スーホの白い馬Ⅱ ~revenge of black~
| 作品名 | スーホの白い馬Ⅱ ~revenge of black~ |
|---|---|
| 原題 | Suho’s White Horse II ~Revenge of Black~ |
| 画像 | ファイル:SuhoWhiteHorse2_poster.jpg |
| 画像サイズ | 250px |
| 監督 | 御影ユウジ |
| 脚本 | 御影ユウジ |
| 原作 | 伝承集『草原の記憶』(架空) |
| 制作会社 | 草原映像工房 |
| 配給 | 北都フィルム配給 |
| 公開 | 2012年10月12日 |
『スーホの白い馬Ⅱ ~revenge of black~』(すーほのしろいうま に りべんじ おぶ ぶらっく)は、[[2012年の映画|2012年10月12日]]に公開された[[草原映像工房]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]である。原作・脚本・監督は[[御影(みかげ)ユウジ]]。興行収入は58億円で[1]、[[黒毛(こくもう)叙事詩賞]]を受賞した[2]。
概要[編集]
『スーホの白い馬Ⅱ ~revenge of black~』は、前作の「白」から一転し、黒い毛並みの馬に焦点を当てた続編として企画された[[日本]]の[[アニメーション映画]]である。物語の核は復讐ではなく、記憶の“置き換え”をめぐる道徳劇として提示され、観客は終盤まで「誰の黒が正しいのか」を誤読させられる構造になっている。
本作は[[草原映像工房]]が、色調設計を徹底することで知られる「泥炭ブラック調整プロトコル」を採用したことでも話題となった。制作側は、このプロトコルにより黒の階調が銀塩フィルムのように見えると説明していたが、実際には“銀塩風の嘘”が観客の記憶を誘導する装置として働いたとされる。なお、宣伝素材ではキャッチコピーは「白は裏切らない、黒が復讐する。」とされた[3]。
あらすじ[編集]
舞台は前作から[[昭和]]の終わりを「一週間ぶんだけ遅らせた」ような時代とされる草原で、[[スーホ]]は行方不明になったはずの白い馬を探している。だが、村に届くのは白ではなく黒い影——夜の風に混じって届く黒毛の毛束であり、村長[[ドンバ]]は「黒は帰るために道を間違えた」と語る。
スーホは黒毛の馬を追い、[[バイカル湖]]に近い架空の街道「灰色の折返し道」を越える。そこで明かされるのは、白い馬が最初から“白ではない”こと、そして前作で成功した記憶操作が、続編では逆流してしまったという事実である。監督はインタビューで「物語を直すと、観客の頭の中の年代がずれる」と述べたとされる[4]。
終盤、スーホは黒毛の馬に乗るのではなく、馬の首に結ばれた札を解こうとする。札には復讐の呪文ではなく、契約書のような文言が刻まれていた。黒が怒っているのは血への復讐ではなく、“誰かが白い答えだけを正解にした”ことへの抗議だったのである。最後に白い馬は現れるが、観客の目には白ではなく「白として記録された黒」が映るように編集されている。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
スーホ(声:[[佐藤マイカ]])は、草原の伝承に従うだけの少年から、物語の“編集”を引き受ける当事者へと変化する人物として描かれる。彼は終盤で拳を振るわず、代わりに「札の文字数」を数えることで勝敗を決めるが、文字数の設定がやけに具体的であるため、ファンの間では暗号説が流行した[5]。
黒毛の馬(声:[[ナレーション]]は[[矢吹(やぶき)レン]])は、感情を鳴き声ではなく足取りのリズムで表す。劇中では、足音が「1-1-2-3-5」になる場面が3回だけ登場し、制作班は“嘘の方程式”として設計したと説明した。なお、この馬の毛色が黒に見えないフレームは、わざと作画班に配布されなかったという証言がある[6]。
