アンサイクロペたん
| 分類 | ネット・ミーム/架空キャラクター概念 |
|---|---|
| 登場媒体 | 匿名掲示板、画像掲示板、深夜配信 |
| 発案とされる人物 | 不明(複数名による共同“捏造”とされる) |
| 象徴モチーフ | “百科事典っぽい語り口”と“逆説的な謝罪” |
| 使用言語 | 日本語(たまに英字・記号遊び) |
| 普及時期(推定) | 2011年〜2014年頃 |
| 影響領域 | 文章模倣文化、二次創作、笑いの批評 |
| 論争の焦点 | 風刺の線引きと“学術っぽさ”の扱い |
アンサイクロペたん(あんさいくろぺたん)は、主にインターネット上で用いられる、架空の“逆百科”キャラクター像として知られている[1]。近接領域としてやと結びつけて語られることが多い[2]。
概要[編集]
は、「百科事典風の文章を、わざと噛み合わせを外すことで成立させる」ことを特徴とする架空の語り手・キャラクター像である[1]。
当初は単なる呼称として現れたとされるが、のちに“語尾の型”や“断定と脚注の混ぜ方”のような作法が観察され、一定の様式美を持つ表現として定着したとされる[2]。特に「出典があるように見えるが、リンク先が不穏」という特徴が、読者の警戒心を遊ばせる仕掛けとして機能したと分析されている[3]。
いっぽうで、学術的な文体を笑いに転用する点は、教育現場や図書館サービスの担当者から“用法の危険性”が指摘されたこともあった。もっとも、運用次第で創作訓練として成立するとも反論され、議論は長引いたとされる[4]。
成立の経緯[編集]
「逆百科」需要と、2011年の“誤読祭”[編集]
の起点は、2011年夏にの深夜回線で発生した“百科誤読祭”と呼ばれる現象に求められるという説がある[5]。
この説によれば、参加者たちはの読みやすさを模倣しつつ、あえて「一次情報の代わりに“一次っぽい空気”を置く」技法を競ったとされる。具体的には、文章の末尾に「〜である[数字]」を付与しつつ、脚注側の内容は毎回“似ている別問題”にずらすことで、読者の身体感覚(引用のテンポ)だけを騙す設計が試されたという[6]。
なお、当時の掲示板統計として「誤読祭」関連スレが合計で1,284本立ち、うち“アンサイクロペたん”を名乗る書き手が平均2.7人/スレで観測された、と記録されたとする報告がある[7]。ただし、この数値は後に参加者自身が“自己申告を都合よく水増しした”と明かしたともされ、真偽は揺れている[8]。
“お詫びの語尾”がフォーマット化した[編集]
成立が加速した理由として、「逆説的な謝罪」がテンプレートとして固定された点が挙げられる。
この語尾は「申し訳ないが、誤りである」と断言するのではなく、「深く反省しているので断定する」という矛盾を採用していたとされる[9]。例として、キャラクターが「私はあなたを誤読させてしまったが、百科風に整っているので正しい」といった具合に見える短文を挿入し、その後に不自然に詳細な数値や手順を置くことが流行した。
やがて作法は“百科っぽさ”よりも“百科っぽく見える編集工程”を再現する方向へ伸び、たとえば「初出時のみは、キャラクターというより「編集者ごっこ」の記号として機能するようになった、という見方もある[11]。
社会への影響[編集]
は、単発のネタとして消費されるよりも、“文章の型”が模倣可能であることによって広がったと考えられている[12]。
第一に、ネット上で「出典・脚注・統計・年表」といった要素が、情報の正確さではなく“説得のリズム”を構成する部品になりうることが可視化された。これにより、読者は「正しさ」を直接検証する前に、文章が持つ儀式性へ注意を向けるようになったとされる[13]。
第二に、二次創作の現場では“百科事典の声”がスタイルとして輸出され、やにまで文体の模倣が波及したと報告されている[14]。特に、架空の人物伝や架空の法令条文を「研究ノート風」に書く作業が増え、“笑いながら読み解く”訓練として評価されたこともあった[15]。
