ぽこ あ カービィ
| タイトル | ぽこ あ カービィ |
|---|---|
| 画像 | Poko_a_Kaby_box.jpg |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 北米向け宣伝ポスター |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム、協力型ロールプレイング要素 |
| 対応機種 | ゲームキューブ・ライト、アーケード・リンク、携帯版ポケットシェル |
| 開発元 | ミズハラ・インタラクティブ 第2制作局 |
| 発売元 | 星雲ソフト |
| プロデューサー | 水原 恒一郎 |
| ディレクター | 吉浦 祐介 |
| 音楽 | 橘 さやか |
| シリーズ | カービィシリーズ |
| 発売日 | 2003年9月18日 |
| 対象年齢 | CERO B相当 |
| 売上本数 | 全世界累計312万本 |
| その他 | 通称は『ポコカビ』。キャッチコピーは「押して、ぷくっと、ほどける世界」 |
『』(Poko a Kaby)は、にのから発売された用。『』シリーズの第5.5作目とされ、のちに「泡状コマンド入力」を普及させた作品として知られる[1]。
概要・概説[編集]
『』は、向けに設計されたであり、と呼ばれる独自の操作体系を採用したことで知られている。プレイヤーはを操作し、空間に浮かぶ記号球を押し出しながら敵陣を崩していく構成で、当時の家庭用ゲームとしては珍しく、半分が戦闘、半分が通信補助に割かれていた[2]。
本作は『』シリーズの第5.5作目とされるが、この「.5」は開発側が社内資料で便宜的に用いていた符号がそのまま広まったものである。発売当初はの試験販売店と、のイベント会場のみで先行流通し、後にの要請で全国展開されたとされる[3]。
通称は『ポコカビ』である。ゲーム誌では「落ちものパズル」「ハンティングアクション」「ロールプレイングゲーム」の三要素を奇妙に同居させた作品として扱われ、2004年末にはの審査会で「分類不能だが印象に残る」と評されたという逸話が残る。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステム[編集]
ゲームシステムの特徴として、画面内の敵や足場に対して「ポコ」「ア」「カービィ」の三語を順番に入力すると、重力方向が一時的に再計算される仕組みがある。これにより、プレイヤーはを上下左右ではなく、斜めの環状ルートで攻略することになる。なお、開発初期版では「ぽこ」が10回以上連続入力されると強制的にの座標補正画面が開く仕様があり、製品版では削除された[4]。
また、アイテムは「おひさまゼリー」「音叉クッキー」「反転ミルク」の三系統に大別される。いずれも単なる回復ではなく、敵の飛行速度や通信帯域に干渉する効果を持ち、特に「反転ミルク」はゲーム中で唯一、使用するとキャラクターの影が先に動く演出が入るため、攻略本でしばしば話題になった。
戦闘[編集]
戦闘はとしては比較的遅いテンポで進行するが、弾幕そのものは極端に多い。プレイヤーは吸い込み攻撃ではなく、丸い敵弾を「ぽこ」と押し返して連鎖反応を起こすことで敵を撃破する。連鎖数が9を超えると、画面端に「泡結界」が発生し、の攻撃パターンが全体的に短文化されるのが特徴である。
一部のボスは通常攻撃を行わず、代わりに会話でプレッシャーを与えてくる。とくに中盤の「監察蝶ピアレ」は、プレイヤーの操作履歴を参照して台詞を変えるため、当時の子ども向け雑誌からは「心理戦の比重が高すぎる」との指摘があった。一方で、これが対戦モードでは逆に駆け引きとして機能し、二人協力プレイの定番ネタになった。
オフラインモード[編集]
オフラインモードには、ストーリーモードのほかに「倉庫整理モード」と「静かな訓練場」が収録されている。前者は集めた泡弾を色ごとに並べ替えるだけのモードであるが、3時間続けると隠しBGMが流れ出し、後者の解放条件になるとされた。後者では敵が一切出現せず、プレイヤーはに似た地形模型の上でジャンプ練習を行うことになる。
また、発売後の更新ディスクで追加された「ひとりでぽこ」モードは、実質的にタイムアタックでありながら、終了時に主人公の心境が3段階で採点されるという珍しい仕様を持つ。これが一部のレビューで「ゲームオーバーより感情評価のほうが重い」と形容された。
ストーリー[編集]
物語は、の地下に埋もれた「泡灯炉」が、100年に一度だけ鳴動するところから始まる。鳴動により、空に浮かぶ小島が順番に沈み始め、は島の沈下を止めるため、伝説の三語「ぽこ」「あ」「カービィ」を回収する旅に出る。
途中、に相当する立場の人物として「代行評議長ドドナ」が登場するが、彼は単なる悪役ではなく、島の浮力税を徴収していた行政官であることが後半で判明する。さらに、物語終盤では、泡灯炉が実は初期の研究施設「海鳴り記号研究所」に由来する人工装置であり、島々の浮沈は研究員たちの会議のたびに発生していたことが示唆される。
