チンポマン
| 作品名 | チンポマン |
|---|---|
| 原題 | Chinpo Man |
| 画像 | ChinpoMan_poster.jpg |
| 画像サイズ | 280px |
| 画像解説 | 公開当時のポスター |
| 監督 | 神崎蓮司 |
| 脚本 | 神崎蓮司、三村由貴 |
| 原案 | 河原崎トオル |
| 製作 | 北沢義彦 |
| 出演者 | 天野丈一、久保田奈央、城戸修、黒木みどり |
| 音楽 | 篠原ケン |
| 主題歌 | 「夜明けのマント」 |
| 撮影 | 沢井隆志 |
| 編集 | 宮本順子 |
| 制作会社 | 東都映像工房 |
| 製作会社 | チンポマン製作委員会 |
| 配給 | 大洋配給 |
| 公開 | 1987年11月21日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 約1億2800万円 |
| 興行収入 | 18億4,000万円 |
| 配給収入 | 8億9,000万円 |
| 上映時間 | 103分 |
| 前作 | なし |
| 次作 | チンポマン2 逆襲の鈴鳴市 |
『』(ちんぽまん、原題: Chinpo Man)は、に公開されたのアクション映画である。監督は、主演は。低予算ながら特殊造形と異様に真面目な政治風刺で話題を呼び、翌年にはをめぐる珍事の一因になったとされる[1]。
概要[編集]
『』は、の下町を舞台に、謎の発電マスクを被った正義漢が巨大都市の停電危機に挑むという物語である。1980年代後半の界において、が企画した“子ども向けに見せかけた大人向け社会劇”の代表例として知られる。
作品名の由来は、企画段階で使われた略号「CPM」を現場の書記が誤読したことに始まるとされるが、別の資料では「Central Power Man」の略称が独自に訛ったものとも記されている。なお、公開直後の新聞広告ではタイトル表記が三種類併記され、劇場窓口での呼び間違いが続出したという[2]。
あらすじ[編集]
で配電局の職員として働く演じる草壁仁は、老朽化した送電網の視察中、謎の黒いマントをまとった老人から「都市の明かりは、都市の記憶である」と告げられる。その夜、地下変電施設が連続爆発し、仁は自作の絶縁スーツと発電ベルトを装着してを名乗ることになる。
事件の背後には、再開発を進めると、停電を利用して古い商店街を立ち退かせようとする市議会の思惑があった。仁は新聞記者の演じる相馬玲子と協力し、停電で機能停止した信号機の列を走り抜けながら、最後はの埋立地に設けられた人工雷雲装置を止めることになる。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
草壁仁 / チンポマン:演じたのは。普段は温厚な配電局員であるが、変身後は極端に律儀な口調になる設定で、監督のは「正義の押し売りにならないよう、毎回礼を言ってから殴る人物」と説明していた。
相馬玲子:演じたのは。地方紙の社会部記者で、停電事故の裏にある利権を追う。劇中では二度も電話ボックスに閉じ込められるが、いずれも停電のせいで誰も助けに来ない場面が有名である。
その他[編集]
桐生剛:演じたのは。湾岸エネルギー公社の技術顧問で、人工雷雲装置「ゼニス・クラウド」の設計者。劇中で唯一、停電中に蓄光ネクタイで存在感を出す人物とされる。
黒沼マサ:演じたのは。商店街連合の代表で、再開発への抵抗運動を率いる。台詞の多くがアドリブであり、完成試写では毎回、同じ場面だけ妙に長くなることで知られた。
キャスト[編集]
主演のは、本作の撮影前にの変電所で二週間の体験研修を受けたとされ、絶縁靴の歩き方まで役作りに取り入れたという。相手役のは当時舞台中心の俳優であり、本作が映画初主演級の扱いであった。
助演陣ではが怪演を見せ、後年のインタビューで「説明台詞を言うたびに、監督が『もっと官僚的に』と注文した」と述べている。なお、ナレーションはが担当したが、正式なクレジットでは「都市記録音読」と表記されていた。
スタッフ[編集]
映像制作[編集]
特殊造形は、ミニチュア撮影はが担当した。変身シーンの発光は、蛍光塗料と家庭用のアルミ箔を組み合わせた簡易装置で撮影され、結果として一部のコマで異様に眩しい映像が生まれた。
撮影監督のは、停電場面の暗さを出すため、実際の街灯をいくつか事前に間引いたという噂があるが、関係者はこれを否定している。
製作委員会[編集]
製作はを中心とする小規模な委員会方式で、映画館チェーン、玩具商社、地元テレビ局の三者が出資した。特には、子ども向けの変身ヒーロー映画として売り出す方針を提案したが、完成品があまりにも市議会批判に寄っていたため、宣伝素材の半数を差し替えたとされる。
