ぽてぽてぽんぽん
| 語種 | 音象徴語・擬態語 |
|---|---|
| 主な用法 | 接触運動の反復・軽い反発の連鎖 |
| 発生地とされる地域 | の棚田集落(伝承ベース) |
| 関連する分野 | 音響工学、福祉用具開発、擬音語学 |
| 研究上の扱い | リズム同定の検証語として利用 |
| 初出の目安 | 頃の音声講義ノート(とされる) |
| 派生概念 | ぽてぽて系摩擦波形、ぽんぽん反発指数 |
| 社会的波及 | 子ども向け教材・リハビリ教材の普及 |
ぽてぽてぽんぽんは、の方言圏において音象徴として用いられ、物体の不規則な接触運動や、軽い反発が連なる様態を指す語である[1]。また一部では、この語が“音のリズム工学”の研究用キーワードへと転用され、実務の現場に持ち込まれた経緯も知られている[2]。
概要[編集]
は、一般に“転がるようで転がらない”“触れては離れるが、離れ切らない”といった感覚を言語化する語として用いられる[1]。
語感の反復(ぽて×2、ぽん×1)が、音の立ち上がりと減衰の位相差を想起させる点に特徴があるとされ、比喩表現や子ども向けの説明で多用されてきた[3]。
一方、学術側ではこの語が1990年代に“リズム同定の検証語”として採用され、録音編集の段取りや評価指標の統一に寄与したと記録されている[2]。なお、この採用経緯には、妙に具体的な現場要請が絡んだとする説がある[4]。
歴史[編集]
棚田の合図から“音の実験語”へ[編集]
伝承によれば、中越地方の棚田集落では、水路の土を締め直す作業の最中に合図を交わす必要があり、作業者が「ぽてぽてぽんぽん」と口にすると、靴底の沈み込み→突き上げ→再着地の感覚が揃うとされていた[5]。
この合図が“同じ歩幅で同じ圧をかける”ための暗黙手順として広まり、のちに地元の農業講習で「音で揃える耕運歩調」として採用されたとされる[5]。ただし記録の多くは口承であり、郷土誌には「語の長さは3拍、途中の無音は平均0.18秒」といった、やけに細かい値も見られる[6]。
頃、の非常勤講師であったが、語の反復構造を“音声編集の定規”として使えるのではないかと考え、講義ノートに「ぽてぽてぽんぽん検証」を追記したとされる[2]。このノートは学内の回覧資料扱いで、後年“存在したか怪しい”とされつつも、コピーが残っていたと説明されることが多い[2]。
音響工学会議と“反発指数”の誕生[編集]
転機は、の会議室で開催された「触運動の音響モデリング検討会」であったとされる[4]。主催は日本音響機構に連なる研究部会で、議事録の冒頭に“合図語は方言由来の非定常音を含むことが望ましい”と記されていたという[4]。
そこで研究チームは、床材サンプル(ゴム、発泡材、古タイヤ由来ブレンド)を使い、装置に被せたマイクで拾った音を「ぽてぽてぽんぽん」形式に整形し、反発の強さを指標化したとされる[7]。この指標は、のちに「ぽんぽん反発指数」と呼ばれ、定義式として“ピーク間隔÷減衰傾き”が採用されたとされる[7]。
また、採用されたデータ収集は奇妙に具体的で、少なくとも1セットにつき試行回数は64回、被験者は健常成人12名と車椅子利用者4名、記録は各条件で“必ず3回だけ失敗させる”という運用が入っていたと記述される[8]。この運用の意図は「失敗音を混ぜないと、脳が勝手に整合してしまう」ためだと、の研究員が説明したとされる[8]。
福祉現場への定着と、教材化の波[編集]
2000年代に入ると、ぽてぽてぽんぽんは“教えやすい比喩語”としてリハビリの導入文に取り込まれ、特に注意の切り替えが難しい子どもを対象に、課題動作の説明に用いられたとされる[9]。
の小児リハビリ施設では、運動カリキュラムを3ブロックに分け、各ブロックの頭に必ず「ぽてぽてぽんぽん、いま触って、いま離す」と掲示したところ、評価者間一致率が“92.4%に上昇した”と報告された[10]。ただし同報告書では、別の箇所で一致率の算出方法が省略されており、「実際は同意が92.4%だったのでは」との内部指摘もあったとされる[10]。
一方で、この語の教材化が進むにつれ、語の意味が“軽い反発”から“音の気分”へと拡散し、現場によって説明の方向が揺れたという批判も生まれた[11]。この揺れ自体が研究対象になるほど、語は実務に深く入り込んだとまとめられている[11]。
特徴と用法[編集]
語の特徴としては、子音の反復がテンポを規定し、母音の変化が“接触→離脱”の印象を補強する点が挙げられる[3]。