最終局面では、カービィが三語を揃えるのではなく、逆に一語だけ黙って飲み込むことで世界を安定化させる。エンディングでは、沈みかけた島の一つがの下町に似た路地へと着地し、住民たちが「この景色は前にも見たことがある」と口にする場面で終わる。この結末は、のちの展開において度々引用された。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公はであるが、本作では「吸い込み」よりも「押し返し」を得意とする設定に再解釈されている。衣装は通常のピンクの球体形態に加え、泡灯炉の調律用に用いる白い首輪状アクセサリが付属し、これがパッケージ版初回特典の設定資料集でも強調されていた。
また、開発初期稿では主人公名が「ぽこ氏」だったとする社内メモが残されており、ファンの間では「カービィ本人ではなく、操作端末の方がぽこである」という解釈が一部で支持されている。
仲間[編集]
仲間としては、配達用の機械鳥「ミルチュン」、測量士の「ハナレ・トート」、および通信妖精の「シラベ」が登場する。特にシラベは、セーブデータを音声で記憶する機能を担っており、停電時には前回プレイ時の口癖を復唱するため、子どもたちの間で妙な人気を博した。
ミルチュンはボス戦のたびに弁当を落とすが、その弁当箱の底に実は隠しマップが貼られていることが判明するなど、細部の作り込みが高い。
敵[編集]
敵勢力は、泡を封印しようとする「硬質局」と、その下部組織「静音班」から成る。最上位の敵である「泡王ザリオ」は、かつてで行われた展示会の舞台装置を流用して生み出されたという設定で、巨大だが妙に礼儀正しい。
中ボスの「四角耳アローン」は、攻撃よりも記録係としての出番が多く、倒すたびにプレイヤーのプレイ時間を帳簿へ書き込む。この仕組みが当時の攻略本で「敵なのに事務処理能力が高すぎる」と評された。
用語・世界観[編集]
本作の世界観は、泡によって重力と通信が同時に調整される「泡灯圏」を基盤としている。泡灯圏では、一定以上の速度で走ると背景の雲が回覧板のように配達されるため、地形と情報がほぼ同じ価値を持つ。これはが社内で推進していた「地形即情報化」理論の成果とされる[5]。
世界の中心にある泡灯炉は、単なる発電装置ではなく、住民の記憶を薄い膜として保存する装置である。プレイヤーがステージを進めるたびに、過去の会話や落とし物が再配置されるのはこのためであると説明されるが、説明書の脚注では「仕様上の都合である」とだけ記されている。
また、作中で頻出する「ぽこ」は、音としての意味だけでなく、承認・否認・停止の三機能を兼ねる語である。これにより、本作は「単語一つで行政、戦闘、移動を同時に行える」と喧伝され、後年の学術論文ではにおける異例の試みとして取り上げられた。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
制作は、秋にの研究会で、泡を使った立体迷路の試作を行っていた際に着想されたとされる。当初は教育ソフトとして企画されたが、社内で試遊したが「これを勉強にしては惜しい」と発言したことから、急遽として再編された[6]。
なお、社内資料には「ポコ案」「ア案」「カービィ案」の三つが並立していたが、最終的に三案をそのまま題名にしたのは、広報部が「分割商標は覚えやすい」と主張したためである。
スタッフ[編集]
ディレクターのは、過去にの観測塔で音響測定を担当していた経歴があるとされ、本作では音の反響を利用した敵配置を導入した。音楽のは、1曲ごとに「泡が割れる音」「紙がめくれる音」「駅の自動放送」を録音し、全部を半音ずらして配置する手法を用いた。
また、プログラマーの遠藤正樹は、最終盤でのみ起動する「逆転セーブ」機能を仕込んだ人物として有名であるが、本人によればこれはデバッグ用であり、まさかプレイヤーが自発的に使うとは思わなかったという。
音楽[編集]
サウンドトラックは、電子音と木管楽器を混ぜた奇妙な編成で知られ、特にメインテーマ「Poko March」は、通常版では92秒しか流れないにもかかわらず、耳に残る曲として人気を得た。発売後にはから公式アレンジ盤『ぽこ あ カービィ 音泡集』が出され、による演奏会も内で2回開催されている[7]。
とりわけ「泡灯炉の子守唄」は、ゲーム中では敵が眠る場面でしか流れないが、ファンの間では卒業式や結婚式に流す用途で広まり、結果としてゲーム本編よりも独立した楽曲として認識されるようになった。一部の曲は拍子が7/8と5/8を頻繁に行き来するため、当時のゲーム雑誌では「数えているうちにステージが終わる」と評された。
他機種版・移植版[編集]
本作はに向けへ再構成された『ぽこ あ カービィ ミニ』が発売され、通信機能を省いた代わりに、画面を傾けることで泡弾の軌道が変化する仕組みが追加された。その後、版がの一部施設で稼働し、1プレイ3分制の短縮ルールが採用された。
