のめろんちょす
| 分類 | 発泡菓子飲料(民間呼称) |
|---|---|
| 主原料 | メロン果汁、炭酸性発泡剤、糖アルコール |
| 発祥地(とされる) | 愛知県半田市(現・商店街外周) |
| 販売形態 | 紙カップ入りの試飲式と、瓶詰めの常設便 |
| 関連団体 | 半田みなと菓子協同組合(略称・半みな協) |
| 特徴 | 飲むたびに“ちょす”と呼ばれる泡の粒感が残る |
| 想定温度帯 | 8〜12℃(提供時) |
| 想定消費年齢層 | 10代後半〜30代の間で人気とされる |
は、果汁をベースにした独特の発泡菓子飲料として知られる、民間起源の“ご当地サイダー”である。主に内の一部商店街で販売され、語感の奇妙さから一時的に流行したとされる[1]。
概要[編集]
は、「のめ(飲む)」と「ろん(メロンの短縮)」と「ちょす(口内で残る泡の音)」を掛け合わせた民間呼称として語られている[1]。
成分面では、炭酸を抜いた“ほの甘い果汁泡”に、後から炭酸性発泡剤を分注して飲用時に仕上げる方式が、最初期の流儀として語られがちである。もっとも、現在の流通品では工程が簡略化され、常温保管の範囲も拡張されたとされる[2]。
命名が奇妙なため、SNS時代には「意味が通じないのに妙に覚えやすい」「咀嚼の擬音が入っている」といった理由で拡散したとする回顧も多い。反面、起源の具体性を疑う声もあり、後述のように“発祥地の一致”が物語的に作られた可能性が指摘されている[3]。
名称と呼称の由来[編集]
語源は複数の説があり、最も広く引用されるのは半田市の港湾倉庫で働いていたとされる改良菓子師、が名付けたという説である[4]。
この説では、が倉庫の温度計を“8℃”から“12℃”に合わせ直し、瓶詰めの泡立ちを最適化した際に、泡が口から出る寸前の音を“ちょす”と記録した、とされる[4]。その記録が紙片として残り、のちに試飲会のメニュー欄に貼られて定着した、という筋書きで語られる。
一方で、当時すでに外国語の短縮表記が流行していたことから、「Chos」は“Chilled and Opened for Service”の頭文字を勝手に当てたとの揶揄もある。こちらは半みな協の広報係が若者向けに煽ったという伝承に基づき、当時の社内文書風のコピーが出回ったことで広がったとされる[5]。
なお、地元では「のめろんちょす」を「飲めメロン」とも言い換える場合があるが、言い換えが進むほど“元の呼び方”が分からなくなるため、むしろ原語の表記が保持されたとする見方もある[2]。
歴史[編集]
前史:果汁発泡の“計測狂騒曲”[編集]
の直接的な起源として語られるのは、明治末期にさかのぼる“果汁泡の計測文化”であるとされる。半田周辺の工場では、果実の糖度が季節で揺れるため、試作時に必ず「泡の高さ」「泡の滞留時間」「口腔内残香の持続秒数」をメモする習慣があったとされる[6]。
その習慣が、1920年代に入って系の地方講習会と結びつき、「見た目ではなく“音”で再現するべきだ」という方向に傾いたという。ここでいう“音”とは、グラスを傾けたときに泡が崩れる瞬間の反響であり、専門家はそれを「ちょす周波数」と呼んだとされる[7]。なお、この呼称は当時の学術誌にも一度だけ載ったが、のちに差し替えられたという“編集の逸話”が伝えられている[7]。
成立:半みな協と“8分間の祭り”[編集]
実際に商品名として定着したのは、戦後の周辺に“祭りの回転試飲”が導入された時期だとする説が有力である。具体的には、(略称・半みな協)が主催した試飲企画「八分(はっぷん)メロン回廊」で、来場者1,200人に配る予定だった試作ロットが、なぜか“8分だけ伸びた”ために急遽名称を統一した、という[8]。
伝承によれば、担当のが、紙カップへの注入時間を「ちょうど8分」に固定するよう声を張り上げた。さらに注入後、泡が落ち着くまでの待機時間を「7分30秒から8分10秒まで」と細かく規定したことで、飲んだ人の間で「ちょす、ちょす」と口々に言う現象が観察されたという[8]。
この“8分間の祭り”は、のちに地元新聞の特集「港の甘い誤差」で取り上げられたとされるが、原稿段階では“のめろんちょす”ではなく“のめるめろん泡”という仮名だったと報じられている[9]。最終的に綴りが崩れたのは、印刷所の活版が一部行方不明になり、担当者が手書きで埋めたためだという、あまりに人間味のある説明が残っている[9]。
拡散:名古屋圏の“誤読インフレ”[編集]
2010年代後半には、内の学生サークルが即売所で「のめろんちょす 先着(誤読歓迎)」と掲示し、わざと変な読み方を誘う運用が広まったとされる[10]。
この施策は、実は“味そのもの”ではなく、ラベルの印字ミスを楽しむ仕掛けだったという。たとえば瓶ラベルの“Chos”が“Chos.”と途中で句点を挿入され、SNSでは「これ略語? それとも呪文?」という反応が増えたとされる。半みな協は当初、誤読を止めようとしたが、問い合わせ窓口の受電が月間約430件(2017年時点)に跳ね、却って宣伝効果が勝ったため方針を転換した、という[10]。
一方で、2018年に一部店舗が“本家の味”を名乗って類似品を出した際、原料メロンの規格が統一されていないことが批判された。これに対し半みな協は、レシピを非公開にしつつ「泡の粒径は0.12〜0.16mm」とだけ示したとされる[11]。しかし、この数値が理化学的に妥当かどうかは議論の余地が残っている、とされている[11]。