用法は大きく三つに分けられるとされる。第一は物体の動き(例:小さな玉が段差でぴょこぴょこと繰り返す様態)。第二は人の動作(例:靴が沈み、押し返される歩き方の説明)。第三は対話上の合図(例:作業者間でリズムを揃える合図)である[1]。
音響工学においては、語を読む際の“間”が重要視され、録音編集では「ぽて」の終端が雑音に埋もれないよう、マイクのゲインが+6.3 dBに調整されたとする手順書が残っている[7]。この値は他の擬音語研究ではあまり見られないため、ぽてぽてぽんぽん固有の運用とされてきた[7]。
社会的影響[編集]
ぽてぽてぽんぽんが社会に与えた影響は、直接の学術的成果というより“説明の型”としての普及にあると評価されている[9]。
教材化によって、抽象的な指示(強く踏む、急がない、力を抜く)が、擬音のリズムへと翻訳されるようになり、介助者の言語負担が軽くなったとする見解がある[9]。とくに自治体の福祉講習では、受講者が“口頭で同じ間を作れるか”を実技評価にしていたとされる[12]。
また、音響機器メーカーの一部では、装置の起動音や通知音にこのリズム感を取り込む試みが行われたと報じられている[13]。その結果として、店舗の床案内で利用者が迷いにくくなったという市販レポートが出た一方、反対に「音が気持ち悪い」というクレームも一定数あったとされる[13]。
批判と論争[編集]
ぽてぽてぽんぽんの研究・運用には、複数の論点があるとされる。第一に、語の意味が現場ごとに変わり、評価の再現性が揺れる点である[11]。
第二に、反発指数の定義に対して「“失敗音”を混ぜる運用は、指標が都合よく見える危険がある」との指摘が出た[8]。この批判に対しては、失敗音は“条件の境界を明示するための教師信号である”という反論があり、結論は未確定とされた[8]。
第三に、擬音語の教材化が言語発達に与える影響について、肯定・慎重の両論が並立している。ある臨床報告では「語を繰り返すことで模倣が安定した」とされる一方、別の観察記録では「同じ語を言えることが目的化した」という懸念が示された[10]。なお、議論の混乱を象徴するように、学会ポスターではぽてぽてぽんぽんの表記が3種類に分かれて掲載されていたとも言及される[14]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 相馬清一郎『擬音語を編集定規にする試み』新潟大学音声研究室, 1974.
- ^ 田中みなと『ぽてぽてぽんぽん検証語の形成史』音声講義資料集, Vol.2, pp.11-38, 1995.
- ^ Margaret A. Thornton『Sound-Meaning Mapping in Japanese Ideophones』Journal of Phonetic Engineering, Vol.18, No.3, pp.201-233, 2001.
- ^ 【日本音響機構】触運動の音響モデリング検討会『議事録(要約)』社団法人日本音響機構, pp.1-24, 1993.
- ^ 『中越棚田の労働合図に関する聞き書き』新潟県農耕文化誌, 第7号, pp.44-63, 1982.
- ^ 菊地昭則『口承資料にみる間(ま)の数値化』日本方言研究, 第12巻第1号, pp.77-94, 1986.
- ^ 伊藤レン『ぽんぽん反発指数の推定法:ピーク間隔と減衰傾き』音響技術, Vol.41, No.2, pp.55-71, 2003.
- ^ 国立障害福祉研究センター『触作業評価プロトコル改訂報告書』第3版, pp.9-27, 2006.
- ^ 山根由香『擬音語を用いた課題説明の効果:現場記録の分析』福祉教育研究, Vol.9, No.4, pp.140-168, 2009.
- ^ 鈴木公彦『評価者間一致率の現場適用:大阪事例の再検討』リハビリテーション工学, 第15巻第2号, pp.31-52, 2012.
- ^ Patricia R. Keene『Learning Objectives and Ideophone Drift in Therapy Materials』International Review of Special Education, Vol.27, No.1, pp.9-26, 2015.
- ^ 【東京都】福祉講習課『音の間で揃える介助技術(試行版)』東京都資料, pp.3-19, 2018.
外部リンク
- 音声編集アーカイブ(架空)
- 触運動モデリング・ラボ(架空)
- 福祉教材データベースぽてぽて(架空)
- 日本方言擬音語研究会ログ(架空)
- 反発指数計算機(架空)