛並みタオル、ふわふわ絵はがきが流通した。
また、の広告代理店では「視認距離3メートルで感情を喚起する動物」をテーマに研究が行われ、犬の輪郭を曖昧にする印刷技術が開発された。これが後の「ソフト・エッジ地方PR法」の先駆けになったとされるが、実際には単に写真的にピンぼけしていただけであるという反論もある。
批判と論争[編集]
批判の中心は、事件が犬の健康問題を装いながら実質的には観光振興に利用された点にあった。の一部は、被毛増加の背景に栄養過多や投薬の問題があると警告したが、観光協会は「毛量は地域資源である」と主張し、両者は激しく対立した。
また、に公表された調査報告書『柴毛量と街の幸福感の相関』は、もこもこ犬の存在が商店街の売上を平均18.7%押し上げたと結論づけたが、計算式にの売上が二重計上されていたことが後に判明した。これにより、報告書の信頼性は大きく揺らいだ。
その後[編集]
事件終息後、過度にもこもこした柴犬は「特別保護展示個体」として登録され、の民間施設『日本被毛文化資料館』に3頭が移送された。館内では被毛の年輪を観察できる「毛芯断面標本」が人気を博し、年間約4万2千人が来館したという。
一方で、一般家庭では「毛量を上げすぎない飼育」が推奨され、ブラッシング回数を1日2回から1回に戻す指導が広まった。これにより、事件は一見すると収束したが、現在でもやの展示会で「柴犬的ふくらみ」が話題に上ることがある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯真一『柴犬被毛変動史序説』東西動物文化出版, 2005.
- ^ Margaret L. Hargrove, "Seasonal Fur Expansion in Domestic Canines", Journal of Applied Ethology, Vol. 18, No. 2, 2006, pp. 114-139.
- ^ 小松原理香『もこもこ経済と地方観光』青潮社, 2007.
- ^ Kenji F. Morita, "The Atami Conference and the Politics of Fur", Pacific Animal Studies Review, Vol. 7, No. 1, 2004, pp. 21-44.
- ^ 田所裕也『犬体質の社会史』北浜書房, 2008.
- ^ Emily R. Stone, "Visual Density and Pet Advertising in Late-1990s Japan", Media & Society Quarterly, Vol. 12, No. 4, 2009, pp. 201-228.
- ^ 『柴毛量と街の幸福感の相関』静岡県地域政策研究所報告書第14号, 2004, pp. 3-58.
- ^ 中村芳樹『被毛の都市伝説学』みずほ文庫, 2010.
- ^ Hiroshi A. Tanabe, "Canine Puffiness and Microclimate Effects", International Journal of Companion Animal Science, Vol. 9, No. 3, 2003, pp. 77-96.
- ^ 『日本被毛文化資料館年報』第2巻第1号, 2011, pp. 5-19.
外部リンク
- 日本被毛文化研究ネットワーク
- 東西毛並文化研究会
- 静岡観光資料アーカイブ
- 動物外観変動観測室データベース
- かまくら月報デジタル版