それいけ!裏路地異界探検隊
| タイトル | それいけ!裏路地異界探検隊 |
|---|---|
| 画像 | 裏路地の門と行灯(架空) |
| 画像サイズ | 300px |
| caption | 行灯の光が異界への「路地の入口」を照らすとされる |
| ジャンル | 和風ホラーRPG(裏路地探索) |
| 対応機種 | メガロムー |
| 開発元 | 朧屋ソフトウェア |
| 発売元 | 朧屋出版ゲーム部 |
| プロデューサー | 渡辺精一郎 |
| 音楽 | 古川端哉(行灯ドローン作曲) |
| シリーズ | 同名シリーズ |
| 発売日 | 1987年9月14日 |
| 対象年齢 | 12歳以上 |
| 売上本数 | 全世界累計123万本(1990年時点) |
| その他 | 通称:裏路地探検隊/キャッチコピー「一歩、暗がり。二歩、異界。」 |
『それいけ!裏路地異界探検隊』(それいけ!うらろじ いかい たんけんたい、英: Go! Backstreet Otherworld Expedition Team、略称: 裏路地探検隊)は、[[1987年]][[9月14日]]に[[日本]]の[[朧屋ソフトウェア]]から発売された[[メガロムー]]用[[コンピュータRPG]]。[[朧屋ソフトウェア]]の[[同名シリーズ]]の第2作目である。
概要[編集]
『それいけ!裏路地異界探検隊』は、[[昭和]]末期の路地裏を模したマップを歩き、見えない「異界の気配」を嗅ぎ分けながら進む[[コンピュータRPG]]である[1]。プレイヤーは「隊員」として操作し、行灯の揺れ、看板の文字の欠け、そして雨樋の鳴き声を手がかりに、裏路地の扉を開けていくとされる[1]。
本作が注目された理由は、[[恐怖]]演出が戦闘ダメージ量ではなく、探索中の「沈黙率(チーム会話の途切れ)」に比例して増幅するというゲームデザインにある[2]。また、通称として「路地裏ハンティング」と呼ばれ、当時の雑誌でミリオンセラー級に取り上げられた経緯がある[3]。
一方で、後年のファン考察では、異界侵入の条件があまりにも具体的(たとえば「午後7時11分の踏み外し」)である点が、却って“作り物らしさ”として語り継がれている[4]。この「不自然なほどの具体性」が、却って『それいけ!裏路地異界探検隊』の真面目な顔と相まって人気を支えたとされる。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステムの特徴として、探索と戦闘が完全に分離されていない点が挙げられる。プレイヤーは路地裏で隊員の[[疲労]]と[[勇気]]を管理しつつ、敵と遭遇した瞬間に「叫ぶ・黙る」を選ぶことで、敵側の行動パターンが変化する仕組みになっていたと説明される[5]。
戦闘は[[ターン制]]の[[ロールプレイングゲーム]]であるが、隊員が所持する「呪具」が行動ごとに“匂い”を放つ設定が導入されている。具体的には、呪具の効果表示に「香調(かちょう)」が併記され、例として「朽木香」「湿布墨香」「提灯ライム香」などが登場する[6]。ただし、香調の表記が同じでも効き目が微妙に揺れるため、プレイヤー間では「匂いは気のせい」派と「匂いは乱数の言い換え」派に分かれたとされる[6]。
アイテム面では、落ちものパズルのように床へ“落ちる”要素を拾い集める仕様があり、路地の隙間から湧く「紙札」を回収するたび、次のマップの音量が変化するとされた[2]。この音量変化は、敵の姿を見せるかどうかに関わるため、結果的に進行難度を左右したと説明される。
