アッシュのエイム感度
| タイトル | アッシュのエイム感度 |
|---|---|
| 画像 | Ash_Aim_Sensitivity_box.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 北海版初回限定パッケージ |
| ジャンル | シミュレーションシューティングゲーム |
| 対応機種 | VX-12, VX-12 Pro, サテライト・ミニ |
| 開発元 | ヴァルク工業 第二娯楽局 |
| 発売元 | ヴァルク工業 |
| プロデューサー | 斎藤レナ |
| ディレクター | M. H. Albright |
| デザイナー | 久保田真伍 |
| プログラマー | Niels E. Strand |
| 音楽 | カテリーナ・フランツ |
| シリーズ | アッシュ・ライン |
| 発売日 | 2014年9月18日 |
| 対象年齢 | 15歳以上推奨 |
| 売上本数 | 全世界累計128万本 |
| その他 | 日本ゲーム大賞2015優秀賞 |
『』(Ash's Aim Sensitivity)は、にのから発売されたである。通称は「アッセイ感」とされ、のちにの第3作目として扱われた[1]。
概要[編集]
『』は、の微細な揺れを数値化し、機体の反応特性を調律しながら進むである。プレイヤーは灰色粉塵都市の整備士兼射撃教導員として操作し、名門校の模擬戦を通じて「感度の正義」を争う。
本作は、もともとの訓練端末向けに試作された感覚校正ツールを母体としており、ゲーム化の過程で奇妙な競技性が付与されたとされる。開発資料には「照準は人格を映す鏡」と記されていたが、実際には発売直前まで単なる診断アプリとして扱われていたという指摘がある[2]。
ゲーム内容[編集]
ゲーム本編は、左手のスティックで歩行、右手のトリガーで照準を操作する標準的な構成を採るが、感度値が0.01単位で変動する。これにより、同じ武器でも「落ちものパズル」的に弾道が嵌る局面があり、海外レビューでは「ハンティングアクションとロールプレイングゲームの中間」と評された。
また、プレイヤーは「過補正」「遅延慣性」「霧中補助」の三系統を切り替えることができる。特に「遅延慣性」は、実在の射撃訓練で使われる補正理論を引用した体裁を取りつつ、実際には画面中央に見えない重りを置いたような挙動を示すため、初心者には極めて不評であった。
対戦モードでは、の4対4「灰塵リーグ」と、専用の「整備班モード」が用意されている。後者では、撃つより先に感度を合わせないと味方の照準が暴発するため、実質的に会話ゲームである。オフラインモードには、ひたすら無風状態で感度だけを追い込む「静寂演習」があり、これが一部の競技者の間で異常な人気を得た。
ストーリー[編集]
物語は、の湾岸工廠で起きた「第三照準事故」から始まる。主人公は事故の責任を押しつけられた若き整備士であり、失われた感度計「A-9」を探すうちに、都市上層部が住民の反射神経を規格化していた事実に迫る。
中盤では、主人公がの実験台であることが判明し、失敗した照準はすべて「個人の未熟さ」として処理されていたことが明かされる。終盤、主人公は感度を上げる代わりに記憶を一部失う装置「白灰レンズ」を選ぶか、感度を据え置いて都市の防衛を捨てるかを迫られる。この二択は発売当時から議論を呼び、どちらを選んでもエンディング後に操作感が少し悪くなる点が「哲学的」とされた。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公は、標準名をとするが、初期設定では姓が毎回変わる。これは開発途中で「エイム感度は家庭環境に依存する」という仮説が採用されたためで、名前の揺らぎがそのまま人格の揺らぎとして扱われた。プレイヤーの操作精度によって口調まで変化する仕組みがあり、精密射撃が続くと敬語になる。
仲間[編集]
仲間には、感度補正士の、弾道記録係の、および半自動整備犬のがいる。Q-07は犬というより計測器に近いが、コントローラの振動に反応して吠えるため、当時の販促では「最も忠実なハードウェア」と紹介された。
敵[編集]
敵勢力はと呼ばれ、極端に低い感度を神聖視する集団である。教団幹部のは、照準の誤差を救済とみなす思想を唱え、作中ではむしろ正論として扱われる場面も多い。なお、彼が使う専用武器「遅鈍の笛」は、射撃音ではなく風切り音だけを鳴らすため、初見では何が起きているのか分からない。
用語・世界観[編集]
作中でいう「エイム感度」とは、単なる操作設定ではなく、都市の治安、個人の自尊心、さらにはパンの焼き上がりまで左右するとされる半宗教的な概念である。設定資料集では、の公共照明がすべて感度基準値に連動しているとされているが、実際にはプレイヤーの見間違いを誘発するための演出であった可能性が高い。
また、本作の世界には「灰度帯」と呼ばれる特殊区域が存在する。ここでは1秒間に最大17回まで照準補正が許可され、これを超えると市条例違反になるとされる。もっとも、条例番号が毎回違うため、どの法令に基づくのかは不明である[3]。
開発[編集]
制作経緯[編集]
本作は、第二娯楽局の社内研修で用いられた「照準誤差記録シート」から発展したとされる。初期案では撃たずに感度だけ調整する業務ソフトであったが、が「失敗が楽しい」と判断し、撃ち合い要素が追加された。
スタッフ[編集]
