プロジェクト・滅入る・メアリー
| 作品名 | プロジェクト・滅入る・メアリー |
|---|---|
| 原題 | Project: Depressing Mary |
| 画像 | 公式ポスター(架空) |
| 画像サイズ | 250px |
| 画像解説 | 霧の中でメアリーの影が文字化けする構図 |
| 監督 | 渡辺精練郎 |
| 脚本 | 渡辺精練郎・黒井沙織 |
| 原作 | 『滅入る手順書』(架空小説) |
| 原案 | 音声認識研究会「カナミズム機構」 |
| 製作 | 製作委員会「滅入る・メアリー」 |
| 製作総指揮 | 野尻文治 |
| ナレーター | 森崎真哉 |
| 出演者 | 日向マリナ、早瀬ユウ、柿本レン、志賀コウ |
| 音楽 | 市川ユウカ |
| 主題歌 | 「宵の負荷」(歌:架空アーティスト『藍睡(あいすい)』) |
| 撮影 | デジタル合成班(弧月スタジオ映像部) |
| 編集 | 黒田カズミ |
| 制作会社 | 弧月スタジオ |
| 製作会社 | 製作委員会「滅入る・メアリー」 |
| 配給 | 東雲映配(しののめえいはい) |
| 公開 | 2021年10月12日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 12.6億円 |
| 興行収入 | 48.2億円 |
| 配給収入 | 21.9億円 |
| 上映時間 | 104分 |
| 前作 | 『プロジェクト・眠る・ハルカ』(2019) |
| 次作 | 『プロジェクト・浮く・オーガ』(2023) |
『プロジェクト・滅入る・メアリー』(ぷろじぇくと・めついる・めありー)は、[[2021年の映画|2021年]]10月12日に公開された[[弧月スタジオ]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]。原作・脚本・監督は[[渡辺精練郎]]。興行収入は48.2億円で[1]、[[黒紙影賞]]を受賞した[2]。
概要[編集]
『プロジェクト・滅入る・メアリー』(ぷろじぇくと・めついる・めありー)は、抑うつを“可視化”する研究を題材としたアニメーション映画である。監督の[[渡辺精練郎]]は、心の状態を音声波形のように扱う演出を徹底し、観客が自分の沈み具合を「測定された気分」にさせる作風として知られる。
本作は[[弧月スタジオ]]制作であり、公開初週の動員が全国154館で平均2.31万人を記録したとされる[3]。また、上映スクリーンごとに“濃度の違う霧”が映るよう調整されたという噂が広まり、映画評論家の一部には「技術というより儀式である」と評する声もあった[4]。
あらすじ[編集]
東京湾岸の研究所[[霧鍵電算研究館]]は、思考の“重さ”を数値化する装置「メアリー・ダイオード」を完成させた。装置は会話の終端だけを吸い、話者が次に言うはずだった言葉を先回りして奪うことで、感情を滅入らせると説明される。
主演の若手解析員[[日向マリナ]]は、計測実験の被験者として雇われたはずだったが、実際には装置の内部に残された過去の音声ログ――“メアリーの声”――に引きずられていく。ログには、なぜか所在地が[[東京都]][[港区]]ではなく、架空の行政区「第八沈下区」として記録されており、物語の進行とともに現実の地図が書き換えられていくように描かれる。
終盤、メアリー・ダイオードは沈みの再現ではなく「沈みの伝播」を制御していたことが判明する。研究所は止めようとするほど装置の演算が増え、マリナは“奪われた終端”を取り戻すために、自分で沈みの文章を読み上げる決断を迫られる。最後に彼女が選ぶのは救済ではなく、沈みを“共有ログ”として公開し、誰もが自分の滅入り方を学べる状態にする道であった。
登場人物[編集]
主要人物として、沈みの解析員[[日向マリナ]]と、研究館の管理担当である[[早瀬ユウ]]が中心に据えられる。マリナは「感情は速度ではなく反響である」と繰り返し、会話の区切りを異常に気にする癖を持つとされる。
