『ようこそ国公立至上主義の学校へ』
| タイトル | ようこそ国公立至上主義の学校へ |
|---|---|
| ジャンル | 学園、風刺、心理戦 |
| 作者 | 霧島一也 |
| 出版社 | 朝霧書房 |
| 掲載誌 | 月刊ブレンド・コマ |
| レーベル | ブレンド・コミックス |
| 連載期間 | 2014年4月号 - 2019年11月号 |
| 巻数 | 全14巻 |
| 話数 | 全83話 |
『ようこそ国公立至上主義の学校へ』(ようこそこっこうりつしじょうしゅぎのがっこうへ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『』は、の進学校を舞台に、進学を絶対視する独自の校風と、その内部で繰り広げられる進路抗争を描いた学園漫画である。作中では「偏差値よりも合格実績が人格を決める」という極端な思想が制度化されており、学園内では、模試順位、部活動の廃止可否までが生徒会権限で管理される。
作品は当初、進路戦争を題材にした学園コメディとして受け止められたが、途中からとの序列差をめぐる宗教的な儀礼や、校内放送で流れる「合格祈願鐘」が物語の中心となり、読者の間で「教育版ディストピア」と呼ばれるようになった。累計発行部数は時点で480万部を突破したとされる[2]。
制作背景[編集]
作者のは、もともと受験雑誌の四コマ欄で知られた人物で、にの進学校で行われた「進路別座席表」の取材をきっかけに本作の構想を得たとされる。霧島は、学力そのものよりも「どの大学に受かったか」で同級生の扱いが変わる現象に強い興味を持ち、これを極端化した設定を作り上げたという。
連載開始前の予告カットでは、主人公がではなくに向かって土下座する絵が掲載され、編集部内で賛否が割れたとされている。また、初期設定資料には「公立高校出身者のみが参加できる夜間模試」や「大学名を唱えると給食の献立が変わる」といった要素があり、最終的にその一部が作中の制度として採用された[要出典]。
あらすじ[編集]
入学編[編集]
主人公のは、の中堅中学から、異様な熱気を持つ私立進学校に編入する。そこでは志望者が「上位卓」に座り、志望者は「滑り止め席」と呼ばれる窓際に追いやられていた。
誠は、入学初日に校長から「本校は公立を愛し、国立を崇め、私立を研究対象とする」と宣言され、以後、朝礼で偏差値の読み上げを義務づけられる。彼は生徒会長のと出会い、学園の序列制度に疑問を抱き始める。
定期試験編[編集]
中間試験では、答案用紙にの志望理由を書き添えると加点される「思想記述」が導入される。誠は答案に「税金の重みを知る者こそ学問を継ぐ」と書き、なぜか学年2位となる。
一方で、英語の試験ではではなく「県民理解度テスト」が実施され、出題範囲にの由来が含まれていた。ここで登場する数学教師・が、試験監督中に“公立の問題は無限に増殖する”と語る場面は、後に本作を代表する名場面とされた。
文化祭編[編集]
文化祭では、各クラスが進路思想をテーマに出展し、派、派、派が激しく対立する。誠のクラスは「入試問題の屋台」を出し、来場者が正解するまで焼きそばを受け取れない仕組みを採用した。
この回で明かされる「国公立至上主義」の起源は、戦後の焼け跡に残った仮設校舎で配られた進路冊子にあるとされ、冊子の見出しが雨で滲んで「国公立」が巨大な標語になったことが制度化の始まりと説明される。もっとも、作中ではそれが半ば神話として扱われており、史実かどうかは曖昧である。
全国模試編[編集]
物語後半では、全国模試そのものが国家規模の選抜儀礼として描かれる。順位表はではなく「進路監理局」により公表され、上位50名は“国公立騎士団”に推薦される。
誠は、模試会場で偶然出会ったライバルと、答案の裏に書かれた志望校コメントをめぐって決闘する。最終的に2人は、偏差値の差よりも「通学定期の安さ」が人生を左右するという真理にたどり着き、学園の制度を揺るがすことになる。
登場人物[編集]
は本作の主人公で、極端な制度に対して最も冷静であろうとするが、気づくと誰よりも思想に染まっていく少年である。座右の銘は「合格は人格を証明する」だが、期末試験では常に平均点前後に留まる。
は生徒会長で、学内序列の維持を担う冷徹な優等生として登場するが、私服では県立図書館の利用カードをコレクションしている。彼女が「公立は無料ではない、共同体の記憶で支えられている」と語る場面は、ファンの間で過剰に引用された。
は私立志望の転校生で、作中における“異端者”である。彼は授業中に私大の奨学金制度を研究する変わり者だが、数学だけは異様に強く、後半では誠の最大の理解者となる。