対戦・協力要素としては、[[オフライン]]の「二人路地(ツーマンロジ)」モードが存在し、片方が光源(懐中ではなく“足元ランプ”)を持つ役割、もう片方が地図役として会話を遮断する役割に分かれる[7]。オンライン対応は後年の移植で追加される予定だったが、当時の回線事情を理由に幻扱いとなり、公式掲示板では“回線が暗がりを食う”という比喩が用いられたとされる[8]。
ストーリー[編集]
物語は、昭和のとある町で「裏路地だけが昨日に戻る」現象が起きるところから始まる。プレイヤーは、[[本町商店街]]の外れにある小さな探検隊事務所から派遣され、路地の入口に立つと“異界の温度”が測定される儀式に参加する[9]。
隊が追うのは「第零・返り札(だいれい・かえりふだ)」と呼ばれる紙札である。これを回収すれば、消えた人の足跡が一度だけこちらへ戻ると信じられていた[10]。ただし、返り札を持ち帰ると、持ち主の記憶が“逆再生”されるという副作用も同時に語られるため、倫理的な葛藤が生まれる構成になっているとされる[10]。
終盤では、[[東京]]ではなく[[横浜市]]の「霧立ち波止場裏」に似た港区画が登場する。ここには“潮の匂い”を舐めた隊員だけが聞ける「三つの太鼓の合図」があり、合図を無視すると異界側の進行が早まるとされる[11]。この合図は実在の民俗芸能を参考にしたという説明があった一方、開発資料の一部では「音は作曲家の気分」と記されたという噂も残っている[12]。
登場キャラクター[編集]
主要人物には、主人公の隊長格「[[渡辺 侘助]]」がいる。侘助は“怖がるほど地図が正確になる”体質の持ち主とされ、ゲーム序盤では「右手の影が先に曲がる」現象として演出される[13]。
仲間には三名の隊員が割り当てられる。第一隊員の「[[小田切 玲子]]」は、行灯の明滅を楽譜のように読み解く役割で、戦闘中は隊の沈黙率を下げるスキルを持つとされる[14]。第二隊員の「[[鷹島 鉄也]]」は匂いの同定に長け、呪具の香調に対して“意味づけ”を行う担当である[6]。第三隊員の「[[森脇 すみれ]]」は、異界扉の鍵穴に手のひらを当てることで“鍵穴の温度”を数値化する機能を持つと説明される[15]。
敵としては「[[路地幽鬼]]」や「[[看板剥落娘]]」など、街の要素が擬人化した存在が登場する。特に看板剥落娘は、攻撃を当てるほど剥がれた文字が隊員の言葉を奪う能力を持つとされ、沈黙率システムと連動するボスとして語り継がれている[16]。なお、ファンが“怖いより先に面倒”と評価したという逸話も残されている。
用語・世界観[編集]
世界観の中核となる概念として、裏路地に溜まる「[[路地圧]]」が挙げられる。路地圧は、路地の曲がり角と人の往来の密度で増減し、数値としては“1平方[[メートル]]あたり最大14.7”まで可視化されたとされる[17]。また、この数値が高い場所ほど、幽鬼の輪郭が輪郭ではなく“書きかけの文字”として見える演出が導入されていると説明される。
次に、「[[返り札]]」は異界から現実へ“戻す”紙片の総称として定義される。返り札は材質が均一ではなく、紙の繊維の向きが隊員の行動順に影響するとされ、攻略指南書では「繊維を読むな、繊維を信じろ」と書かれたと伝えられている[18]。
さらに「[[沈黙率]]」は、会話の有無により決定される恐怖増幅係数である。公式には“沈黙率が高いほど敵が近づく”と説明されるが、一部の検証では「沈黙率が高いほどプレイヤーが勘違いしやすくなる」とも指摘されている[4]。この揺らぎが、プレイヤーの間で“ゲームなのか儀式なのか分からない”という評判を呼んだとされる。
なお、世界の地図には「裏路地の角度規格」が存在し、曲がり角は全て“17度刻み”で設計されているという。具体的な数値のために、建築学者の読者が「現実の測量ではそんなに綺麗にならない」と反論したという小競り合いが当時の掲示板で見られたとされる[19]。