その他人物には、装置の試作を担った技術者[[柿本レン]]、沈みのログに助言を与える広報担当[[志賀コウ]]、そしてナレーター[[森崎真哉]]が“観客の遅延”を測る役割で登場する。特に志賀は作中で、劇場に貼られた「負荷の注意事項」ポスターの改訂履歴を読み上げる場面があり、観客が自分の心拍と同期しているように感じる演出があるとされる[5]。
なお、被験者は総称として「第1群」「第2群」と表記され、群ごとに“落ち込み係数”が細かく振られる。劇中では群Aの係数が0.73、群Bが1.01、群Cが0.58で、最も長く沈むのは係数が低い群だと説明されるが、この逆説が観客の議論を呼んだ。
声の出演またはキャスト[編集]
[[日向マリナ]]役を[[早瀬ユウ]]、[[早瀬ユウ]]役を[[日向マリナ]]が兼ねるという“逆配置キャスト”が話題になり、登場人物の視線が入れ替わる演出と連動したとされる。柿本レン役は[[柿本レン]]役者ではなく声優[[宮坂リコ]]が担当し、声質は「吐息成分が3.4%多い」と公式コメントで語られた[6]。
その他キャストとして、管理室の端末音声は[[小島ユキノ]]が担当し、終盤で霧鍵電算研究館のアラート文が詩のように聞こえる効果を作ったとして評価された。さらに、ナレーションは[[森崎真哉]]が担当し、劇中の“失われた終端”を復元するような抑揚で進行する。
スタッフ[編集]
監督の[[渡辺精練郎]]は原作を[[『滅入る手順書』(架空小説)]]として公表し、脚本には[[黒井沙織]]が参加した。制作総指揮は野尻文治、編集は[[黒田カズミ]]、音楽は[[市川ユウカ]]である。
音響面では、台詞の前後を“同じ人の心拍”に寄せるため、撮影ではなく合成音響で調整が行われたとされる。美術は霧鍵電算研究館の内装をモデル化し、壁面の数式プレートが全210枚、うち42枚が途中で読めなくなる仕様で制作されたと公式資料に記されている[7]。
一方で、主題歌「[[宵の負荷]]」の歌唱者は架空アーティスト[[藍睡(あいすい)]]としてクレジットされ、歌詞の一部が劇場パンフレットの特定ページと連動して“沈む言葉”が変化する仕組みが導入された。
製作[編集]
企画は、音声認識研究会「[[カナミズム機構]]」が“会話の終止音だけ集めた学習データ”を作ったことに端を発するとされる。彼らは、沈みが語彙よりも語尾に宿るという仮説を掲げ、そこから映画制作へと転用が進んだ。
制作過程では、最初にストーリーボードではなく「終端の奪い方」の仕様書が作られ、各シーンの台詞終端が音節単位で管理された。霧のCGは“気象シミュレーション”ではなく“視線遅延モデル”で生成され、観客が映像を見てから脳が追いつくまでの時間差(平均61ミリ秒)を基準に濃淡が配分されたと説明される[8]。
美術と彩色では、沈みの段階を色で分けるため、グラデーションの階調数が通常の4倍である1,024段階に設定された。しかし完成後にテスト上映したスタッフの一部が「階調が多すぎて逆に疲れる」と述べ、最終的に階調は768に落とされたという舞台裏が語られている[9]。
興行[編集]
配給は[[東雲映配]]が担当した。公開初日、東京の[[有楽シネマティクス]]で行われた舞台挨拶では、来場者数がチケット販売ベースで2,948人と発表されたが、実測では2,951人だったと運営が訂正した[10]。この“1〜3人の差”がネット上で「沈みの誤差だ」として笑い話になり、SNSで二次創作の指標として利用された。
宣伝ではキャッチコピーとして「言葉を終えると、終わる」と掲げられ、劇場広告のテキストは掲出日ごとに句点の位置が変更された。リバイバル上映は2022年に行われ、前回から音響が調整されたために“同じシーンでも沈みが違う”と評される声が出た。
ホームメディアでは、DVDとBlu-rayで色調が異なる問題があり、DVD側は霧が緑寄りに、Blu-ray側は青寄りに出ると報告された。特に[[関東地方]]の一部店舗では「緑霧の回だけ不眠になる」と噂が流れたが、公式には調整による差とされた。
反響[編集]
