ぷりてぃーぷりこ
| 名称 | ぷりてぃーぷりこ |
|---|---|
| 別名 | プリコ調、ぷりこ体 |
| 分類 | 装飾言語・商業語彙 |
| 成立 | 1978年頃 |
| 提唱者 | 三浦ふみえ、東京商品語研究会 |
| 主な使用域 | 文具広告、雑誌見出し、地方百貨店の催事 |
| 影響 | 1980年代の可愛さ記号の定型化 |
| 関連機関 | 日本語装飾表現協会 |
ぷりてぃーぷりこは、の昭和後期に成立したとされる、反復音と愛称語尾を組み合わせた擬似的な装飾語法である。やの周辺語として広く知られている[1]。
概要[編集]
ぷりてぃーぷりこは、語頭のと人名風のを接続することで、対象に過剰な愛らしさと親しみを付与するための表現である。一般にはの販促語として知られるが、実際にはの小規模印刷会社で運用された社内符牒が起源であったとされる[2]。
この語法は、単に語感が柔らかいというだけでなく、製品の寿命を「3か月延長する」効果があると当時の流通担当者が信じていた点で特異である。なお、1981年のでは、ぷりてぃーぷりこを採用した商品群の返品率が平均12.4%低下したと報告されているが、集計方法はかなり怪しいとされる。
歴史[編集]
誕生と初期の定着[編集]
起源は、の印刷所「東洋カラーフォーム」が、学習帳の余剰在庫を処分するために作成した仮称ラベルにさかのぼるとされる。担当の三浦ふみえは、当時流行していたの語尾処理を模倣し、表紙に「ぷりてぃーぷりこノート」と大書したところ、近隣の文具店で1,200冊が2週間で完売したという。
この成功により、同社では「ぷりこ」を単なる愛称ではなく、品質保証の意味を持つ準規格として扱い始めた。1979年には社内文書において「ぷりこ率」という独自指標が導入され、紙面余白の広さ、丸文字の曲率、シール貼付位置の3項目から算出された[3]。
百貨店への拡散[編集]
、の百貨店で開催された「春のぷりてぃー祭」において、ぷりてぃーぷりこは一躍全国区となった。ここでの主催はの地方振興班であったが、実務は宣伝会の学生アルバイトがほぼ担っていたとされる。
会場では、ぬいぐるみ、鉛筆、紙袋、果ては和菓子の包装紙まで「ぷりこ」化され、来場者の7割が自分もぷりこにされたいと回答したという調査結果が残る。ただしこの調査票は回収箱の上に置かれていたため、回答の真正性には疑義がある。
制度化と衰退[編集]
には、の外郭団体とされる「装飾語彙標準化準備室」が、ぷりてぃーぷりこを広告文法の一分類として整理しようとした。ここで初めて、語尾に「こ」が付く商品名の許容範囲が、音節数と色数の対応表で管理された[4]。
しかし期に入ると、より派手な外来語表現が流入し、ぷりてぃーぷりこは「可愛いがやや古い」と見なされるようになった。一方で地方のでは根強く用いられ、1993年頃には「レトロかわいい」の先駆けとして再評価されたとする説もある。
特徴[編集]
ぷりてぃーぷりこの最大の特徴は、意味内容よりも音の丸みを優先する点にある。語末のは、幼児性を示すのではなく、商品が「棚に置かれた瞬間に話しかけてくる」印象を与えるための装置だと説明されていた。
また、当該語法では、同じ商品でも「プリコ」「ぷりこ」「ぷりこちゃん」「ぷりてぃーぷりこ」などの段階があり、広告部門ではこれを四色刷りの濃淡と対応させたという。最上位の「ぷりてぃーぷりこS級」は、店頭での滞留時間が平均18秒長くなるとされ、実際にの百貨店でこの表記を使ったチラシだけ配布数が異常に伸びた記録がある[5]。
社会的影響[編集]
ぷりてぃーぷりこは、末期の消費社会において、「説明しすぎない魅力」の重要性を示した表現として評価されている。特にでは、機能説明を減らし、代わりに語感で購買意欲を刺激する手法が定着した。
一方で、教育現場からは「児童が作文の題名にぷりてぃーぷりこを乱用する」との苦情もあり、が1989年に注意喚起文書を出したとされる。この文書には、ぷりこ体の多用は「文意の希薄化を招くおそれがある」と記されていたが、逆に広報担当者の間で引用されるようになった。
批判と論争[編集]
批判の中心は、ぷりてぃーぷりこが過度に商品を幼児化し、消費者の判断を甘くするという点にあった。とりわけの審査会では、ある委員が「これは語ではなく、袋の香りである」と述べたと記録されている[6]。
また、名称の由来をめぐっては、三浦ふみえ個人の創案説と、地方の少女雑誌編集部による集団創作説が対立している。後者を支持する研究者は、初出広告の筆跡が3人分混ざっていると主張するが、比較対象となった原稿はすべて焼却済みであるため、決着はついていない。
用例[編集]
「このノート、ただの無地なのに、ぷりてぃーぷりこ感がある」
「駅前のパン屋が今年からぷりこ化していて、袋の角が全部丸い」
「ぷりてぃーぷりこは可愛いが、説明書にすると急に信用が落ちる」
用例集『ぷりこ語五百選』によれば、1985年時点で確認された派生用法は214種にのぼり、そのうち17種は接客業の現場で自然発生したとされる。なお、最も珍しい用例は「部長の机がぷりてぃーぷりこである」で、意味は不明である。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三浦ふみえ『ぷりこ体の成立と流通』東都出版, 1989.
- ^ 東京商品語研究会『装飾語彙の社会史』第2巻第1号, pp. 14-39, 1991.
- ^ 佐伯直人「丸文字広告における反復音の効果」『広告言語学紀要』Vol. 7, pp. 88-112, 1990.
- ^ Margaret L. Fenwick, "Cute Suffix Systems in Postwar Japan," Journal of Applied Semiotics, Vol. 12, No. 3, pp. 201-224, 1994.
- ^ 渡辺精一郎『商品名における幼形語尾の機能』文化出版局, 1988.
- ^ 小林しずく「ぷりてぃーぷりこ事件の再検討」『現代商業文化研究』第5巻第2号, pp. 55-73, 1996.
- ^ Harold K. Yamada, "Packaging Sound and Consumer Trust," East Asian Marketing Review, Vol. 4, pp. 9-31, 1992.
- ^ 日本語装飾表現協会編『ぷりてぃーぷりこ白書 1981-1989』中央資料社, 1990.
- ^ 金井みお『ぷりこ語五百選』虹文社, 1987.
- ^ Elizabeth N. Sato, "The Plico Turn in Retail Typography," Typography and Society, Vol. 3, No. 1, pp. 44-60, 1993.
外部リンク
- 日本語装飾表現協会アーカイブ
- 東都文具史料館
- ぷりこ体研究センター
- 昭和コピー文化資料室
- 東京商品語研究会デジタル年鑑