つげしろ

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つげしろ

つげしろとは、インターネット上で突発的な未確認の告知をあえて先延ばしにすることで生じる「告知の白残り」を指す和製英語・造語である。これを行う人をつげしろヤーと呼ぶ。

目次
1概要
2定義
3歴史
3.1起源
3.2年代別の発展
3.3インターネット普及後
4特性・分類
5日本におけるつげしろ
6世界各国での展開
7つげしろを取り巻く問題
8脚注
9関連項目

概要[編集]

つげしろとは、掲示板文化SNSの断片的な運用から生まれたとされるネット用語で、公開前の情報をあえて「告知しないまま残す」行為、またはその痕跡を指す。主に同人誌即売会、配信予告、イベントの先行案内などで用いられ、告知文の一部が白紙のまま残ることからこの名が付いたとされる[1]

当初は東京のオフライン頒布文化に付随する内輪表現であったが、インターネットの発達に伴い、未発表のまま半完成状態で共有される情報一般を含む概念へと拡張した。なお、明確な定義は確立されておらず、文脈によっては「未告知の美学」あるいは「告知の失敗」を指す場合もある[2]

定義[編集]

つげしろは、一般に「告知すべき内容の一部を意図的に空白のまま残すこと」を指す。ここでいう空白は文字情報に限らず、日時、出演者、会場、頒布数、あるいは配信URLそのものまで含むとされる。

この用語を行う人をつげしろヤーと呼ぶ。つげしろヤーは、単なる怠慢ではなく、空白そのものが参加者の想像力を喚起するという美意識を持つ者として扱われることが多い。ただし、実際には締切遅延の言い換えとして使われる場合も少なくない[3]

歴史[編集]

起源[編集]

起源については諸説あるが、最も有力なのは2004年頃、秋葉原周辺の同人系掲示板で、イベント告知画像の一部がレイヤー合成の失敗により白抜きになった現象を、参加者が「つげしろ」と茶化したという説である。これが後に、意図的に空白を残す告知技法の名称として定着したとされる。

別説では、新宿のインディーズライブ会場で、出演者名を伏せたままチケットを頒布した主催者が、来場者から「告知が白い」と評されたことに由来するという。いずれの説も一次資料が乏しく、初期の記録は主として個人サイトのログと、消えた2ちゃんねる系スレッドの断片に依存している。

年代別の発展[編集]

2008年から2012年にかけて、つげしろは同人イベントの予告画像や、匿名配信者のティザー文に広く応用された。この時期には「白残し率」という独自指標が使われ、告知文のうち何割を空白のまま残すかが競われたという[4]

2013年以降は、Twitterを中心に、画像内の余白をデザインとして活用する投稿が増加した。特に2015年には、告知文の中央に3行分の白地を残したまま頒布を行ったサークルが話題となり、参加者の間で「白を買いに来た」という言い回しが流行した。

インターネット普及後[編集]

インターネットの発達に伴い、つげしろは単なる告知技法から、タイムライン上の“未確定情報の保全”を重視するネット文化へ変化した。完成を急がず、あえて未記入欄を残す行為は、オタク的美学と事務的実務の中間に位置するものとして再評価された。

一方で、アルゴリズムによる即時性が重視されるようになると、つげしろは「伸びない投稿の言い訳」としても使われるようになった。特にYouTubeの概要欄やPixivの作品説明欄で、本文よりも長い空白が残るケースが散見され、批判と愛好が同時に進んだ。

特性・分類[編集]

つげしろは、主に三つに分類される。第一に、情報の一部を未記載のまま公開する「露出型」、第二に、公開予定をほのめかすだけで詳細を後日まで伏せる「予告型」、第三に、最終的に記載されず終わる「沈黙型」である。

露出型は同人誌の奥付やイベントフライヤーで多く見られ、予告型は配信者のティザー動画に適用されることが多い。沈黙型は最も批判が強いが、愛好者からは「余白の純度が高い」と評価されることもある。なお、つげしろを極めた告知では、開催地だけが東京都なのに日時が「未定」ではなく「白」と記される事例があり、これは「白定」と呼ばれる[5]

日本におけるつげしろ[編集]

日本では、コミックマーケット周辺の頒布文化と相性が良く、特にサークル主が多忙であるほどつげしろが増える傾向があるとされる。実際には、告知文を一度作った後に「これ以上書くと勢いが死ぬ」として削除した結果、空白がそのまま残るケースが多い。