開発/制作[編集]
制作経緯[編集]
『それいけ!裏路地異界探検隊』は、前作『それいけ!裏路地異界探検隊(仮)』の売れ行きを受けて、[[朧屋ソフトウェア]]が「より怖く、より街に近く」する方針を打ち出したことで開発されたとされる[20]。当初の企画書では、異界は“森”が舞台だったが、社内の会議で「森だと怖さが普遍化してしまう。路地だと人の記憶が残る」との意見が出たと記録されている[21]。
制作チームは、現地調査として[[神奈川県]][[横浜市]]の路地を「36回」歩き、雨の降り始め時刻をメモしたという。さらに、測定値が雨粒の落下間隔に寄ってしまうことを避けるため、傘を差しながらも“音を聞く”という非合理な手順が導入されたと説明される[22]。この逸話は、後に作中の沈黙率演出の原型になったとされる。
スタッフ[編集]
プロデューサーは渡辺精一郎、ディレクターは[[長谷川 朱里]]、デザインは[[小鳥遊 ミオ]]、プログラミングは[[佐伯 竜馬]]が中心になったとされる[23]。音楽は古川端哉が担当し、楽曲は“行灯の光が息をしているように揺れる”というコンセプトから組み立てられたと説明される[24]。
また、視覚演出の補助として、当時としては珍しい「テクスチャを意図的に欠けさせる」調整が行われた。ディレクターの長谷川朱里はインタビューで「欠けは演出ではない。路地が勝手に欠けるのだ」と語ったとされる[25]。この“勝手に欠ける”感覚が、看板剥落娘の挙動にも波及したとされる一方、実際にはフレーム制限の都合だったという裏話もある[26]。
音楽[編集]
サウンドトラック『路地圧の交響(こうきょう)』は、全15曲で構成され、うち9曲が「無音の間(ま)」を含む仕様だったとされる[27]。とりわけ「第七行灯ドローン」は、和風の旋律に見せかけて低周波の持続音が混ぜられ、プレイヤーの注意を奪うことで恐怖感を誘導する狙いがあったと説明される[24]。
古川端哉は作曲の根拠として「三味線は怖がると音程が崩れる」と述べ、ゲーム内でも恐怖状態になると音程がわずかにずれる“フィードバック”が組み込まれたという[28]。ただし、実際の音源テストでは、人間の耳では識別できない範囲の差しか出ていなかったとも指摘されている[29]。この矛盾が、当時のレビューで「聴いて確かめてほしい曲」として称賛された要因になったとされる。
他機種版/移植版[編集]
移植版としては、[[メガロムー]]の後継機にあたる「メガロムーX」向けに、1992年に『それいけ!裏路地異界探検隊X』が発売された[30]。X版では、隊員のアニメーションが増えたほか、マップの沈黙率演出が“字幕の揺れ”として可視化されたとされる。
その後、携帯機「路地ポータブル(ロジポ)」に2011年頃移植されたとする情報もあるが、公式な販売記録は限定的で、ファンサイトでは「委託流通が少なすぎて迷子になった」と語られている[31]。さらに2020年代には、バーチャルコンソール風の配信として「裏路地倉庫チャンネル」が開かれたという噂もある[32]。ただし、配信データの細部が一致しないため、真偽をめぐる議論が続いている。
評価[編集]
売上面では、発売から半年で40万本を超え、1990年時点で全世界累計123万本を突破したとされる[33]。日本ゲーム大賞の“家庭部門”を受賞したとも報じられ、ファミ通クロスレビューではゴールド殿堂入り扱いになったと説明される[34]。
一方で、和風ホラーとしての評価が高かった反面、恐怖演出が探索テンポを損ねているとして批判された。特に沈黙率が上がると隊員の発言が減り、結果としてアイテム入手のヒントが読めなくなる点が「親切の逆を行く」と評された[35]。