批評では、批評家の[[宮田歩未]]が「観客の“滅入り”を責めずに、計測することの罪を問う」と論じた。一方で、臨床心理の観点からは、作品が抑うつの表象を娯楽に寄せすぎるとして批判も集まった。
受賞面では、[[黒紙影賞]]に加え、映像技術部門での評価が大きかった。ノミネート歴としては第34回「合成詩学賞」で作品賞候補となり、さらに音楽部門で[[市川ユウカ]]が審査員特別賞を受けたと報告されている[11]。
売上記録としては、公開から56日間で上映館数が当初の154館から117館まで減少したにもかかわらず、総観客数が伸び続けたとされる。これについては「減った分だけ“遅延が合う人”が残った」という解釈が広まり、作品が“当たる劇場”を選ぶような話題性を獲得した。なお、この解釈は出典が示されないまま記事化され、のちに一部媒体で「要出典」と指摘された。
テレビ放送[編集]
テレビ放送は2023年1月に[[BS海鳴]]で行われ、視聴率は平均5.7%を記録したとされる。放送版では霧の濃度が抑えられたため、原作ファンからは「沈みが薄い」との声が出た。
また、放送時のテロップには「負荷の注意」が表示されたが、その文章が放送局の見直しで変更された。初回は「終端を急ぐ行為は避けてください」、再放送では「終端を急ぐ行為は避けてください(誤字ではありません)」と読める形になっており、誤字修正の演出だと笑われた[12]。
関連商品[編集]
関連商品として、劇場パンフレットは「第八沈下区地図縮尺1:250,000」が付属した仕様で販売された。地図には存在しないはずの道路名が印刷され、実際に購入者が駅前で尋ねる騒動が起きたとされるが、流通担当は「照会先は架空の管轄です」と説明したとされる。
サウンドトラックは[[市川ユウカ]]の編曲で全22曲が収録され、特典として“終端抽出”用の短い音声ファイルが同梱された。さらに、映像の解像度差を楽しむためのファン向けガイドブック『霧鍵電算研究館の歩き方』も発売された。
派生作品としては、短編アニメ『プロジェクト・滅入る・メアリー:袖の計測』がWebで公開され、主題歌「[[宵の負荷]]」のカラオケ版がサブスクで配信された。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精練郎「『プロジェクト・滅入る・メアリー』の終端設計」『日本アニメーション技術誌』第12巻第3号, pp. 41-66.
- ^ 黒井沙織「沈みは語彙ではなく語尾に宿る:台詞終端メトリクス」『音声感情研究年報』Vol. 28, pp. 112-139.
- ^ 宮田歩未「娯楽映画としての計測と沈黙」『映画批評月報』第204号, pp. 8-19.
- ^ 市川ユウカ「主題歌『宵の負荷』における負荷スペクトル」『作曲工学ジャーナル』第7巻第1号, pp. 77-92.
- ^ 野尻文治「製作委員会は誰を守るのか:『滅入る・メアリー』運営報告」『映像産業政策レビュー』pp. 203-221.
- ^ 東雲映配 編『2021年秋興行メモリアル』東雲映配, 2022.
- ^ 『弧月スタジオ制作工程資料(第八沈下区版)』弧月スタジオ, 2021.
- ^ Kobayashi, R. “End-Term Loss and Viewer Delay in Animated Works.” International Journal of Affective Media, Vol. 16, No. 4, pp. 501-527.
- ^ Thornton, Margaret A. “Fictional Analytics of Depressive Representation.” Journal of Imagined Cognition, Vol. 3, Issue 2, pp. 22-35.
- ^ 『映画の色調とDVD/BDの差異に関する暫定指針(誤字訂正版)』日本映像標準化協会, 2022.
外部リンク
- 弧月スタジオ 公式サイト
- 東雲映配 特設ページ
- 黒紙影賞 受賞作品アーカイブ
- カナミズム機構 研究アーカイブ
- BS海鳴 番組ページ