ポムポムプリンの変
| 分野 | キャラクター商業史・消費文化 |
|---|---|
| 別名 | プリン変法/変化ギミック同盟 |
| 起点とされる時期 | 1987年(推定) |
| 中心地 | (関連企画の拠点とされる) |
| 主な担い手 | 菓子広告制作班と玩具規格委員会 |
| 関連用語 | “二段反応”/香気連動/表情スコア |
| 影響 | キャラクター玩具の連動演出が定着したとされる |
(ぽむぽむぷりんのへん)は、系キャラクター文化が“変化”を商品設計に取り込んだとされる流行現象である。特に後半から始まった派生企画の総称として用いられることが多い[1]。
概要[編集]
は、一見すると“キャラクターの表情が変わる”程度の話に見えるが、実態は菓子領域と玩具・映像・香りの演出が「変化」を中心概念として再設計された過程を指す呼称である。
同現象は、に前の試験販売で観測されたとする“購入行動の二段階”が契機とされており、一次反応(買う)と二次反応(集める)が別の刺激設計で引き起こされると考えられた点に特徴があるとされる[1]。なお、呼称の由来は“ポムポムプリン”の造形上の変形ギミックが早期に試作されたことにあるとされるが、当時の資料は意図的に散逸していると推定されている。
編集者の間では、この語が「実体のない流行史のラベル」としても使われることが指摘されており、発明者の実名がしばしば伏せられる傾向がある。とはいえ、関連企画の社内資料からは、表情の点数化や香気の同期など、広告技術の具体が語られているため、内容は“それっぽく”語れる範囲で広がった経緯があるとされる[2]。
定義と成立経緯[編集]
一般にはは、キャラクター商品において「固定された可愛さ」から「変化する可愛さ」へと重点が移った時期を指すとされる。ここでいう“変化”は、単なるデザイン変更ではなく、店頭演出・購買導線・同梱物の状態が連動し、購入者にタイミング差のある体験を与える仕組みを含むと整理されることが多い。
成立の契機としては、菓子広告の制作現場で発生した“表情の取り違え事故”が挙げられる。制作班はのイラスト工房から届いた表情素材を誤って差し替え、結果として「最初は微笑み、後から気づくと口角が上がっている」見え方のズレが客の話題になったとされる。担当者は、返品率が上がるどころか初週の回転数が上昇したと報告したとされるが、数値の出所は不明であり「回転数」という語の定義も一定しないとされる[3]。
その後、玩具規格の議論へ波及し、企画内では“二段反応”という概念が導入された。一次反応は「手に取る」、二次反応は「集める」だとされ、二次反応には表情スコア(後述)と香気連動を用いたと説明されることがある。なお、この用語体系は資料によって表記揺れがあり、は“顔面スコアリング”と呼ばれた版もあるとされる[4]。
歴史[編集]
前史:1980年代の“変化する演出”の萌芽[編集]
、玩具メーカーと食品メーカーの境界はまだ明確であったとされる。しかし、広告代理店の(当時の通称)では、陳列棚の照明と同梱チラシの色温度を揃えることで“気分の連続性”を作れると考える研究が行われていたとされる。ここから「変化は視覚ではなく体験の連続として設計すべき」という発想が育ったと推定される。
一方で、キャラクター文具の分野では“動く絵”の模倣が乱立し、消費者の興味は一時的な刺激に偏ったと批判された。そこで制作現場では、刺激を増やすのではなく“タイミング差を設計する”方向へ舵を切った。その試行の受け皿が、のちにと呼ばれる概念の母体になったとされる。
この段階では、厳密には「ポムポムプリン」が主役ではなく、あくまで“店頭で表情が変わる体験の枠組み”が先行していたとする見方もある。実際、当時の社内会議資料では、キャラクター名を仮置きし「プリン型・表情可変」といった表現が使われていたと報告されているが、当該資料は同名の人物が複数の版に分けて保管していたため、内容の突合が困難だとされる[5]。
本変:1987年の渋谷“二段反応”実験[編集]
、のテストマーケットとして周辺の三店舗(いずれも菓子と文具を併売)で、同梱物の“状態遷移”を伴う販売が行われたとされる。この実験は、初回購入者にだけ配られる“変化カード”が、購入から後に手元で模様が薄くなる仕掛けを持っていた点で注目されたと語られる。
当時の報告書では、変化カードを受け取った購入者のうち、翌日に再来店した割合が、さらに二次購入(同シリーズの追加購入)に至った割合がだったとされる。ここから“二段反応”モデルが整備されたと説明されることが多い。ただし、統計は「再来店」判定の基準が緩く(レシート提示の代わりにスタンプ紙を採用)、学術的には信頼性が疑われる可能性があると後年の検証で指摘されたとされる[6]。
また、同年の目玉として“表情スコア”が提案された。表情スコアは、笑顔・驚き・とまどいなど複数の表情に点数を付け、購買導線上で合計が一定以上になるように組み合わせる設計思想である。資料では点数の合算が「合計で次月の限定生産が発動」と書かれていたとされるが、実際に発動したかは不明である。もっとも、当時のマーケティング担当者は「発動しなくても、期待だけで店の空気が変わる」と語ったと伝えられている[7]。
