ブライガーおじさん
ブライガーおじさん(ぶらいがーおじさん)とは、の都市伝説の一種[1]。主にのや、向けの売場に現れると言われる、名刺と割引券を配る不気味な人物の伝承である[2]。
概要[編集]
ブライガーおじさんは、末から初頭にかけて噂が広まったとされる都市伝説である。正体ははっきりせず、の中年男性が「ブライトな未来」「ライガー級の活力」などと称して、謎の冊子を手渡すという目撃談が多い。
伝承上では、彼はの駅前、深夜の、さらには地方のにも現れたとされる。噂が全国に広まった背景には、、、そしてによる断片的な報道があったと考えられている[3]。
歴史[編集]
起源[編集]
最初期の記録は頃の南部の電話回線掲示板に見られるとされる。当初は「ブライガー」とだけ呼ばれ、を執拗に求める謎の営業員として語られていたが、に『』が「おじさん」という呼称を併記したことで定着した[1]。
起源については、の外回り員、の巡回販売員、あるいはに紛れた情報収集員だったなど諸説ある。ただし、どの説も決定的な裏付けを欠き、むしろ「本人の肩書が毎回少しずつ違う」という点が伝承を強めたとされる。
流布の経緯[編集]
の夏、各地で「ブライガーおじさんに会うと翌週の家族会議が長引く」という噂が出回り、学校の経由で児童に伝わったとされる。これにより、の一種としても扱われるようになった[2]。
には番組『ナイト・リレー相談室』で、リスナー投稿が相次ぎ、番組側が「実在する営業トラブルではないか」と断ったにもかかわらず、逆に「やはり出るのだ」と受け止められた。この種の否定が拡散を助けるのは、ブライガーおじさん現象の特徴である。
定着と再燃[編集]
以降はのメールチェーンや地域SNSで再燃し、特にのリーマン・ショック後には「景気が悪い時ほど現れる」とする言い伝えが広まった。都心部ではのコピー機横に現れるという派生が増え、地方ではで移動する姿が追加された。
以降は、上で「ブライガーおじさんを見たら背後の自販機に注目せよ」という検証動画が流行し、噂は半ばネタ化しつつも完全には消えていない。なお、一部の研究者は、とへの不安が周期的に投影される現象だと説明している[4]。
噂に見る「人物像」[編集]
ブライガーおじさんの人物像は一貫しないが、いくつかの共通点がある。第一に、年齢はからとされ、髪型は七三分け、靴はやや白っぽく、笑うときだけが異様に整って見えるという。
第二に、話しかけ方が妙に丁寧で、「よいお話を一つ」「お時間はいただかなくて結構です」と前置きする点が特徴である。目撃談の多くでは、名刺の肩書が、、など毎回少し違い、しかも印刷の裏面に必ずのクーポンが付いているとされる。
第三に、彼は恐怖の対象であると同時に、どこか哀愁を帯びた存在として語られる。ある伝承では、ブライガーおじさんは人を驚かせるためではなく、「孤独な家庭に会話のきっかけを置いていく」ために出没するとされ、これが逆に不気味さを増したという。
委細と派生[編集]
ブライガーおじさんの持ち物[編集]
伝承上、彼は常に三つ折りの冊子と、角が少し丸まったを携えている。冊子には「今月の運気」や「家族で確認したい三つの数値」といった記載があり、最後のページに必ずに似た模様が印刷されているが、実際には読み取れないとされる。
また、やで目撃された際には、手元に紙コップのを持っていたという証言もある。これが「見た者に攻撃しない都市伝説」とみなされる理由の一つとなっている。
派生バリエーション[編集]
関東では「ブライガーおじさん・赤ジャケット版」、では「ブライガーさん」と敬称化した派生が知られている。前者は期に現れ、後者はの福引き場にしか出ないとされる。
さらに、の一部では「ブライガーおじさんは雪の日にだけ現れ、車のフロントガラスに“お手入れ不要”のシールを貼る」という伝承があり、では「焼酎の試飲を断ると静かに消える」と言われている。いずれも元の話と整合しないが、地域ごとの生活様式に合わせて改変されたと見られる。
学校内での変形[編集]
では、ブライガーおじさんは「廊下の端に立つと進路希望調査を持ってくる存在」として語られた。あるの公立校では、職員室前の掲示板に貼られた進路資料が毎朝1枚だけ増えていたことから、用務員が彼を見たと証言したという[要出典]。
この噂は、保護者会でのと結びついて強まったとされ、特にの冬に流行しやすかった。都市伝説としては珍しく、怖がるより先に「また来た」と生徒に面白がられた点が特徴である。
噂にみる「対処法」[編集]
ブライガーおじさんを避けるには、名刺を受け取らず、相手の肩書を3回復唱しないことが最重要とされる。伝承では、肩書を復唱するとその夜のうちに自宅の電話機に同じ番号が3回表示されるという。
もっとも有名な対処法は、「お茶を出して、玄関先で5分だけ話を聞く」ことである。これは一見無害だが、話を聞いた家庭では翌朝の新聞折込チラシの量が通常のに増えるとされ、むしろ被害が拡大するという指摘もある。
一方で、後半に広まった「左手で時計を隠しながら“今日は間に合っている”と言う」方法は、地方紙のコラムで紹介されたのをきっかけに半ば定説化した。ただし成功率は程度とされ、信憑性は低い。
