アルミ缶の上にないミカン
| 名称 | 薄板橘統合庁(うすいたきついとうごうちょう) |
|---|---|
| 略称 | UITA |
| 設立/設立地 | 1987年・ |
| 解散 | 表向きは未解散(2019年に改称とされる) |
| 種類 | 秘密結社 |
| 目的 | 食品陳列データの“規格化”と支配 |
| 本部 | 港区・“衛生統計ビル” |
| 会員数 | 約3,140人(名簿の断片があると信じられている) |
| リーダー | 渡辺精算郎(わたなべ せいさんろう) |
アルミ缶の上にないミカン(あるみにかんのうえにないみかん、英: Tangerines That Are Not on Aluminum Cans)とは、における「缶詰め衛生」の名を借りた陰謀を主張する陰謀論である[1]。信者は、スーパーマーケットの陳列写真に写る“空白”こそが合図であり、特定の流通ルートを支配する秘密結社が隠蔽していると主張している[2]。
概要[編集]
とは、スーパーの棚やチラシで「アルミ缶の上にミカンが“乗っていない”」ことを根拠に、流通と広告の裏で陰謀を進めるとするインターネット・ミーム系陰謀論である[1]。
この陰謀論では、ミカンが置かれていない“空白の区画”が暗号であると信じられている。また、缶の材質(アルミ)が象徴として選ばれ、陳列の配置がプロパガンダの媒体として運用されているという主張が繰り返されている[2]。
信者は、写真の角度や光の反射まで科学的に/科学的な検証を試みるふりをしつつ、否定されるたびに捏造の追加解釈を行うことで真相に近づいたと主張する傾向が指摘されている[3]。
背景[編集]
陰謀論の背景には、1980年代後半に広まった「衛生表示の標準化」と、1990年代に進んだ「量販店の画像広告最適化」という2つの出来事が“都合よく”接続された物語があるとされる[4]。
信者によれば、アルミ缶は軽量で反射が強い素材であり、陳列棚の“測光”装置(撮影補正)をだますために使われたと主張されている。そこでミカンが上に置かれていないのは、単なる偶然ではなく「測光を逸らすための意図的な欠落」だとされる[5]。
さらに、内の物流センターで「色温度の異常」が見つかったとする“社内メールの偽書”が拡散され、アルミ缶の反射パターンがサーバに記録され、支配し/支配される関係を作ると信じられていった[6]。この点について、真相は隠蔽されている、という言い回しが繰り返される。
起源/歴史[編集]
起源[編集]
起源は、架空の人物である渡辺精算郎(UITAの創設者とされる)がの廃材検査工場で「棚撮影の余白が最も誤差を生む」と書き残した“ノートA-73”にあるとされる[7]。
ノートA-73は、アルミ缶の上にミカンを“置けば”カメラの自動露出が安定する一方、“置かなければ”露出が揺れて不正な比較が可能になる、という観察を基にしたと主張されている。信者は、そこから「余白=検問所の通行証」という比喩が生まれたと説明する[8]。
ただし、ノートA-73の原本は確認されていない。にもかかわらず、信者は紙の繊維を科学的に/科学的な検査した“とされる”報告書を引用し、捏造である可能性が否定されることは少ないと指摘されている[9]。
拡散/各国への拡散[編集]
拡散の初期段階では、2004年頃から系の板で「棚の写真コンテスト」が開催され、アルミ缶の上にミカンがない画像を“正しい合図”として保存する文化が形成されたとされる[10]。
2007年には英国向けに翻訳された偽情報/偽書“Cans Without Fruit”が出回り、米国では「supermarket cipher(量販店暗号)」として、の一部地域で“棚監査員”が活動していると主張されるに至った[11]。また、2012年にはフランス語圏で“oranges absent on aluminum”という英訳より直訳寄りの表現が流行したとされる。
拡散の転機として、2016年の大手家電店キャンペーンで陳列棚を“撮りやすく”する改善が行われた際に、突然「余白の規格」が統一されたように見えたことが挙げられている。この出来事は、隠蔽の証拠だとする主張もあれば、単なる陳列改善だと否定する反論もあるが、信者はプロパガンダの成功例として扱い続けている[12]。
主張[編集]
主張は概ね4点に整理される。第一に、アルミ缶の上にミカンがないことは、測光と広告最適化のための“空白合図”であるという点である[1]。
第二に、秘密結社が、棚の写真を自動処理することで「見せるべき健康イメージ」を支配しているとされる。ここでミカンはビタミンの象徴として扱われ、配置の有無が“政治運動”的な意味を持つと主張されている[2]。
第三に、空白合図は国境を越える、と信じられている。たとえば、の特定チェーンでは“空白の幅が7.3センチメートル”に揃うとされるが、実際の測定は公開されていない[13]。
第四に、否定されるたびに「測定条件が違うだけ」と言い換えることで、証拠の真空を維持する傾向があるとされる。これは、信者がデマを信じ続ける仕組みとして解説されることがある。
批判・反論/検証[編集]
批判としては、「店舗ごとの陳列ルール、発注タイミング、物流都合など偶然の要素で説明可能である」との反論が継続的に出されている[14]。
一方で信者側は、理屈を捻じ曲げるように「空白が偶然なら、検証は統計的に成立しないはずだ」と主張しつつ、統計データの出所が不明なため検証に失敗しやすいと指摘されている。特に“トラックの到着が午前7時19分に集中する”という言い回しは、ソースがないまま拡散され、偽書だとする声がある[15]。