また、初期の契約書には「電気設備に損害が生じた場合、製作側は善意で説明すること」という不可解な条項があり、法務担当者が三度書き直した記録が残る。
製作[編集]
企画[編集]
企画の端緒は、がの地方公聴会で「停電は災害ではなく記憶の消失だ」と発言したことにあるとされる。その後、の勉強会で配られた短編案が元になり、都市の電力と共同体の崩壊を重ねる脚本へと発展した。
タイトルの怪しさとは裏腹に、制作陣は当初から社会派作品としての公開を狙っており、配給側と毎週のように題名変更をめぐる協議を行った。最終的に「一度見たら忘れない名前」が採用されたという。
美術・CG・撮影[編集]
美術監督のは、の下町の長屋との湾岸工業地帯を組み合わせた“ありえないのに見覚えのある都市”を目指した。人工雷雲装置の制御盤は、実際には古い計測器と自転車部品で構成されており、撮影後に一部が廃品回収業者へ渡ったという。
CGは一切使われていないと宣伝されたが、終盤の雷の揺らぎだけはのデジタル合成初期技術を用いたとクレジットに小さく記載されている。これは当時としては珍しく、後年のフィルム研究で「使っているように見えないCG」として逆に評価された。
音楽・主題歌[編集]
音楽はが担当し、ブラスとシンセサイザーを不均等に混ぜた行進曲風のスコアで知られる。主題歌「」はが歌い、公開当時は子ども向け番組の枠で頻繁に流れたが、歌詞の一節にある「配電盤の花束」という表現が妙に有名になった。
神崎監督は音楽について「勇ましさを出すと同時に、少しだけ疲れている感じが必要だった」と述べたとされ、結果として全体に妙な哀愁が生まれた。
興行[編集]
宣伝・封切り[編集]
公開前のキャッチコピーは「明かりを守る者が、都市を叩き起こす」であり、に全国146館で封切られた。初週の動員は約17万4,000人で、予想の2倍を超えたため、東名阪では急遽深夜回が追加された。
宣伝担当は、駅貼りポスターの顔写真をわざと逆光にすることで「正体不明の会社員ヒーロー」という印象を強めたが、結果として多くの観客がただの配電工事映画だと誤認したという。
再上映・映像ソフト化[編集]
のリバイバル上映では、当時の子ども層が成人していたこともあり、社会風刺作品として再評価された。VHS化では一部の蛍光色が過剰に沈み、いわゆる「」の先駆けのような騒ぎが起きたが、製作側は「停電都市の再現」と説明している。
その後、のDVD版、の4K修復版が発売された。4K版では本来見えないはずのスタントマンの運転免許証が一瞬映り込み、特典映像でわざわざ説明された。
海外での公開[編集]
海外ではとで限定公開され、英語字幕版の題名が『Power Gentleman』へ変更された。これが現地の新聞で「日本映画にしては妙に礼儀正しいスーパーヒーロー」と評されたことから、カルト的人気を得た。
なお、では配給会社が“電気市民劇”として売り出したため、観客がヒーロー映画ではなく労働映画だと勘違いし、週末の動員がやや落ち込んだとされる。
反響[編集]
批評[編集]
公開当時の批評は賛否が分かれた。『映画芸術通信』は「怪作だが、都市行政への怒りが驚くほど明晰である」と評し、一方で『週刊シネマレビュー』は「タイトルの衝撃が内容を上回っている」と指摘した。
ただし、地方紙の映画欄では子どもが見に行くには少し難しく、大人が見に行くには少しばかばかしいという、きわめて曖昧な褒め方が多かった。
受賞・ノミネート[編集]
本作はで美術部門を受賞し、では推薦候補に挙がったが、正式な選出をめぐって運営側が「前年の停電関連作品と混同した」と説明したという逸話がある。
また、では主演男優賞にがノミネートされたが、授賞式当日に本人が別のイベントで発電機の試運転をしていたため、代理人が盾だけ受け取った。
売上記録[編集]
興行収入は18億4,000万円を記録し、同年の中規模特撮映画としては異例の成績であった。特に夏休み明けの再伸びが大きく、公開8週目に前週比118%を記録したことから、配給関係者は「停電が終わったあとにもう一度観に来る映画」と呼んだ。
なお、一部資料では配給収入が8億9,000万円とされるが、別の業界誌では9億円台前半との記述もあり、いずれも誤差の範囲として扱われている。
テレビ放送[編集]
の制作枠で初めて地上波放送され、視聴率は14.8%を記録した。特に変身直後の3分間がCM明け直後に配置されたため、当時の子どもたちの間で「その回だけ学校に遅刻する」という現象が起きたという。
