ふっくらすずめクラブ
| 設立 | (路地文化復興の私案として発表) |
|---|---|
| 設立地 | 浅草橋一帯 |
| 性格 | 地域観察・語り・冊子配布を主軸とする任意団体 |
| 活動拠点 | 台東区立「路地資料室」(仮設運用) |
| 主な事業 | すずめカウント、講談台本の共同編集、ふっくら評価票 |
| 会員数(推計) | 約840名(2018年時点、配布冊子の読者返送数より算出) |
| 関連団体 | 路地保全サポート連盟(友好枠) |
ふっくらすずめクラブ(ふっくらすずめくらぶ)は、地域の路地文化を「ふくふくの鳥」に見立てて再編集することを目的としたの市民団体である。活動は主にの路地で行われ、観察会や講談会、そして独自の配布冊子が特徴とされる[1]。
概要[編集]
ふっくらすずめクラブは、主に都市部の小鳥、とりわけをめぐる観察と語りを通じて、路地の記憶を更新する試みとして知られている。活動の定義は「鳥を数えるのではなく、鳥の“ふくふく感”を指標化すること」とされ、そこでいう指標は団体独自の「ふっくら度評価票」で運用される[2]。
当初は個人の趣味に近い取り組みとして始まったと説明される一方で、1990年代後半には台東区内の複数町会と連携し、路地の清掃日程を“さえずりタイムテーブル”に合わせるなど、行政との接点も広がったとされる[3]。なお、団体名に含まれる「すずめ」は、実際には“すずめ型の故事(しごと)”を回す比喩として用いられることが多いとされ、文字通りの鳥愛好団体に留まらない面が強調されている[4]。
歴史[編集]
発端:浅草橋の「ふくふく会計」[編集]
団体の起源は、浅草橋周辺で雑誌編集の補助をしていた(架空の出版統計係として区内で語られる)による“ふくふく会計”の私案に求められるとされる[5]。当時、路地に残る看板の色褪せが問題視されていたが、従来の調査が「写真の良し悪し」中心になっていたことに対し、渡辺は写真より先に「会話の密度」「道の匂いの濃度」「朝の影の厚み」を点数化すべきだと主張したとされる。
その点数化の比喩として、彼は「すずめ」を採用した。理由は、すずめが“群れで動くが、1羽ごとの密度も変える”という性質を持つため、路地の評価に都合がよいという説明である。この考え方は、後に団体資料に転用され、という概念へと発展した[6]。この段階で、ふっくらすずめクラブはすでに“観察×編集”の形式を取っていたとされる。
制度化:台東区路地資料室と冊子「まめすずめ通信」[編集]
1997年、渡辺の案を引き継いだ(町会連絡担当として知られる)により、活動は台東区内の仮設スペースへ移される。いわゆる台東区立「路地資料室」がその受け皿で、同施設は“役所の予算ではなく、集会所の余剰椅子を積み上げた運用”と記述されがちである[7]。
資料室では、月1回の観察会と、その翌週の講談会をワンセットにする運用が作られた。ここで配られた冊子が「まめすずめ通信」であり、配布部数は当初、手書き原稿のため月72部とされる。のちに印刷協力が得られて部数は段階的に増え、2002年には月312部、2008年には月1,480部へ到達したと報告されている[8]。この増加には「ふっくら度評価票」の回収率が寄与したとされ、回収率は“配布数の23.4%を超えた回”が転機だったと語られている。
ただし、ふっくらすずめクラブの内部では評価票の採点基準をめぐり揺れがあり、ある編集会議では「影の厚みは天気図で代替できるか」が論点となった。議論の結果、結局は“代替できない”という結論が採用され、基準の厳密さよりも現場の手触りを優先する方針が固まったとされる[9]。
拡散と衝突:すずめカウントの“商用化”[編集]
2010年代に入ると、団体の観察様式は一部の民間企業にも取り入れられた。特に、商業施設のイベント運営会社が「すずめカウント」パートを“地域回遊ゲーム”として販売し始めたことが問題視され、団体側は「鳥を商品化するな」とする声明を出したとされる[10]。この声明は団体内ではかなり強い文体で知られ、提出は「配布冊子の遅延を含む12日以内」といった、妙に細かい条件が付されていたとも報じられる。
一方で、団体も完全に純化したわけではなく、スポンサーの提供する観察用双眼鏡の刻印をめぐって内紛があったとされる。双眼鏡の刻印は“ふっくら”のロゴであったが、ロゴの形が評価票の印字と一致しないという些細な差が、会員の採点結果に影響した可能性が指摘された[11]。このように、理念は地域の語りとして存在し続けたが、実務が“細部の整合”に縛られていった経緯が、団体史の一部として語られている。
活動内容[編集]
ふっくらすずめクラブの活動は、(1)路地観察会、(2)講談会、(3)評価票の集計、(4)冊子の共同編集、の4点セットで説明される。観察会では、参加者は同一のルートを歩くが、ルートの距離は1回ごとに「ふっくら度が変化しやすい折れ角」を優先して調整されるとされる。典型的には“折れ角が8度台の区間”が最重要ポイントとして扱われ、地図上の直線距離より曲がりの多さが採点に効く仕組みになっている[12]。
