ぽにぽに
| 分類 | 音響擬態語/比喩語 |
|---|---|
| 主な用法 | 触感・柔らかさ・軽さの比喩 |
| 初出の推定 | 前後(同人誌・掲示板の断片) |
| 関連分野 | 聴覚心理学、音声学、ネットスラング |
| 中心地域(伝播) | 周辺(通学圏) |
| 研究会 | ぽにぽに音質研究会(非公式) |
ぽにぽに(ぽにぽに)は、で一部の若年層により用いられる“音の質感”を指すことばである。語源は童謡の擬音にあるとされるが、として体系化された経緯もある[1]。
概要[編集]
は、音を聴いたときに“ふわり”“にゅるり”とした触感が頭の中で生じる状態を、擬音により要約することばである。特に「高いけれど刺さらない」「軽いけれど空虚ではない」といった主観の中間性を表す語として用いられてきたとされる[2]。
語の成立は童謡の擬音語に遡るとも言われるが、語の社会的な定着は別系統の“研究っぽい運用”によって加速したとする見解がある。すなわち、言葉の感覚を数値化し、録音再生の場で共有する試みが行われ、それが結果としてスラング化したという筋書きである[3]。
一方で、同語が複数の意味領域に分岐した点も特徴である。「触感の比喩」と「かわいさの評価」と「音響的な角の丸まり」を別々に指す用法が並存し、文脈依存の揺れが“ぽにぽにらしさ”として受容されたとされる[4]。
歴史[編集]
童謡擬音から“音質規格”へ[編集]
1990年代後半、内の小規模イベントで「音の触感」をレビューするコーナーが試験的に開かれたとされる。そこでは擬音語が統一規格として扱われ、たとえば“しーん”は“反響指数0.8未満”“ぽにぽに”は“減衰曲線がゆるく、立ち上がりが遅い”といった説明が添えられたという[5]。
このとき最初に使われた資料は、当時の音声解析ツールのUIを模した自作冊子であった。冊子はの貸会議室で印刷され、配布部数は“正確に”247部と記録されているが、当事者の証言では手元に残っていないとされる[6]。この“正確さ”が後年の言説に残り、ぽにぽにの物語をよりらしくしたと指摘されている。
さらに、1999年に開催されたとされる「擬音音質会議」では、ぽにぽにを“帯域の角が丸い”と定義する案が採択される。採択決議は参加者の投票によって行われ、賛成票は全体の73%であったとされるが、計算方法が議事録に明記されていないため、再現性の面で議論が残ったという[7]。
ぽにぽに音質研究会と“語の回路”[編集]
2000年代初頭には、非公式な研究会としてが語られるようになる。研究会は大学の正式機関ではなく、の複数サークルが持ち回りで“試聴会”を主催した形態だったとされる。ある試聴会では、ノイズ除去の有無で同語の印象が変わるかを調べ、参加者42名のうち「ぽにぽにが増えた」と答えたのは19名であったと報告されている[8]。
この数字は後に、掲示板文化に引用される際に少しだけ加工されたとする指摘がある。具体的には「19名」が“ほぼ半分”という言い換えに変えられ、語の説得力が増した一方、元データの輪郭は失われた。編集者気質の参加者が“伝播しやすい数字”に寄せた結果であると推測されている[9]。
社会への影響としては、ぽにぽにが「感想の言語」を変えた点が挙げられる。従来は“好き/嫌い”で終わっていた音楽レビューが、触感・角度・減衰のような擬態的表現へと広がったとされる。また、言葉を共有することで共通の鑑賞体験を作る“回路”が形成され、若年層のコミュニケーションが相互に強化されたという[10]。
解釈の分岐[編集]
「ぽにぽに」は、単一の意味に収束せず複数の解釈が並列化したと考えられている。第一の解釈は“触感の擬態”であり、音が皮膚に当たるかのような比喩として使われる。ここでは、音の立ち上がりが遅く、残響が長めで、刺激が角ばらないほど“ぽにぽに”になるとされる[11]。
第二の解釈は“評価語”としての側面である。たとえば配信者がBGMを選ぶ際、「今日はぽにぽに度を上げたい」と発言し、過度な低音を避ける設定へ誘導したという逸話がある。ある回では、EQのプリセットを“3つ”だけに絞ったところ、チャットの反応率が平均で+12.4%になったとされるが、比較期間や分母が不明であるため慎重に扱うべきとされる[12]。
第三の解釈は“記号化された感情”であり、かわいさ・無害さ・丸さを一括で表すために使われる。この解釈では、ぽにぽにが音だけでなくテキストにも移植され、文章が“角の少ない速度”で読まれているかを問う冗談が流行したとされる。結果として、ぽにぽには音響語でありながら、文章のリズム評価にも転用されるに至ったという[13]。
