もえあず
| 名称 | もえあず |
|---|---|
| 別名 | 萌え大食術、ミニサイズ飽和芸 |
| 発祥 | 大阪府吹田市周辺 |
| 成立時期 | 2004年頃 |
| 分野 | パフォーマンス芸、食文化、深夜番組 |
| 提唱者 | 東雲アキラ、宮本澪子 |
| 代表的媒体 | 地方局深夜番組、学園祭イベント、商店街タイアップ |
| 象徴色 | 薄桃色 |
| 関連運動 | 小食反転主義 |
もえあずは、におけるとを接続したとされる芸能概念である。一般には発祥のローカルな視聴者参加型企画として知られるが、その成立にはの栄養心理学研究会との深夜番組実験が関わったとされる[1]。
概要[編集]
もえあずは、少量摂食と高カロリー反応を同時に成立させるとされる独自の芸能形式である。外見上は可憐な人物が巨大な料理を前にして驚異的な摂取量を示すという構図をとり、後半にはネット配信と連動した「食べる演技」の一種として定着した。
この概念は単なる大食い企画ではなく、視聴者が「食欲」と「保護欲」を同時に喚起される心理効果を狙ったものとされる。なお、初期の関係者の間では「糖質の可視化」と呼ばれていたが、、実際にはイベント会場の照明演出から偶発的に広まった語であるという説もある。
名称は「萌え」と「大食い」を合わせた通称と説明されることが多いが、の民俗誌研究では、もともと内の甘味処で使われていた接客用隠語「もえ皿あずけ」から変化したとする異説もある。こちらは関係者の証言が少なく、現在でも真偽が分かれている。
成立史[編集]
深夜番組実験期[編集]
もえあずの原型は、に制作の深夜枠『夜食実験室』で行われた「小柄な出演者にだけ大盛り料理を与えると、視聴率が上がるか」という企画にさかのぼるとされる。中心人物とされたのが演出家ので、彼は当時のレンタルスタジオを拠点に、1回あたり平均2.7kgの食材を用いた検証を行っていた。
この時期の出演者には、で栄養心理学を学んでいたが含まれていた。彼女は摂食中の表情変化を詳細に記録し、「咀嚼時の頬筋の動きが視聴者の母性回路を刺激する」と報告したとされる。報告書は全38頁で、うち12頁がうどんの太さに割かれていたという。
商店街タイアップ期[編集]
頃にはの商店街振興組合がこれに注目し、「もえあずフェア」と称する食べ歩きイベントを開催した。参加店舗は17店で、各店が通常の3割増しの盛り付けを行う代わりに、来場者は一口ごとにハート形の札を掲げることが条件であった。
特筆されるのは、当時の広報に使われたポスターで、の地下街で2日間にわたり人だかりができた。ポスターでは、白いワンピース姿の人物が丼鉢を両手で持ち上げる写真に「食べるほど、守りたくなる。」という標語が添えられていた。この標語は後年、の年次報告で「過剰に誠実なキャッチコピー」として引用された。
全国化とネット文化[編集]
に入ると、もえあずはやを通じて全国へ広まった。特に、関西圏のローカル感を残したままの視聴者に受け入れられた点が重要であり、これにより「地方発・顔芸経由・食文化着地」という独特の伝播モデルが成立したとされる。
また、2013年にはのイベントホールで開催された「萌食サミット」で、参加者の平均満腹到達時間を測定する試みが行われた。結果は14分27秒で、前年の記録を1分11秒上回ったが、計測に使われたのが家庭用砂時計だったため、学術的価値には疑問があるとされた。
特徴[編集]
もえあずの特徴は、極端に小柄な身体性と、そこからは想像しにくい摂取能力の対比にあるとされる。観客はまず量に驚き、次に食べ方の上品さに驚き、最後に完食後の「まだ入る」という余白感に驚く、という三段構造が定式化されている。
演出上は、皿の直径、箸の長さ、料理の湯気までが計算されることが多い。とくに以降は、料理の配置を舞台美術として扱う「食卓プロセニアム」の手法が導入され、の小劇場演出家にも影響を与えた。なお、食事開始前に行う深呼吸の回数が7回で固定されることが多いが、これはの寺院で行われていた作法に由来するという説がある。
社会的影響[編集]