講談会では、すずめを主人公にした短い物語が読まれる。物語は史実からの引用ではなく、路地の体験を材料にした「口承編集」として作成されるとされる。さらに、配布冊子には「まめすずめ通信」だけでなく、季節ごとの別冊が加わり、2016年の冬号では“湯気の高さ”を3段階評価する企画が入っていたとされる。湯気高さは温度計ではなく、読者の記憶を基準にするという点で、観測と主観が混線しているのが特徴である[13]。
集計は、団体が運用している「ふっくら度集計箱」(配送用の段ボールを改造したものと説明される)に返送された評価票を入れて行われる。集計箱は重量を測るだけでなく、投函音の“反響の角度”が記録されるとされ、ここは外部からの批判を呼びやすい領域である[14]。
社会的影響[編集]
ふっくらすずめクラブは、路地文化を“保存するだけ”ではなく“運用し直す”方向へ押し出した点で影響があったとされる。たとえば台東区の一部では、清掃や植栽のタイミングが、団体の観察結果に基づいて調整されたと記録されている[15]。これは行政が直接採用したというより、町会の説明資料に団体の冊子から抜粋が組み込まれた形で広がったとされる。
また、教育分野でも「鳥の観察」を入口にして“編集・記述・共有”を教える授業に転用されたとされる。団体の内部では、子どもが書いた短文が、次の講談会の台本に再利用される循環が生まれたことが成果として強調されている。さらに、2019年には台東区の文化イベントで「すずめふくふく鑑賞会」が企画され、来場者は延べ2万1,300人だったと報告された[16]。
ただし、社会的影響が拡大するほど、誤解も増えた。すずめクラブが“鳥の保護”を主目的にした団体だと受け取られるケースがあったとされ、団体側は“保護は結果であり、主題は路地の編集である”と繰り返し説明したとされる[17]。この言い方は一見もっともだが、実際には鳥も路地もどちらも絡むため、理解のずれが長く残ったとされる。
批判と論争[編集]
批判の中心は、評価票が主観を過剰に含み、再現性が低いという点にある。特に「ふっくら度」は測定器ではなく体感の言語化に依存し、同じ観察会でも採点が変動することがあると指摘された[18]。一部の研究者は、評価票の項目が“説明不能な変数”を含む可能性を示し、学術的には無理があるとする見解を出したとされる。
一方で、団体側は「再現性より継承性」を重視しているとして反論したとされる。つまり、誰が測っても同じ点になることより、同じ場所を次の世代が見直すことの方が重要だ、という立場である。ただしこの反論は、商用化をめぐる論争では弱点にもなった。企業に委託されたイベントでは採点の“物差し”が統一され、ふっくら度の揺れが消えることで逆に魅力が薄れた、という不満が出たとされる[19]。
さらに、最も笑われがちな論点として「すずめカウントの聖域」が挙げられる。団体は“カウントの前後で会員が必ず川の角度を1回だけ曲がる”といった儀式を運用していたと語られるが、これがなぜ必要かは明確にされていない。ある元会員は、理由を「すずめが戻る方向が決まるから」と説明したとされるが、その根拠は誰も示せなかったとされる[20]。このように、理屈よりも現場の段取りが勝つ形式が、評価の賛否を分けている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「路地における“ふくふく会計”の試み」『都市記録論集』第12巻第4号, pp.41-59.
- ^ 海野リリカ「まめすずめ通信の編集過程と読者参加」『地域編集研究』Vol.8 No.2, pp.77-96.
- ^ 田辺由紀子「スズメを用いた記述指標の社会実装」『都市社会学年報』第19巻第1号, pp.3-21.
- ^ 佐伯公平「路地資料室の運用実態と仮設アーカイブ」『公共史技法』第5巻第3号, pp.120-138.
- ^ International Journal of Streetkeeping「Bird Metaphors and Neighborhood Narrative Systems」Vol.14 No.1, pp.10-34.
- ^ K. Thornton「Subjective Indicators in Community Fieldwork」『Journal of Civic Measurement』第23巻第2号, pp.201-224.
- ^ 台東区文化課編『路地文化イベントの年次報告(非公開付録含む)』台東区, 2019年.
- ^ 路地保全サポート連盟「友好枠団体の活動要約:ふっくらすずめクラブ」路地保全サポート連盟, 2016年.
- ^ 村井章「“反響の角度”記録法の妥当性について」『音環境研究』第31巻第2号, pp.55-73.
- ^ 一ノ瀬もも「鳥の保護と物語の編集は両立するか」『文化観察論』第7巻第1号, pp.88-101.
外部リンク
- ふっくらすずめクラブ公式通信
- 路地資料室デジタル棚卸
- まめすずめ通信アーカイブ
- ふっくら度評価票テンプレート集
- 台東区路地イベント実務メモ