は数学教師で、校内唯一の「学問派」を自称する人物である。授業ではを使って通学圏の家賃を説明し、生徒の進路を住宅事情から分析する癖がある。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、「国公立至上主義」とは単なる進学指導ではなく、学園運営の根幹をなす政治理念として扱われている。生徒は入学と同時に「進路階級」に登録され、志望者は赤、志望者は青、私立志望者は灰色の腕章を着用することになっている。
また、校内には「合格祈願鐘」と呼ばれる装置が存在し、模試の成績が一定値を超えると自動で鳴る仕組みになっている。実際には理科準備室のタイマーと連動した単純な仕掛けであるが、作中ではから続く伝統装置とされ、理事長室の地下に「旧制官立高等学校時代の卒業証書」が封印されているという設定まである。
用語として特に有名なのが「逆滑り止め」で、これは本命校に落ちても公立高校に進むことで体面を保つ現象を指す。なお、作中ではこの語がの流行語大賞候補に入ったとされるが、現実の記録とは一致しない。
書誌情報[編集]
単行本はより刊行され、からにかけて全14巻が発売された。第7巻の特装版には「模試答案風しおり」が付属し、発売初週で地方書店の在庫がほぼ消失したとされる。
電子書籍版は、巻末に進路診断チャートが追加された改訂版として配信され、読者が「あなたは公立向きです」などの判定を受ける仕様で話題となった。第11巻以降はとで帯コピーが微妙に異なり、関西版では「私立もまた国公立への迂回路である」と書かれていた。
メディア展開[編集]
にはが発表され、全12話の深夜アニメとして放送された。アニメ版では、毎話の次回予告が「本日の模試結果」に置き換えられ、視聴者が翌週の展開を偏差値で予測する仕掛けが採用された。
また、版ではの廃校舎を改装した会場で上演され、客席にも席次表が配布された。さらに、地方自治体とタイアップした「進路祈願スタンプラリー」がとで実施され、指定校の校門を巡る企画が家族連れに妙な人気を博した。
ゲーム化企画も一度検討されたが、「プレイヤーが志望校を選ぶたびに税率が変動する」という仕様が難解すぎたため中止になったとされる。
反響・評価[編集]
本作は、受験競争を誇張しつつも、地方都市の教育格差や家計事情を含めて描いた点が評価された。一方で、教育現場の一部からは「進路指導を宗教化している」との批判もあり、のは『週刊学習論壇』上で「笑えるが笑えない」作品だと論じた。
読者の間では、生徒会長の台詞「公立とは、選ばれる側ではなく支える側の矜持である」が名言として拡散し、SNS上で進学実績のスクリーンショットとともに引用される文化が生まれた。なお、の帯に記された「全国の塾講師が震えた」という宣伝文句は誇張であったと見られるが、売上には確かに寄与したとされる。
最終的に本作は、学園漫画としては異例のかたちでとなり、進路説明会のパンフレットに「本作を読んだことは志望校選定の参考にならない」と注意書きが付いたという逸話まで残っている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 霧島一也『進路と席次のあいだ』朝霧書房、2013年。
- ^ 高森優子「学園内序列の視覚化と漫画表現」『現代サブカル研究』Vol.12 No.4, pp. 44-61, 2016年。
- ^ 佐伯由真『受験と共同体の神話』北辰社、2018年。
- ^ M. Thornton, “Entrance Exams and Institutional Faith in Postwar School Comics,” Journal of East Asian Popular Culture, Vol. 8, No. 2, pp. 101-129, 2019.
- ^ 藤堂剛「公立崇拝の物語化に関する一考察」『比較教育とフィクション』第5巻第1号, pp. 7-22, 2020年。
- ^ A. Watanabe, “Why Rankings Became Sacred,” School Narrative Review, Vol. 3, No. 1, pp. 88-94, 2017.
- ^ 霧島一也・監修『月刊ブレンド・コマ 連載資料集』朝霧書房編集部、2021年。
- ^ 西園寺美咲「進路祈願スタンプラリーの文化史」『地方イベント年報』第18号, pp. 55-70, 2022年.
- ^ Theodore K. Bell, “Public Schools and Private Anxiety,” Educational Myth Quarterly, Vol. 15, No. 3, pp. 203-219, 2020.
- ^ 『進学至上主義の学校へ 公式ファンブック』朝霧書房ムック、2020年。
外部リンク
- 朝霧書房公式作品案内
- 月刊ブレンド・コマ作品ページ
- 進路文化研究所アーカイブ
- 国公立至上主義の学校へ 応援団まとめサイト
- 学園漫画資料室