具体的な事例[編集]
ぽにぽにの語が現場で機能した例として、にある小型スタジオでの“反省会”が挙げられる。録音したボイスドラマを聞き返した制作側が「セリフが硬い」と言い出したところ、スタッフがぽにぽにの語を持ち出し、尺を変えずに“息継ぎの間”だけを調整したという[14]。その結果、「硬さ」が減り「ぽにぽに」が増えたと参加者全員が答えたとされ、反省会は“成功例として保存”されたと報告されている。
また、の教育関連団体が主催したワークショップでは、子どもたちに「好きな音を言葉にするとしたら?」という課題を出した。そこで“ぽにぽに”が最も多く選ばれ、回答数は全体の28.7%であったとされる[15]。ただし先生側の記録用紙には、対象が“8歳児のみ”なのか“9歳児も含む”のかが書き分けられていないため、数字の厳密性は怪しいといった反論が出た。
さらに、配信プラットフォーム上では“ぽにぽに警察”と呼ばれる運用が生まれた。これは「ぽにぽにと言っているのに角がある」と指摘し、コメント欄で音響設定を議論する遊びである。ここでは、角があるかどうかの基準が“音の歯切れの良さ”とされ、歯切れが良いほど“ぽにぽに違反”と扱われたとされる。なお、この運用は一部で荒れ、穏健派からは「言葉の遊びは言葉の遊びとして」との注意が出た[16]。
批判と論争[編集]
批判として最も多いのは、「ぽにぽに」が定量化の名のもとに主観を権威づけてしまう点である。たとえば研究会の議事録に相当する文書では、“ぽにぽに度”を推定する簡易計算が掲載されたという。計算式は「高域エネルギー比A ÷ 立ち上がり遅延B × 10」といった形で、見た目は科学的であるが、入力パラメータの測定条件が毎回揺れたと指摘される[17]。
また、用語が可愛いものの評価に偏り、音楽や環境音の多様な魅力を単純化するのではないかという声もある。「汚い/うるさい」側を排除し、「ぽにぽに」側へ寄せる圧力が生まれたとする指摘である[18]。
一方で擁護論も存在する。擁護側では、ぽにぽには“科学を真似ることで言語を学ぶ”ための足場であり、測定は目的ではないとされる。実際、同語は時間が経つにつれ、数値の正しさよりも“相互理解のテンポ”として使われるようになったという。ここで語の機能は、誰かを論破する道具ではなく、場を柔らかくする道具へと転じたとまとめられている[19]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中 康晃『擬音が生む聴感世界:ぽにぽにの言語学的配置』春秋社, 2003年.
- ^ Margaret A. Thornton『Tactile Hearing and Pseudo-Textures』Oxford Audio Press, Vol.12 No.3, 2007.
- ^ 鈴木 玲奈『音の“丸み”を測る手順書—非公式規格としてのぽにぽに度』東都大学出版会, 第1巻第2号, 2005.
- ^ Claire N. Ishikawa『Subjective Taxonomies in Digital Sound Communities』Journal of Playful Acoustics, Vol.4 No.1, pp.11-29, 2011.
- ^ 渡辺 精一郎『掲示板時代の擬態語:感想を同期させる文体技法』東京文庫, 2009年.
- ^ 河合 眞人『音響レビューの暗黙ルールと“違反”概念の生成』西海研究叢書, pp.101-134, 2014.
- ^ 小笠原 恵理『擬音音質会議の実務記録(復刻)』筑波アーカイブ, 2018年.
- ^ Ryohei Matsudaira『Quantification Theater in Online Anecdotal Science』Proceedings of the Odd Method Society, Vol.2, pp.77-92, 2016.
- ^ 佐伯 友希『ぽにぽに度:簡易式の安全な使い方(誤差込み)』せきれい書房, 2020年.
- ^ Nadia V. Kwon『The Soft Edge: A Misguided Measure That Works』Cambridge Sound Miscellany, Vol.9 No.4, pp.55-70, 2012.
外部リンク
- ぽにぽに音質ノート
- 擬音語ライブラリ(臨時)
- 音の触感アーカイブ
- ぽにぽに度計算機(非公式)
- 擬音会議議事録の鏡面復刻