エンドロール(競走馬)
| 分類 | 競走馬の挙動パターン(俗称) |
|---|---|
| 主な舞台 | 日本中央競馬・地方競馬(のち観測記録が拡散) |
| 特徴 | 終盤で回転が増し、フォームが“巻き戻る”ように見える |
| 研究開始 | 昭和末期〜平成初期のトラック映像解析が契機とされる |
| 関係組織 | JRA馬事普及班、競走馬データ研究会、地方競馬の計時所 |
| 典型条件 | 重馬場・コーナー過多・展開の乱れ |
| 社会的影響 | 馬券術の“終盤読み”に新語が混入した |
(えんどろーる、英: Endroll (Racehorse))は、日本の競馬文化の周縁で語られる「終盤にだけ異様な挙動を示す馬」の通称である。公式記録上は特定の馬名ではないとされつつ、複数の専門家が“ある系統の事例”として整理してきた[1]。
概要[編集]
は、レースの最後の直線付近で加速が極端に立ち上がり、かつ走法が一瞬だけ“元に戻る”ように見えるとされる競走馬の挙動を指す俗称である[1]。一般には特定の登録名ではないが、観測された症例が累積することで、ある種の“型”として語られ続けてきた。
この語が成立した背景には、映像撮影技術と計時技術の統合を巡る小競り合いがあったとされる。特にのバックストレッチ側からの撮影角度が統一されたのは、の計測委員会が提案した「終盤角度標準化」案が契機だったという[2]。その結果、終盤局面のフォーム変化が“物語として共有可能”になり、用語が定着したとされる。
なお、用語の定義自体は複数に割れている。ある系統の研究者は「エンドロール」を“脚運びの周期が急速に短縮する現象”と説明し、別の流派は“首の位置が一度下がってから戻る”挙動を強調した[3]。さらに第三の立場では、終盤の挙動を説明するのに「尻尾の回転速度」まで持ち出し、数字の細かさで信者を増やしたとも言われる[4]。
定義と選定基準[編集]
エンドロール(競走馬)として扱うためには、終盤の加速開始時刻が全体の走行タイムラインの“同じ位置”に現れることが条件とされる[5]。もっとも雑な分類では「残り○○メートル」単位で済ませるが、厳密派では“終盤加速開始のフレーム”を指定するという。
選定基準には、(1) 最終コーナー出た直後から加速が始まらず、一定区間を“ためる”こと、(2) 直線に入ってから一定時間で周期が落ちるのに、速度は上がっていること、(3) 布目のブレ(映像側の揺れ)を補正しても同様の変化が残ること、などが挙げられる[6]。一部の記録係は、補正を怠ると“たまたま似た馬”を拾ってしまうとして警告したとされるが、なぜかその警告が逆に流行の口実になったとも指摘される。
さらに“儀式”的な基準として、勝ち負けに関係なく「ゴール後30秒以内の呼吸音が通常より高い」とする俗説がある[7]。この点については、真偽よりも観測者の語りの上手さが重視され、観測日誌の提出様式まで運用上のテンプレート化されたとされる。なお、よくある反論として「それは単に息が上がっているだけではないか」という疑義がある一方で、賭けの世界では疑義が“余白”として消費されやすい。
歴史[編集]
語の誕生:角度標準化と“終盤角度会議”[編集]
エンドロール(競走馬)という呼称は、昭和末期ので始まったとされる。地方局の記録映像はアングルが毎回違い、同じ馬でも別の挙動に見えることがあった。そこで内の計時所を管轄していた技官、(架空の人物だが、当時の報告書に“にじむ名前”として登場する)によって「終盤角度会議」が提案されたとされる[8]。
会議の名目は“ブレ補正の統一”だったが、実際には「最後の直線で、どの座標に立つ馬の首を基準にするか」の争いだったとされる[9]。そして勝手に決まった基準が、首の背筋が“巻き戻るように見える角度”であった。その角度に達した瞬間が、なぜか名づけのトリガーになり、「Endroll」の案が職員の間で冗談として出回ったという。
ただし最初期の記録には、なぜかトラックの起点をの特定の橋に合わせた座標が含まれていたとも言われる[10]。この“橋起点”が後に再現不能となり、記録の真偽をめぐる議論だけが残った。にもかかわらず、その議論が逆に用語を神話化し、定着の燃料になったと説明されることがある。
制度化:JRA馬事普及班と映像解析の作法[編集]
平成初期、映像解析が“娯楽から研究へ”移る局面で、の馬事普及班が「終盤挙動データの公開方針(試行)」を出したとされる[11]。それにより、エンドロール型の馬に限り、出走表に“終盤指標”が併記される運用が一時的に検討されたという。
ここで中心になったとされるのが、の大学共同研究室から派遣された解析官である[12]。彼女は、挙動を“脚の回転数”ではなく“胴体の位相遅れ”として扱うべきだと主張し、終盤における加速開始までを位相として記述した。結果として、エンドロールは「速度が上がる現象」ではなく「位相が反転したように見える現象」として再定義された。
もっとも、現場の調教師側には反発もあった。特にの厩舎連絡協議で「馬は位相では走らない」との発言が記録されており、そこから“馬の声が聞こえる数字”という流行語が生まれたとされる[13]。なお、反発勢が提出したデータはなぜか全部“雨上がりのレース”に偏っていたとされ、偏りの説明として「馬がエンドロールを自分で選んだ」とする怪談が混ざったという。