村長ドンバ(声:[[草原亭キクタロウ]])は、前作の出来事を“行政記録”の形式に落とし込み、真実を事務処理してしまう人物である。その冷たさが黒の憎しみを呼び、結果としてスーホを救う皮肉な役割を担う。
その他[編集]
白い巫女カラ(声:[[本城ユリナ]])は、占いの際に必ず同じページをめくる癖を持つとされる。この癖は、予言が“過去に戻って改稿される”ことを示唆する演出だと解釈されている。
調停官[[エルゲン]](声:[[鈴木タツオ]])は、復讐の裁定者ではなく、記憶の整合性監査を行う役として登場する。彼の台詞には計測単位が多く、「灯火は17分で不安を増幅する」といった数値が提示される。視聴者は最初、世界観の味付けだと思い込むが、後半でその数字がカット割りの長さと一致していることが明らかになる。
声の出演またはキャスト[編集]
キャストは、抑揚の少ない演技と“草原ノイズ”を併用する方針で統一された。主要キャストとしてスーホを[[佐藤マイカ]]が演じ、黒毛の馬は[[矢吹レン]]によるナレーション表現で補強された。村長ドンバには[[草原亭キクタロウ]]、白い巫女カラには[[本城ユリナ]]が配された。
また、黒い毛束の回想シーンでは[[遠藤ソラ]]が少年スーホの声を一時的に担当している。公式資料では「声の差分は時間差として聴取される」と説明されていたが[7]、ファンは“声色が物語の年表を入れ替えている”と考察した。
スタッフ[編集]
原作・脚本・監督は[[御影ユウジ]]が担当した。御影は前作からの継続として、草原の色彩を“感情ではなく契約”に従わせる演出論を掲げていたとされる。
音楽は[[高嶺(たかみね)カンナ]]が担当し、主題歌は[[田鶴(たず)ノア]]の「白い呼吸、黒い証明」が採用された。特殊技術としては、黒の階調を作画工程ではなく動画編集で調整する「泥炭ブラック調整プロトコル」が採用され、背景美術は[[石灰(せっかい)モノクローム事務局]]の協力を得たとされる。
撮影・編集には[[北都フィルムスタジオ]]のポスト部門が参加し、編集時間が全体で「108時間」に到達したと公表された[8]。この数字は制作秘話としても扱われ、実際には“108時間を1回だけ数え間違えた”ことが完成の合図になったとする証言がある。
製作[編集]
企画段階では、まず「白い馬」を主人公に戻す案と、「黒い馬」を先に見せる案が並立していた。最終的に、黒を先に見せる構成にした理由は、公開後のアンケートで「黒のほうが正義に見えた」という回答率が最初に高かったためとされる[9]。
制作過程では、脚本の改稿が全7回行われた。特に中盤、[[バイカル湖]]周辺の“灰色の折返し道”の地名表記は、駅前ポスターに載る体裁を模して細部まで詰められた。実在しないはずの「折返し道」は、調査資料として[[モンゴル国]]の旧行政図に似た体裁の紙が一度だけ持ち込まれ、デザイナーがそれを「本物っぽい嘘の設計図」と評したという[10]。
美術は白と黒の対比を強制するため、衣装の染料は“白は薄い黒、黒は深い黒”の二重規格で設計された。主題歌の歌詞は、札の文字数と完全同期させる必要があり、歌詞カードの改訂が音楽完成の48時間前に発生したとされる。
興行[編集]
本作は[[2012年10月12日]]に全国で公開された。配給は[[北都フィルム配給]]が担い、公開初週の動員は約312万人、興行収入は約17億円を記録したとされる[11]。宣伝ではリバイバル上映の予告が早期に打ち出され、「黒の復習は早い」という挑発的な文言が使われた。
テレビ放送では視聴率が12.8%を記録し、深夜帯の再放送では同じカットが繰り返される“黒の編集回”として放映された。なお、ホームメディアでは黒の階調が乱れる「DVD色調問題」が発生し、ユーザーからは“黒が茶色になった”という多数の苦情が寄せられた[12]。制作側は急遽、再編集ファイルの配布を行ったとされる。
海外では、アニメ輸出を担当する架空の窓口[[欧州草原映像機構]]を通じ、英語字幕版が上映された。観客には「白が正しいと言い切らない」演出が好評とされ、結果として北米ではリバイバル上映が2週間だけ延長された。
反響[編集]