また、看板剥落娘のボス戦が“同じ場所にい続けると勝手に演出が増える”ように見えるという指摘があり、プレイヤーの間で「演出=難易度」の線引きが曖昧だと論じられた[36]。それでもミリオンセラーを記録した点は、ストーリーと街の密度がそれを補ったからだとされる。
関連作品[編集]
関連作品としては、同シリーズの第1作『それいけ!裏路地異界探検隊(古地図版)』と、第3作『それいけ!裏路地異界探検隊・帰り道』が挙げられる[37]。『帰り道』では返り札が“戻す”側ではなく“戻される”側として描かれるため、物語の視点が反転しているとされる。
またメディアミックスとして、テレビアニメ『それいけ!裏路地異界探検隊 夕刻の行灯』が制作され、全26話が放送されたという[38]。原作ゲームと異なり、幽鬼を“仲間にする”展開が増えたため、ゲームファンは序盤から戸惑いを見せたとされる。さらに、冒険ゲームブック『裏路地圧を測れ!』も出版され、自己採点方式の“路地健康度”が含まれていたと説明される[39]。
関連商品[編集]
攻略本として『沈黙率の逆算 公式ロードマップ』が発売され、全ページに「何歩目でどの音が鳴るか」が記されているとされる[40]。ただし、歩数が“平均”であるため、体感差でズレる可能性があるとも注記されたという。
書籍としては、渡辺精一郎監修の『路地圧工学入門(第2版)』があり、異界を工学的に扱う体裁でまとめられていると説明される[41]。また、古川端哉の音楽資料集『行灯ドローン解析録』では、作曲時のメモがそのまま掲載されているとされるが、途中のページに「計算より先に怖くなった」とだけ書かれた箇所があると報じられた[42]。
その他の関連商品には、隊員の呪具を模した“消しゴムフィギュア”や、行灯風ライトのガチャが存在したとも言われる[43]。実物の出来が良かったため、ゲームより先にグッズが話題になった地域もあるという。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「『それいけ!裏路地異界探検隊』における沈黙率設計の意図」『朧屋技術報告』第12巻第3号, pp.12-29.
- ^ 長谷川朱里「路地裏は無限に曲がるか—17度刻みマップの検証」『ゲーム空間研究』Vol.8 No.1, pp.41-57.
- ^ 古川端哉「行灯ドローンと低周波の体感差について」『デジタル音響紀要』第5巻第2号, pp.88-102.
- ^ 小鳥遊 ミオ「看板剥落娘の言語喪失モデル」『インタラクティブ演出学会誌』第3巻第4号, pp.201-219.
- ^ 佐伯竜馬「探索と戦闘の非分離モデル:沈黙率連動の実装」『ソフトウェア工学ノート』Vol.15 No.6, pp.3-18.
- ^ 『ファミ通クロスレビュー』編集部「裏路地探検隊、ゴールド殿堂入りの理由」『ファミ通クロスレビュー』1988年増刊, pp.5-9.
- ^ 朧屋出版ゲーム部編『路地圧の交響(こうきょう)』朧屋出版, 1987.
- ^ 角田マサヒロ「昭和都市の“隙間”表象とゲームホラー」『メディア史研究』第21巻第1号, pp.77-96.
- ^ M. A. Thornton, “Backstreet Pressure as Narrative Tension,” Vol.14, No.2, pp.1-16.
- ^ 高橋礼「路地ポータブル移植の真偽検証—配信ログからの推定」『携帯ゲーム流通研究』第9巻第3号, pp.33-49.
- ^ 『日本ゲーム大賞記録集(架空版)』日本ゲーム大賞事務局, 1991.
外部リンク
- 裏路地探検隊公式掲示板(架空)
- 朧屋技術データベース
- 沈黙率カウンタ解析室
- 行灯ドローン試聴リンク集
- 路地圧地図クラブ