拡張:玩具規格委員会と香気連動[編集]
1988年以降、玩具規格の議論へと波及し、(正式名称は“玩具・菓子兼用演出器具安全審査会”とされる)が、素材の安全性と再現性を論じたとされる。特に、香り成分を同梱物に内蔵する際の揮発量を巡り、香気連動の可否が争点になった。
香気連動は、店頭での初回提示(一次反応)と、帰宅後の二次反応(集める行動)で香りが“気づかれやすい順番”に変化する仕組みとされる。報告書では、揮発のピークが初回提示から後に訪れると計測されたとされるが、測定器メーカー名が記載されていないため、当時の計測条件は追跡不能とされている[8]。
この時期、側ではキャラクターの“変化”がブランドの核になることを懸念する声もあったとされる。つまり、変化を売りにしすぎると、表情の固定像が薄れ、ファンの記憶が追いつかなくなるという問題である。ただし制作側は「記憶が追いつかないのではなく、追いつくための集め行動が必要なのだ」と反論し、結果として“変化を前提にファンが育つ”形へと整えられたと語られる[9]。
代表的な“変”の事例(製品・企画としての変化)[編集]
は、単なる概念ではなく複数の実装事例によって補強されたとされる。ここでは「変化」の内容が比較的具体的に言及されている企画群を挙げる。
第一に、表情が段階的に変化する“二段スクイーズ”がある。これは柔らかい素材の中で圧力が蓄積され、になると口角の影が変わる仕掛けだと説明された。第二に、同梱カードに埋め込まれた熱変色インクが“買った当日には気づかれず、二日目に見える”条件で設計されたとされる。
第三に、店舗ポップに印刷された微小なドットパターンが、店内照明の角度によって“違う表情に見える”仕様だったとされる。この設計は、消費者の観察行動を誘うと同時に、盗用対策にもなったとする見方がある。実際に競合が似た表情の商品を出した際、ドット角度の差を読み取れない購買層が多かったため、結果として模倣が遅れたと報告されたという[10]。
批判と論争[編集]
一方で、は過剰な演出による“疲労”を生むとして批判されることがある。とくに、二段反応に依存する設計では、集め行動が習慣化しやすく、ファンの感情が“正解探し”に寄りすぎる可能性があると指摘された。
また、安全審査の観点でも論争があったとされる。香気連動について、揮発量の評価が統一されていなかったため、同じシリーズでも地域によって香りの強弱が異なると不満が出たという記録がある。この件では、の景品表示に関する運用担当者が「香りは品質ではなく体験である」という曖昧な整理を採用したとされるが、当時の議事録は部分的に欠落しているとされる[11]。
さらに、呼称の由来そのものが揺れている点も論点になっている。「プリンが変わった」のか「客の行動が変わった」のかで意味が変わるため、後年の研究者の間では概念が曖昧だとする指摘がある。ただし、編集上の都合で“プリンが変わった”説明が先行したことで、実装技術の議論が後回しになったとする見方もあり、ここに語りの癖が生まれたとされる[12]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山田由岐夫「キャラクター玩具の“変化設計”と顧客行動」『消費体験研究』第12巻第3号, 1991, pp. 44-61.
- ^ Katherine S. Moreno「Two-Stage Attention Models in Retail Character Goods」『Journal of Playful Marketing』Vol. 5 No. 2, 1994, pp. 101-129.
- ^ 中村玲奈「香気連動の再現性評価:揮発ピークの推定手法」『香りと商品設計』第7巻第1号, 1990, pp. 12-27.
- ^ 佐伯貴志「表情の点数化がもたらした購買ログの変容」『広告技術史研究』第2巻第4号, 1993, pp. 88-103.
- ^ 電波計画編集部『売場が変わる照明設計:1986-1989の現場記録』電波計画出版, 1992.
- ^ 【玩具・菓子兼用演出器具安全審査会】『演出器具の安全指針(暫定版)』第1版, 1988, pp. 1-58.
- ^ 藤堂裕司「模倣が遅れた理由:微小ドットパターンの誤読効果」『視覚刺激と消費』Vol. 9, 1995, pp. 201-219.
- ^ 森川真理「渋谷テストマーケットにおける再来店率の測定設計」『流行測定年報』第3巻, 1989, pp. 33-52.
- ^ John P. Halloway「Brand Narratives and the Gimmick Paradox」『International Review of Character Commerce』Vol. 1 No. 1, 1992, pp. 9-24.
- ^ 斎藤志郎『プリンは変わらない:とされてきた技術史』白夜文庫, 2001, pp. 210-233.
外部リンク
- 二段反応アーカイブ
- 表情スコア研究会
- 香気連動データベース(旧版)
- 渋谷テストマーケット回顧録
- 玩具規格委員会の資料室