批評では、色調設計と脚本構造の両方が論じられた。『[[アニメーション月報]]』は「復讐の物語を装いながら、編集権の倫理を問うている」と評価した[13]。一方で、黒毛の馬の足音が数列として頻出する点については、「物語の象徴が理屈で説明されすぎている」との指摘もある。
受賞面では[[黒毛(こくもう)叙事詩賞]]を受賞し、ほかに[[日本アニメ脚本協会賞]]にノミネートされた。音楽は[[高嶺カンナ]]が「最優秀作曲(長編)」相当として表彰されたともされるが、公式発表では受賞表現が曖昧にぼかされていたという[14]。
興行の数値は、最終的に興行収入が58億円、配給収入が41.6億円と報告された。もっとも、劇場入場券の集計には“臨時回”が混入しているとする内部メモが一部で共有されたとされ、真相は議論が残る。
テレビ放送[編集]
地上波では、改編期の特番枠として[[2013年]]に放送された。番組表では「黒い証明—後編(完全版)」として扱われ、視聴者には“白黒反転に注意”と注意書きが表示された。
また、放送局の公式ブログでは「黒毛の馬が走るカットは合計で213回編集されている」と記載されたが[15]、後日、当該記事は「誤記」として削除された。視聴者はその削除を“黒が勝った証拠”として遊び始め、翌月のSNSでは関連タグが急増したという。
関連商品[編集]
映像ソフト化は[[2013年]]に行われ、ブルーレイは二種類の色調モードを同梱したとされる。1つは通常の「白優先モード」、もう1つは「黒優先モード」であり、後者では同じシーンでも黒が数段階深く表示されると説明された。
関連商品としては、札の文字数を読み解く“旅券型”ブックレットや、灰色の折返し道を模した卓上ジオラマが発売された。さらに、音楽CDには主題歌「白い呼吸、黒い証明」の“編集前テイク”が収録され、歌い出しの息継ぎが0.8秒長いことがファンの間で話題になった。
テレビ放送に合わせて、番組連動の特設サイトでは“黒毛の馬の足音”を再生できる疑似SEが配布されたが、再生環境によってはノイズが別の動物の鳴き声に聞こえる不具合が報告された。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 御影ユウジ「『スーホの白い馬Ⅱ』における“記憶の編集”」『アニメ脚本研究』Vol.12第3号, pp.41-59, 2013.
- ^ 草原映像工房制作部「泥炭ブラック調整プロトコルの技術報告」『映像色彩工学誌』第8巻第1号, pp.10-27, 2012.
- ^ 高嶺カンナ「主題歌『白い呼吸、黒い証明』の旋律構造」『日本映画音楽レビュー』Vol.5 pp.77-92, 2013.
- ^ 田鶴ノア「歌詞が札の文字数と同期する条件」『作詞技法年報』第2巻第4号, pp.120-134, 2014.
- ^ 北都フィルム配給「2012年配給成績に関する概況(臨時回含む)」『映画興行データ解説』pp.201-219, 2012.
- ^ 佐藤マイカ「声優表現としての足音リズム」『声のアニメーション』Vol.9第2号, pp.33-48, 2013.
- ^ 矢吹レン「ナレーションが“置き換えられる”瞬間」『音響演出研究』第11巻第1号, pp.5-18, 2012.
- ^ 『アニメーション月報』編集部「黒が正義になる瞬間」『アニメーション月報』2012年12月号, pp.14-19, 2012.
- ^ 日本アニメ脚本協会「第◯回日本アニメ脚本協会賞 審査講評(抜粋)」『同協会紀要』第7巻第2号, pp.1-16, 2013.
- ^ Mikage Yuji, “Editing Ethics in Prairie Sequels,” Journal of Animated Narrative, Vol.3 Issue 2, pp.51-68, 2013.
外部リンク
- 草原映像工房 公式ページ(Suho2)
- 北都フィルム配給 上映情報アーカイブ
- 欧州草原映像機構 デジタル上映案内
- 黒毛叙事詩賞 受賞作データベース
- DVD色調問題 事後対応レポート