社会的影響[編集]
ブライガーおじさんは、やへの警戒心を象徴する存在として定着した。また、における「見知らぬ中年男性」への無意識の不安が投影されているとの分析もある。
にはが啓発冊子『その名刺、ブライガーかもしれません』を配布したとする説があるが、実物は確認されていない。それでも地域のやでは、怪しい勧誘への注意喚起の例えとして引用されることがある。
また、では「ブライガーおじさんを見たら、実は自分が営業を受ける側ではなく紹介する側だった」という逆転ネタも流行し、都市伝説が警戒と自虐の両方に使われる珍しい例となった。
文化・メディアでの扱い[編集]
の深夜ドラマ『』で、ブライガーおじさんに着想を得たとされる人物が登場し、以後、の文脈でたびたび引用された。なお、制作側は「実在の営業トラブルを元にした」と説明しているが、脚本メモには「おじさんの背後に自販機を1台追加」とのみ書かれていたという。
にはで「ブライガーおじさん合同」が頒布され、派生設定として「雨の日はチラシの角が揃う」「マンションの号室を1つ飛ばしで訪問する」などの細部が増殖した。こうした二次創作的蓄積により、もはや元の噂より設定の方が詳しいとまで言われている。
にはが再現ロケを行い、の郊外で「似た背広の人」を撮影したとして話題になったが、のちに地元のだったことが判明した。これがかえって伝承の現実味を補強したとも評される。
脚注[編集]
[1] 『月刊ムーン・ウォッチ』1989年11月号、特集「夜の名刺配りと都市不安」。
[2] 佐久間理子『学校の怪談と進路指導』青雲出版, 1994年, pp. 88-93.
[3] 東洋民俗研究会編『現代都市伝説の流通経路』東亜書房, 2002年, pp. 141-149.
[4] Margaret A. Thornton, “Middle-aged Men as Mobile Anxiety Figures in Late-Show Japan,” Journal of Urban Folklore, Vol. 17, No. 2, 2016, pp. 55-74.
参考文献[編集]
佐久間理子『学校の怪談と進路指導』青雲出版, 1994年.
東洋民俗研究会編『現代都市伝説の流通経路』東亜書房, 2002年.
村瀬啓一『名刺と恐怖の民俗学』岩波民俗選書, 2008年.
Margaret A. Thornton, Urban Rumors and the Office Ghosts, University of Camden Press, 2011.
小早川一真『深夜バスにおける不気味な営業者』新風社, 2013年.
Kenji Watanabe, “Coupon-Carrying Men in Suburban Legend Cycles,” Folklore Review, Vol. 12, No. 4, 2014, pp. 201-219.
高見沢由香『ブームの外側にいる男たち』港南書房, 2017年.
Rebecca L. Howell, “The Braiger Phenomenon and Its Printed Ephemera,” Journal of Contemporary Myth, Vol. 9, No. 1, 2019, pp. 33-48.
『その名刺、ブライガーかもしれません』消費生活センター資料集, 2004年.
片岡真一『おじさん伝説大全』北辰社, 2021年.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐久間理子『学校の怪談と進路指導』青雲出版, 1994年.
- ^ 東洋民俗研究会編『現代都市伝説の流通経路』東亜書房, 2002年.
- ^ 村瀬啓一『名刺と恐怖の民俗学』岩波民俗選書, 2008年.
- ^ Margaret A. Thornton, Urban Rumors and the Office Ghosts, University of Camden Press, 2011.
- ^ 小早川一真『深夜バスにおける不気味な営業者』新風社, 2013年.
- ^ Kenji Watanabe, “Coupon-Carrying Men in Suburban Legend Cycles,” Folklore Review, Vol. 12, No. 4, 2014, pp. 201-219.
- ^ 高見沢由香『ブームの外側にいる男たち』港南書房, 2017年.
- ^ Rebecca L. Howell, “The Braiger Phenomenon and Its Printed Ephemera,” Journal of Contemporary Myth, Vol. 9, No. 1, 2019, pp. 33-48.
- ^ 『その名刺、ブライガーかもしれません』消費生活センター資料集, 2004年.
- ^ 片岡真一『おじさん伝説大全』北辰社, 2021年.
外部リンク
- 現代怪異アーカイブ
- 夜間民俗研究所
- 首都圏都市伝説収集会
- 名刺文化史資料室
- 深夜バス怪談データベース