ただし、影響がポジティブ一色ではなかった点も記録されている。学校図書館では“出典っぽいが出典でない”文章が混入し、分類担当が混乱する事態があったとされる。なお、当該トラブルの調査では、誤分類がで内の蔵書点検にもの残業を要したという数字が出たが、調査報告書自体が内部資料であり、別系統の計算とも矛盾していると指摘されている[16]。
代表的な“出来事”[編集]
が「キャラクターとして立った」とされる転機には、いくつかの有名な出来事が挙げられる。
まず2012年にで開催されたとされる「逆百科整備局・第1回講習会」では、参加者が“謝罪付き断定”を実技試験として提出したとされる[17]。課題は、架空の制度について200〜350語の項目を作り、脚注に3種類以上の体裁(雑誌名風、報告書風、会議録風)を混ぜることだったという。
次に2013年の「深夜版・時報炎上」では、の“時報”と誤認される文面が掲示板に投稿され、数分間だけ地域の掲示担当が真剣に対応したと語られている[18]。ただし、実際に時報が流れた証拠は見つかっておらず、投稿者が“炎上を最短距離で誘発する実験”をしていたとも推測されている。
さらに2014年には、のイベント会場で配布された“逆百科名刺”が話題となった。名刺には「あなたが引用したものはあなたの記憶であり、記憶は引用である」という二段論法のような文が印字されていたとされる[19]。会場係が回収に時間を要した理由として、名刺の裏面に小数点第6位まで記載された“謝罪率(仮)”があり、確認作業が増えたという逸話がある[20]。
批判と論争[編集]
批判としては、まず情報リテラシーへの悪影響が挙げられている。すなわち、の外形を模倣することで、読者が“見た目の整い”を根拠に誤信してしまう危険がある、という指摘である[21]。
一方で擁護側は、は“間違いの作り方”ではなく“間違いを見抜くための観察”を促す装置だと主張したとされる[22]。特に、脚注の体裁や年表の粒度が不自然であることに読者が気づくプロセス自体が、学習になるのではないかと語られた。
ただし、議論は落ち着かず、教育系の編集者を名乗る人物から「公的機関が真似すると危険」との通告が出たとも伝えられている[23]。この通告は“根拠の形式”を理由にしたため、形式至上主義をさらに強化したという逆批判も発生したとされる。なお、この論争における代表的な引用として「謝罪率(仮)が0.000001を超える文は、笑いではなく誤誘導である」とする短文が拡散したが、元の発信者は特定されていない[24]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯和典『逆百科の作法と、その読了条件』青月書房, 2013.
- ^ Margaret A. Thornton『Footnote as a Social Signal』Vol.12 No.3, Meridian Academic Press, 2012.
- ^ 山田廉太郎『百科風文章の心理学的観察』第2巻第1号, 東雲叢書, 2014.
- ^ 伊達美咲『謝罪語尾はなぜ成立するのか』明鏡研究所紀要 第7巻第2号, 2013.
- ^ K. Nohara and S. Watanabe『The Rhythm of Citations in Online Satire』Journal of Internet Rhetoric, Vol.19 No.1, 2015.
- ^ 田村光輝『深夜掲示板における“出典っぽさ”の設計』通信史研究会報告, pp.101-138, 2012.
- ^ 石塚慶祐『逆百科整備局の記録:第1回講習会議事録(写)』北海道図書刊行部, 2012.
- ^ 『逆百科整備局・第1回講習会資料集』逆編集局, 第3刷, 2012.
- ^ 津島ユリ『笑いが先か、検証が先か:架空統計の受容』笑評学会誌 Vol.4 No.6, 2014.
- ^ Liu, Wen-hsiang『仮装する注:脚注形式の文化変容』東京工科大学出版, 2011.
外部リンク
- 逆百科整備局アーカイブ
- 深夜版時報炎上まとめ
- 逆編集局・講習会ログ
- 謝罪語尾研究会
- 脚注体裁ライブラリ