さらに、には旧式の家庭用端末に対応した『ぽこ あ カービィ 回転版』が風サービスで配信され、当時としては珍しい「巻き戻し機能付き移植」として話題となった。なお、海外版ではタイトルが『Poko a Kaby: Bubble Docket』に変更されたが、説明書の表紙だけがなぜか日本語のままであったという。
評価[編集]
発売当初の売上は控えめであったが、口コミによって徐々に広がり、最終的にを突破したとされる。特に、通常のに飽きた層と、変わったを求める層の双方に受け入れられ、化した時点で続編企画が三本同時に立ち上がった。
一方で、ゲーム雑誌『月刊シンギュラリティ』は「面白いが、操作説明書を読むだけで一晩かかる」と批判しており、の企画記事でも「良質な狂気」と表現された。とはいえ、では特別賞を受賞し、後年のにまで影響を与えたとされている。
関連作品[編集]
本作の成功を受けて、続編として『ぽこ あ カービィ 返泡編』、外伝として『カービィと三つの押印』、携帯向け短編『ぽこ あ カービィ 2分版』が企画された。いずれも本編の「押す・返す・読ませる」という思想を継承しているが、正式発売されたのは『返泡編』のみである[8]。
また、の企画も一度進んだとされ、に試作されたパイロット版では、主人公が毎話1回だけ泡の上で自己紹介をする構成だった。しかし、制作側が「物語より前に泡が長い」と判断し、放送には至らなかった。
関連商品[編集]
攻略本は監修の『ぽこ あ カービィ 完全泡読本』が有名で、ページの半分がマップ、残り半分が「泡を読むコツ」で占められている。付録には「反転ミルク味しおり」が同梱され、実際には食べられないにもかかわらず、しばらく文具売り場で売られていた。
書籍では、『泡灯圏の民俗誌』や『記号球の作法』が刊行され、ゲーム研究書として扱われる一方で、地域文化資料として図書館に収蔵された例もある。その他の商品としては、泡が割れると音が出る文房具「ぽこメモ」、そして内の一部カフェで提供された限定メニュー「カービィ色の三段ゼリー」が知られている。
脚注[編集]
注釈[編集]
本作の「第5.5作目」という表現は、公式には一度も明言されていないが、当時の販促物に繰り返し現れたため定着したとされる[1]。
「泡状コマンド入力」は開発者会議の議事録にのみ登場する用語であり、一般向け説明書では「押してつなぐ新操作」と表記されていた[4]。
出典[編集]
1. 星雲ソフト広報室『ぽこ あ カービィ 発売記念資料』2003年、pp. 4-7. 2. 水原 恒一郎「泡と重力の相互可変設計」『ゲーム構造研究』Vol. 12, No. 3, pp. 18-29. 3. 立川試験販売促進会編『先行流通報告書 2003』ミズハラ文庫, 2004年. 4. 吉浦 祐介「泡状コマンド入力の撤回と再定義」『月刊インターフェース』第8巻第2号, pp. 55-61. 5. 橘 さやか『地形即情報化音響論』海鳴書房, 2006年. 6. 吹田ゲーム企画研究会『2001年度議事録集』pp. 102-109. 7. オーケストラ・シェル実行委員会『泡灯炉コンサート記録集』2008年. 8. 佐伯 真里『続編が先に三本立つ現象』北辰出版, 2011年, pp. 88-94.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
星雲ソフト公式アーカイブ
泡灯圏資料館デジタル展示室
カービィ研究会・年表ページ
ポコカビ攻略班Wiki
月刊シンギュラリティ過去ログ
脚注
- ^ 星雲ソフト広報室『ぽこ あ カービィ 発売記念資料』2003年、pp. 4-7.
- ^ 水原 恒一郎「泡と重力の相互可変設計」『ゲーム構造研究』Vol. 12, No. 3, pp. 18-29.
- ^ 立川試験販売促進会編『先行流通報告書 2003』ミズハラ文庫, 2004年.
- ^ 吉浦 祐介「泡状コマンド入力の撤回と再定義」『月刊インターフェース』第8巻第2号, pp. 55-61.
- ^ 橘 さやか『地形即情報化音響論』海鳴書房, 2006年.
- ^ 吹田ゲーム企画研究会『2001年度議事録集』pp. 102-109.
- ^ オーケストラ・シェル実行委員会『泡灯炉コンサート記録集』2008年.
- ^ 佐伯 真里『続編が先に三本立つ現象』北辰出版, 2011年, pp. 88-94.
- ^ M. Thornton, "Bubble Interfaces in Early Console Action," Journal of Interactive Fiction Studies, Vol. 7, No. 1, pp. 33-47.
- ^ 遠藤 正樹『逆転セーブの技術史』星雲技研出版, 2010年.
外部リンク
- 星雲ソフト公式アーカイブ
- 泡灯圏資料館デジタル展示室
- カービィ研究会・年表ページ
- ポコカビ攻略班Wiki
- 月刊シンギュラリティ過去ログ