製法・特徴と“ちょす”の正体[編集]
のめろんちょすは、一般に「果汁ベース+後入れ発泡」の工程で語られる。果汁はメロン香を優先して濾過し、炭酸性発泡剤は提供直前に投入することで香りの揮発を抑える、という説明がよく引用される[12]。
特徴である“ちょす”は、味の説明としては不十分であるため、代わりに“口内に残る泡の感触”として表現される。具体的には、泡が舌上で保持される平均時間が「23〜37秒」と記録されたとする報告がある[12]。さらに、泡の崩れ方が一様でないため、観察者は“ちょす”という擬音で粒の跳ねを表したという[13]。
なお、製品によっては甘味料の比率が変動するとされ、糖アルコールの配合量は「総固形分の約18%」と説明されることがある[13]。ただし、ここでも数値の出所が曖昧であり、同じ数値が“どこかの会議資料”から転記された可能性がある、と指摘されている[11]。
飲用時の推奨温度帯は8〜12℃であるとされ、これは前史で述べた計測狂騒曲と連動して語られることが多い。提供温度が外れると泡の粒感が消える、という“体感ベース”の理屈が信仰のように残っている[2]。
社会的影響[編集]
のめろんちょすは、地域経済への直接効果だけでなく、“誤読を許す”文化を商店街に持ち込んだとして評価される場合がある。特にの外周商店街では、2019年以降に「読み方を当てるより、間違えて笑う」スタンプラリーが増えたとされる[14]。
一例として、半みな協が実施した「ちょす判定」では、試飲後に出た擬音を申告する仕組みが採用された。結果として、声を大きく出す人が増え、店内滞在時間が平均で約6.4分延びたと報告された(同報告書では“延びた理由は泡よりも笑い”と記されている)[14]。
また、SNSでは語感の奇妙さが拡散の核となり、「地元名物の“説明不足”がむしろ魅力」という新しい発信スタイルが生まれたとする指摘もある[10]。一方で、その結果として類似名称の商品が増え、地方の独自文化が“記号化”される問題も生じたとされる[15]。
教育面では、内の一部学校で“言語遊びとしての擬音”教材に使われた、という噂もある。ただし、この噂は数年ごとに掘り起こされる割に、出典が見つからないという点で、都市伝説の風味も帯びている[15]。
批判と論争[編集]
のめろんちょすについては、定義があいまいである点が繰り返し批判されている。半みな協が「味の再現は“粒感”のみで保証する」とする一方で、消費者側には原料や製法の情報が届きにくい、という構図が問題視された[11]。
また、数値の出所をめぐる論争が起きた。前述の泡保持時間23〜37秒や、粒径0.12〜0.16mmといった範囲が、どの測定法に基づくのかが不明であり、同じ数値が別分野の“比喩的データ”として流用された可能性があるとされる[13]。この疑いは、地方紙のコラム「甘い工学」で取り上げられたことがきっかけで、検索数が増えたと報告されている[16]。
さらに、商標や呼称の独占をめぐって、隣接するの土産会社が「うちは先に試した」と主張したという軋轢があったとされる[17]。ただしこの主張は、当時の記録が“メモ用紙の寄せ集め”で、信頼性が弱いと指摘された。結果として、当該企業の発表は一度取り下げになり、“のめろんちょす”の語がさらに伝説化した、と語られることがある[17]。
嘘の味方としては、文化としての面白さを守るべきだという擁護もある。擁護側は「科学的厳密さより、飲む体験の共有こそが正しい」という立場を取り、議論を“ちょす文化論”へと押し込めた、とされる[15]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 半田みなと菓子協同組合広報室『のめろんちょす回顧録—八分回廊の記録—』半田文庫, 2020.
- ^ 渡辺精一郎『果汁泡の音響計測と商店街』名古屋技術出版社, 1949.
- ^ 鈴木三千代『試飲は何分で人を笑わせるか』中部観光研究所, 2018.
- ^ “ちょす周波数”編集委員会『甘味材料の音響相関(仮題)』Vol.12 No.3, 甘味工学会誌, 1956.
- ^ Margaret A. Thornton『Cultural Misreading and Beverage Naming』Journal of Regional Play, Vol.7 No.1, 2016.
- ^ 池田良作『炭酸性発泡剤の後入れ工程が香気に与える影響』日本食品化学会, 第34巻第2号, 2002, pp.110-123.
- ^ 田中和彦『擬音の言語学—飲料名が記憶される条件—』言語遊戯学研究, Vol.21 No.4, 2014, pp.77-88.
- ^ 北村紗依『泡保持時間の主観評価と計測のズレ』味覚測定研究, 第9巻第1号, 2011, pp.1-19.
- ^ 『港の甘い誤差』中部日報編集部, 1963.
- ^ Etsuko Matsuda『Errant Labels and Brand Mythmaking』International Journal of Street Marketing, Vol.3 No.2, 2019.
外部リンク
- 半みな協 公式記録アーカイブ
- ちょす判定スコアボード(閲覧)
- 中部擬音研究会 ノート
- 港の甘い誤差 特集ページ
- 愛知ご当地飲料データ館