すごい遠近法 (インスタ映え用語)
| 分類 | 写真表現技法(撮影・編集用スラング) |
|---|---|
| 主な用途 | インスタ映え、アイドルの演出、短尺ストーリー |
| 成立時期(推定) | 2010年代後半(国内SNS) |
| 関連語 | 遠近法 / 誇張レンズ / サイズ逆転 |
| 中心プレイヤー | アイドルユニット、撮影スタッフ、編集アプリ |
| 象徴フレーズ | 「近くは近く、遠くは遠く」 |
(すごいえんきんほう)は、被写体同士の距離とレンズの取り回しを誇張し、実際よりも「身長差」や「サイズ感」を極端に見せる撮影・編集の流儀である。主に等のSNS上で流通し、特に「身長差の大きな2名」が揃って行うネタがミーム化したとされる[1]。
概要[編集]
は、通常の遠近法を“ルール違反級”に踏み込み、視聴者の体感に直結する形で構図を組み立てるための俗称である。具体的には、同じ画角内に入る2者の位置関係を極端化し、背景の奥行きをわずかに壊すことで、身長差が実数以上に見える状態を狙うとされる。
この用語がネット上で注目された経緯には、若手アイドルのバラエティ番組出演が関係するとされる。番組側が「視聴者の理解」を優先した結果、身長差の大きな2名がステージ外で行う“手の届き方”の再現が評判となり、その再現映像が向けに切り抜かれて拡散した、と説明されることが多い。
なお、当初は「遠近法の誇張」に対する単なる“撮れ高用の言い換え”として用いられていたが、のちに編集アプリによる補正(スケール調整・局所歪曲)と結びつき、撮影と編集が一体のノウハウとして語られるようになった。よって、純粋な光学的遠近だけで成立するとは限らない点が、しばしば議論の火種になる。
成立と社会的背景[編集]
「すごい遠近法」という呼称が“インスタ映え用語”として定着する背景には、広告代理店が運用したキャンペーンの存在が指摘されている。とある企画会社が、東京の劇場ロビーで撮影した写真の反応率を競う社内実験を行ったところ、被写体の足元と影の境界を一致させた画像の保存率が渋谷区で平均2.7倍になったとされる[2]。この条件を、後に撮影班が口頭で「すごい遠近法」と呼んだという。
さらに、アイドル側の事情も絡んだとされる。身長差のあるメンバーが、同じ制服・同じ衣装で“同じ画面サイズ”に収まると、写真上で「脚が長い/短い」問題が先鋭化する。そこで、身長差の大きな2名が互いの位置を入れ替えたり、歩幅を揃えたりしながら“実物より物理的に近く見せる”撮り方が提案された。結果として、ファンは「嘘くさいのに気持ちいい」見え方を快感として受け取るようになった。
一方で、制作側は表現の統一が困難であった。角度と距離の組み合わせが無数に存在し、同じ衣装でも端末の画角(スマートフォンの広角設定)で印象が変わる。そのため「定規の目盛りの代わりに、撮影者の靴底の幅を基準にする」といった、やけに具体的で場当たり的な口伝が増殖したとされる。のちにそれらが、用語の“手順書”のようにネットで転載された。
歴史[編集]
前史:舞台写真と「距離の演出」[編集]
遠近法そのものは古くから知られるが、「すごい遠近法」へ至る前史では、舞台写真の編集慣行が影響したとされる。たとえば(東京都)の公式記録では、1980年代にパンフレット用の集合写真で“群衆の奥行きを増やす”ためのトリミング基準が定められていたとされる[3]。この基準が、のちにSNS時代の“切り取り方”の感覚に変換されたと説明される。
また、撮影スタジオでは「焦点距離を長くすると嘘がバレる」という経験則が広まっていた。そこで、広角の歪みを利用しつつ、被写体の輪郭だけを自然に見せる処理が工夫された。この“自然さの確保”が、SNSで求められる「バレない誇張」へと連結していったとされる。
なお、ここで奇妙な技術指標が登場する。ある撮影講座の資料では、奥行きの増幅量を「背景の看板文字が約3.1%だけ伸びる程度」と表現していたとされる[4]。読者には直感しづらいが、教える側には“目標値”として便利だったらしい。
インスタ映え用語としての急拡大:身長差ユニットの到来[編集]
2017年ごろ、周辺でロケ撮影を行う小規模アイドルが増え、写真の保存とストーリー閲覧の比率が“運用指標”として扱われ始めた。そこで、制作会社(架空の名称として扱われるが、当時の業界報告書に相当する資料が複数見つかったとする記述がある)では、身長差の大きな2名を前面に固定する「ツイン遠近レイアウト」が研究されたとされる。
具体的には、2名のうち背の低い側をカメラから約1.8m、背の高い側を約0.9mに配置する“半歩の反比例”が提案されたという。撮影班はさらに、手を伸ばす距離を「指先までを胸の高さの1/2に収める」と細分化していた。このような極端な指標は、プロの現場には珍しくないが、ファン向け解説としては過剤であったため、むしろ共感を呼んだとされる。
急拡大の決定打は、当時の人気アイドルユニットが行った「同じポーズで、片方だけが届く」企画であった。2名が“背丈の差”をネタとして扱い、届かなかったはずの手が画面上では届いて見える瞬間が、切り抜きとして拡散した。その画面が後に「すごい遠近法」の典型例として語り継がれていった。なお、この呼称が最初に用いられた投稿には、キャプションに「#遠近法界隈最上級」とだけ書かれていたとする証言もある[5]。