ディレクターのは、元の測量技師で、ピクセル単位での視線誘導に異常な執着を示したことで知られる。デザイナーのは、都市の看板を実在より3度だけ斜めに描く癖があり、これが本作の奇妙な没入感を生んだとされる。
音楽[編集]
音楽はが担当し、弦楽器を極端に短く切ったサンプルと、旧式照準器のクリック音を組み合わせて制作された。特に戦闘BGM「0.43秒の灰」は、拍頭の遅れを意図的に含むことでプレイヤーのリズム感を崩す仕組みであり、発売後に一部の大会で使用禁止曲となった。
サウンドトラックは初回版に付属し、全27曲のうち4曲がタイトル名だけで終わるインストゥルメンタルである。なお、最後の隠しトラックは、無音が8分13秒続いた後に一度だけクリック音が鳴るが、これは再生不良ではないとされている。
移植版[編集]
翌年には向けの拡張版『アッシュのエイム感度: Recoil Draft』が発売され、細かな視点揺れの補正と、観戦機能の強化が行われた。さらににはへ移植され、携帯機では珍しく感度設定画面だけで2分を要する仕様が話題になった。
また、北海諸島の公共端末では版が配信され、教育目的として図書館に設置される例もあった。もっとも、児童が感度を上げすぎて監視カメラが追従できなくなる事案が数件発生し、翌月からは利用時間が45分に制限されたという。
評価[編集]
発売当初の評価は賛否が分かれたが、のちに「操作精度を作品の主題にまで高めた稀有な例」として再評価された。では優秀賞を受賞し、海外では『The Sensitivity Problem』として紹介された。売上は初週で18万本、を突破し、開発元としては異例のとなった。
一方で、レビュー集計では「学習曲線が急峻すぎる」「感度より倫理が問われる」との感想が目立った。特に一部の競技コミュニティでは、理想値をめぐる論争が長期化し、同一プレイヤーが3年間で427回設定を見直した記録が残っている[4]。
関連作品[編集]
シリーズ一作目にあたる『』は、純粋な診断アプリであり、撃つ要素は存在しなかった。続編『』では、照準をわざと外すことで道が開く「反感度システム」が導入され、ファンの間で伝説化した。
派生作品としては、された『灰のきみと最後の補正』、およびカードゲーム『Aim & Ash Chronicle』がある。これらは明確に別作品であるが、発売元資料ではいずれも「同一感度宇宙に属する」とされている。
関連商品[編集]
公式攻略本『アッシュのエイム感度 完全感度補正読本』は、全314ページのうち約90ページが「疲れたら休む」と書かれており、攻略本というより生活指南書に近い。付録DVDには開発者座談会が収録されているが、30分のうち22分がカーソル速度の話である。
また、書籍『灰色の照準学』や『0.01単位の倫理』が刊行され、いずれものロングセラーとなった。関連グッズとしては、感度メモリを模した定規、照準点の位置で震えるマウスパッド、そして「補正しすぎると光る」キーホルダーが発売された。
脚注[編集]
注釈
[1] 初期の広報資料では発売日が9月17日とされたが、店頭端末の同期不良により翌日に修正されたとする記録がある。
[2] 開発会議録の一部は社史編纂室に保管されているが、閲覧申請の半数が却下されたため、詳細は要出典である。
出典
[3] 『北海諸島ゲーム政策年報 2016年度版』、pp. 118-121。
[4] L. M. Carter, “The Ethics of Recoil Calibration,” Vol. 14, No. 2, pp. 77-103, Journal of Interactive Drifts, 2019.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 斎藤レナ『アッシュのエイム感度 公式設定資料集』ヴァルク工業出版局, 2015.
- ^ 久保田真伍『灰と照準のデザイン史』北海工科出版, 2016.
- ^ M. H. Albright “Calibration as Narrative in Competitive Shooters,” Vol. 8, No. 1, pp. 12-39, Nordic Game Studies, 2017.
- ^ カテリーナ・フランツ『0.01秒の音楽論』海鳴堂, 2015.
- ^ 北海諸島文化庁 編『北海諸島ゲーム政策年報 2016年度版』北海諸島文化庁, 2016.
- ^ Niels E. Strand “Friction, Drift, and the Fiction of Aim,” Vol. 14, No. 2, pp. 77-103, Journal of Interactive Drifts, 2019.
- ^ 坂井ミナト『整備班モード入門』アッシュ湾岸書房, 2018.
- ^ 渡会悠介『感度の政治学』東湾出版社, 2020.
- ^ L. M. Carter “The Ethics of Recoil Calibration,” Vol. 14, No. 2, pp. 77-103, Journal of Interactive Drifts, 2019.
- ^ 小野寺咲『遅延慣性と都市神話』白灰社, 2021.
外部リンク
- ヴァルク工業 公式アーカイブ
- アッシュ・ライン 総合年表
- 北海ゲーム資料館 デジタルライブラリ
- 灰度帯競技連盟
- 感度研究会 週報