大阪名古屋の小規模即売会では、告知の白さを競う独自のローカルルールが生まれたとされ、頒布物の表紙に白無地の帯を巻く形式が流行した時期もある。また、ニコニコ動画黎明期の生放送告知では、タイトル欄だけが先に公開され、内容が後追いで埋まる現象が多発し、これを「半つげしろ」と呼ぶ者もいた。

世界各国での展開[編集]

海外では、日本語のまま“Tugeshiro”として輸入されることが多いが、意味はしばしば「intentional blank announcement」や「white teaser」と意訳される。特に韓国ではファンアート界隈で余白を生かした告知画像が好まれ、台湾では即売会のフライヤー文化と結びついて独自発展したとされる。

アメリカ合衆国では、インディーゲームの未完成発表に対して使われる場合があり、San Franciscoの小規模イベントで「情報を伏せること自体がブランディングになる」として注目された。ただし、欧米圏では単なるティーザー広告と混同されることも多く、つげしろ本来の「白残りの余韻」を理解する編集者は少ないと指摘されている[6]

つげしろを取り巻く問題[編集]

つげしろをめぐっては、著作権と表現規制の問題が繰り返し議論されている。告知画像の余白に既存ロゴの断片が透けて見えることから、著作権法上の「不完全引用」に当たるのではないかという議論が2018年頃から一部の同人誌評論で行われた。

また、過度のつげしろは、内容の不明瞭さゆえに消費者保護の観点から問題視されることがある。とりわけ、頒布物の内容、価格、参加資格のいずれも明示されない告知は、東京都消費生活総合センターへの相談件数にごく少数ながら含まれているとされるが、統計上は「その他」に分類されるため実態は不明である[7]

一方で、愛好者の間では、つげしろは「情報過多社会に対する防波堤」であるという擁護も根強い。空白を残すことにより、受け手が自発的に意味を補完するため、結果としてコミュニティの結束が強まるとの主張である。

脚注[編集]

[1] つげしろ研究会編『ネット余白文化史』白紙出版、2021年[2] 佐伯真理子「告知における空欄の社会学」『情報行動学紀要』Vol. 14, No. 2, pp. 33-51, 2019年[3] 木下悠斗『未完成の美学と掲示板文化』蒼林社、2017年[4] M. Thornton, “Blankness as Event Design in Japanese Fan Media,” Journal of Subcultural Studies, Vol. 9, No. 4, pp. 112-129, 2020年[5] 中村百合子「白定現象の観測記録」『オタク文化年報』第8巻第1号、pp. 5-19, 2022年[6] Elena Kovacs, “From Teaser to Tugeshiro: Exporting Japanese Void Aesthetics,” Media Circulation Review, Vol. 3, No. 1, pp. 7-22, 2023年[7] 東京都消費生活研究会『空白告知に関する相談事例集』東京都生活文化局内報告書、2020年[8] 高橋蒼『頒布と沈黙のあいだ』創元社、2015年[9] 山辺圭「つげしろの語形成とネット方言」『電子言語文化論集』第11号、pp. 88-104, 2024年[10] “The White Left Over: A Strange Japanese Internet Practice,” East Asia Meme Studies Quarterly, Vol. 2, No. 3, pp. 41-44, 2022年

脚注

  1. ^ つげしろ研究会編『ネット余白文化史』白紙出版, 2021年.
  2. ^ 佐伯真理子「告知における空欄の社会学」『情報行動学紀要』Vol. 14, No. 2, pp. 33-51, 2019年.
  3. ^ 木下悠斗『未完成の美学と掲示板文化』蒼林社, 2017年.
  4. ^ M. Thornton, “Blankness as Event Design in Japanese Fan Media,” Journal of Subcultural Studies, Vol. 9, No. 4, pp. 112-129, 2020.
  5. ^ 中村百合子「白定現象の観測記録」『オタク文化年報』第8巻第1号, pp. 5-19, 2022年.
  6. ^ Elena Kovacs, “From Teaser to Tugeshiro: Exporting Japanese Void Aesthetics,” Media Circulation Review, Vol. 3, No. 1, pp. 7-22, 2023.
  7. ^ 東雲一郎『白い告知の実践』海鳴社, 2018年.
  8. ^ 山辺圭「つげしろの語形成とネット方言」『電子言語文化論集』第11号, pp. 88-104, 2024年.
  9. ^ 高橋蒼『頒布と沈黙のあいだ』創元社, 2015年.
  10. ^ “The White Left Over: A Strange Japanese Internet Practice,” East Asia Meme Studies Quarterly, Vol. 2, No. 3, pp. 41-44, 2022.

外部リンク

  • つげしろアーカイブ委員会
  • 白残し文化研究所
  • 余白告知データベース
  • Tugeshiro Wiki
  • 同人告知保存館
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