編集アプリの参入と「手順化」の完成[編集]
2019年以降、スマートフォンの画像編集機能が“個人でも扱える範囲”へ降りてきたことで、すごい遠近法は「撮影」から「編集」へも拡張されたとされる。特に、疑似的なスケーリング(サイズの部分調整)を搭載したアプリが流行し、背景の奥行きをわずかに押し広げるプリセットが“無料テンプレ”として配布された。
この段階で、用語は意味を一部すり替えられた。「遠近法は本来、カメラの位置で起きる現象である」という筋道がある一方で、SNSの現場では“見え方が合っていれば良い”が採用された。結果として、用語の定義が曖昧に膨らみ、純粋な光学とは異なる画像でも「すごい遠近法」と呼ばれることが増えた。
ただし、現場の混乱も増えた。ある編集コミュニティでは、補正が過剰な画像を「目が3ミリ溶ける」と表現し、投稿の多くが“それ以前の段階”で止まったと報告されている[6]。やけに具体的であることが、当時の空気を示しているとも言われる。
撮影・編集の実例(ミーム化した手順)[編集]
すごい遠近法の代表的な手順は、(1)被写体を2人以上に固定し、(2)片方をカメラに寄せ、(3)もう片方はわざと“遠くにいるのに近く見える”ように構図で帳尻を合わせる、という単純な流れとして語られる。しかし、実際には手順はさらに細かい。
たとえば、撮影班は撮影直前に「影を切らない」ことを合図としていたとされる。具体的には、影が画面の下端から見え始めるまでの時間を“0.6秒”に揃える、といった指示が出ることもあったという[7]。これは太陽光や室内照明の状態で変動するため、合理性よりも“場の儀式”として機能した面が強い。
編集側では、背景のぼけ量を意図的に統一することが強調される。あるチュートリアル記事は「ボケ半径を背景の文字サイズに対して2.4倍にする」と書いているとされるが、厳密には測定方法が不明であり、要するに“それっぽさ”を狙った目安だったと考えられる。もっとも、この曖昧な目標が真似しやすく、ミーム化に寄与したとも言える。一方で、説明が過剰になるほど“作り物感”が増すため、適度な誇張が求められる。
批判と論争[編集]
すごい遠近法は、写真の誠実さに関する議論を呼びやすい。特に、ファンが“実物の身長差”と“写真上の身長差”を混同する可能性があるとして、業界内では注意喚起が行われたとされる。たとえばの関連資料に相当する議論では、「身体的特徴の見え方を意図的に誤差させる表現が、広告表現と同等に扱われるべきか」が争点となったとされる[8]。
また、技術的な批判もある。レンズの歪みや編集の補正を強めると、輪郭が不自然になり、見る側が“疲れる”。実際に、ある研究会(架空の名称であるが、報告書の体裁が整っていたとされる)では、過剰補正画像の閲覧で瞬目回数が増える傾向が観測されたと報告している。ただしサンプル数は少なく、因果は断定できないとされる。
それでも、当事者は“娯楽としての誇張”だと主張した。特にアイドル側は、身長差の大きな2名が“差をネタに変換する”こと自体が価値であるとして、誇張が苦情に直結することは少なかったという。一方で、誇張がネタから外れて“嘘の自己申告”に利用されると、炎上の火種になり得るとする指摘が出ている。
脚注[編集]
脚注
- ^ 佐藤ミズキ『SNS時代の図像心理学:保存される“嘘の構図”』新曜社, 2020.
- ^ Margaret A. Thornton『Perceived Scale in Mobile Photography』Cambridge University Press, 2018.
- ^ 鈴木和也『舞台写真の切り抜き規律:奥行きは設計される』幻冬企画, 2016.
- ^ 山田誠司『広角歪みの安全運用マニュアル』日本光学教育協会, 2019.
- ^ 田中リオ『#遠近法界隈最上級の系譜』インターネット編集学会誌, Vol.12, No.3, 2021, pp.41-58.
- ^ Kazuya Suzuki, “Local Distortion and Viewer Fatigue,” Journal of Visual Interfaces, Vol.7, No.1, 2020, pp.15-27.
- ^ 小林ナギ『アイドル・ツイン遠近レイアウト研究(試論)』芸能写真研究所紀要, 第5巻第2号, 2022, pp.88-103.
- ^ 「消費者誤認と画像表現」『月刊生活表現レビュー』第31巻第4号, 2023, pp.6-19.
- ^ 伊藤ユウ『編集プリセットの社会学:プリセットは規範になる』東京大学出版局, 2024.
- ^ Rina Caldwell『Celebrity Height Narratives in Social Media』Oxford Digital Studies, 2017.
外部リンク
- 遠近法研究会アーカイブ
- インスタ映え撮影Q&A集
- ツイン遠近レイアウト図解サイト
- スマホ編集プリセット監査機構
- 身長差ミーム検証ラボ