ポチンキ
| 名称 | ポチンキ |
|---|---|
| 種類 | 時計仕掛けの郵便塔 |
| 所在地 | 北海道網走市(オホーツク海側旧港区) |
| 設立 | 12年(1913年) |
| 高さ | 27.6 m |
| 構造 | レンガ積み外郭+青銅ギア内装(自動投函機構付き) |
| 設計者 | 渡辺精一郎(海運気象技師) |
ポチンキ(よみ、英: Pochinki)は、にある[1]。
概要[編集]
現在ではに所在するは、投函と時刻告知を同時に行う時計仕掛けの郵便塔として知られている。塔の内部では、風向と潮位を読み取った「遅延補正」が働き、封書の投函タイミングを秒単位で調整するとされる。
なお、この郵便塔の名前「ポチンキ」は、旧港区の方言で「(押して)弾んで(鳴る)仕掛け」を意味する語であると説明されることが多いが、由来の説は複数に分かれている。
名称[編集]
「ポチンキ」という呼称は、開業当初の公式文書では「ポチンキ郵便塔」と記されていたとする記録がある。塔の投函レバーを押すたびに、短いベル音が二回鳴ることから、通称として定着したという説がある。
一方で、網走市史料調査班は「ポチンキ」をロシア語由来の俗称とみなし、干渉海域の通商文脈で広まった可能性を指摘している。ただし、この説は同時代の商館記録の語彙と整合しないともされ、編集者によって説明の分量が揺れがある。
当該施設の英語表記は、現地観光案内で Pochinki が採用されている。発音の揺れを避けるためとされるが、実際には「Pochinki」が商標登録の経緯で優先されたためとも言われる。
沿革/歴史[編集]
建設の発端[編集]
初期、の旧港区では、冬季の遅配をめぐり郵便局が慢性的な苦情対応に追われていた。そこで渡辺精一郎(海運気象技師)が、潮位観測と投函時刻を連動させる「遅延補正機構」の試作を提案したとされる。
提案書はにまとめられ、同年末の議会資料では「既存の投函所要時間を平均 18.4% 減ずる」ことが目標として掲げられた。さらに、針列の摩耗を抑えるため、潤滑材の交換周期を 73日ごとに固定する運用案も記載されていたと伝えられる。
完成と運用実験[編集]
12年(1913年)に塔は竣工し、内装ギアは青銅を中心に 6種類の合金で構成されたとされる。試運転では、風速 3.2 m/s で投函口が「一瞬だけ遅れる」現象が確認されたため、補正輪の角度を 0.71度だけ増やしたという細かな修正記録が残っている。
また、開業直後の一か月間には、投函成功率が 96.3% から 98.1% へ上昇したとされる。成功率の算出方法は「投函音の二連奏が確認された件数」とされ、当時の職員が“音で検品する”運用に慣れたことが背景にあると説明される。
改修と“忘れられた秒”[編集]
戦後には、老朽化対策としてレンガ外郭の一部が補強された。補強材には地元産の赤粘土を混ぜた焼成ブロックが用いられ、目地の耐水性を 1.4倍に高めたとされる。
ただし、の点検記録では、塔の秒針が「時刻ではなく投函口の回転数」に同期していることが再確認された。結果として、来訪者が腕時計と見比べた際に 11秒ほどズレて見える時期があり、地元ではこの現象を「忘れられた秒」と呼ぶようになった。
施設[編集]
は高さ 27.6 m のレンガ積み外郭で、塔の根元に投函室が設けられている。投函室の扉は耐風性を重視して二重化され、内部には投函受け皿(直径 41 cm)が回転する構造が採用されているとされる。
内部機構は青銅ギア内装で、歯車は「海風」「潮位」「封書荷重」の三要素に応じて回転速度が微調整される。封書荷重は、投函前に金属片がわずかに沈む量から推定すると説明され、沈み量は 0.2 mm 単位で記録されていたという。
また、塔の頂部にはベルと呼ばれる音響装置があり、投函が成立した時点で二回鳴動する。なお、二回目のベル音は 1.7秒後に発生し、これが「ポチンキ」という名称の由来とする説がある。一方で、観光パンフレットでは“押した回数で鳴り方が変わる”とも記載されており、訪問者の解釈に委ねる編集方針がうかがえる。
交通アクセス[編集]
は中心部から旧港区方面へ徒歩約 12分の場所にあるとされる。市の観光案内では最寄りを「ポチンキ前(旧港バス停)」としており、運行本数は平日で 1時間あたり 2本、冬季は 1本に減便されると説明されている。
鉄道利用の場合、最寄りの駅としての「網走駅」が挙げられ、そこからタクシーで約 8分、徒歩の場合は約 2.7 km とされる。なお、塔は海風の影響を受けるため、強風時には接近導線の一部が一時閉鎖されることがあるとされる。
駐車場は 28台分が確保されているとされ、身障者用区画は全体の 3区画(約 10.7%)を占めるとされるが、この比率は年度によって変更される可能性がある。
文化財[編集]
は、地域の景観施策の一環として「旧港区近代産業景観」としての登録物件に位置づけられている。登録日としてが挙げられる資料もあるが、同じ内容を別年度として掲載しているものもあり、一次資料の確認が必要とされる。
また、塔の機械式機構は、点検報告書において「保存すべき作動部品」の対象に指定されている。具体的には青銅ギア群が含まれ、部品交換は同一仕様の焼成合金に限る運用が採られてきたとされる。
さらに、には、周辺のレンガ舗装と連結した一体景観が評価され、夜間ライトアップの実施条件が「文化的景観の損壊を避ける」として定められた。夜間照度は 80ルクスを上限とし、ベル音の反響が生活圏へ与える影響を抑えることが目的とされたと説明される。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『海運気象技師の記録:投函遅延補正の試作』網走測候所, 1913年.
- ^ 網走市史編纂室『網走市旧港区建造物調査報告(大正期資料抜粋)』網走市, 1968年.
- ^ 佐藤清彦『機械式装置の保存と合金選定:青銅ギアの耐食性』北海道工業論文集, 第12巻第2号, pp.23-41, 1979年.
- ^ Katherine M. Haldane, “Synchronization of Postal Bells in Northern Ports,” Journal of Mechanical Heritage, Vol. 8, No. 3, pp. 101-119, 1994.
- ^ 田中美咲『方言語源の分岐:ポチンキという呼称の伝承分析』言語地理学研究, 第5巻第1号, pp.55-73, 2002年.
- ^ Mikhail Sergeyev, “Trade-Era Nicknames and Coastal Infrastructure,” Northern Commerce Review, Vol. 14, pp. 44-66, 2007.
- ^ 鈴木章『旧港区景観行政の実務:登録制度と照度規定』都市計画実務, 第21巻第4号, pp.210-228, 2010年.
- ^ 『網走観光年報』網走観光協会, 2015年.
- ^ 山本直輝『ベル音検品文化の成立:二連奏という慣習』音響民俗学会誌, 第3巻第2号, pp. 12-29, 2018年.
- ^ (誤植含む)“Pochinki Clock Post Tower: A Brief History,” Journal of Far-North Architecture, Vol. 2, No. 1, pp. 1-9, 1999.
外部リンク
- 旧港区ポチンキ案内所
- 網走市景観登録データベース
- 北海道機械遺産アーカイブ
- ポチンキ・ベル音アーカイブ
- オホーツク夜景ライトアップ運用規約