オレガノス
| 分類 | 民俗音韻(聞き取り推定) |
|---|---|
| 推定言語圏 | 内陸部(諸説) |
| 表記体系 | ラテン文字化(学術推定) |
| 関連地名 | 、海底山脈群 |
| 第一次記録 | 1920年代(とされる) |
| 主な研究機関 | 言語採録班 |
| 論争点 | 音韻対応の妥当性、命名手続き |
(O-Rwe-GauNo-S)は、の一部民族が伝えるとされる音声断片を、後年の言語学者が聞き取りから音韻推定してラテン文字化した語である。なお、この語に由来すると主張される地名としてや海底山脈群が知られているが、その経緯は複数の文献で異なる説明がなされている[1]。
概要[編集]
は、南アフリカのある一部民族の「口承の連呼句」と考えられる音声断片を、1890年代後半から20世紀初頭にかけて来訪した研究者が聞き取り推定し、O-Rwe-GauNo-S のような区切りを与えた語であるとされる[2]。
この語が「地名の起点」として扱われたのは、採録者の一部が、当該音声断片が特定の地形(噴気や地鳴りに関連する地域の“目印”)を指している可能性を提起したためである。結果として、後に地質調査や海洋測深で見つかった地形に、あるいは海底山脈群の総称が付され、学術・観光双方に波及したと整理されている[3]。
ただし、現在の文献では「音を当てたのか、当てに行ったのか」が曖昧である。ウィットウォータースランド大学の採録班が作成した「音節対応表」には、同一話者の発話でも推定綴りが最大で3パターンに分岐しており、そこに“研究者の都合”が混ざっていたとの指摘がある[4]。
概要(選定基準・成立経緯)[編集]
本記事でいう「オレガノス」は、民俗学的な語根(音声断片)と地理学的な命名(地名)を結びつけた語として扱う。つまり、語そのものの意味が完全に復元されたというより、「復元されたかのように語られ、社会的に定着していったプロセス」が中心である。
とくに1926年にの言語採録班が、採録用の記録紙に「3回聞いて1回だけ書く」規則を導入したことが、綴りの揺れを固定化した要因だとする見解がある[5]。一方で、当時の地質調査隊が使用していた地図投影法の都合により、現地語の音韻を“測地学の係数”で補正した痕跡があるとも指摘されている[6]。
このため、や海底山脈群は「語源が確定した地名」というより、「語源っぽさが確立した地名」として理解されることが多い。ここに、信じる者と疑う者の温度差が生まれ、結果として長期の論争へと繋がったとされる[7]。
歴史[編集]
音を数える時代:採録の“規則”が神話を作った[編集]
の採録班を率いた(架空の日本人留学生として現地で語られることが多いが、同姓同名の人物が実在した可能性は低いとされる)が、南アフリカ到着直後に「音韻を当てるには拍点が要る」と主張したのが始まりとされる[8]。
彼らは話者に対し、質問票ではなく「石を3つ並べて落とす」手続きを取った。話者の“落とす音”を基準として、口承句の発話タイミングを 0.25 秒刻みで記録紙に印字し、そこから O-Rwe-GauNo-S の区切りを推定したとされる[9]。この手法は、後年になって「音韻復元ではなく音響補正を学術的に隠蔽したもの」と批判されたが、当時の研究費の都合上、手早く見える方法が歓迎されたという[10]。
また、記録紙の裏面にだけ書かれた注記として「第2音節は“R”に寄せるべき(理由:地図の線が曲がって見えるから)」という記述が見つかったとされる。要出典の形で転写されたこの文は、綴りのゆれが自然な結果というより、地理データ側から押し戻されたのではないかという疑念を呼んだ[11]。
地名化の連鎖:火山から海へ、そして観光パンフへ[編集]
次の転機は、1929年の小規模地質調査であるとされる。当時の調査隊は、噴気の多い高地を「耳の合図がある場所」として聞き取りで絞り込み、最終的に(当時は暫定コード名「OR-3」)を測量した[12]。
命名は、言語採録班と地質調査隊の合同会議で行われたとされるが、記録上の決定日は不一致である。ある議事録では「1931年6月14日、全会一致」とされ、別の抄録では「同年7月2日、2対1」とされている[13]。ただし、どちらの版でも共通するのは「音に似た形で書いておけば行政処理が速い」という“現場合理性”である。
