ボンビクス・モリモリ
| 分野 | 民間ウェルネス・音声リズム療法 |
|---|---|
| 想定対象 | 疲労感・意欲低下(自己申告型) |
| 主な手法 | 呼吸+拍手+擬音(モリモリ) |
| 初出とされる時期 | 1990年代後半の商店街チラシ |
| 関連団体 | ボンビクス・モリモリ普及協議会(通称・協議会) |
| 実施場所 | 公民館・学校・イベント会場 |
| 代表的合言葉 | 「元気モリモリ、ボンビクスモリ」 |
| 論争点 | 効果の根拠と費用分配(参加費) |
(Bonbix Morimori)は、気分の活性化を目的とした「運動」風の健康法として流行したとされる概念である。語の響きから想起される「元気モリモリ」を合言葉に、特定の手順と音声リズムで実施するものと説明されてきた[1]。
概要[編集]
は、日常の停滞感を「音と動き」で置き換えるとされる健康法の総称である。実施者は決まった拍(かく)で手を叩き、吸気で「ボン」、呼気で「ビクス」、最後に勢いよく「モリモリ」と発声する手順を踏むと説明される。
この健康法は、〈元気モリモリ ボンビクスモリ〉という語呂が先行して広まり、のちに「身体反応が出やすい構成」として手順が整えられた経緯をもつとされる。なお、医療機関での正式な治療ではなく、あくまで個人の体感を重視する実践として位置づけられるのが一般的である[2]。
手順の中核は「8拍呼吸」「3回の拍手」「立位の重心移動(通称・モリモリステップ)」であるとされる。ただし、原典とされる文献が複数あり、参加者の地域差によって微調整が入ることで、結果の印象が左右される点が指摘されている[3]。
成立と起源[編集]
語呂が先、設計が後—商店街から生まれたとされる経緯[編集]
語源は、東京都の下町商店街に配布されたチラシのコピー「元気モリモリ ボンビクスモリ」に求められるとされる。チラシには体操名のように見える文言しか記載されておらず、当時の店主たちは来客増を狙って“掛け声だけ先行”で試していたという[4]。
その後、参加者の中から「音を合わせると、腹部の感覚がはっきりする」との声が出て、音声の区切りが“ボン(吸)・ビクス(吐)・モリモリ(締)”として整理されたとされる。ここで、手順化の都合で「1セット30秒」が採用され、30秒に収まるように発声の長さが調整された、という筋書きが協議会の資料に見られる[5]。
もっとも、当時の資料には“厳密な設計”の痕跡が薄いとする指摘もあり、協議会は「原初のチラシは保存状態が悪く、復元には解釈が含まれる」と説明している。いっぽうで、復元作業に関わったとされるの元事務局員が、実施前に「拍手係を3名置くと安定する」と台帳に書いたとされるエピソードも残っている[6]。
音声リズムの“擬似科学化”と、重心移動の導入[編集]
1990年代末には、健康イベントの運営経験者が「人は指示より“合図”に反応する」と考え、を追加したとされる。重心移動は、立位のまま左右に0.5秒ずつずらす方法(通称・モリモリ式)で、観察者が「足裏の圧が移るのがわかりやすい」と評価したことが採用理由と説明される[7]。
また、擬音の発声は“言葉の意味”ではなく“音の輪郭”を狙う設計だとされ、協議会は「母音比(オ:イ:オ=1:1:1)を維持すると、参加者のテンポが揃いやすい」と主張した。もっとも、この母音比は録音データの再現条件が曖昧であり、後年の批判では「理屈が後付けではないか」と問われた[8]。
一方で、この段階で『ボンビクス・モリモリ運用マニュアル』が作られ、都道府県の講座に“安全配慮のための手順表”として導入されたとされる。導入先の一つとしての自治会イベントが挙げられ、担当者が「転倒防止のため、左右移動は“影の範囲”で行う」と貼り紙を出した逸話がある[9]。
普及した仕組みと関係者[編集]
ボンビクス・モリモリは、医療よりも地域の“催事”に食い込むことで拡散したとされる。背景として、1990年代後半に市民講座の枠が増え、参加者の声がそのまま次の企画に反映される制度設計があった、と一部の記録は説明している[10]。
関係者としては、運営側ではのほか、録音担当の「テンポ測定係」や安全監督の「重心見張り」が置かれたとされる。特に録音担当には、音響機材に詳しいとされる(当時、地域イベント音響の請負)という人物が関わったと語られるが、出典の提示は限定的である[11]。
一方、参加者側では、合言葉の“語呂”が強い結束を生んだとされる。講座の終わりに必ず「元気モリモリ、ボンビクスモリ」と復唱させることで、次回参加率が上がったと報告された。協議会は“復唱率”を出席カードで算定し、ある会場では「初回から4週間で出席率61.3%」になったと記録する[12]。
ただし、その61.3%には「雨天時の振替を含む」など集計条件が曖昧であり、別資料では同じ期間で「出席率58%」と書かれている。ここが、のちに論争へつながる“数字の揺れ”の始点だったとされる[13]。
手順(ルーティン)[編集]
ボンビクス・モリモリは、1回あたり×で構成されると説明されることが多い。開始合図は「準備(0秒)—ボン(吸)—ビクス(吐)—モリモリ(締)」で、最後の発声は声量ではなく“抜け”を重視するとされる[14]。
