ずんだもんが猫をめっちゃ食べる動画
| 名称 | ずんだもんが猫をめっちゃ食べる動画 |
|---|---|
| 別名 | 猫食いずんだ動画、ずんだ過食演出 |
| 発祥 | 東北地方の動画投稿圏 |
| 初出 | 2017年頃とされる |
| 主な媒体 | YouTube、ニコニコ動画、X |
| 関連技術 | 合成音声、切り抜き編集、擬音字幕 |
| 特徴 | 過剰な咀嚼音、誤解を誘うサムネイル、倫理的緊張 |
| 代表的論点 | 表現の自由、動物愛護、ミーム汚染 |
| 影響 | 同人音声・料理動画・動物系ミームに波及 |
ずんだもんが猫をめっちゃ食べる動画は、で生まれたキャラクターが、猫を大量に食べるように見える演出を用いた、インターネット上の過激な実験動画群である。主にの動画文化のなかで拡散し、サムネイル芸と、さらには批評を奇妙に接合した現象として知られている[1]。
概要[編集]
本項目は、実在のを素材にした二次創作動画のうち、猫を食べるように見せる編集上の誤読を誘発する作品群を指す。もっとも、実際に猫が食べられるわけではなく、ほとんどの作品では、、、あるいは低温で固めたが高速カットで重ねられている。
この現象は、単なる悪趣味なネタとしてではなく、周辺で発達した「食べる音」と「食べているように見える構図」を巡る演出競争の到達点として理解されることが多い。また、視聴者がタイトルだけで内容を誤認する構造が、との相性を異様に高めたと指摘されている。
成立の背景[編集]
起源は秋、の個人投稿者が公開した短い実験映像にさかのぼるとされる。そこでは、ずんだもんが手元の皿へ顔を近づけるだけの映像に、過剰な咀嚼音と字幕「めっちゃ食べる」を重ねただけであったが、コメント欄で「猫の形に見える」と誤認されたことが拡散の契機になった。
当時の投稿界隈では、由来の「字幕の勢いで真実をねじ曲げる」手法が流行しており、これにのサムネイル最適化が合流したことで、タイトルと内容の乖離を極限まで広げる文化が形成された。なお、初期の作者は後年のインタビューで「猫という単語を入れたのは再生数調整のためで、深い意味はなかった」と述べているが、同時に「3回に1回は本当に猫に見える」とも語っており、真偽は不明である[2]。
歴史[編集]
黎明期[編集]
からにかけては、主に個人配信者が「食べる音を強調したずんだもん動画」を制作していた。最初は風の穏当な作風であったが、やがて編集速度が増し、の動画にの切り返しとの口元ズームが入るようになった。
この時期の代表作とされる『ずんだもん、猫をひとくちで理解する』は、再生数を記録した一方、視聴者の半数が「猫を食べる動画」だと信じたため、投稿者が説明文に「実際には食べていません」と追記する事態になった。
拡散期[編集]
以降、系の合成音声環境が普及すると、誰でも短時間で「ずんだもんが何かをめっちゃ食べる」形式の動画を量産できるようになった。とりわけの土産物紹介と結びついた作品では、猫の代わりに魚型のや、猫耳形に成形したが用いられ、結果として「猫のように見える食品を食べる動画」が自己増殖した。
この頃、の時期に投稿されたある動画が、飾りの短冊を尾に見立てられたことで海外ミーム化し、英語圏では“cat-eating Zundamon”として半ば独立したジャンルを形成した。もっとも、英語圏では猫の意味がより文字通りに受け取られやすく、後述する批判の一因となった。
制度化と分岐[編集]
頃には、動画投稿者の一部が「猫を食べるように見えるが実際は食べない」ことを明文化した自主規約を作成し、タイトルにを添える慣行が生まれた。これにより、過激さを維持しつつ動物愛護の批判をかわす形式が定着したが、一方でサムネイルだけを見た新規視聴者が炎上へ巻き込まれる事例も増えた。
また、の情報行動研究グループが2023年に発表したとされる調査では、対象動画のが「猫」という語を含むにもかかわらず、実際の映像内で猫が登場する割合はにとどまった。研究チームはこれを「語義の過剰先行」と呼んだが、同論文は査読段階で「食文化研究として成立しているか疑義がある」とも評された[3]。
表現技法[編集]
この種の動画の核心は、そのものよりも、視聴者に「何を食べているのか」を確定させない編集にある。たとえば、皿を映すカット、ずんだもんの頬のアップ、猫の足跡スタンプ、そして何の関係もないの街並みを一瞬差し込むことで、脳内で因果関係が補完されるよう設計されている。
また、字幕文化も独特である。たとえば「めっちゃ食べる」「うますぎて猫になる」「カロリーが消える」といった文言が、単位で切り替えられる。これにより、内容は完全に不明であるにもかかわらず、勢いだけで最後まで見せる効果があるとされる。
社会的影響[編集]
社会的には、まずキャラクターの利用範囲を大きく押し広げた点が挙げられる。従来、ずんだもんは解説動画や雑談に用いられることが多かったが、本現象以後は「食べる」「噛む」「飲み込む」といった身体性の強い表現にも投入されるようになった。
一方で、動物愛護団体の(通称JAVEC、実在しない)が2021年に「猫を食べると誤認される映像は、再生回数が高くても公共性に乏しい」とする声明を出したとされる。この声明は、むしろ動画の知名度を押し上げる結果になったともいわれ、いわゆるステライザ効果の典型例として引かれることがある。
批判と論争[編集]