さらに、海底の測深調査で得られた複数の起伏が、地図上で一本の曲線に収束するように再投影された際、その曲線が話者の指差しに一致するよう見えたとして、海底山脈群の総称にもが採用されたと説明されている[14]。結果として、1960年代には航空路線の案内に「Oreganos Line(架空の便名)」が登場し、研究論争よりも先に一般向け表記が定着していったとされる[15]。
批判と論争[編集]
最初期の批判は、音韻対応の“再現性”に向けられた。具体的には、同一話者の発話を3回採録したのち、研究者が推定した綴りが 5種類から3種類へ圧縮された過程が「編集」と呼ばれたことである。音響の揺れを単に許容すればよいのに、分類のために恣意的な枠を当てたのではないか、という指摘が出された[16]。
次に、命名手続きの適法性が争点になった。海底山脈群については、国際的な命名委員会に提出されたとされる申請書の写しが、同じ年に2種類のフォントで印刷されていたという。片方は字体が硬く、もう片方は筆記体が多いという奇妙な差である。提出者は「時差のせいで印刷所が違った」と説明したとされるが、批判側は「印刷差は“採録説”の後追い調整を示す」と主張した[17]。
そして決定的だったのが、地元の語り部からの反応である。彼らは「オレガノスは“火の道”ではなく、狩りの帰り道を指す言葉だ」と語ったとされるが、当時の記録媒体が湿気で損耗しており、真偽は完全には確定していない。とはいえ、ここまで“地形の一致”が強調されると、人は自然に意味を地理へ引きずられるのだという論考もある[18]。
一覧(オレガノスが生んだ“周辺”の地名・概念)[編集]
が関わったとされる諸概念は、実態が確定したものより「そう説明された結果として広まったもの」が多い。以下は、その広まり方が一様ではないことが分かるよう、記録上の出現順を意識して列挙する。
1. (1931年)- 噴気活動が周期的に見えたため、言語採録班の採点表(拍点0.25秒)と“同期”するとされた。実際の火山活動は同期しなかったが、パンフレット上では「0.25秒ごとに息をする」と書かれたとされる[19]。
2. オレガノス・リフト丘陵(1940年)- 峡谷が“口の形”に似ているとして命名された。地質調査員の私記に「口が開くと雨が降る」とあり、気象予報会社が派生商品を作ったという記録が残る[20]。
3. オレガノス・ブラックベイスン(1952年)- 地表の黒い溶岩帯が「No-S(ノス)」の語感に近いとされた。観光会社は“夜でも読める看板”を作ったが、結局は昼の方が見えたという[21]。
4. オレガノス海底山脈群(1964年)- 測深曲線を再投影した際、話者の指差しが一直線に見える“都合のよさ”が強調された。学術文献では投影法の注釈が必ず付くが、一般紙では省略された[22]。
5. オレガノス・トラフ(1967年)- 海底の溝が「帰り道」を象ったとして命名された。漁業協同組合の印刷物では、トラフ周辺の漁期が“語呂”で覚えやすいように書き換えられた[23]。
6. オレガノス・スリップ断層帯(1973年)- 「GauNo」の区切りが地質境界のギャップに対応すると主張された。批判側は“境界に語を合わせた”と非難し、後年の再測定では一致が弱まった[24]。
7. オレガノス採録規則(1926年)- “3回聞いて1回だけ書く”という規則が制度化されたもの。言語学会の議論ではルールの正当性より「便利だったか」が評価されたとされる[25]。
8. Oreganos Mapping Taskforce(1959年)- 研究班名としては英語だが、実務は南アフリカの地図印刷所が握っていたとされる。地名の表記揺れを減らすために、印刷会社が独自の綴り表を配布したという逸話がある[26]。
9. ウィットウォータースランド大学「音節補正」ノート(1932年)- 裏面注記が問題視されたことで有名。提出者が「地図の線の曲がり」を根拠にしたとされるが、当時の地図座標系が本当に曲がっていたのかは不明である[11]。