の深夜再放送では、局側が尺の都合でエンドロールを30秒早く切ったため、主題歌の最後の一節が途切れ、ファンから抗議が寄せられた。後年の再放送ではこの部分が修復され、逆に「放送版しか知らない世代」と「完全版しか知らない世代」で論争が生じた。
関連商品[編集]
作品本編に関するもの[編集]
公開に合わせて、製の発光ベルト玩具、変身マスク、蓄電式ブーツが発売された。中でも「鳴るだけで光らない」廉価版ベルトは、むしろ劇中設定に忠実だとして一部のマニアに珍重された。
また、劇中に登場する配電図を再現した設定資料集『』は、映画の副読本として学校図書館に置かれた例がある。
派生作品[編集]
続編『』のほか、ラジオドラマ『』、漫画版『』、およびのパチンコ機『チンポマンDX』が存在する。とくにパチンコ機は、変身音がやたら長いことで知られ、当時のホールでは一局当たりの平均滞在時間が増えたとされる。
さらに、には舞台版『チンポマン・ザ・ミュージカル』が上演されたが、停電演出のために客席の一部まで暗転し、上演後の退場に10分以上かかったという。
脚注[編集]
[1] なお、興行収入の集計方法には公開館の自己申告が含まれる。
[2] 企画書の原本は資料室で確認されたとされるが、閲覧記録の一部が欠落している。
参考文献[編集]
北沢義彦『都市停電映画論序説』大洋映画出版社、1988年、pp. 41-78.
神崎蓮司『変身と行政: 1980年代特撮の周縁』、1991年、Vol. 12, No. 3, pp. 5-19.
三村由貴『脚本会議の夜: ある映画の題名が決まるまで』、1990年.
K. Shinohara, “Brass and Blackouts in Japanese Popular Cinema,” Journal of East Asian Screen Studies, Vol. 7, No. 2, pp. 113-129.
A. Thornton, “When the City Loses Power: Notes on Chinpo Man,” Pacific Film Quarterly, Vol. 18, No. 4, pp. 201-226.
『』、2004年、pp. 322-329.
編『地方都市とヒーロー像』、1989年、pp. 88-96.
河原崎トオル『CPM草案ノート』私家版、1985年.
『夜明けのマント歌詞集』、1987年.
M. Benford, “An Unusually Polite Hero: The Reception of Chinpo Man,” Film and Society Review, Vol. 9, No. 1, pp. 14-33.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
東都映像工房アーカイブ
鈴鳴市映画資料館
日本特撮研究会データベース
映画年鑑オンライン
幻の配給パンフレット保存会
脚注
- ^ 北沢義彦『都市停電映画論序説』大洋映画出版社、1988年、pp. 41-78.
- ^ 神崎蓮司『変身と行政: 1980年代特撮の周縁』日本映像文化研究所、1991年、Vol. 12, No. 3, pp. 5-19.
- ^ 三村由貴『脚本会議の夜: ある映画の題名が決まるまで』青嶺書房、1990年.
- ^ K. Shinohara, “Brass and Blackouts in Japanese Popular Cinema,” Journal of East Asian Screen Studies, Vol. 7, No. 2, pp. 113-129.
- ^ A. Thornton, “When the City Loses Power: Notes on Chinpo Man,” Pacific Film Quarterly, Vol. 18, No. 4, pp. 201-226.
- ^ 『昭和特撮大全 1980-1989』映像社、2004年、pp. 322-329.
- ^ 日本映画史料室編『地方都市とヒーロー像』中央出版、1989年、pp. 88-96.
- ^ 河原崎トオル『CPM草案ノート』私家版、1985年.
- ^ 『夜明けのマント歌詞集』東都レコード、1987年.
- ^ M. Benford, “An Unusually Polite Hero: The Reception of Chinpo Man,” Film and Society Review, Vol. 9, No. 1, pp. 14-33.
外部リンク
- 東都映像工房アーカイブ
- 鈴鳴市映画資料館
- 日本特撮研究会データベース
- 映画年鑑オンライン
- 幻の配給パンフレット保存会