批判の中心は、動物虐待を想起させる表現であること、ならびにサムネイル詐欺に近い構造であることの二点である。特にのある動画では、サムネイルに猫の前足が大写しになっていたため、視聴前に通報した利用者がに達したとされ、投稿者が翌日「実際には猫ではなくである」と弁明したことでかえって火に油を注いだ。
なお、擁護派は「猫を食べるのではなく、猫をめっちゃ食べる“ことにされる”文化である」と主張するが、この説明はほとんど禅問答に近い。また一部の評論家は、本件をのテレビバラエティに見られた過剰演出のデジタル版だと位置づけているが、当事者の多くはその比較を嫌っている。
代表的な作品[編集]
『ずんだもん、猫をひとくちで理解する』(2018年)は、短尺ながら後年の典型をほぼすべて含んでいる作品である。映像の大半は空の皿とずんだもんの頷きで構成され、猫は最後まで出てこないが、コメント欄が「猫がうまそう」「猫の出汁がする」といった文句で埋まったため伝説化した。
『猫を食べる前に東北を知れ』(2021年)は、の観光案内と合体した教育動画である。制作側は猫を一切出さず、代わりにを無限に飲ませることで“食べる欲望”を回避しようとしたが、逆に視聴者から「猫より飲んでいる」と評された。
『めっちゃ食べるずんだもんと一匹の静物』(2024年)は、美術館コラボ作品として制作された。静物画の前でずんだもんが無音で咀嚼するだけの6分間映像であったが、の外部上映で想定外の来場者を集め、最終的に展示説明パネルに「本作は猫を食べる内容ではありません」と大書されるに至った。
脚注[編集]
[1] ずんだもん動画史研究会『合成音声ミームの食文化化』仙台メディア史叢書, 2024年. [2] 佐伯冬馬「サムネイル誤認と視聴維持率の相関」『東北インターネット文化研究』第12巻第3号, pp. 41-58, 2022年. [3] K. H. Morita, “Semantic Preemption in Vocal Character Consumption Videos,” Journal of Digital Folklore, Vol. 9, No. 2, pp. 113-129, 2023. [4] 渡辺精一郎『猫に見える食品映像の民俗学』青葉出版社, 2021年. [5] M. A. Thornton, “The Zunda Phenomenon and Its Culinary Misreadings,” Media Anthropology Quarterly, Vol. 18, No. 1, pp. 7-26, 2024. [6] 宮城県映像倫理調査室『誤認される食事表現に関する年次報告書』第4版, 2023年. [7] 平成映像文化研究所編『短尺動画の過剰咀嚼』東北新報出版, 2020年. [8] 黒田梨沙「“猫を食べる”表象における否認の美学」『表象と身体』第7巻第4号, pp. 90-104, 2025年. [9] J. Feldman, “ASMR, Kinship, and Faux Felines,” International Review of Sound Studies, Vol. 5, No. 4, pp. 201-219, 2021. [10] 仙台動画保存館『ずんだもん関連動画目録 2017-2024』館蔵資料集, 2024年.
関連項目[編集]
脚注
- ^ ずんだもん動画史研究会『合成音声ミームの食文化化』仙台メディア史叢書, 2024年.
- ^ 佐伯冬馬「サムネイル誤認と視聴維持率の相関」『東北インターネット文化研究』第12巻第3号, pp. 41-58, 2022年.
- ^ K. H. Morita, “Semantic Preemption in Vocal Character Consumption Videos,” Journal of Digital Folklore, Vol. 9, No. 2, pp. 113-129, 2023.
- ^ 渡辺精一郎『猫に見える食品映像の民俗学』青葉出版社, 2021年.
- ^ M. A. Thornton, “The Zunda Phenomenon and Its Culinary Misreadings,” Media Anthropology Quarterly, Vol. 18, No. 1, pp. 7-26, 2024年.
- ^ 宮城県映像倫理調査室『誤認される食事表現に関する年次報告書』第4版, 2023年.
- ^ 平成映像文化研究所編『短尺動画の過剰咀嚼』東北新報出版, 2020年.
- ^ 黒田梨沙「“猫を食べる”表象における否認の美学」『表象と身体』第7巻第4号, pp. 90-104, 2025年.
- ^ J. Feldman, “ASMR, Kinship, and Faux Felines,” International Review of Sound Studies, Vol. 5, No. 4, pp. 201-219, 2021.
- ^ 仙台動画保存館『ずんだもん関連動画目録 2017-2024』館蔵資料集, 2024年.
外部リンク
- 仙台動画保存館デジタルアーカイブ
- 東北ミーム文化研究センター
- 合成音声表現倫理協会
- 短尺動画民俗誌オンライン
- 猫誤認映像保存委員会