エンドオブソサエティ
| タイトル | 『エンドオブソサエティ』 |
|---|---|
| ジャンル | 終末社会サスペンス(超常×行政手続) |
| 作者 | 黒瀬 ヴァリヤ |
| 出版社 | 潮流書房 |
| 掲載誌 | 月刊パラドクス潮流 |
| レーベル | パラドクス・コミックス |
| 連載期間 | 2014年-2022年 |
| 巻数 | 全17巻 |
| 話数 | 全132話 |
概要[編集]
『エンドオブソサエティ』は、行政の合理性と市民の生活防衛が同時に崩れていく様子を描いた、終末社会サスペンス漫画である。物語は「秩序指数(Order Index)」という架空の指標を軸に進行し、登場人物が日常の細部を手続きで守ろうとする点に特徴がある[1]。
連載開始当初から、主人公たちが“社会”という抽象語を、実際の帳票・監査・住民台帳の形で扱う描写が話題となった。のちに累計発行部数は410万部を突破し、2020年春には品薄騒動が発生したとも報じられた[2]。
なお、作中に登場する「最後の社会課税(Last Social Tax)」は、読者の間で“制度の皮を被った呪文”と評され、SNS上で「第◯条は唱えるな」といった二次創作上の戒律まで生まれた[3]。
制作背景[編集]
作者のは、本作を「社会が終わるのではなく、社会の継ぎ目が先にほどける話」と位置づけたとされる[4]。企画段階ではタイトル案に『エンド・オブ・オーダー(End of Order)』や『帳票の終末(Chōhyō no Shuumatsu)』などがあったが、最終的に“曖昧さ”を残す現行名が選ばれた[5]。
連載に先立ち、作者は取材協力としてのOBである人物と打ち合わせを重ねたとされる。ただし、監査局は取材協力を正式には否定しており、作者側も「協力ではなく、壁の向こうの音を聴いただけである」と発言している[6]。
一方で、作中に頻出する“赤字の訂正印”の細密表現は、実際の事務机を模した小道具制作チーム(仮称)が、印面を直径12ミリの丸型に統一したことから生まれたとされる[7]。編集部が「数字を増やすとリアルになる」と考えた結果、秩序指数は当初の見込みよりも細かな換算式が大量に採用された[8]。
あらすじ[編集]
物語は、秩序指数が100から0へ向かう“減衰期”に入った都市国家を舞台とする。市民は生活を守るために、行政が発行する日用品認証へ依存するが、その認証システム自体が“社会”の定義を少しずつ書き換えていく[9]。
以下、章立て(編)ごとに要点を述べる。
登場人物[編集]
は、失職した監査補助員でありながら、帳票の誤差を“人の優しさ”として読み替える癖がある人物である。彼女は「訂正印が押される瞬間だけ、社会が息をする」と語り、以後の編でたびたび会話の基準点となった[10]。
は物流員出身の走査担当であり、秩序指数の変動を配達ルートの温度差から推定する。作中では、彼が地図上の等温線を“信仰”と誤認する場面があり、読者からは「行政オタクが宗教を作るやつ」と評された[11]。
は、表向きは市民の安全網を構築するとされるが、裏では“社会課税”の再定義を進める。委員会の会合議事録が、なぜか毎回ページ上部に1行だけ余白を残す習慣を持つことが、作中の伏線として回収される[12]。
用語・世界観[編集]
本作の世界観は、抽象語の“社会”を、具体的な手続きの積み重ねとして描くことに特徴がある。中心となる架空概念として、秩序指数(Order Index)がある。秩序指数は毎月との合算で算出され、減衰期には小数点第4位まで表示される演出が用いられた[13]。
また、生活認証に関する制度として「日用品適格証明(Daily Commodity Eligibility)」がある。証明書はB7サイズで、押印の有効期限が“14日+祝日数×2”として計算されるとされる[14]。この計算式が妙に面倒であったため、読者が自宅の家電利用を勝手に適格判定する“ごっこ制度”を始め、町内会の会合で揉めたという逸話が生まれた[15]。
さらに「最後の社会課税(Last Social Tax)」は、貨幣ではなく“会話の回数”を基準に徴収される税であると説明される。作中では市役所の窓口で、質問が1回増えるごとに紙幣に換算される倍率が上がる仕組みが提示され、読者は思わず二度見したとされる[16]。
書誌情報[編集]
『エンドオブソサエティ』はのレーベルより刊行された。全17巻であり、連載から単行本化までの平均刊行ペースは7.3か月とされる[17]。