社会への波及:馬券術と「残り○○秒」の呪文[編集]
エンドロール(競走馬)が一般に広まったのは、馬券術の雑誌が“終盤読み”の節を作り、用語がコラム見出しとして採用されたことが大きいとされる[14]。特に「残り6.3秒で型が確定する」という数値が独り歩きし、関係者が苦笑したとも伝えられる。
この数値は、あるレースの映像を“拡大して見た人が一度だけ見た気になった瞬間”を集計して作られたとされ、理論的根拠は薄い。ところが、数字が小数点一桁まで入っていたために信じる人が増えたとされる[15]。また、終盤の加速開始が“残り600メートルの半分”ではなく“残り599メートルから始まる”ように語られた時期もあったという。これは計時表示の丸め誤差が理由だった可能性があるが、誰も検証しなかった。
結果として、賭けの世界では「エンドロール確率」が新しい指標として扱われるようになった。ある会員制サロンでは、の会場に集まった参加者が“尻尾の回転数を耳で聴く”という儀式まで行ったと記録される[16]。科学の皮を被った迷信が、逆に科学者の観察意欲を刺激し、用語は二次創作として増殖していったと説明される。
具体的なエピソード(“それ”が起きたとされるレース)[編集]
エンドロール(競走馬)が語られる際には、必ず“ある条件の揃った一戦”が引き合いに出されることが多い。たとえばの小規模競馬場で行われたとされる記録では、残り直線の風速が毎秒2.4メートルに固定された時間帯にだけ、胴体の位相遅れが反転したとされる[17]。
また、のレースで「ゲートが閉まってから3.17秒後に、馬体が一度だけ沈む」という“予兆”が報告された例もある。ただしこの沈みが全頭に共通していた可能性を後年の映像アーカイブが示したため、予兆の妥当性が揺れたとされる[18]。それでも語りは止まらず、「沈みが見えた者だけがエンドロールを語れる」という排他性が物語を強めたという。
さらに、のレースでは、勝ち馬が別にいたのに観客が“エンドロールをやった馬”として拍手したという。拍手された馬は最終的に5着だったが、拍手の理由は「最後の一歩だけ“巻き戻った”ように見えた」からだと説明される[19]。勝敗より見た目の一致が優先された点が、用語を娯楽として定着させた。
批判と論争[編集]
批判としては、まず定義が曖昧である点が挙げられる。位相反転、脚運び周期の短縮、首の角度、尻尾の回転数など、説明変数が増殖しており、同じ現象を指しているのか不明であると指摘される[20]。また、映像の撮影位置や圧縮方式により、視覚的な錯覚が増幅される可能性もある。
一方で擁護の立場では、「錯覚であっても、観測者が同じ物語を共有できるなら、それはデータである」と主張されることがある[21]。この主張は研究倫理の観点では違和感があるが、現場の記録文化においては珍しくない。さらに、反対派が提示した“無関係な馬の同型挙動”の例が、なぜかエンドロール語の候補から外されていたとの指摘もある。
論争の核心は、用語が科学的指標として使われた場合の危うさと、賭けの世界での消費のされ方である。馬券術に取り込まれたことで、観測が“都合の良い方向へ寄る”可能性があるとされる[22]。ただしそれでも、エンドロール(競走馬)は「終盤の一瞬で人を惑わせる概念」として、半ば宗教的な再解釈を受けつつ存続したという見方がある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山下一馬『終盤角度標準化の試行と混乱』競走馬計測学会, 1989.
- ^ 渡辺精一郎『終盤挙動データ公開方針(試行)の裏面』JRA馬事普及班内部資料, 1993.
- ^ Margaret A. Thornton『Phase-Lag Models of Late-Stage Canter Acceleration』Journal of Equine Kinematics, Vol.12 No.3, 1998.
- ^ 鈴木真琴『尻尾回転数は科学か迷信か—エンドロール論争の記録』馬場社会学研究, 第7巻第2号, 2001.
- ^ 【編】競走馬データ研究会『終盤読み指標の実装ガイド(小数点一桁版)』東西競馬叢書, 2004.
- ^ Patrick R. Halloway『Visual Compression Artifacts in Racing Broadcasts』International Review of Sports Media, Vol.9 No.1, 2006.
- ^ 小野寺由紀『重馬場における“巻き戻り”視認の心理学』中部映像心理研究, 第3巻第4号, 2010.
- ^ 『月刊・終盤予言』編集部『残り6.3秒説の成立過程』月刊誌, 2012.
- ^ 高橋啓太『拍手される5着—勝敗と物語の相関』競馬民俗学会紀要, 第15巻第1号, 2016.
- ^ 松島寛人『Endroll: A Misnamed Pattern?(誤命名のパターン?)』Proc. of the Track-Event Methods, pp.101-117, 2019.
外部リンク
- 終盤角度アーカイブ
- 競走馬計時メモリアル
- 位相遅れ計算倉庫
- 尻尾回転数ファンサイト
- 馬券術の余白研究会