さらに、科学的に/科学的な検証と称し、スマートフォンのセンサー特性を説明に使うことがあるが、測光の揺れが暗号であることを示す再現性は示されていない。否定されると「測光は隠蔽される」と主張が変化し、検証の枠組み自体がプロパガンダ化しているとの指摘がなされている[16]。
このような論争は“真相”を求める熱が、証拠の捏造やフェイクの消費へ転化した例として、陰謀論研究者のブログでも扱われたことがある。
社会的影響/拡散[編集]
社会的影響としては、買い物客のあいだで棚写真の撮影マナーが乱れ、店舗から注意喚起が出た事例が複数回報告されている[17]。
また、UITAや「棚監査員」を名乗るグループが、SNS上で“正しい余白”のガイドを配布し、信者同士で互いの画像を採点する文化が形成されたとされる。これにより、消費行動が“真偽の競争”へ変質し、商品そのものではなく配置情報に関心が移るという変化が起きたと指摘されている[18]。
一方で、批判派からは「陰謀論が地域の物流会社や小売企業への疑念を増幅させ、関係者の業務を妨げる可能性がある」との否定される余地が示される。なお、実害の測定は難しく、少なくとも公式統計に反映されたわけではないとされるが、インターネット・ミームとしての寿命は長いと見なされている[19]。
関連人物[編集]
関連人物としては、創設者とされる渡辺精算郎のほか、複数の“検証者”が半ば作中作のように現れるとされる[7]。
第一に、藤堂色温度(とうどう いろおんど)と呼ばれる人物が、撮影画像の色温度を“暗号強度”として扱う理論を提案したとされる。彼(または彼女)は居住地が不明で、投稿履歴も断片的だとされ、信者からは存在が“捏造ではないか”と疑われつつも支持されている[20]。
第二に、在住のとされる棚監査員、遠藤弐拾七(えんどう にじゅうなな)がいる。彼は「余白合図は北緯43度の影響を受ける」という気象要因説を提示したが、地理的妥当性は薄く、反論により真相は遠のいたと語られる[21]。
第三に、海外拡散の翻訳者として“Liam A. Calder”(リカルデール)が挙げられる。英訳版では一部数値(7.3cmなど)が“7.31 inch”へ換算され、意味が変わったのではないかと指摘されている。
関連作品[編集]
関連作品としては、陰謀論を直接扱わない形で“棚の余白”をモチーフにする作品群が多いとされる。
映画では『アルミ缶零層(アルミかんれいそう)』(2013年)があり、主人公が空白の棚を撮るたびに記憶が書き換えられるという筋立てで知られる[22]。ゲームでは『CIPHER FRUIT:レジ横暗号』(2018年)が、“アルミ缶の上にない果実”を鍵アイテムとして集める仕掛けを持つとされる。
書籍では『棚の統計学(改訂版)』(2021年)があり、検証方法をもっともらしく列挙しながら、最後に“真相は各自の目で確認すべき”と結論付ける構成が模倣されたとされる。なお、邦訳版でページ数が“実は1,024ページ”だった、という情報が一度だけ踊り、後に訂正されたとの指摘がある[23]。
このように、直接の主張よりも「日常風景の空白」を読み解く感覚が、作品を通じて増幅されたと見られている。
脚注[編集]
参考文献[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中有栄『棚の余白と暗号化:アルミ素材の反射論的考察』青鶴学術出版, 2009年, pp.112-137.
- ^ Katherine Morland『Supermarket Cipher Practices in the 2000s』Routledge, 2011年, Vol.3 No.2, pp.54-79.
- ^ 藤堂章吾『色温度が生む誤差と支配構造』文京図書館叢書, 2014年, 第2巻第1号, pp.9-31.
- ^ 渡辺精算郎『薄板橘統合庁資料集:UI-TA規格の思想』衛生統計ビル出版局, 2016年, pp.5-22.
- ^ Liam A. Calder『Cans Without Fruit: A Partial Translation and Commentary』Calder Press, 2017年, pp.201-233.
- ^ 遠藤弐拾七『北緯43度の影と余白合図』北方物流研究会, 2018年, pp.77-96.
- ^ 佐伯紗耶『真偽の境界線:陰謀論における再解釈のメカニズム』九曜社, 2020年, 第1巻第4号, pp.301-326.
- ^ Journal of Pseudo-Verification『The Measurement-Justification Loop in Online Conspiracism』Vol.12 No.7, 2022年, pp.88-105.
- ^ Global Studies in Misinformation『How Layout Changes Produce Faith』Swan & Finch Academic, 2023年, Vol.9, pp.12-40.
- ^ 『アルミ缶零層 制作資料(誤植版)』零層スタジオ, 2012年, pp.1-19.
外部リンク
- 余白合図アーカイブ
- UITA資料保管庫
- 色温度フォーラム
- 棚暗号画像検定所
- 検証ループ解説Wiki