初期巻では“秩序指数=社会の温度”という比喩が中心だったが、中盤の編で数式表現が急増したと指摘されている。終盤では帳票そのものが物語の演出装置となり、各巻の奥付には微妙に異なる同一文章(「本書は更新される」)が掲載された[18]。
また、編集部は2020年に特装版として「訂正印セット同梱」企画を実施した。セットの印面は直径12ミリに統一され、朱肉がこぼれない“逆流防止紙”を同梱したとされる[19]。
メディア展開[編集]
本作はテレビアニメ化され、により『エンドオブソサエティ:減衰期(げんすいき)』のタイトルで放送された[20]。放送期間は2021年10月から2022年3月までとされ、全23話で構成された。第6話の“訂正印が鳴る音だけで進むシーン”が話題となり、同話の視聴維持率が平均より9.6ポイント高かったと報じられた[21]。
その後、メディアミックスとしてノベライズ『秩序指数の数え方』が刊行され、ゲーム化では『エンドオブソサエティ:帳票戦線』がリリースされた。ゲームでは、会話回数を管理するメーターがあり、規定回数を超えると“親切判定”が発生する仕様があったとされる[22]。
また、作中の架空機関の展示コーナーが、実在の周辺で期間限定展示として企画されたことがある。主催はの広報部とされ、チラシには「実物の訂正印は展示しません」とだけ書かれていたため、かえって人が集まったとされる[23]。
反響・評価[編集]
読者の反響としては、制度描写の細かさが評価された一方で、あまりに“手続きが多い”点への戸惑いも指摘された。SNS上では、作中の用語を日常の言い回しに置き換える流行が起き、例えば「了解」の代わりに「適格です」と返信する例が観測されたとされる[24]。
批評面では、終末ものとしての緊張感があるにもかかわらず、会話や帳票の“正しさ”が物語の推進力となっている点が新鮮だと評された。一部の論評では、社会をテーマにしながらも恐怖を煽らず、むしろ“手続きが人を守る可能性”を描いたとまとめられた[25]。
ただし、最終巻付近で明かされるの動機については、説明不足だという批判もあった。具体的には、委員会が“毎回余白を残す習慣”を持つ理由が、終盤で突然「余白は未来の監査担当を呼び込むため」とだけ示され、納得できない読者も出たとされる[26]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 黒瀬 ヴァリヤ「『エンドオブソサエティ』連載開始に際しての覚書」『月刊パラドクス潮流』第41巻第3号, 潮流書房, 2014年, pp. 12-19.
- ^ 潮流書房編『パラドクス・コミックス総覧(減衰期カタログ)』潮流書房, 2022年, pp. 34-56.
- ^ 山田 朱音「秩序指数はなぜ“毎月同じ目盛り”で揺れるのか」『メタ行政批評』Vol.8, 2020年, pp. 201-223.
- ^ Kenzaki, R.「Paperwork as Fate in Japanese End-Seasons」『Journal of Fictional Bureaucracies』Vol.12 No.2, 2021年, pp. 77-101.
- ^ 市民連合 監督委員会「議事録余白慣習に関する運用指針(抜粋)」『内部資料(閲覧申請制)』第2版, 総合暮らし監査局, 2019年, pp. 5-8.
- ^ Ohashi, M.「The Ethics of Correction Stamps in Contemporary Media」『Studies in Iconic Compliance』第6巻第1号, 2020年, pp. 41-65.
- ^ 潮流書房広報部「特装版『訂正印セット』の設計経緯」『潮流書房 技術報告』Vol.3, 2020年, pp. 9-17.
- ^ 佐伯 凪「会話課税はユーモアか暴力か」『漫画の社会学』第5巻第4号, ミネルヴァ企画出版, 2021年, pp. 88-114.
- ^ 黒瀬 ヴァリヤ「減衰期アニメ化に向けた脚本メモ」『アニメ脚本研究』Vol.2 No.9, 2021年, pp. 300-317.
- ^ スタッフインタビュー「スタジオ潮刃が“訂正印が鳴る音”をどう設計したか」『音響と映像の並走』第10巻第2号, 日比谷メディア大学出版会, 2021年, pp. 55-74.
- ^ 田中 琴子「“余白を残す会”の記号論(誤植含む)」『記号と編集』第3巻第1号, 2022年, pp. 12-29.
外部リンク
- 潮流書房 公式サイト
- パラドクス・コミックス 読者支援ページ
- 減衰期アニメ 公式アーカイブ
- 秩序指数ファン解析wiki(閲覧無料)
- 訂正印セット ユーザー手引き