もえあずの流行は、に少量高単価の「応援メニュー」を生み出した。2014年時点での飲食店52店舗が、通常サイズの1.8倍の値付けをしたうえで、完食者に限定ステッカーを配布していたという記録がある。
一方で、食べ残しの美学をめぐる議論も生じた。批判者は「食の誠実さを萌えで包んでいるだけだ」と指摘したが、支持者は「むしろ食品ロスへの注意喚起になっている」と反論した。2016年の系討論番組では、もえあずを「食卓における演劇と倫理の交差点」と呼んだ発言が話題になった。
さらに、のイベント文化にも波及し、限定グッズとして「胃袋型マスコット」が発売された。初回ロットは3,200個で、発売から19分で完売したとされる。ただし、実際の出荷数は2,980個だったという内部資料もあり、ここは今なお小さな論争点である。
批判と論争[編集]
もえあずをめぐる最大の論争は、本人の努力を「天然の特性」として消費してよいのかという点にある。とくに頃から、テレビ番組の編集が過度に「弱々しく見える演出」に寄り過ぎているとの批判が増えた。
また、の一部研究者は、もえあず現象が若年層に「食べることの可愛化」を促し、摂食リズムの自己管理を難しくする可能性を指摘した。ただし同研究は対象者数が27名と少なく、しかも半数がイベントスタッフであったため、として扱われることが多い。
一方で、熱心な支持者の間では、もえあずは単なるフードファイトではなく「食文化に対する礼儀作法の再発明」であると解釈されている。特に地方の老舗店では、もえあず風の盛り付けが「客を驚かせるが、皿は汚さない」という点で高く評価された。
後世への影響[編集]
には、もえあずの影響を受けた派生概念として「しずあず」「しょくあず」「リモあず」などが登場した。いずれも、少人数配信や短時間完食を前提とする新しい形式であるが、最も成功したのはリモート会議中に菓子を食べ続ける「リモあず」であったとされる。
また、の一部カフェでは、注文時に「もえあずサイズ」を指定すると、通常の1/4量で提供されるサービスが始まり、健康志向層に支持された。これは、量ではなく演出を売るという発想の転換であり、もえあずが外食文化に残した最大の遺産であると評価されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 東雲アキラ『夜食実験室と摂食演出の成立』近畿放送出版局, 2008.
- ^ 宮本澪子『萌え大食術の心理学的基礎』関西学院大学紀要 第42巻第3号, pp. 11-39, 2006.
- ^ 佐伯健一『商店街イベントと身体表象』日本広告学会誌 Vol.18, No.2, pp. 88-104, 2009.
- ^ Margaret L. Henson, "The Aesthetic of Portion Magnification in Kansai Late-Night TV," Journal of Comparative Food Media Vol.7, No.1, pp. 3-21, 2014.
- ^ 山本悠里『もえあず現象の社会学』大阪市立文化研究所報 第15号, pp. 52-77, 2017.
- ^ Takeshi Namba, "Cute Overeating as Civic Performance," Food Studies Quarterly Vol.12, No.4, pp. 201-230, 2018.
- ^ 中村紗季『胃袋型マスコットの流通史』秋葉原流通文化研究 第9巻第1号, pp. 5-16, 2021.
- ^ Claire M. Wetherby, "Deep Night Broadcasting and Appetite Sympathy," Media Ritual Review Vol.5, No.2, pp. 44-69, 2011.
- ^ 藤本玲子『食卓プロセニアム論』演劇と日常 第31巻第2号, pp. 120-146, 2019.
- ^ 近畿文化通信社編『もえあず年表 2004-2023』近畿文化通信社, 2024.
外部リンク
- 日本萌食協会
- 関西深夜文化アーカイブ
- 商店街演出研究所
- 食卓プロセニアム資料館
- もえあず事典編集室