セット間は休憩を取るとされ、休憩中は参加者に対し「目線は60度下げ、顎を1cmほど引く」など具体的な指示が与えられる場合がある。この指示は、映像記録から「姿勢が揃うとテンポが揃う」ことがわかったという理由で追加されたとされる[15]。
重心移動であるは、左右に移すたびに“床の音”を聞くという比喩が用いられる。実務上は「右→左で0.5秒、左→右で0.5秒」と計測され、合計で「4往復(合計2秒)」を1サイクルとする講座もあると報告されている[16]。
また、協議会の資料には“バリエーション”として「子ども版」「高齢者版」「椅子版」が挙げられる。椅子版では立位が避けられる代わりに、発声と拍手のタイミングが前倒しにされるとされ、これにより「声が先、動きが後」になる現象が起きる場合があるとされる[17]。
社会的影響[編集]
ボンビクス・モリモリは、健康法というよりも“地域の同調装置”として機能したと指摘されている。参加者同士が同じ音を出し、同じ動きをし、終わりに同じ合言葉で締めることで、初対面でも関係が作りやすかったとされる[18]。
特に、の一部地域では、季節の変わり目に開催されるイベントで導入されたとされる。ある新聞記事では「震災後の“気分の立て直し”として受け入れられた」という趣旨が書かれているが、協議会は当該記事の引用範囲を控えめにしている。なお、協議会の内部資料では“気分”の数値化として「復唱時の息切れ指数(1〜10)」が記録されたとされる[19]。
結果として、ボンビクス・モリモリは“運動教室”の入口を広げた一方で、参加の継続が「イベント参加」に結びつく形になったとみられる。つまり、健康というより“地域に出る理由”になったという評価がある。そのため、継続コスト(場所代・音響機材の負担)をどう負担するかが、別の問題として浮上した[20]。
また、商店街では「ボンビクス・モリモリ実施店」を掲げる看板が流行したとされる。東京都の一部飲食店では、店内BGMに合図のテンポが組み込まれ、買い物客が無意識に合わせてしまう“偶発参加”が起きたと語られている[21]。
批判と論争[編集]
最大の批判は、効果の根拠が曖昧である点に向けられた。協議会は「自己評価の上昇」を根拠として挙げることが多いが、対照群の設定が弱いとする指摘がある。ある公的研究のように見えるレポートでは、自己申告の改善が「平均で1.2点」上昇したと書かれる一方、同じ資料内で「1.6点」とも記述されており、整合性が問題視された[22]。
また、参加費の配分についても論争が起きたとされる。協議会は「会場維持と安全管理に充当する」と説明していたが、監査報告には「録音係の交通費」が明細として多く、参加者から「音響が儲かっているのでは」との疑念が出たという[23]。
さらに、合言葉の“元気モリモリ”が過剰に消費され、健康法というよりスローガンになっているのではないか、という批判もあった。対して賛成側は「声を出すこと自体が社会参加である」と反論し、学校行事に導入された経緯を根拠にした[24]。
中でも、笑いどころとなったのが「ボンビクス・モリモリの“適正年齢”」の議論である。協議会の配布資料には、椅子版が“推奨対象:45〜47歳”と書かれていたという証言が残っている。根拠は「歩幅が最も音に合う」というもので、なぜその年齢に限られるのかは説明されなかった[25]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山添俊介『笑う呼吸法の社会史:ボンビクス以前・以後』ナイル出版, 2006.
- ^ Margaret A. Thornton『Rhythmic Self-Report and Community Coherence』Vol.12 No.3, Arcadia Press, 2011.
- ^ 佐久間麗香『手順化される民間ウェルネス:チラシからマニュアルへ』第2巻第1号, 生活技術学会誌, 2009.
- ^ 協議会編『ボンビクス・モリモリ運用マニュアル(暫定版)』ボンビクス・モリモリ普及協議会, 1998.
- ^ 寺田ユカリ『現場で揃えるテンポ:録音係の記録(限定配布資料)』第5巻, 音響地域運営研究会, 2003.
- ^ Kenta Morinami『The Clap-Queue Effect in Informal Wellness Circuits』Vol.7 No.2, Journal of Urban Micro-practices, 2014.
- ^ 中川和也『“元気モリモリ”の言語学:合言葉が与える同期感』pp.41-58, 日本方言リズム研究会, 2012.
- ^ 田宮信之『自己評価尺度の揺れ:1.2点と1.6点のあいだ』Vol.3 No.8, 心身データ学会誌, 2018.
- ^ 林田マサ『重心見張りの作法:転倒を減らす指示設計』第1巻第4号, 生活安全論叢, 2005.
- ^ Cynthia R. Bell『Quantifying Cheerfulness in Community Settings』pp.10-33, Hearty Metrics Publications, 2007.
外部リンク
- ボンビクス・モリモリ公式アーカイブ
- テンポ測定係の掲示板
- モリモリステップ動画倉庫
- 商店街元気旗プロジェクト
- 自己申告尺度クリニック