10. Oreganos Time(1979年)- 火山の噴気が拍点0.25秒で揺れるという“生活規格”が流行した。実際に時計が揺れるわけではないが、村の行事開始時刻が揺れたと言われる[27]。
11. オレガノス香(1988年)- 区切り発音が“煙の匂い”を連想させるとして、香料会社が命名した。化学分析では成分は普通の合成香料だったが、名前だけが民族音韻と結びついた[28]。
12. オレガノス・ガイドライン(1994年)- 観光案内に「語源を説明するための一文」を載せるルール。監修者は言語学ではなく編集現場の事情に詳しかったとされ、批判を呼んだ[29]。
13. “反響する書簡”コレクション(1961年頃)- 語り部の反応が記されたとされる手紙群。ただし紙質が異なるものが混ざっており、後年の再封入が疑われた[18]。
14. OR-3議事録の二重写し(1931年)- 同じ日に書かれたはずの命名手続きが、版の違う写しとして残った事件。研究者の間では「数字が合わないのが合っている」と冗談になったとされる[13]。
15. 指差し一致指数(1976年)- 測量図と聞き取りの“重ね合わせ”を、指数で表す試み。指数が高いほど語源説が強いことになっていたが、指数の計算方法は後で変わったとされる[30]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「O-Rwe-GauNo-Sの音節対応と拍点表」『南部アフリカ言語採録紀要』第3巻第2号, pp. 41-73, 1927.
- ^ E. Ndlovu「The Social Life of Place Names: A Case Study from the Oreganos Province」『Journal of Toponymic Studies』Vol. 12, No. 1, pp. 11-38, 1956.
- ^ R. H. Clarke「Hydrographic Projection Errors and the Myth of Linearity」『海洋測地学報告』第8巻第4号, pp. 201-219, 1966.
- ^ M. A. Thornton「Oral Fragments and Written Outcomes: Evidence from Listening-Based Transcription」『Language & Mapping』Vol. 22, No. 3, pp. 89-126, 1981.
- ^ 【ウィットウォータースランド大学】言語採録班「採録規則の運用結果(1926-1933)」『大学附属採録資料』第1号, pp. 1-58, 1934.
- ^ F. J. Sato「指差し一致指数の導入とその揺れ」『地図編集技術研究』第15巻第1号, pp. 77-95, 1978.
- ^ S. Mbeki「Tourism Print Culture and the Oreganos One-Liner」『Transnational Folklore Review』Vol. 7, No. 2, pp. 145-168, 1992.
- ^ K. Adebayo「Two Copies, One Date: The OR-3 Minutes」『Archival Quarrels』第2巻第2号, pp. 33-60, 2003.
- ^ P. de Vries「Why “Index” Makes a Claim: Methodological Critique of the Oreganos Mapping Taskforce」『研究倫理と地図』Vol. 5, No. 1, pp. 1-22, 2010.
- ^ C. R. Hamilton「Oreganos Timekeeping and the Local Calendar Drift」『Cultural Chronometry』Vol. 19, No. 4, pp. 301-330, 2007.
外部リンク
- 南部地名史アーカイブ
- Oreganos Mapping Taskforce 史料室
- ウィットウォータースランド大学 民俗音韻コレクション
- 海底測深データ・ポータル(架空)
- 地図編集ガイドライン閲覧室